やまけんの出張食い倒れ日記

この肉を食べずして、肉好きといっていいのか?というほどの衝撃!熊本で100%周年放牧されている黒毛和種をみて、同じ手法で育てられたくまもとあか牛を食した!

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■撮影:オリンパスOM-D 45mmF1.8

この写真の牛を観て、あまりの衝撃にのけぞってしまった。何に驚いたのかおわかりだろうか?この牛、一般的な黒毛和牛である。ただし、その育ちは非常に特殊だ。彼は草とサイレージ(発酵飼料)、そして焼酎のカスしか食べていないのである。

この牛の父牛、母牛には、どちらにも黒毛和種の種牛として名高い平茂勝の血が流れている。平茂勝は増体型といって、とにかく身体がでかくなる牛だ。しかし、でかくするにはコーンなどのカロリーの高い濃厚飼料と呼ばれる餌をドンドコ食べさせるのが普通。敬愛する獣医師の松本大策先生によれば、穀物を4.5トン食べなければ仕上がらない、という。

それなのに、この黒毛和牛は、毎日草とサイレージと麦焼酎カスだけ食べて、717kgもの体重をたたき出した。月齢は約28ヶ月である。立派ではないか!

実はこの牛を目の当たりにした日、この牛とまったく同じ飼い方をしたくまもとあか牛の肉をいただいた。これが美味しくなかったならば、話はまあ終わってしまうのだが、、、

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皆様の予想通り、美味しかった! それも、尋常の美味しさではない。すこぶる美味しかったのだ!

このあか牛と同じ育て方をした、冒頭の写真の黒毛和牛がいま、肉となった。この牛、ある試験機関で実験的に育てられている。

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熊本県の某所にある試験場。このとおり牧草地帯がダダーンと拡がっている。ここで肉牛の周年放牧に取り組んでいるのがこのNさんだ。

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後ろ姿でゴメン。残念なことに顔出しNGの命が下った。

周年放牧とは、牛を一年中、放牧することだ。というと簡単に聞こえるかもしれないが、東北や北海道など、雪が降る地域では草が枯れるため、できない。一年を通じて暖かい場所でなければ実施できない方式だ。そういう意味ではこの熊本という場所は理想的である。

放牧地は電柵(電気が流れている線を張った柵。これがないと家畜が逃げてしまう)で区切られている。彼が向かう先に、餌を与える給餌場がある。そこに、彼らが居るのだ!

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顔の周りにハエがたかっているのはご容赦。この暑い時期、虫が大量に発生して牛さんにたかるのだ。それにしてもちゃんと肉牛の体格になっている。一般の牛舎にいけばスリムな体型だけれども、これが周年放牧だと知ったら、肉牛関係者は驚くだろう。

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彼らに与えるのは、Nさんがスコップに載せているデントコーンサイレージ。餌用コーンの茎や葉もを粉砕して発酵させたものだ。その辺にはえている青草だけでは十分な栄養にならないので、それを補う粗飼料として与えている。

それともう一つ重要なのが、麦焼酎のカスだ。

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このタンクに湛えられているのが麦焼酎のカス。液体である。触るとただれてしまうくらいの酸性度の液体。これをサイレージにかけて与える。

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見た目はよくないけれども、これが素晴らしい餌となるのだ。

「季節によって牧草の栄養価も変わりますからこうした微調整はしますが、基本的には毎日こんな餌だけです。」

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うーん、僕もいろいろと肉牛を放牧しているところをみてきたけれども、最後まで放牧でこんなに太った牛をみたことがない。

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ちなみにここでは、熊本県が誇る褐毛和種「くまもとあか牛」も試験肥育している。

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撮影:オリンパスOM-D 45mmF1.8

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牛飼いの人達から観たら、天国のような場所ではないか、と思うはずだ。

この広大な圃場を、Nさんは自転車で移動。

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事務所で、以前実験でと畜した牛の肉を見せていただく。

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この日、肉の業者さんたちと行っていたのだけれども、みんながこれをみて驚くのだ。

「え、マジでこれが放牧!?」

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じつに立派なリブロースである。

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サーロインにもきっちりサシが入っている。

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僕の経験上、グラスフェッドの牛でサシが入っていても、非常に口溶けのいい脂質になることが多い。

「じゃあ、この黒毛じゃないけど、あか牛を同じ育て方したやつの肉を食べに行きましょう!」

と案内してくれたのが、九州のプレミアム食材に命をかける丸菱商事の吉田さんだ。

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料理をしてくれたのは、熊本ANAホテルニュースカイの、臼杵シェフ。

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「このお肉、美味しいんですよぉ~ シンプルな味付けにしたものを食べていただきますね。」

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ホテルで出てくるのは珍しい、ネック(首肉)。煮込みにしてあって、ゼラチン質のところがきらきら輝く。

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撮影:オリンパスOM-D ZD50mmマクロF2.0 をアダプタで装着

じつにしっかりした味、しかも食感がいい。首肉特有のごりごり感が強いかと思ったが、そんなことはない。繊維が素直にほぐれる感じ。

そしてこの肉でとったコンソメ。

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それはもう、上質な味わいだ。旨味の量もアタックも十分、やっぱり草中心だからか、上品な味わいだ。黒毛に比べるとあか牛の穏やかさが十二分に表現されている。

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モモ肉、だったかな?のソテー。このあたりからググッとボルテージが上がっていく。

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肉の繊維感バツグン、そして全く堅くない!むしろ絶妙な柔らかさと繊維の歯触りで、心地よい!

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赤ワイン煮はどこの部位だっただろう、トロケルような美味しさだったことしか覚えてない(スミマセン)!

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そして、サーロイン。

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もう本気でビックリしましたね、この美味しさ。

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よーく観てもらうと、肉の間にピッと走っているサシがある。これがじつに溶けのいい脂で、まるで水のよう。といって、グラスフェッド牛にありがちな水っぽさは皆無なのだ。派手さはないけれども、とても美味しい。

派手さがないのは、穏やかで味わい深い美味しさをもつ褐毛和種の特性かもしれない。ということは、黒毛だったら、もっとど派手なグラスフェッドになっているのだろうか?

そんな肉が、ほんの少し、限定で流通しようとしている。もし興味のある人は僕にメールをください。ただし、賞味期限は今月の14日までで、販売単位は業務用のブロックで、一塊で5kgとかですので、素人さんには無理。かな~り変態な料理人さん、待ってます!