マニアの多いハンバーガーの世界だが、国産の和牛肉を100%使用したハンバーガーというのはなかなかに難しいものだ。第一に価格が壁となる。よく「国産牛を使っているからって、1500円もするハンバーガーなんて」というような書き方をしている人を見かけるが、いやいやそれは妥当な価格でしょ、と思っちゃう。だいたい、グルメバーガーの世界ではオージービーフやUSを使用して1200~500円周辺というのが通常でしょう。牛肉の価格を甘く見てはいけません。
次に、国産牛つまりホルスタインのオスまたはF1を使用するのと和牛と呼ばれる4品種を使うのでは味わいに違いが出る。これはもちろんどちらがいいというわけじゃない。乳用種には乳用種の味があるので、おいしいハンバーガーを設計することはもちろん可能だ。逆に、和牛品種で作るから絶対に美味しくなるとも限らないだろう。
なーんて大上段から構えたけど、これはもう無条件に美味しい!というハンバーガーについて。
むちゃくちゃかっこいい雑誌でありオンラインメディアであるRiCEマガジンはご存じだろう。
このRiceの編集長である稲田さんがいきなりメッセンジャーで「やまけんさんが撮った短角牛のポスターがバーンと飾られてるハンバーガー店にきてます!」と写真を送ってくれたのだ。それを観たら、本当にバーンと僕が撮った短角牛のポスターがドカンと貼られている。
これは行かなきゃな、、、
ということで、週末にそのお店 MSECA TIMES のある谷中にいってみたのである。
なぜかフォントが猫っぽい形の日暮里駅からお散歩。
谷中銀座の商店街を抜けていきます。
ご高齢のかたも八百屋やメンチカツ屋を覗いている模様。谷中銀座を抜けたら左へ曲がってよみせ通りへ。
「よみせ通り」の門がある入り口に、その MUSECA TIMES があります。
ほら、店の真ん中やや左に、いわて短角牛の公式ポスターが!
これ、山形町のエリート牧野で母子放牧中の牛たちを撮影した写真です。自分の作品がこうやって飾られているのをみるととても嬉しいものですねぇ!
「こっち側にもあるんですよ!」とお店の方が。
あっと本当だ、ハンバーガーを作っているその真裏に飾ってくれていました。
遅ればせながらこんにちは!オーナーシェフの村口満世さんです。すでに僕の「炎の牛肉教室!」は買って読んで下さっているそうなので、「熟成肉バイブル」を差し上げました。
「いいんですか!?うれしいなぁ。「炎の牛肉教室!」すっごい面白くて、何度も読んじゃいました。それで、短角牛のお肉を使いたくなって、岩手県の業者さんにお願いして、経産牛のお肉を優先してとらせてもらっているんですよ。」
なんと、経産牛を使ってくれているのか!それは、僕の本をよーく読んだ証拠です。
「いや、本当に美味しいです。ただ、短角がどうしても手に入らないときもあるので、黒毛を混ぜることもあるのですが、今日は100%短角ですよ!」
おおおおおおおおお、やった!
なんと4月26日にプレオープンとのこと、つまりまだオープンしたてですな。でも、ひっきりなしにお客さんがきて、持ち帰りで買っておられる。
クラシックバーガー 1400円
チェダーチーズバーガー 1550円
ステッペンチーズバーガー 1550円
アボカドバーガー 1600円
ダブルバーガー2000円
ポテト S300円 L500円
これに、準備が整えばステーキやサンドイッチが追加されるそうだ。
さらに、5月14日からサンドイッチが発売。
イタリア産プロシュートサンド 800円
イタリアンハーブチキンサンド 600円
今後、短角牛のローストビーフサンドも出るらしい!
「じつは私、この店のまえにもサンドイッチ専門店をやっていたんですが、心機一転でハンバーガー店を開店しました。」
サンドイッチのプロだったのか!なるほど、それでこの端正なサンドイッチが出来上がっているんだな、、、
いやしかしまずはハンバーガーでしょう!ということで、さっそくオーダー。
ぼくはパティダブルのダブルバーガーにチェダーチーズを追加!一食一会ですからねぇ、頼みうる最大最高のものをたべたくなっちゃう。それとポテトLを頼みました。
オーダーがはいると、左手にある丸めた状態のパティをグリルの上に置き、右手前に写っている、鋳鉄製のミートプレスでギュッと押してパティに成型。
そして、しっかり表面に焼き色がつくよう焼いていく。
僕のオーダーはダブルパティにチェダーチーズなので、こうやって蒸し焼きに、、、
ここでカリッと焼いたバンズにマスタードを。
この店のグリーンは、ベビーリーフとベビーレタスを、「おお!」と声が漏れるほどにどっさりと乗せる。
厚めにカットしたトマトを載せて、、、
トマトの上にソースを。
ここに焼き上がったパティを乗せる!!!
はい、できました~!左がスタンダードバーガー、右がダブルバーガーにチェダーチーズ追加!
