やまけんの出張食い倒れ日記

「専門料理」最新号は、あのエリックサウスの仕掛人・稲田俊輔さんのインタビュー。料理を誰でも作ることができる設計図に落とし込み、オペレーションへ展開するその手腕がすばらしい!そして柴田書店から大ヒット本の続編が出来。今度はなんと、なんと、たった1アクションでできちゃうカレー本だ!

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雑誌「専門料理」2021年3月号の特集は「人生100年時代の学び直し~野菜料理編」。

コロナと言うこともあって、あまり取材が活発に行えないということから、当初は苦し紛れ的にはじめたのであろう「学び直し」企画。テーマについて深掘りする巻頭記事に加えて、過去の誌面に載ったテーマに沿った料理を再録するというものだが、これがじつに好評だという。

考えてみれば、一般向けグルメ誌であるdancyuも、膨大な過去レシピから「マヨネーズ」とか「豚肉料理」とかのテーマで抽出したものをムックにして出しているが、それが売れている。ひとつのテーマで切り出してみると、また違った見え方になるのだから、これはとても意義がある。今回の野菜特集の巻頭知識編は、僕もすこしアドバイスをしているので、ぜひご覧いただきたい。

で、それはともかく今回の僕のインタビュー連載「やまけんが聞く!」は、あのイナダシュンスケさんである!

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誌面のプロフィールカットは別のものなのだけど、個人的にはこちらを気に入っているので(笑)。

稲田さん、どうやら僕と同じ学年だ!手に持っているのはエリックサウスの冷凍カレー。じつは僕、このエリック冷凍カレーを食べている。店の味そのまんまで「これ、マジで旨い!」と驚いた。

そして画面中央右にある本が、大ベストセラーとなった「南インド料理店総料理長が教える だいたい15分! 本格インドカレー」。

これはカレーレシピ界の大傑作! といってよい本だと思う。この本の最初に書かれている「基本のマサラ」を作って、サバ缶カレーをつくってみて欲しい。ちょっと驚いちゃう美味しさが、ほんとうに「だいたい15分」でできてしまう。それに、この本を読んでカレーをつくると、「あ、こうやって応用していけばいいのか」という、いわば「スパイスカレーの公式」が身につくようにできている。

うちにはいま、この本に書かれている「基本のマサラミックス」を、空いたスパイス瓶にぎっちりと作り置きしてある。お弁当を作る際に鳥手羽に塩をして焼いているところにこれをパパッとふりかけるだけで、最高にご飯が進むスパイス手羽先になってすげー便利。

カレーをつくる際、一回ごとにスパイスを混ぜる手間がかかるわけだが、最低限使うであろうスパイスはほぼ決まっている。ならば、それらを等量ずつ混ぜておき、突出させたいスパイスだけを後で加えるという方法は、実に効率的なライフハックである!稲田さんありがとう!!!

そういうわけで、なんか大活躍してる同期に会いに行く気分で、渋谷駅から徒歩5分(ヒカリエを出ると早い!)のエリックサウス マサラダイナー神宮店へ。

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ここを入って上がって下さい。

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インタビューでは、超・恵まれた美食家庭環境で育った幼年期と大学時代や就職、現在の円相グループで仕事をする経緯などについて聞いているので、ぜひ記事を読んでいただきたい。

話しを聞いていて「あーやっぱりな」と思ったのが、稲田さんの地頭のよさだ。だってこの人、「勉強が嫌いで」といいつつ、京大卒ですからね。とにかく地頭がよくて食べることと料理が大好きな人ってのは、その料理に対してすさまじい才能を発揮するのだ。

稲田さんがすばらしいと思うのは、料理をロジックに落とし込む力だ。現地の味を変にローカライズすることなく、それなのに日本人に受け入れられる味を「発見」し、それを現場がブレずに調理できるようオペレーションに落とし込んでいくということに長けている人なのである。先掲の本にある「南インドカレーの設計図」をみればそれがわかる(みんな、買って読もうね!)。

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今回、なんと生ノート(!)の設計図を見せていただいたのは、なんとも僥倖であった、、、レアだぜこれ!

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そんな稲田さん、ちょうど3月に新刊が出る。もちろん同じ柴田書店から。担当編集は、このアジア系の本を大ヒットさせ、いまノリにのっている井上さんである。

この本の中に載っている、冷蔵庫にあるあまり素材だけで作ることができるカレーを、実際に作っていただいた! 専門料理誌面でもプロセスカットがあるが、白黒なので、カラーで再掲しよう。

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「こんなふうに、店の冷蔵庫にあまっていた端材などを材料にしちゃいます。」

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スパイスはこれ。黒胡椒がたっぷり!で、稲田式カレー作りで重要なのが、「計量」である。

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きちんと計量して、「これが加熱して●●●グラムになったら完成」という考え方がとてもわかりやすく、ブレがないのである。

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この段階で油も入っているので、あとはそれを炒めていく。クミンなどスタータースパイスを底の方に入れ、最初低温で火入れをすれば擬似的なテンパリングにもなる。かなりこの方式、おすすめである。

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ある程度いたまったらココナツミルクを入れ、、、

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はい、計量。何グラムになっていればいいのか等はちゃんと本を買って読んでくださいませ。この本はぜったいにお得ですよ、買って間違いなし。

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水と櫛形切りのトマトを加えて、、、

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あとは煮込むだけ!

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もちろん、仕上がり目安は計量をして決めるので、味はばっちり決まるのだ!

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完成したのがこれである!

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とっても、とてもこれが冷蔵庫のあまり食材を使ったものとは思えない出来である!

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もちろんいただきましたよ。ビリッと効いた辛みにココナツミルクの甘みが相まって、ヒーハー言いながらおかわりしまくってしまった!

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こちらは、先月のマサラダイナーのお料理。詳しくは「専門料理」に解説しているのでご覧下さい。

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エリックサウスは、やはり八重洲地下街のあの繁盛店を思い浮かべる人も多いだろう。僕もあそこのミールスでの無限カレーが好き(笑)なのだが、ここ神宮前店のマサラダイナーでは、落ち着いてランチもディナーもコースで楽しめる作りになっている。

そして、稲田さんのすごいところは、さきの魚料理のような手の込んだ料理についての解説をバッチリ用意していると言うこと。

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みてよこれ、何ページ!?っていうくらいにかき込まれている。

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これは、エリックサウスを訪れる人の何パーセントになる「上級者」むけのもの。マニアックな情報をさりげなく置いておく。そうすると、上級者はなにもいわれなくてもこれを読み込んでオーダーするし、初心者はこんな文字情報はスルーして、写真入りのおすすめメニューを頼むので、「事故」が起こらない。これは実に面白い設計である。ただしその初期値を間違えると悲惨なことになる。それについても記事をご覧あれ。

ということで、「専門料理」3月号と、稲田さんの二冊の南インド料理レシピ集、強力におすすめします。言い忘れたけど、レシピ二冊目には、「えっそれでいいの?」と驚くくらい簡単で美味しい基本のスパイスミックスのレシピが載っていて、ビビりました。レンチンで1アクションで作れるカレーも載ってるしね。時短がいいことかはわからないが、時短でおいしくできるならそれは正義。ぜひ読んでみて下さい。

稲田さん、こんど飯ご一緒しましょうね!

情報追加:

こんなイベントが開催されるそうだ!