やまけんの出張食い倒れ日記

こんなに奥ゆかしいたべものがあるなんて。岩手県久慈市山形町、厳寒の冬を乗り切るための知恵としての郷土食「しだみ」はドングリから、途方もない苦労を経て作られているんです。

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岩手県の久慈市山形町は、短角牛の代表的な産地としてよくこのブログでも登場しているけれども、それだけではない。一説によれば日本で最後から2番目に電気がきた村、だそうだが、そんな山奥の寒村ゆえ、独自の郷土食には事欠かない。ドラマ「あまちゃん」で有名になった「まめぶ」もここがオリジナルの地だ。

そんな山形町で木こりを営む、新井谷のおじちゃん。

山形町の妖精とでも言うべき、山や川のことを知り尽くした人だ。ただ、今年は山にキノコが生えず、川にアマゴもアユも少ない、悪い年だったそうだ。

そんな新井谷のおじちゃんから、すごいものが送られてきた。

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「しだみ」という。しだみとはドングリのことだ。どんなものかは、この山形町で料理修業をしてきた広尾「有機和食 山藤」の梅さんこと梅田鉄哉さんがくれたメッセージより。

おじちゃんが、「しだみ(どんぐり)」の粉送ろうかな?と言ってました。もしホントだとしたら 超貴重な食べ物ですよ、縄文時代から食べられていた食べ物です。もちろん灰汁抜きしてあるから、砂糖と混ぜて練れば、茶巾絞りにすると上品な和菓子になります。もう村でもほとんど作る人いません、作り方知らない人が多くなりました。

たぶんあんこ状態になってるから、お菓子として食べるなら、好みの量の砂糖を入れて混ぜ、小さい茶巾絞りすると上等な和菓子になります。和三盆ならさらに上品な仕上がり!あとはヤマケンさんが食べてから他の料理に使えるかもです、おじちゃんもなにぶん歳をとったので、多少殻が入っているかも?との事です。長期保存なら小分けして冷凍してください。

ぬおおおおおおおおおお

ドングリの粉! ドングリは豚に食べさせたりしている事例があるけど、人間がそのまま食べようとすると、強烈なアクがあって食べられない。

そこでドングリの実を天日で乾燥し、皮を剥いたら臼で搗くなどして砕く。これを灰汁(草木灰を溶かした水、つまりアルカリ性の水)でなんども煮こぼし、長時間煮る。こうしてアク抜きしたしだみの水気を切り、あんこのような状態になったものが上の写真のしだみだ。

これに、砂糖を混ぜると、、、

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妻が混ぜた際に、水分もすこし補給したかもしれない。こんな感じで、見た目は小豆を使ったあんこのような感じだ。岩手県のしだみ関連の伝統食について書いてあるWebページを見ても、砂糖と混ぜたしだみを団子につけたり、まんじゅうにしたりというのが載っている。

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さて、肝心のお味だが、、、美味しい!

あじわいは、あんこ的なのだけれども、もっとおくゆかしい。なんというのだろうか、純然たるデンプン質だと思うのだけれども、なんともいえないごくひそやかで清廉な香りがあるのだ。越冬用の作物が不作だった時のための救荒食品として食べられていたらしいが、いやいや、甘ささえ加えればご馳走ではないか?というお味。

これ、甘くする意外にどうしたら美味しく食べられるかな。ちょっと考えよう。ちなみに1キロくらいいただいてしまって、小分けにして冷凍して保存しています。大事に食べようっと。

先日書いた地とうきびにしてもそうだけど、新しい食材や料理も楽しいが、このように「えーっ こんなたべものが!?」という郷土食は、本当に感動してしまう。新井谷のおじちゃん、ごちそうさまでした!今度は山形村で逢いましょう。