やまけんの出張食い倒れ日記

高知県が誇る地鶏・土佐ジローは卵だけが得意じゃない!そのお肉を美味しく食べられるはたやま夢楽(むら)の小松夫妻を9年ぶりに訪ねた!シャープな焼きと柔らかな焼きの双方で味わう、地鶏肉としての土佐ジロー。

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さてここで精一さんから妻の圭子ちゃんへ、焼き手チェンジである。肉焼きというのは本当に面白いもので、焼き手が変わると、同じ食材に同じ調理器具を使ったとしても、全然違う味わいになることが多い。それもまた「うまい、まずい」ではなく、ただ「ちがう」ということなのである。それこそが、料理の面白さだろう。

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圭子ちゃんはもともと、学生時代から山間部の集落や過疎地などを活性化するための地域振興に興味のある女性だった。高知新聞に記者として務めることとなり、いったんはそうした活動からは遠のかざるを得なくなったそうだが、心の中の炎はずっとくすぶり、残り火となっていたのだろう。

地域振興のボランティアをしていた時代にふれあった畑山で、精一さんが孤軍奮闘しているのはずっと見守ってきたそうだ。何度か訪れるうち、精一さんはこの「憩いの家」の指定管理者となり、自分達で育て、肉としてさばいた土佐ジローを食べさせることを実現させた。だんだんに畑山という地域に人が集まるようになった様を観て、精一さんに惹かれていく。それでとうとう、、、

まあ、その辺のはなしは実際にここに来て彼女と精一さんにきいてください(笑)

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やはり、圭子さんが焼いた土佐ジロー肉は、精一さんが焼いたものとは味わいの体験がまったく違う。

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どちらが美味しいということではない。「ちがう」のだ。精一さんは、自分が30年かけて蓄積してきた、あるべき土佐ジローの焼き具合を突き詰めた、シャープで鋭利な味わい。

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圭子さんの土佐ジローは、やはりと言っていいのかわからないが、全体的に一段やわらかな印象なのだ。こんなことをいうとジェンダー論に巻き込まれそうだけれども、鼻に通る香り、筋繊維のしまり方、肉汁のほとばしり方、そうしたものが丸い印象である。

精一さんの焼きを食べてから圭子さんの焼きを味わう。ふだんはそんな贅沢なサービスはここでは受けられないが、この日は「焼いてると話せん」という精一さんのおかげで、望外の楽しみを得ることができた!

圭子さんに焼いてもらって、全ての焼き土佐ジローをいただいた!すばらしく美味しい体験であった。9年前に僕が訪れたときの過去ログが残っているが、その時よりも美味しくなっていると感じた。肉の臭みは以前から少なかったが、それが一段階「良い香り」へと昇華している印象だ。

ところでこの店では、炭火焼き以外にもさまざまな料理がある。

■はたやま夢楽の通常メニュー(11時~15時まで、予約なしで食べられる料理「)
http://tosajiro.com/inn/meal.html

この中でいっとう気になったのが「そばねり」だ。

土佐ジローのスープで、ジローのお肉や野菜を煮込み、そば粉をとかし入れて、練って練って練りあげて作るそばねり。そばがきが好きな人はもちろん、苦手な人にも食べてみてもらいたいそばねりです。ただ量が多いので、お仲間でご注文ください。

あら、これって、、、むかし、今はなくなってしまった高知の「とんちゃん」で梅原真さんと食べた「どろがゆ」みたいなやつか!?

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おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

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ぽってりと、ゆるゆるのそばがきのように膨らんだそば粉の粒子が含んでいるのは、土佐ジローのスープ!野菜の甘さ香りも一緒になっていて、すばらしい味だ!美味しい!!!!!(そして腹に溜まります!)

いやーーー とんちゃんの閉店以来、あのどろがゆが食べたくて仕方なかったんだよ。まったく同じではないけれども、美味しいそば粥に出会えてこんなに嬉しいことはない!

「あ、やまけんさん、まだすき焼きも食べてもらわないと」

ええっ!?

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もちろん、つける卵は土佐ジロー卵!

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至福!