えーと、パティの分量がハンパじゃありません。これだけで150g以上はあるよね、おそらく。
二階にイートインもありますのでご安心。コロナでみなが回避しているせいかほぼ独占状態でしたので安心して食べられます。
用意されているのはハインツのケチャップとマスタードのみ。シンプルです。そうそうポテトもLサイズなんですけど、すっげ~盛りなので、2人だと腹がいっぱいになって食べきれません。Sで十分だ!
じつをいうとハンバーガーを上手に食べるのは妻のほうが数段上。かなり強めのグルテンアレルギーであることが判明して以降、なるべくパンは食べないのだけれども、月イチくらいでグルテン消化酵素を飲んだ上で、食べている。
「うん、、、これとても美味しい!とにかくパティが別物。それに食べてもイヤにならない脂。」と太鼓判。そう、妻はグルテンだけじゃなく油脂に敏感で、古い油や質の悪い脂を摂取すると調子がすぐに悪くなる。僕は鈍感なのでぜんぜん気づかないので(苦笑)バロメーターなのですよ。その彼女が「このパティ、美味しい!」というのだからこれは短角牛の肉の質がよいのでしょうな。
さて、、、
いただきます!
うごおおおおおおおおお
このハンパない肉感、すばらしい!
よくテレビで観る、タラタラと締まりなく フェイクとして出てくる肉汁(あれ、単なる水分だよね)はいっさい染み出ないストロングさ!ごく極く粗挽きの粒子も入っているにもかかわらず、ガリッとスジが噛むこともない。食べでがある食感なのに、硬いとは一切感じない。
「じつは、、、ネック(首肉)を低温調理したものを粗くカットして、ミンチに混ぜているんです。ミンチにはシキンボウなど色んな部位を使いますが、そうすることによって食べでがあっても噛みしめて食べやすい食感になるんです」
おおおおおおおおおおおおおおおおおお なるほど!!!
それはすばらしい工夫だ。ネックは牛の身体の中でもっとも動く部位で、味が濃くコラーゲン質もたっぷり含んでおいしい部位だ。ただし、一番動くからこそ筋肉も硬く、煮込み料理に使われることが多い。それを低温調理で柔らかくしたものをいれるという、現代的なアプローチ!すばらしいではないか。
ちなみにこのパティには白だしが加えられて調味されているそうだ。なるほど、とても清い味わいだと感じるのは、ミンチと脂、白だしという研ぎ澄まされた設計だからか。
しかもですな、バンズがまた美味しい。フワフワではなくしっかり食感と香りのある存在感ゆたかなバンズ。
このバンズも文京区白山の名店で、酒種酵母で発酵させた特注バンズなのだそうだ。
他には、リアルマヨネーズ、ポメリーのマスタード、オーガニックケチャップとレリッシュを合わせたオリジナルタルタルソースという素性になっている。
ブラボーでしょう!
いまのところ、グルメハンバーガーで愛すべきスモーキーなベーコンやBBQソースを使っているものはない。あくまで短角牛の旨さが最前列に表現される味わいのハンバーガー。だから、ひねりのきいた味を求めるとちょっと違うかもしれない。ここはいまのところ、短角のパティを中心に据えたハンバーガー店である!
ちなみに、、、
欲張りな僕はダブルバーガー&チェダーチーズを頼んだけれども、次に行く時はパティ1枚のチェダーチーズバーガーにしたい。というのは、何度もいうようにパティはとても美味しいのだが、2枚あるとハンバーガー全体のビルドのバランスとしては、店主の出したいデザインではない気がする。そういうと、ストレートバーガーを食べた妻はうっしっしと笑って「そうなんだよ、けっきょくその店のスタンダードなのが一番美味しく出来てるんだよ」とサラッと言うのであった。
ダブルパティはすっげー絵にはなるけどね!
それにしても満腹!
「あ、やまけんさん、ご著書にはサインをお願いします!」ということで、、、
ポスターにもサインをいれてまいりました。
MUSECA TIMESのハンバーガー、とても美味しいのでぜひ食べに行って下さい。そうそう、この価格ですが、やっぱりどう考えても安いです。国産牛ではなく和牛ですからね、この価格が高いという人は、お肉のことがわかってない人です。さらに、肉だけではなくバンズも野菜もおいしい。そして、控えめなソース類でパティの味わいが全面に出るようにデザインされたビルド。
お薦めです!
あ、入荷状況によって短角牛100%ではなく黒毛の肉が混ざることもあるそうですが、それも美味しいはず。次回が楽しみになってきました.村口さん、美味しかったですよ!
うれしくなって、根津・千駄木を楽しみつつ御徒町まで散歩。
横尾忠則のY字路シリーズに出てきそうなファイブ・コーヒーにてお茶。
美味しいブラジルでした。ダブルナチュラル、紅茶みたいなフレーバー。
この辺に住んでも楽しそうだなぁ、、、佳い物件ありますかね?