全米和牛協会の会員像。ケビン・グリフィンは、数々の企業を所有しつつ3000エーカーもの土地でWagyuの繁殖・肥育一貫経営をし、また仲間のためにと畜施設まで建ててしまった。こういう成功者たちがノンホルモン・放牧肥育の牛肉をアメリカで作っている。 その1

2018年11月16日 from 出張,日本の畜産を考える

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全米和牛協会(AWA)で白老町の武田正吾さんが功労賞を表彰された夜、僕と山田さんが座ったテーブルに「ここいいかい?」と同席した二人のアメリカ人、ケビンとブライアンと仲良くなった。ブライアンはテキサス州立の大学で畜産学を指導しながら、Wagyuのブリーディングをしている。そして上の写真にあるケビンは、ブライアンがブリードしたWagyuを購入し、繁殖・肥育をしているという。しかも、驚いたことに、なんとと畜場まで所有しているというではないか。

しかも、彼らはこのフォートワースからそれほど遠くない場所で暮らし、仕事をしているという。マジか!?仲良くなろうよ!遊びに行ってもいい!?

「もちろんおいで!」

ということで、もう一人のケビンのM6ランチを視察した後、彼のと畜施設と牧場を見せてもらえる運びとなった。ちなみにブライアンは「明日はファーマーズマーケットに出店しているんだけど、そこに来てくれるなら肉を観てもらえるよ」ということで、寄れたら寄るということにした。

結果的に、すばらしくエキサイティングな一日になった。こういう人達がアメリカWagyuの担い手なのか、、、と嘆息してしまったのである。

M6ランチの視察を終えたところにこちらのケビンも来てくれ、そのまま車で20分ほどのと畜施設へ移動する。

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とても綺麗で新しく、最新の家畜学の理論をもとに家畜にストレスを与えない構造を実現していた。

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例えばと畜される牛が歩くこの通路の角度も、牛が一頭ずつ効率的に間違いなく通るように勾配がつけられているのだそうだ。

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と畜施設には、病畜の判定や格付のため、米国農務省(USDA)の獣医師が2名常駐することが義務づけられている。つまりここは正規のと畜施設なのである(あたりまえか)。

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じつは面白いことがあった。AWA総会が開催されているフォートワースに、別のと畜業者&精肉卸業者がいて、さまざまな家畜を扱っていた。そこにも取材を申し込んだのだが、トップの社長に断られてしまった。

AWAの会場でいろんな生産者にヒアリングをした中で、同行の山田さんが「そういえばあそこのと畜施設にインタビューを申し込んだんだけど、断られたんだよ」と話したところ、相手が「ああ、あそこは事業から撤退するんだよ」と返してきて、あらまあ、そうなのかと驚いた。

その話しをケビンにしたところ、にんまり笑って「あそこはね、最新鋭の設備のうちができたから、立ち行かなくなっちゃったんだよ。」というではないか!そうか、そういうことだったのかと合点がいった。確かにそちらの業者はオールドスタイルな感じの施設だったもんなあ。

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と畜場の視察はM6ランチのケビン&ジェシカ夫妻も同行。このフォートワース地域にはWagyu関係者の密度が比較的高いのかもしれない。

と畜施設内は業務を終えていて、掃除された後の状態だった。

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この施設は1年前に改修したため、真新しい設備だ。200頭程度をさばく処理能力があり、現在はアベレージ150頭程度を処理している。

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ちなみにケビンをはじめとするWagyu生産者のためにこのと畜施設を建てたとのことで、したがってWagyuを中心としたプレミアムラインの肉しか扱っていないという。

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冷蔵スペースには、今週と畜した枝肉がぶらさがっている。

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ほぼすべてがWagyuの枝肉だという。

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肉牛関係者ならこのラベルを観て感じるところがいろいろあるだろう。ちなみにOVER 30はおそらく月齢である。

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モモ側に変な切れ込みが入っているのは、熟成を進めるためだそうだ。

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「と畜した後、ここで21日程度ねかせてからカットに回して、販売しているんだ」

んん!? 枝のままで21日寝かせてるのか!それって枝枯らしじゃんか。 だから「プレミアムライン」と言っていたのか、、、

ところで、読者の中で肉牛の関係者が「んん?」と思ったであろうものが、冒頭の写真でケビンが持っていたこの紙だろう。

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これは、彼らが内部的に持っているプライベートな規格シートである。タイトルにあるように、ケビンのブランドは「Wagyu Excelente」というもの。ここでのマーブリングスコア、つまり霜降り度合いをこのように表記している。日本ではビーフ・マーブリング・スタンダードをBMSと称し12段階で評価するが、こちらは9段階で区分けしているようだ。といっても値としては#11+まであるようだが、12まではないのね。

もちろんこの写真の牛はケビンが育てたものだろう。このサシ断面を見る限りにおいて、日本の和牛の遺伝子が間違いなく作用しているといえるものだ。

「なぜWagyuを選ぶかと言えば、歩留まりとサシが大きく改善するからだ。アメリカの格付最高位のプライムは全米で数%しか出てこない。しかし、和牛を掛け合わせると4割以上がプライムの判定になる。だからWagyuがいいのだ。」

という。そう、WagyuはWagyuとしてよいということではなく、アメリカにいる肉用種に掛け合わせることで、アメリカン人が好むプライム格付の発生率が大きく向上する。それがWagyuの価値なのだと、ケビンは言う。

この特質は世界中から注目されていて、スイスやドイツといった国々からも種畜や精液の発注が入る。

「だれもがWagyuの遺伝資源に注目しているんだよ。」

という言葉には、少々の複雑さを覚えた。

「じゃあ、うちでランチを食べて、牛を観に行こう。ワイフがサンデーランチを用意しているから、行こう。」

ということで、ケビンの自宅へおじゃますることとなったのである。(つづく)