やまけんの出張食い倒れ日記

故郷を大切にする気持の素晴らしさ!杉本敬三シェフと福知山市のええもんの素敵な関係をみた!京都府福知山市には旨いもんがいっぱいある!

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京都府において、丹波地方と丹後地方のはざまにある福知山市をご存じだろうか。

京都府の北部、もうちょっと行けば日本海というロケーション。兵庫県の篠山市と接し、全国に名の知れた「丹波」ブランドの地でもある。丹波栗、丹波タケノコ、野菜の産地としても有力である。由良川の流域にある盆地を中心とし、豊かな自然に囲まれた地。明智光秀を主役とした2020年度のNHK大河ドラマはこの福知山市が舞台だ。

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その福知山を食の観点から見ると、「丹波」と呼ばれる地域を持つなど、さまざまな佳いものが点在している。ひょんなことから僕はその福知山の佳いものを発掘する事業に参加することとなったのだ。

■丹波国・福知山は食の“エエもん”の都

じつをいえば、つい昨年まで福知山市には行ったことがなかったのだが、大学時代の友人が市の要職に就いており、「福知山の佳い食材や料理、食文化をもっと外に拡げていきたいんです。」と頼まれ、一度足を運んでみた。本音を言うと気乗りはしていなかった。たいしたものがなければ、断ろう。そう思っていたのだけれども、わりとそんな心配は杞憂だった。

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東京から新幹線で京都まで2時間ちょっと。そこからさらに特急に乗り換えて1時間20分。福知山市はなかなかに遠い京都である。山と川に恵まれたこの地では、農産物は味わい深く実り、川魚や川エビも豊富に獲ることができる。山に行けば絶品の丹波ブランドを冠するイノシシやシカにも遭遇できる。そんな福知山だが、日本全国からみた知名度は低い。それは、とてももったいない!

ということでみんなで考えて、「ふくちやまのエエもん」を発掘する事業をしようということになった。広く福知山で食材や加工品を作る方達から自信の一品を応募していただき、その中から「これは!」というものを選ぶ。選ばれたものは「ふくちやまのエエもん」に認定し、ロゴマークを貼ってもらえば、店頭などで「あっこれを買えばいいのね?」とわかる仕組みだ。年一回、5回ほど開催すればかなりのラインナップになるだろう。

ところで、この福知山市出身の名シェフがいる。東京・新橋にハイレベルなフレンチレストラン「ラ・フィネス」を構える杉本敬三シェフである。

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子供の頃からシェフを志し、天才的な才能を発揮して10代で渡仏、3年でシェフに就任し、12年間のフランス修行から帰国して「ラ・フィネスを開店、料理人のコンクールで優勝するなどの華々しい経歴を持っている人だ。

「この杉本シェフが、出身地である福知山市のことをとても想ってくださる方で、ぜひ審査員に迎えたいんです」と福知山市長が言う。もちろん、そんなすばらしい人には加わってもらわないとね!

もう一人の審査員は、僕のブログを読んでいる人ならご存じかもしれない。某有名百貨店の食品バイヤーを務めた後、徳島県の地域商社「阿波ふうど」の長に就任し、地域商材のプロデュースから流通・販売までを手がけるプロ中のプロとなった溝口さんだ。

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この布陣で、まずは福知山市の広報誌などで告知をし、第一次選考を行った。予選を通過した中から、審査員全員が集まっての第二次選考は、杉本シェフと溝口さん、僕が参加して、試食をしながらの選考である。

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第一回の今年、どんなものが選ばれたのかご覧いただこう。

■美味しいジビエとはこのことだ。中島さんの鹿肉に舌鼓!

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まずはこれ、鹿肉のローストだ。これ、審査の場に出てきた皿です。いったい何者?という見事なプレゼンテーション!
低温調理をして絶妙な火の入れ加減で、バサバサしておらずしっとりねっとりと舌に絡みつく美味しさ。

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正直、驚いた。鹿肉はわりと退屈な味だと僕は感じていたが、福知山の鹿の肉はとても美味しい!

「まず、僕は美味しいと思われる個体を狙って撃ちます。今日はメスの2歳ですね。これを手早く血抜きをし、捌いて適度に寝かせます。処理をきちんとすれば臭みなどありませんし、硬くもありません。そうした肉を、真空低温調理にかけました。」

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というのは、獣を撃ち、それを解体処理して肉にしたのち、料理まで手がけてしまうスーパーマン・中島健太郎さんだ。

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このように、肉の火入れと味付けまで行う低温調理を施した状態で冷凍・冷蔵で販売をする。パッケージまですでに完成しており、その辺の下手の横好きとはレベルの違う造りである。

「以前は飲食店で修行をしました。やはり、料理人がジビエを食肉加工しないと、味にこだわりを持てません。鹿肉もイノシシ肉も活用方法がいろいろあるので、可能性が拡がりますよね。」

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中山間部となる夜久野(やくの)町にある彼の工房を訪ねると、実に清潔度の高い、しっかりと衛生管理をされた工場が建てられていた。中も入れてもらったけれども、こんな地方の中山間地にいきなりあるか!というすばらしい施設だった。

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もちろん、その場で鹿肉と猪肉をご馳走になりました(笑)

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大焼肉大会!

