やまけんの出張食い倒れ日記

芝浦食肉市場で、牛肉の現在に直面する。100頭の和牛の中で5頭しかA3が出ない現状!

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今日は芝浦の食肉市場で長い時間を過ごした。市場に入場している数社の仲卸さんに、ある事業のインタビュー調査をしていたのだ。その内容についてはここでは書けないのだが、時候の挨拶的に情報交換をした中で、ああそうだよなあと思うことがいくつかあった。

まず、これはここ数年ずーっと話題に上っていることだが、ますますA5、A4の発生率が高まっている。それは必ずしも喜ばしい状況ではなく、買う方も大変だということ。いま、数字だけでいくと100頭上場されたうちうち、A3は5頭いるかいないかという状況。それも、以前と同じA3ではなく、10年前ならA4になっていたであろうサシ量のもの。それだけ、黒毛和牛全体が上物方向にずれているということ。

ではそうしたA4、A5がマーケットで喜ばれているかということだが、これが苦しい。スーパーマーケットの店頭でもサシ量が多い肉は売れ残る傾向になるという。興味深かったのは、芝浦市場で毎年開催されているお祭りがあって、そこでは高級牛肉を出血価格で並べるらしいのだが、そこで最上級(つまりBMS12)の肉が最後まで売れ残ってしまうというのだ。もちろんサシ量が多ければ価格も高いのでそれで手が伸びないということもあるだろうが、それほど価格差がない状況でもそうらしい。

近年、国を挙げて後押ししている牛肉の輸出だが、これもかなり状況が変わってきているようだ。数字上は「輸出量が昨年度の倍!」等の実績を出しているものの、全体の量自体がとても少ないので、現状ではあまり意味がないと。しかも東南アジアなどの輸出先から「もうすこしサシの少ない肉が欲しい」と言われているそうだ!それは当たり前のことで、日本以外の国では薄切り肉の文化はあまりなく、高級な肉はブロックで買い、ステーキで食べる。黒毛和牛のA5はステーキで食べるより、脂を落として食べるしゃぶしゃぶや焼肉に合う。その食べ方を広めない限り、今後頭打ちになってしまうだろう、ということだ。

それでも、高い子牛を導入して肥育している生産者を支えるためには、A5についた枝も買い支えていかなければならない。本当はA5が欲しいんじゃなくて、美味しくて歩留まりがよい肉が欲しいんだけどね、という苦しい心持ちもきいた。

「先日、あるスーパーが「父の日のステーキフェア」というチラシで、米国産牛肉やオーストの肉を出していたんですよ。ああ、国産の牛じゃないんだ、、、なんともいえない気持です。」

と。このへんは本当に難しい話しで、「こうすればいいんだよ!」という一発逆転的な策など出しえない。ひとまず僕は、自分の牛で日本的美味しさを追求しようと思います。