ということで、専門料理9月号には短角牛の記事が載っています。
牛肉なら何でも来い!のTheBurn米澤シェフ、じつは短角牛の産地には行ったことがない!とのこと。そして日本料理「菊乃井」で長年にわたり村田さんの右腕を務めてきたてのしま林さんも「短角牛、みたこと無いんですよ!ていうか、牛のこと、あまりよくわかってない」というではないか。
じゃあちょうどいい、ということで岩手県の短角牛産地を巡り、主要産地の肉を食べ比べして、気に入った産地の肉を後日、それぞれの店で料理に仕立てていただくという企画にしたわけだ!
ちゅうことで、専門料理のページには載っていない部分を本ブログでお届けします。
でね、この扉ページの牧野の写真、マジ奇跡だったんですよ、、、
というのも、なんかここ最近、岩手に人を連れて行くとかなりの確率で雨。それも台風とか大嵐。俺、晴れ男のはずなんだけどな、、、と思うのだけれども。なので、この企画のはなしが出たときに、梅雨はとりあえず避けようと思ったのだけれども、いろんな関係のなかで「最近の東北は、6月に雨ばかりと言うことはない」ということになって、6月某日に視察ツアーを催行。
そしたら、、、
やっぱし雨!
ほんとうはよく晴れた牧野の風景を撮りたかったのだけれどもね、、、ま、でも雨の牧野もまたよいか。
行程としてはまず朝一番の新幹線で二戸駅で降り、車で大清水牧野へ上がって牧野見学。ご案内いただくのはもちろん、地元二戸市で短角牛を商ってきた山長ミートの社長と会長だ!
ちなみに、僕の所有する短角牛の母牛「いなほ」ちゃんは、いま会長が面倒をみてくれている。ていうのは、なんと槻木(つきのき)会長はいまや会社の運営の多くを弟である光夫社長に渡して、「俺は短角を育てる側になるわ」と繁殖農家になっているのだ!
この時期、放牧に出して1~2ヶ月近くなる牛たちは、コンディションのいい牧草と母牛の乳を飲むことができる、日本の肉牛のなかでは稀少な、実に幸せなタイミング。
この子がわたしの牛、いなほちゃんです。
「あ、やまけんさんとこの子牛はこいつだわ」
と槻木会長が!
あっ お前がいなほの子だね! 今年の3月に生まれたオスの子牛です。ここんとこ岩手行く時に台風ばかりなので「大嵐(おおあらし)」君と名づけました(笑)
かわいい、こっこです。
「やまけんさんとこの母牛の血統はさ、あきらかに身体がデカくなるんだよな」
と槻木会長。そうなんです、わたくし、優良血統をひきあてました(笑)でも牛を選んでくれたのは杉澤君なんだよな。感謝、感謝!
こんなに間近で放牧中の牛たちに触れるのは初めての二人も「すげーな、、、」と茫然としている。
おっかなびっくり、中に入って牛たちと交流。
ご存じのとおり、いわて短角牛は「まき牛」といって、40頭くらいのメスの群に一頭だけ種雄牛をいれておく。そうすると、秋になって草が枯れ、牛舎に戻す頃にはすべての牛に種がついている。
そのハーレムを仕切る種雄くんがこいつだ。まだ若く、エネルギーがありそう!いなほちゃんをたのみましたよ。ちなみに、まき牛をして牛たちが交配するのを本交(ほんこう)とか自然交配というのだが、生産する肉牛のほとんどを自然交配で生産するのは、日本ではこの短角牛くらいである。くまもとあか牛も阿蘇の生産者さんなどは自然交配をしているグループもあるが、一県の地方特定品種のほとんどが自然交配というのは、短角だけ。
ちなみに日本の肉牛の9割以上が人工授精ですからね。そういう意味でも、短角牛は貴重で稀少な牛なのです。
自然交配で生まれた子牛が、母牛といっしょに牧野で暮らすというのも、肉牛ではあまりないこと。その間、母牛のおっぱいと牧草で育つ。
「え、牛ってみんなそうじゃないの?」という素朴な疑問を持つ人もいるだろうが、日本の畜産ではこのような育て方はほんとうにまれです。もちろん、それが悪いと言ってるわけじゃない。むしろ短角の育て方は非効率といえる。けれども、あえていうと、そこに短角牛の価値があるような気もする。
さて、子牛と母牛が暮らす大清水牧野を降りて、漆原(うるしばら)さんの牛舎へ。牧野を降りた子牛は市場に出荷されるか、または契約取引をしている生産者さんの牛舎に入り、肥育段階にはいる。漆原さんは二戸市唯一となる、短角牛の肥育専門農家。
じつは、ここにも僕の牛が肥育されています(笑)
おっ いい形!こいつが僕の牛ですか?
「いや、やまけんちゃんの牛、今回はそんなにでかくないんだよなー。もう25ヶ月過ぎたから、いつ出荷してもいいよ」
ということなのだが、みえにくいけど下の牛ちゃんが僕の牛です。名前は新生(しんせい)くん。
予告しときますが、今年末か来年あけてすぐあたりに、この子を肉にします。通常の短角去勢牛肥育の月齢を大幅にオーバーする30ヶ月齢以上にしてたべようと思う! 色んなかたちで食べられるようにするので、みなさん、ぜひ買ってくださいネ。
漆原さんの経営ではなんといっても餌がポイントとなる。事前レクでそのことがわかっているだけに、二人のシェフも興味津々。
漆原さんは、岩手県内で収穫・脱穀されるヒエ、アワ、キビなどの雑穀類の粕をあつめ、これを飼料にしているのだ。
もちろん飼料米も。
こちらはハトムギだね!
そして、地元メーカーから出てくるソバやうどん、南部せんべいのカス、つまり未利用資源をエコフィードとして餌にしているのだ。
だから、通常の生産者が牛に与えるメーカー製の配合飼料の割合は、4割以下に抑えられている。つまり漆原さんの短角牛は、餌に関しても地元性がつよいといえるのだ。
多くの関係者がいうことだが、牛の品種や血統によって遺伝的資質が変わるわけだが、現実的に肉の味に大きく作用するのは餌である。餌によって、肉の風味が大きく変わる。
漆原さんの飼料設計だと、パンチがあって華やか、ステーキに合う肉の味わいになる。それが多くの料理人に支持されるゆえんだと思う。
漆原さんとお別れし、お昼はやっぱり漆原さんの肉を食べに、短角亭へ! そこでは二戸市役所で短角牛を担当してくれていた(現在は別部署へ異動)杉澤君に来てもらった。
杉澤君が来ているポロシャツに注目!(笑)うちの会社で作った短角オリジナルポロです。
いやー残念なことにここで載せるべき短角牛の焼肉写真、焼くのとお話しに夢中で撮ってない!スミマセン!
食後、一路向かったのは久慈市山形町である!
(つづく)