アメリカのWagyuとはどんなものか!?全米一のシャロレー種ブリーダーからWAGYUブリーダーへ転身したケビン&ジェシカ・ムーア夫妻の500haもの放牧地を観せてもらった。彼らがWagyuに求めているのは、日本の「和牛」とは別モノだと思う。

2018年11月 2日 from 出張,日本の畜産を考える

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日曜日、日本農業新聞の山田さんの運転で、フォートワースから車で30分程度の場所にあるM6 Ranchへと向かう。

ここは、以前山田さんが記事執筆のために取材をしたこともある牧場で、牧場主のケビン&ジェシカ夫妻とも仲よくしているとのこと。また、ケビンはもちろん全米和牛協会(AWA)の会員なので、会場で何度も顔を合わせることができた。ちなみにケビンは次年度の協会幹部に立候補し、めでたく当選したようだ。

このケビン・ムーア氏はアメリカの肉牛業界では有名人だそうだ。というのも、以前はアメリカにおけるシャロレー種のブリーダーとしてトップレベルの牧場だったそうなのだ。シャロレーはフランスを中心とするヨーロッパの品種と思うかもしれないが、その産肉性が評価され、アメリカでもかなり生産されている。フランスとはまた育種の観点が変わる(フランスは真っ赤、モモの大きさ重視、アメリカはロース重視)ため、フランス系とアメリカ系の二通りがあるらしい。

その、アメリカにおけるシャロレー界で育種を行うブリーダーとして確固たる地位(シャロレー協会の会長だったそうだからね)を築いてきたのに、数年前に彼はシャロレーのブリーディングを辞め、Wagyuに転向してしまった。

「どうも奥さんが病気になってしまって、シャロレーは体質的に食べられないというんだけど、Wagyuだったら食べられるんだ、みたいなことを言ってたなぁ。そんなことあるのかわからないけど」と山田さん。

そんな愛情溢れるケビン、いまではアメリカWagyu業界で一目置かれるブリーダーになっているわけだ。

■Welcome to M6 Ranch Wagyu!
https://m6ranch.com/

ケビン&ジェシカの牧場のWeb。トップのBBQを頬張る二人の写真、もうちっと写りのいいものにした方がとも思うが、、、(笑)

テキサスのフォートワースから南へ走り、森の中にひょこっと出てくる小さな湖の畔に、彼らの家がみえてきた。

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ケビン&ジェシカ夫妻と山田さんの再会だ。

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それにしても、いいお家、、、

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こんな、遊び場?船着き場?まである。

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なんとなくお分かりだろうが、アメリカでWagyuのブリーディングをしている人は、ほぼお金持ちといっていいだろう。当たり前と言えば当たり前で、素牛(もとうしと読みます)を買って種をつけ、子を産ませて育成し、販売してお金が手元に来るのに3年かかるという商売なのだから、参入にはお金がかかる。

それに、日本では牛舎飼いが普通だが、こちらではブリーダーはかなり広い面積を持って放牧で母子を飼うことが普通だ。ケビンに所有する牧場の面積を尋ねたところ「500haくらいだね」とこともなげに言っていた。500ヘクタール、、、絶句してしまう。

「さあ、それじゃ牛を観に行こうじゃないか!」と言って、でっかい4WDに乗り込む。ちなみにフォートワース周辺では圧倒的にピックアップ型のトラックが多い!それも、日本のダットサントラックみたいな小さいのではなく、ランクル以上の大きさのピックアップが多い。荷台に何か乗せるのかなあれ、もしかして、意味ないんじゃない?と思っていたが、あとでそれが間違いだと言うことが分かる。

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ランチ(Ranch)は、規模の大きな放牧場のことを言う。

「ここからランチだよ!」

と、そのまま車で乗り入れる。

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広い、、、とにかく、広い。そこに、牛たちが。それも、ブラック・カウたちだ。

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基本的に車から降りることなく、視察していきます。

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子牛がたくさんいるなあ、基本的に受精卵移植(ET)だと思うけど、どんなスケジューリングで種付けしているのだろう。聞き損ねてしまった。

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こんなスケールで牛たちを育てている。

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ちなみに、ここの母牛は100%フルブラッドのWagyuばかりではない。というのは、先にも書いたとおり、このランチにいる母牛の何割かは受精卵移植でフルブラッドWagyuの子を宿す。だから、白い身体のシャロレー牛もいるが、そうしたメス達は代理母なのだ。

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もうひとつ、写真を観て「あれ?」と思った人も居るかもしれないが、黒毛っぽいけど角がないという牛が多い。

アメリカではもともと角があると危険なため、無角の性質が遺伝した品種(例えばアンガスはそうだ)を掛け合わせることで、Wagyuに無角の性質をもった牛を作り、それを今度は戻し交配することで血液百分率93%程度のWagyuを作る。

だから、写真などでみせてもらう牛もほとんどが無角なのだ。これは、日本の畜産の現場を知っている人間からするとちょっと違和感のある光景なのである。

あれっ あの子はなんで茶色なの?

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実はこの子は、Wagyuとシャロレーをかけた子牛。

「代理母用には、大きい子牛を産めるシャロレーと合わせるといいんだよ」

とのことなのだ。ああ、このシャロレーがお母さんか。なんだかカラフルで、とても面白い光景である。

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シャロレーだけではなく、白面のヘレフォードみたいなのもいる。

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車をさらに進めていくと、うっそうと木が茂ったところでケビンが車を停めた。

「あれをみてごらん!きっと20分くらい前に産んだばかりの母子だと思う。最初の立ち上がりの瞬間だ!」

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ほんとうだ、母牛の参道から胎盤がでている!

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産まれたばかりの子牛がよろよろして、まさにバンビ状態ではないか!

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子供が生まれたばかりの母牛は神経質に外敵から子牛を守ろうとするため、僕らがいると気に障るはずだ。ゆっくり、そっと離れると、子牛の身体を舐めていたわりはじめた。

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それにしても、広大なランチ内にさまざまな表情の牛がいる。

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一角には、ケビンが気に入らなかったり、問題があった牛を肥育に回し、肥育する囲いがあった。

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100%フルブラッドであっても、気に入らない牛がいたりするそうだ。そうした牛は肥育して食べるのである。というと「肉牛の農家なんだからあたりまでしょう」と思うかもしれないが、彼らはブリーダーですからね。性質のよい子牛を販売することが彼らのビジネス。

その一方で、肥育牛を何頭かそだてて肉にすることで、自分の牛の良さをアピールしなければならないわけだ。

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この子達は、フルブラッドでしかもこれから母牛になる一群だ。

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ちょうどよいのでその場でポーズしてもらった。ケビンとジェシカはおしどり夫婦。ジェシカが数年前に大病を患ったが、いまは元気になったそうだ。

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まあしかしとにかくM6ランチは広い!

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お、たまには角がある牛もいるね。

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ケビン、体躯が大きく豪快に陽気に笑う人だが、さすがはNo.1ブリーダーだった人だ。どの牛もきちんと管理をしている。「えーとあの牛はなんだったっけな」とデータを見ながら確認をしていた。

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「あ、みてごらん、あの牛のオブジェは、むかしはシャロレーだったから真っ白だったんだよ。弟を呼んで5時間かけて黒く塗り直ししたんだよ!」

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アメリカのWagyuはこんな人達が支えています。

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ケビン、案内してくれてどうもありがとう、末永くジェシカとお幸せに!

まだまだ続きます。