やまけんの出張食い倒れ日記

農泊万歳! ファーム千代田のほど近くにある「かまいたい宿 One & Only」の居心地と食事が素晴らしいってこと!


さて、美瑛でいよいよ農泊だ。「農泊」のよいところは、観光の対象となる「農」的主体の中で宿泊や飲食がなされなくとも、その近隣の農泊参加者によって提供されればよいというところだ。農村で農家がお客を泊めるグリーンツーリズムが流行ったとき、多くの取り組み主体が生まれたが、なかには「農業やって、お客を迎えて泊めて、農作業体験させて、風呂いれて夕ご飯食べさせて、寝かせて朝食食べさせて送り出して掃除するの、大変だ!」という取り組み主体も多かった。そりゃそうだ、農家は農業で手いっぱいが普通なのだ。そうしたこともあって、美瑛の農泊は地域全体で「面の観光」を進めている。

今回、まだファームズ千代田が宿泊施設をスタートさせていなかったので(2024年中にサービス開始予定だ)、泊まりは「かまいたい宿 ONEandoONLY」にとってもらった。ファームズ千代田から車で5分もしない近くにあるので、北海道では「お隣さん」といっていいくらいだ。

ちなみに、マジックアワーを迎えたファームズ千代田の放牧用の丘を上から観ると、こんな感じの景色が拡がっている。


あまりに素敵で、ちょっと身震いしてしまった。ジャージー牛の母牛達は、草が緑の間の昼はこの丘に放牧されて暮らしている。

と、みるみる間に暗くなってきたので、お宿へ移動。


■かまいたい宿 ONE and ONLY
https://oneandonly-hokkaido.com/about/

実は、石川さんから「ファームズ千代田の宿泊施設がまだ準備中なので、当日は近くにある、ペンションみたいな素敵なお宿があるので、そちらに泊まりましょう」といわれていた。ペンションか、、、うーん、、、あんまし期待しないでおこうっと、って思ってた。だいたいなんとなくわかりますよね。

大間違いだった!

不明を恥じるとはまさにこのことだ、このお宿、実に最高な空間と食事体験を楽しませてくれる、一流のお宿だったのだ!


エントランスをくぐれば、そこはゆったりくつろげるダイニング。


写真左奥にベッドルームがあるのもお分かりだろう、こちらに女性陣が泊まりました。


そして、外を見ながらくつろぐことができるベッドルーム兼、いろいろと遊べる部屋。僕はここに泊めてもらいました。


この横に、2人入れるベッドルームもあります。


そして開放的なダイニング直結キッチン。ここは岩本真諭さん祐子さんご夫妻が切り盛りする宿なのだが、彼ら二人ともが発酵食品のプロフェッショナルなのだ。なんつっても祐子さが発酵ソムリエ。そしてここで供される料理のほとんどすべての味付けに、麹を用いた自家製の発酵調味料が使われている。


キッチン&ダイニングの壁にしつらえられた棚には、各種自家製の調味料がズラリ。


台下には、「夏の間、この辺の農家さんが規格外のトマトを分けてくれるので、瓶詰めにして保存してるんです」という、実にサイコーな保存食環境なのである。


それにしても、豆や米、麦などの穀類に麹菌を合わせた自家製発酵調味料の種類がとてつもなく多く、面白い!


黒千石豆を使った麹など、かたっぱしから味見したくなる。


第一、それらに使う塩だけでもこんなに種類が、、、


塩を集める人は多いが、それらをフルに使ってちゃんと意味のある使い分けができてるところはそう多くないと思うんだよね。


ということで、カンパーイ! 左から、東川町在住の写真家・編集者の畠田君、石川さん、石戸屋さんだ。


さあて、いよいよ食事が始まる!


このONEandONLYの最初の一皿は、この美瑛で穫れた素晴らしい野菜を、塩や各種の麹調味料でいただくというもの。
茶色のは玄米醤油麹で、手前の薄茶色ひしおバーニャカウダ(醤と生クリーム)だそうだ。




これがねえ、しっかりひとつひとつの野菜の味わいと香りが違うし、麹調味料を使って出る変化があるので、「生が続いて疲れた~」ということがない。味覚をリフレッシュさせ、胃腸をシャキっと励起した状態にしてくれる前菜だ。



そして、芋のスープがまた、おいしい!

「無農薬の菊芋とインカの目覚め千代田ファームのジャージー乳のポタージュ」

菊芋の甘さと、寝かせたインカのめざめのコクで、お互いに無い味を補っている。


僕は最近、めっきりと酒、特にワインに弱くなってしまったので、麹ドリンクを。こいつが実においしい、、、


さて、ポテトサラダに見えるけれども、これは日本料理の真薯のような、ホタテやタラの白子を具材にした、スープ仕立ての一品。
「手作りの和風麹をベースにカラー大根の旨味を足したスープです!」


「スープに混ぜながら食べると美味しいですよ」とのことだが、本当においしい!


