ヴィーガン料理が話題を呼ぶ杉浦仁志シェフには注目しているのだが、いま彼の単独の店はない。表参道のブルーグローブカフェで彼の料理が食べられたのだが、コロナ禍の影響もあるだろう、現在改装中でリニューアルする予定だそうだ。
そんな中、とある会社さんとの会合でどうしても杉浦さんの料理を食べたいよ!とリクエストしたところ、「では、こちらのお店でいかがでしょうか」と打診されたのが、ONODERAグループの総本山といえる銀座・歌舞伎座ちかくのビル9階に入っている「MAKIYAKI GINZA ONODERA」だ。
この、小野寺ビルから目を転じると、、、
向こうに歌舞伎座が!
そう、杉浦シェフはいま、この小野寺グループの一員なのである。
この薪焼きステーキをメインとするお店のシェフが、フランスで学び、カンテサンス~ティルプス~傳~ワカヌイというきらびやかな経歴を持つ寺田恵一シェフ。その二人の料理を交互に味わうという趣向が実現した。
もちろん、とある会社とも入念にコロナ対応を打ち合わせし、人数を半分にしてお店は貸切で、アルコールも無し。モクテルのペアリングを出してもらうと言う形でのディナーである。
寺田シェフ、華やかなイケメンですなあ。埼玉県狭山市の出身だそうで、同郷のなじみ深さあり。
薪窯はこのように店の最奥部中央にドドーンと鎮座し、温かな光を醸している。全員が揃うと、支配人による店の説明、シェフの紹介があり、照明が落ちてこの薪火がボウッと浮き上がる演出。劇場型のレストラン、よいね!
日本語記載が寺田シェフ、アルファベットが杉浦シェフというメニュー。堂々12皿の充実ぶりである。
シャンパンや白・赤ワインのニュアンスを模したモクテルのできもよし、単なるソフトドリンクよりも華やかに、食欲を増進してくれる。
まずは、海苔を生地に入れて表面はカリッと、中はふわっと焼き上げたワッフルが登場。
■オシェトラキャビア、海苔のワッフル
ほんとうにカリッサクフワッというワッフルの食感、たちのぼる海苔の香り、そしてキャビアの塩気と魚卵の旨味、香草のアクセントがとてもよい。食欲がますます喚起される!
つづいてはでました、ロシア人にしかみえない純・日本人杉浦仁志シェフによる、フムスを挟んだヴィーガンアミューズだ。
■Prepare
蝶の飾りはジャガイモです。こういうのが嬉しいね。
■アオリイカ 山ウド 新タマネギ
魚も出るのが嬉しい。フレンチのそうそうたる店を経た寺田シェフなので、何が出ても安心できます。
「ただいま焼き上がりました」と出されたのは、もちろん薪で焼かれたパン。
全粒粉、ナッツなども入り、賑やかで美味しいパン!手の入ったバターもすばらしい。隣のお客さんが一口たべて「あたしこれ、もう一枚食べる」と即座に声を上げていた。
さて、ここで杉浦シェフの得意技炸裂。
■Soil
表参道のブルーグローブカフェで出されていた、彼のシグネチャーディッシュ。あたかも土壌のように、ゴマの表層をほるとカボチャ、豆腐、紫キャベツなどさまざまな食材の層が重ねられ、それらの味わいが然一体となって深い満足感を感じさせる逸品だ。
「あああ~ これ、いままで食べたヴィーガン料理のなかで一番おいしいかも!」とお客さんにいっていただく。よかった!
■山菜リゾット 地蛤
この料理も美味しかったなぁ!
■Symmetrical
パスタのカネロニを模範にヴィーガンで仕立てた一皿。ラグーの肉要素は大豆ミートです。巧みなつくりかたでそう感じさせない満足感。
■唐津産甘鯛 桜エビソース
さっきから魚料理でてくるけど、素材も技術もすばらしい。薪焼きステーキの店と言わない方がいいんじゃないかって気もするくらいだ。
さーてでてきたぞ、謎の物体。
恐竜の卵?
じつはこれ、塩がま焼きです。
この塩竃がストロングで、なかなか割れない!
中身は、、、
あっ やっぱり
ビーツか!
こないだ樋口家でもいただいたけど、なんで塩竃で野菜を焼くときにビーツが選ばれることが多いんだろう、、、
「ビーツの葉で根を包み、塩竃焼きにしました。」とのこと。これに合わせるソースは二人のシェフの合作。
杉浦シェフは、80種以上というヴィーガンソースの組み合わせのなかから、マンゴーとニンジンのソースを。
「ただし、ビーツの味と香りとマンゴーとニンジンのソースをなじませるために、ブリッジフレーバー、つまり橋渡しをする味わいとしてレモンの香りを移したオイルをうすく引いています。」とのこと。
たしかに、レモンオイルをつけたビーツをマンゴーニンジンソースにつけて食べると、実に相性がよく感じるのだ。この技法、興味有りである。
いよいよメインへ、、、
本日のお肉は、くまもとあか牛の「阿蘇王」。この店のスーシェフが熊本出身ということもあって、あか牛肉はよく使用するらしい。
■熊本県産あか牛サーロイン
実をいうと、薪焼きというイメージから、表面はバリッと焼き上げて、肉汁じゅわじゅわの仕上がりを予想していた。しかし、やはり寺田シェフはカンテサンスに学んだ人であった!
「肉を火に当てて、火から外して奥の棚に置いて休ませ、、、を繰りかえして仕上げました。担当は熊本出身のスーシェフです!」
という、じつにおちついた、肉汁が一滴も染み出ない仕上がり。繊細な味わいのステーキです。赤坂ヴァッカロッサが日本で始めた薪焼きスタイルとも大きく違うアプローチ。肉焼きの道は何本もあるね!とても美味しかったです。
デザートはまたヴィーガン料理人の技が映える。
この球体、薄皮になっているチョコレート卵殻のような中に、バラの香りのクリーム様のものが入っていて、一口でいただくもの。
美味しい!そしてフレグランス!
そして寺田シェフからは、薪焼きで火入れしたバスクチーズケーキ!
最後は、シェフの出身地の名物、狭山茶の三番茶を、薪火で焙じたほうじ茶をいただく。
いや、すばらしい一時でした。
惜しむらくは今回、無理を言って引き受けていただいたので、レギュラーでこういう企画があるわけではないこと。でも、希望する人はぜひお店に相談してみてください。
会合に参加していただいたみなさんもご満足いただけた様子(ご迷惑になるといやなのでお名前は出しませんが)。コーディネートした顔が立ったというものです。杉浦シェフと寺田シェフ、お店のみなさんにも感謝。
この店はまた再訪したいところですね!ごちそうさまでした!!!