日本のシャルキュトリの世界で燦然と輝く存在と言えば神戸のメツゲライクスダ。数年前に九州・熊本の仕事で知りあってから、岩手に連れて行きたいと思っていたのが、コロナ禍の昨年夏に叶った。
楠田さん、10年以上前に岩手に来たことがあったそうだが、しっかりと短角牛と向き合う機会はなかったそうで、これが初の短角との邂逅と言ってもよいそうだ。
岩手を代表する短角生産の三産地を巡り、その飼料設計の違い、肉質のちがいを味わってもらった。
神戸に帰ってから、この短角牛のなかで、地元では「不需要部位」とも呼ばれるバラ系の部位を使用しての商品開発をして欲しい、と依頼。多忙の中で試作をし、二品のシャルキュトリが結実した!
ということで、コロナには厳重注意して行って参りました。
いま、店内はショーケース前に最大5名の入店という形。なので、時間によっては行列ができている。やっぱり繁盛店!
この日は大阪在住の、ぼくの関西食文化の水先案内任であるニシガイチが「俺も行くわ」と。なぜかというと、彼は神戸に住んでいた時代、六甲道にいまもあるメツゲライクスダの一号店のすぐ隣に住んでいたのである。しかも、笑っちゃうことに僕が結婚した16年前、その結婚祝いにメツゲライのシャルキュトリ一式を送ってくれたというのだ! 「え~ そんなのぜんぜん記憶にない、、、」「やまけんの舌もそんなもんか(笑)」という、、、
楠田氏登場。ニシガイチのことを紹介すると「ええええええ、ほんっとうちの店のご近所やないですか!」と大盛り上がり。
「その頃は、いいものができない、どうしたらいいんだとあがいている時期だったので、やまけんさんの記憶に残るものもできてなかったのだと思いますよ。」と。いやいやそうではないと思う、、、(汗)
ショーケースのなかには、岩手ツアーの成果が! 公式ツアーが始まる一日前に入った楠田さんを連れて行ったのは、岩手県花巻市が誇るプラチナポーク白金豚!
「以前、使っていたんですけど、肉質がどうもこちらの希望と違うということで使うのをやめていたんです。でも、今回食べたら味がとてもよくなっていて、、、」
ということで、このスペシャルなハムが実現していた!!! 高橋さーん、素晴らしい味ですよ!
そして、、、
この二品、「ジュレ・ド・ブッフ・タンカク」が短角牛のスネ肉と安曇野のポワローネギを使ったゼリーよせ。「リエット・ド・フュメ・タンカク」が短角牛のブリスケを、その脂を活かしてリエットにしているのだが、なんとそこに燻製もかけているというものだ。
ちなみに三産地のなかで楠田さんが選んだのは、短角牛発祥の地、夏山放牧の本場である岩泉町の短角牛だ。
これを盛り込んだプレートを作っていただいた!!!
いやもう、言葉が出ないほどに美味しいですね、、、
短角牛を使ったシャルキュトリはいろんなところで作られているのだが、楠田さんの手によるこの二品、本当に美味しい。
リエットは、よくある豚肉のリエットよりも脂の融点が低いこともあって、口溶けが素晴らしい。ていうか、口に入れた瞬間にすばらしい香りが!これ醤油?というニュアンスだがそれは燻製香。そして、豚よりも圧倒的に強い旨みが脂と友に溶け出してくる。旨い、、、これだけで無限にパンを消費してしまいそうだ。
じつは製作に入る前に楠田さんから「岩泉町の短角の脂の組成を識りたい」という連絡があって「えっ!?」と思ったが、よく考えてみるとシャルキュトリで大事なのは肉のpHだけではない。
「脂肪の組成によっては、長持ちしない可能性があるんです。とくに牛はそうですね。黒毛和牛の脂だと本当にすぐ品質が悪くなるものもありますから。」
ということだったのですぐに調査。幸いなことに短角牛の脂質は県の試験研究機関がしっかりと産地別に組成の分析をしているのでその論文を送ったところ「あ、これでOKです。」と。
「やはり粗飼料多給の産地ですから、すぐに脂の品質が落ちることはありません。ただ、長く食べていただきたいこともあって、燻製処理をすることにしました」という。その燻製香がアクセントになって、飽きずに食べ進めてしまう!
そしてこのジュレ寄せが、、、頬が落ちるとはこのことですかね、、、
日本では牛肉単価の問題もあって豚で作ることが多いシャルキュトリだけど、やっぱり個体が大きく飼育日数も豚より長い牛肉のシャルキュトリというものは、とてつもなく味わいの芳醇なものだと思い知った。素晴らしいよ、、、スネ肉部分の濃厚な味わい、スッキリクリアな短角スネコンソメのジュレ、ポワロネギの甘さと爽やかな香りが合わさって、極上の美味しさである。
夢中で秒即で食べてしまって、ああ、終わっちゃったよと。これは買って帰るべきだな。
ただ、この二種類、「しばらくは置きますよ」とおっしゃったのだけれども、メツゲライのオンラインショッップにはオンリストされていない。
■https://shop.metzgerei-kusuda.com/
やはり店に行かないと買えないのかな。関西圏のみなさま、あまりそちらでは流通していないいわて短角牛のシャルキュトリです。ぜひ、食べてみて下さい。きっと驚く美味しさですよ!
楠田さん、どうもありがとう!
追伸:
ちなみに、店内で食べさせてもらった(※席、要予約です。いきなり行っても食べられない)、ランチ最高でした。
ホットドッグ、、、これぜんぜんホットドッグじゃないよ、すばらしいソーセージに美味しいパン。アメリカの国民食としてのホットドッグとはまた違う世界の食べ物。
そして、ハンバーガー、、、
ここまできてハンバーガーかよとおもったが、我々が想像するパティとは違う!
メツゲライの手法で塩せきされた肉をまとめたもののようで、プリンプリンな食感!フレッシュなシャルキュトリ的ハンバーグパティ! また食べたい、、、
神戸の人達が羨ましい。