やまけんの出張食い倒れ日記

伊勢丹新宿店の地下一階で徳島フェア開催中!そこに、なんと、あの四宮蒲鉾店が「●●●●●カツ」をひっさげて、初の店頭売りをしている!これはおおごと、ぜったいに買いに行った方がいい!

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新宿伊勢丹の地下一階で、徳島フェアが実施されている。野菜を始め、徳島県の色んな佳いものが並んでいるのだが、その中で「ええええっ 来てたの~!?」とビックリした大物がいらっしゃっていた!

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それは四宮蒲鉾店! の的石勝美社長!

このお店、おそらく関東で知っている人は少ないと思われる。が、日本で最大手クラスの有機農産物宅配ネットワークで販売されている蒲鉾やすり身揚げは、じつは四宮蒲鉾店のものである。その宅配ネットワークの原料素材の仕様と品質管理は日本トップレベルに厳しい!てことは、四宮蒲鉾店はすばらしくレベルの高い蒲鉾店なのである。

まあそれはともかく、食べて欲しいのはここの「カツ」である。

関東で「カツ」というと、ほぼトンカツのことを指すだろう。ビーフカツがある関西でであったとしても「カツ」はトンカツだろう。しかし、徳島県で「カツ」というと、トンカツ以外にも候補があるらしい。それは、、、「フィッシュカツ」である! 魚のカツ、といっても、魚のすり身を揚げたものを「カツ」と呼び、全県的に食べているのだそうだ。

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ご存じの通り、僕は年に何十回も出張に出ているわけだが、そのたび、可能な限り地元のスーパーへ足を運び、その地域でどんな食文化があるのかを売場から眺めるのを習慣としている。で、15年くらい前、講演で訪れた徳島のスーパーに行ったときのこと。練りものコーナーにいくと「フィッシュカツ」と書かれた揚げ物が並んでいるわけだ。

魚のすり身を揚げたものとしては、同じ四国である愛媛県の「じゃこ天」が有名だが、フィッシュカツはじゃこ天のようにすり身を素揚げたものではない。薄くのばしたすり身にパン粉をつけてカリッと揚げたものなのだ。その時はなにげに「うん、すり身のパン粉揚げね、まあ、たまにあるよね。」と買い求めて帰京。自宅でトースターで温め、口に運んだ瞬間に「んんんっ!?」となったわけだ。そのフィッシュカツ、なんとカレーの香りがプワンと口中にたちこめるのだ!そう、フィッシュカツはカレー風味のすり身パン粉揚げなのである。

このフィッシュカツ、昭和30年代に県内の蒲鉾店が考案したものが県内に拡がり、いまでは多くの(ほとんどの?)蒲鉾店がフィッシュカツを製造・販売しているそうだ。

ただ、、、
ほとんどの場合、裏面表示をみると、アミノ酸に始まって、いろんなものがまあ、ごっちゃごちゃと使われているものばかりなんだよね。ちょっと萎える。

そんな徳島の蒲鉾店のなかで、で僕が心からお薦めしたいメーカーが四宮蒲鉾店である!全国的にも珍しいのだけれども、全ての練り物製品を無添加で製造しているのだ。

とまあ、「無添加」と書くと、添加物の何が悪いんだパトロール隊がごちゃごちゃ言ってくるのが常なので書いておく。もちろん添加物は悪いものではなく、保存性が高まり風味の補強ができ、適量であれば毒にもならないものである。

でもね、蒲鉾店に関して言えば、それがタテマエになってるメーカーがあまりに多いと僕は思っている。「うちは生の魚を使ってるんですよ」といいつつ、原料の魚の味がまったくわからないくらいにアミノ酸がぶち込まれていたり、これも線引きが難しいけど、品質劣化した素材を結着・保水させるためのリン酸塩の多用については、志が高いとは言えないと思う。だいいち、そうしたものは例外なくまずい。アミノ酸に頼るからどれもこれも同じ味になってしまいがちだし、食後、口の中がヒリヒリするくらいのものが多いのだ(これはすり身製品だけじゃなく、農産加工品でも同じことが言える)。

そんな中で、四宮蒲鉾店のフィッシュカツは、難易度の高い無添加を「美味しさのために」実現しているのだ。

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四宮蒲鉾店は江戸時代の創業で、社長の的石勝美さんは5代目だ。

「無添加といっても、特に変わったことをやろうと思ったわけじゃないんです。まず、変なものを入れたら美味しくなくなるから入れないんですよ。徳島の海で揚がる魚はすごく美味しいから、それを味わってもらおうと思ってやってたら、いまみたいなやり方にななっただけのことですよ。」

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すり身の原料となる魚は上等な太刀魚を主体とし、極端な不漁でない限りは生を使っているという。魚の鮮度が高くないと、結着力が低くなるので、ここが一番大事な部分だ。

そして、調味料はごくシンプルに海塩と旨味の濃い本みりん、揚げ油には菜種の一番搾り油をぜいたくに使っているという。

こんなにシンプルな作りだから、素材となるすり身原料の品質が高くなければ、美味しくならない。「無添加なんて、何も入れないから簡単だ。」と思う人がいるかも知れないが、その逆だ。素材がよくなければできないし、コストも高くなる。

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特別に工場に入れていただくと、ちょうどフィッシュカツの製造ラインが動くところだった!

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まずはすり身を石臼で練って調味料を入れていく。

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肝心かなめのカレー粉は「特別配合です」とのこと!気になる~

すり身を成形機に入れると、長方形のカツ型になったすり身が出てくる。

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成形機から出て来たすり身にパン粉をつけて油に投入。おおっ パン粉はこんな風につけるのね!

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よくみたら、卵液などのバッター液はまったく使わず、すり身に直接パン粉をつけていくんだね!

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あとはカラリとこんがり揚げていきます。ここは自動化されている!

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「はい、揚げたてをどうぞ!」熱々のフィッシュカツにかじりつくと、バリッと心地よい衣の食感の後に、プワンと魅惑的なカレーの香りが鼻を刺激する!舌には誇張のないすり身の味わいがしみ出すが、とても素直な魚のお味!安いすり身のような、何の肉だかわからないすり身とは別物である。

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「僕らはね、今年の事業計画には去年より10万円だけ利益を伸ばしましょう、と書くんです。そんなに売り上げを伸ばすことを考えるよりも、従業員が幸せであることが大事だし、いいものを作ることにお金をかけたいからね。」

とおっしゃる的石さん。その日も、午後早い段階で製造が終わり、徹底的な掃除をして、早めに従業員さんを家に帰していた。

こんな、味にウソをつかずエシカルなメーカーが支持され、残っていくべきだよな、と感じたのであった。絶対のお薦めだから、ぜひこの金曜日までに、新宿伊勢丹の地下一階に、四宮蒲鉾店のフィッシュカツやすり身揚げ商品を買いにいっていただきたいと思う。

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