焼いて食べるのとはまた違う美味しさが待っている!

「あとね、おろしポン酢で食べていただく鍋もあるんです」

えええっ!?

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ああ、、、ポン酢原料もすべて高知には揃っているのだった、、、これまた美味しい!

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つまりですね、この「憩いの家」は、三泊くらいしても食べるものに飽きませんよ、と言うことなのだ。

ところでみんな期待しているだろうけど、土佐ジローは地鶏。地鶏のたのしみはお肉と卵。ということは、、、

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親子丼、あります!

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もちろん、土佐ジローのスープがベースだ!美味しくないわけがないでしょう!

親子丼までたどり着けないなあという人にも、さらさらと食べられる良い料理がある。

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これ、Webのメニューにはのってないねえ。土佐ジロースープであっさりとジロー茶漬け。くさみのないジロー肉だからこそのやさしく、凜とした味わいだ。

いやー堪能した!全部、食べました、、、

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さてさて、ようやく土佐ジローの鶏舎へ。

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ちなみに精一さんは元大工さん。だから、鶏舎はすべてセルフビルドだ。

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いまも、新しい鶏舎を建造中。

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「僕、土佐ジローの飼育を平成元年から初めて、卵ではなく肉を始めたのが平成2年からなんやけど、もともと大工をしていたこともあって、2~3年やっては鶏舎を改良して建て替えて、みたいなことやってた。一年育てただじぇじゃあ答えが見えんがですよ。検証するのにもう一年かかる。思い出すと、平成10年にシシトウを育ててたハウスを、仕切りを取り外して、ガーッと鶏小屋に換えたんです。鶏の遊び場面積を3割ずつ減らすか、とか工夫をしてね。」

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「それまでは他の作物やシシトウを出荷して現金収入を得つつ、土佐ジローも二足のわらじでやっていたけんど、もう養鶏一本でやっていこう、野菜のハウスも一気に鶏小屋にしてみようと。そうして、3ステップ、最初の雛のタイミング、それから今言うハウスを改良した鶏小屋があって、肥育の仕上げの鶏舎にするかなあとかいうのを、もっかいやらないかんかもなあ、なんて思いながらやったんやけどな。結局、この時のシシトウハウス改造版が、ま、僕の中ではベストやったね。」

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かっこいいねえ、ジローは、、、

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こちらは育雛舎。

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土佐ジローのヒナは格別に可愛い!

いや、それにしても小松精一&圭子夫妻の取り組みは、揺るぎない。

昨年の豪雨で大きな被害を受けた安芸市畑山地区だが、はたやま夢楽はその信念を持ちつづけ、力強い復興をなそうと頑張っている。それは理念だけではなく、「圧倒的な美味しさ」を伴った、貴重な取り組みだ。

土佐ジローの肉は、通常の国産若鶏とはまったく違う。50日前後しか育てていないブロイラーの肉は、誰でも食べられる柔らかさだ。それと同じ食感を地鶏の肉に求める人間は注文してはいけない。地鶏肉は若鶏にはない「うま味」と「香り」がある。それとは引き換えに、肉の食感が強くなっていくのだ。

また、若鶏と比べ値段が高い!というのもナンセンスだ。若鶏は50日前後に対し、地鶏は75日以上の飼育期間が定められている。味わいは長くなるほど深くなり、また飼育期間が長くなるほど体重も増加する。短期間に3kg越えするよう選抜された若鶏の品種にくらべ、地鶏品種は100日超飼わなければ3kg越えできないものが多い。そして土佐ジローは2kg程度にしかならない小型品種だ。長く飼えば買うほど餌代がかかる。解体コストは大きくとも小さくとも同じ。だから土佐ジローは総体的に高くなるのは当然なのだ。

けれども、その分を補ってあまりある美味しさが、そこにはある。また、それを生み出す物語もある。それを全て味わおうという人だけが、小松夫妻の愛に満ちた土佐ジローを食べる資格があると思う。

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ぜひ、高知の山の奥に、はたやま夢楽を訪ねて下さい。きっと最高の体験が待っている。

■はたやま夢楽
http://tosajiro.com/