やまけんの出張食い倒れ日記

久松達央くんの超力作「農家はもっと減っていい 農家の「常識」はウソだらけ」は大変革を目前にした日本農業の構造変化について緻密に分析された書。でもこのすんげー表紙だけで買ってもよい!

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Nikon Z9 + MC105mm

久松君は同い年で、同じ時期に慶應に在籍していた(学部は違う)。卒業後、繊維の帝人に務めてから有機農業に転換したという異色の存在。ていうか、有名なのでみなさんご存じですよね。そう、あのエロうま野菜の人です。

力作です。農業やってみっかという人、ぼんやりと「事業に成功したし、これからはSDGsだから農業ビジネスをやれば格好いいぞ」みたいなこと思ってる人は必読。きっとがーんと頭を殴られるでしょう。

また、SDGsといったときに反射的に「農家さんかが捨てている規格外野菜を売れば世のためになる」と考えちゃうような学生さんも読んだ方がいい。そんな、シロートが考える農業に対する幻想がすべてぶっ飛ばされることでしょう。

詳しい内容はこれを。「はじめに」が公開されています。

久松達央著『農家はもっと減っていい』より「はじめに」と目次を公開します。

20数年前から農業界隈では「就農者の半分以上が60代以上であり、高齢化でもうすぐ農業が、、、」と言ってきた。僕もだ。現実にはいまだに70代農家の中には、特権とも言える農地を保持したいがためにお遊び程度に作物を育てるという立ち位置の人も多い。対して、国の根幹である食料を主体的に生産する担い手は経営を意識した事業体に移行しつつある。国としては、70代以上の既存農家が自然にいなくなってからが農業構造改革の本番だと考えているのだろう。

じゃあ、その大変革(久松君は「大淘汰」と書いている)の前である今、どのように今後を見通すべきかというところを久松君は書いている。その視点も、一般的な慣行農法の立場も、彼が取り組む有機農業の側から観ているところがユニークだ。日本の有機農業は1970年代から始まったが、その頃に生まれた彼は、有機農業第三世代と言える立ち位置だろう。その彼の有機農業論は、少しシニカルだけど、現実的だ。理念先行型の有機農業論とはまったく違うものの見方をぜひ読んでみるといいだろう。

しかし!

この本の最大のポイントは表紙だな。

一般に、新書の表紙はだいたいフォーマットが決まっている。光文社新書ってホント地味な見た目ですよね。それがなんですか、この挑戦的な写真は。カメラマンの視線からいわせていただくと、この写真は畑にスタンドをたてて盛大にスロトボを炊いて、日中シンクロという技で撮影されている。青空と、トラクターにまたがる久松君のコントラストがバシッとしてるでしょ。

久松くんに聞いたら、いつも久松農園を撮影してくれている隣町のカメラマンに頼んだとのことだが、さすがだ。

光文社もこんな、通常規格の表紙をかなぐりすてて予算かけるとは、売れると踏んでるな。すでに3刷がきまったそうだ。僕の本もそんくらいいけばいいんだけどね、うらやましい(笑)

ということで、まだお買い求めいただいていない方に、久松君の本とともにお買い求めくださいということで、リンクおいときます。

久松君、たまにはリアルで会おうぜ。