コロナで岩手に行く機会がなかなかできていないのだけれども、ちゃんと短角牛関連の事業はやっております。それもいったんは今年で最終年度!
なかでも経産牛を美味しく食べられるようにドライエイジングして、付加価値を向上できるか?というトライをしている。今年はなんともすばらしい個体を仕入れることができた!というのも、今回の経産牛は4歳と8ヶ月齢。ふつう、短角牛は9産とか10産している場合が多いのだけれども、かなり早い段階でお肉になることになったもの。
これを、東京都内のドライエイジング熟成庫としてはトップレベルにある、品川・二葉町の小川畜産興業にて、熟成してもらった!
この熟成が昨年末に完了して、順次提供されることになる。その第一段が、地下鉄日比谷線の築地駅を出てすぐのところにある、風情のある町屋作りの鉄板焼KUROSAWAである。
日比谷線出口からこの交差点を渡り、、、
この裏路地をヒョイと曲がると、昭和の古き良き木造建築がみえる!
鉄板焼KUROSAWA、もちろん席ごとにアクリル板の仕切りの完備、十分な間隔をとってのレイアウトなど、完全に配慮されている。
じつはこの日、早めに仕上がったモモ肉(ランプとイチボ)をお客様に出しているというので、行ってきた。
せっかくなので、ちゃんとコースでいただきました。
ここにきて肉だけということはありえない。目の前が築地ということもあり、魚介の仕入れも万全。
調理は埜瀬君! 彼は、岩手にも足を運び、牧野と牛舎を巡るツアーをしてくれた凄腕の鉄板焼き職人。
もともとこの店は岩手県の奥州市や江刺などの黒毛和牛を好んでつかってくれていることもあり、岩手との縁が深いのだ。
「やまけんさん、これがいただいたお肉です。」
おお、正味40日程度の熟成なので、ダメージは少ないだろうと思っていたが、思っていた以上に綺麗な仕上がりだ!
ちなみにモモ肉のドライエイジングはトックリと呼ばれる、モモ一本そのまんまで熟成する方法と、パーツに分割したものを熟成する方法の二つがある。前者の方がよいことも多いが、いかんせん深部に味わいが染みていくまでに時間がかかる。後者だと、熟成による変化は早く進むが全体をぐり剥きしなければならないので、歩留まりが悪くなる。ちなみのこのランイチも65%程度の歩留まりであった。つまり35%はトリミングしなければならなかったということ。
だからその35%の犠牲に見合った味わいでなければ意味がないのである! さあどうだろうか。
それにしてもいい感じだ。脂の先端部をみると、もううっすら溶け出しているのがお分かりだろう。きちんとしたドライエイジングであれば、脂も変化する。トリグリセリドの状態から、グリセリンへと分解していくのではないか、とされているが、頷けるところだ。
ランプの脂側から焼き始めた埜瀬君。
「黒毛と違って赤身なので、火入れには本当に慎重になりますね~!」
黒毛の場合はやらない、いったん、網で休ませる工程を挟む。なお、香りを消してしまう胡椒はかけないで、塩のみにしてもらった。
ランプは若干火入れ強め、イチボ側はやんわりとした火入れ状態でカットしてもらう。
左がイチボ、右がランプだ!いい感じである、、、ドライエイジングをした肉は自由水と呼ばれる、ドリップになる水分があらかじめ抜けているので、火の入り方がリニアで急速だ。だから、芯があたたまってはいるが色が変化しすぎない程度を見極めて供するのが佳いと思う。といっても好みだけどね、ロンドンのホークスモアではガッチリウェルダンで焼いたのが旨いよ!と店員さんに言われたしね。
いやこれが すばらしく美味しい!
40日間のドライエイジングなので、香りは控えめではあるが、ナッティな香りがアクセントのようについている。本来、水分の多い部位だが、シットリしていながらもダラダラと汁がこぼれるようなことはない。そして、行きすぎた熟成のようにバサッとしていることも一切無い。これ、理想的な熟成具合じゃん!?
ランプ側もお見事!やや粗めの繊維だが、心地よくかみ切れてくれる。そしてうま味は十二分!
「じつは、先日いらっしゃったお客様にお出ししたところ、食べてひと言『牛肉の新時代だね!』とお喜びになって帰られました」
とのことだ。うん、そうなんだよなあ、これ食べて、まったく胃が重くならずスッキリ心地よいのだ。比較的年齢層の高い客層であるこの店において、短角牛はかなり受け入れられるのではないだろうか。
〆はもちろん、この店自慢のガーリックライス。
コテで押しつけてつくったおこげ部分がパリパリしておいしい。
半分くらい食べたら、ここに鶏ガラスープをかけて、、、
二段階のおいしさ!
ということで、鉄板焼KUROSAWA、おすすめである。ちなみに年内でもうモモ肉は売り切れ。年明けから同じ個体のサーロインがほんの3キロのみ納品されるので、これが供されます。ただし、少ないのであっという間になくなるでしょう。絶対に食べたい!と言う人はぜひ予約時にお伝え下さい。
期間は1月15日から、売り切れ御免です。おそらく一週間保たないでしょう、、、
個人的には、短角牛を食べてから黒毛をいただくというコンボがいいのではないかと思うね。赤身とA5の食べ比べ、どちらも美味しいけど、異質なおいしさを味わって欲しい。