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ビックリしたのは、いい脂の噛んだイノシシ肉よりも、彼が撃った鹿肉のほうが味わい深いと感じたことだ。猟師としての彼の「こいつ上手そうだな」という感覚がかなりはまっているのだろうと思う。審査員一同、美味しい肉に舌鼓を打った。

お肉を食べてみたい人、問い合わせはこちらへどーぞ。

有限会社田舎暮らし https://inakagurashi.bsj.jp/

■絶品の大粒丹波栗を栽培する秦(はた)貴(たか)一郎(いちろう)さん

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丹波地方ではとても良い品質の栗が採れるということが昔から識られていて、なんと日本の最古の正史である日本書紀にも、丹波栗を思わせる記述があるそうだ。その福知山に、2009年に大阪から移住して新規就農したという、若手45歳の栗名人が秦さんだ。

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果樹で新規就農しようと思っていたとき、丹波栗をつくるなら霧が発生し、寒暖差が大きい夜久野高原がいいよということをきき、1ヘクタールの土地を確保して栗栽培を始めたのだそうだ。

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驚くのはなんと無肥料・無農薬で育てていること。そのため、栗の木の下に草をわざと生やして土壌をふくよかにし、植物の肥料分も補給できる草生(そうせい)栽培方法をしているという。

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その栗はぷっくりと大粒で、手のひらに乗せるとズシリと感じるくらい。「蒸し栗がお薦めです」というので蒸したものを割ってスプーンでいただいたが、ホクリとした食感に、明らかに強い甘さを感じる!

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これは美味しいね!ホクホクというよりしっとり。それは、収穫後に冷蔵して、デンプンを糖化させているからだ。そうすると、ジャガイモもそうだが、ホクホク感がなくなってしっとり感がでてくるのだ。僕はこちらの食感の方が好きだ!

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このため、一定の温度・湿度を保つ特別な冷蔵庫におよそ30日保存しているそうだ。デンプン質の糖化だけではなく、風味も増しているのだそうだ。秦さんは収穫シーズンがはじまると毎日食べるのそうだが「ぜんぜん飽きることがない」そう。それも納得の味だったのである!

■毛原の棚田の住民が助け合ってつくる黒豆の粕漬けが美味しい!

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僕が個人的に一番気に入ったのがこれ、「黒豆の粕漬け」だ。丹波といえば黒大豆の産地としてもっとも有名だが、その黒大豆の食べ方といえば、甘く煮付けるものがほとんど。甘い豆が好きでない僕にはちょっとこまった食べ物だった。でも、黒豆の粕漬けは、丁寧に炊いた黒豆を極上の酒粕に漬けることで、ちょっと塩っぱくもあるなんとも言えないお茶請け、またはご飯のおかずになるのだ!

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「この粕漬けは、毛原の住民の間で昔から食べられていたものです。それを製品として復活させたもの。エエもん認定をいただけて、本当に嬉しい」と喜んでいただいた。

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毛原地区は棚田が美しく、住む人達が仲良く手を取り合って生きる素敵な集落。住民一同がイラストで顔出ししている、毛原マップまで存在している!

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ここにはもっと通いたいと思った!

■高橋正英さんが育てたクセのない天空の干し椎茸

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意外なことに(笑)、「干し椎茸がこんなに上品なの!?」と、杉本敬三シェフがイチオシしたのがこれ。

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「普通なら感じるクセをまったく感じません。綺麗な香りなんです!」

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その理由は、原木キノコの味わいを決める自然環境の豊かさにあった。

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標高何メートルだろうか、大江山連峰の一つである天ヶ峰という峠の大自然の中で、美麗な味の伏流水で育った原木に種をつけ、時間をかけて育てた椎茸は肉厚でふっくらとした極上品。

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これ、干さないで食べた方がいいんじゃない?と思うが、干すことで濃いうま味と香りが増加するのだ。

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「これ、うちで使いますよ!」と杉本シェフ。フレンチシェフが干し椎茸を料理したらどんな風になるのだろう?

「あ、やまけんさん、溝口さんといっしょにうちの店に来ませんか?ちょうど、福知山の素材も使って、料理できますよ!」

ということで、伺ったのである。つづく!