さっきも書いたが「料理好きなご夫婦がちょっとペンション開いちゃいました、って感じのところだろう」な~んてたかをくくっていたワタクシ自身をバカ! バカバカバカバカバカ! とぶん殴ってやりたい。よく考えてみれば、僕を美瑛に誘った石川史子さんが、そんなハンパなところで食事をするはずがないのであった。

この岩本夫妻は、食事提供の真のプロフェッショナルであった。


話を聞いてみれば、岩本さんご夫妻はさまざまな飲食・宿泊施設で働いてきた人で、この美瑛に来る前はイルカと泳げる島で有名な東京の離島である御蔵島(三宅島の隣)で、リピーター続出の御蔵荘という宿を営んでいた。天候が悪くなると船が欠航してしまうため、一年前から予約をしていたのに来られない、なんてこともあるため、幻の宿でもあったそうだ。

なので、、、すべての料理がビシッと決まりまくっていて、本当においしい!


キャベツたぁっぷりのロールキャベツ。

「あま~いキャベツ、っていう地元のキャベツがあって、その名の通り本当に甘くておいしいんです。それで、美瑛豚のひき肉に札幌黄のタマネギ、ニンジンを加えたものを包んでいます。上には美瑛豚のバラ肉をカリカリにベーコンみたいにして、、、ここに、さきほどやまけんさんも行かれた、あらいファームの新井さんが栽培したニンニクの香りを抽出したオイルを回しかけます、、、」


うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお 旨い!

ガーリックオイルでピン!と一本縦の世界線が入って、キャベツの甘味がブイヨンのうま味が複雑化する!

ちなみにこの煮ているブイヨンは、コンソメ麹という、洋食に合う麹調味料を使っているそうだ。本当にコンソメのごとき味わい。

実は僕は、麹の麹臭さというか匂いが好きになれない時もある。なんでもかんでも塩麹で味付けする店にいって「もうそういう麹の風味には飽きたよ」と思うことが多いのだが、このONEandONLYでは一切そんな感じがない。麹臭が極めてすくない麹調味料なのか、もしくは岩本さんの料理技術なのかもしれない。


「あ、ファームズ千代田さんの牛カルビとキノコの混ぜご飯が炊けましたよ~」


うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお


これは旨い!

いやこれも旨い、か。 ゆめぴりかのネッチリ感ある米にファームズ千代田の牛肉から染み出たうま味と香りが染みこみ、新もののゆり根がサクリと甘く溶け、まさに最高である。


そしてメインは美瑛のシカ肉! 2歳オスのロース肉である。
「幻の玉ねぎで札幌黄という種類をベースにダイヤモンドニンニクと醤油麹を加えたソースです。」


付け合わせのジャガイモはグラウンドペチカ(いわゆるデストロイヤー)に、ポテトチップスになっているのはノーザンルビーとシャドークイーンだ。


このシカ肉の火入れも素晴らしい、、、そしてソースの出来栄えが、鮮やかで明瞭で、とてもおいしい。岩本さん、料理技術が半端ない。少なくともいい意味で家庭感、無いよ(笑)。これ、ペンションじゃなくて、美食を味わえるレストランじゃんか。

「あっ、でもうちは、レストランのみの営業はないんですよ。夫がどうしても泊まっていただいて、ご飯もゆっくり食べていただいて、というのがいいと言う考え方なんですよね。まあ、わたしはレストランしてもいいと思うんですけど、、、」

いや レストラン単体営業もした方がいいんじゃない!? と思うけどなぁ、、、

食後のデザートまで「らしい」ものだ。

「生食感のプリンに、アイスクリームです。」



「地元のたまごと生クリームを固めたプリンで、その上にサツマイモ甘麹っていう、蒸かしたサツマイモを麹にすると糖化してとても甘くなるんです。だから砂糖は使わないのにあんこみたいになるんですね。そこに、占冠産のメープルシロップをかけました。



「アイスクリームは、あらいファームのいちごをタップリいれています。新井さんのいちご、ビックリするくらいにおいしい。ふつう、アイスにすると甘味が消えちゃうんですけど、これはコクと味がしっかり残るんです。それをベースに、美瑛のアップルベリーとうちの庭に生えているジュンベリー、それと御蔵島から持って来たパッションフルーツも入っています。」


いやもう脱帽である、、、素晴らしすぎるんですけどぉ。

ミシュランガイドではないけど、「ここに泊まりに来るために車で数時間かけて来てもよいと思える宿」である。


楽しい夜は更けていく。お風呂も温かく、ゆっくり浸かって、旅の疲れを抜いて熟睡したのであった。

まだまだ続きます。