やまけんの出張食い倒れ日記

あのNHK「列島縦断・宝メシグランプリ2019」に登場した地とうきびの花粉料理に感動する!花粉と書いて「かふん」じゃなくて「はなこ」と読むんだよ!その美しき料理のお味は!?

2019-12-20-13-36-27_1

いやもう本当に気になっていたのだ。昨年10月にNHKで放映された「列島縦断・宝メシグランプリ2019」の審査員として、番組に登場した料理は全て食べて審査したのだけれども、その中でもっとも印象に残ったのが、愛媛県の久万(くま)高原町で伝承されている地とうきびを使った花粉(はなこ)料理だ。

列島縦断・宝メシグランプリ2019の私的な審査結果について
-  http://bit.ly/35yl47L

僕の母が愛媛県出身ということもあって、愛媛の郷土料理はわりとわかっているつもりだったけれども、久万高原には行ったことがなく、この辺で地とうきびの栽培が続いているとは知識の上でしか知らなかったのだ。番組では干した地とうきびを手回しの素朴な機械で脱穀するさまが映されており、「おおおおっ」と前のめりになった。あんなに取材しているのに、映像は10分弱の尺しかなく、大変もったいない。ひとつの地域40分くらいの尺が欲しいと思ってしまった。

その後、上記のエントリを書いたところ、なんと番組の取材に協力したという久万高原町役場の岡さんから連絡をいただいた。

先日NHKで放送された「宝メシグランプリ」での審査、大変ご苦労様でした。
当日、私共の町から「花粉ねり汁」を出品させていただけるということで、番組に出演した渡部と私の2名で、ロケから本番まで対応させていただいたところです。番組では最終的に4位という評価もいただけましたが、何より有難かったのが山本様にブログでご紹介いただけたことてした。
あの在来種のとうもろこしは我が町でも希少な品、ひきわりや花粉に至っては作っておられる方も非常に少ないのはご存じのとおりですが、町や県も保存、伝承に向けてさまざまな取り組みをしてきた中で、今回NHKさんに着目していただけたのは本当に励みになりました。本当にありがとうございました。
(山本様がご興味を持たれた脱穀機は私の伯母宅で借りてきたものでした)
もし今後、何らかの機会に在来種のとうもろこしやひきわり、花粉などが必要になりましたら、その節はぜひお知らせください。こちらからよろこんで提供させていただきます。また、情報提供、種の手配なども必要でしたらあわせてご協力させていただきます。

いやいや、こちらこそ大変貴重なものをいただきまして光栄でした、、、えっ 花粉とかもいただけるんですか?それ本当!?

すぐさま岡さんに連絡して、僕の関係するメディアいくつかで取り上げさせていただくことにして、お送りいただいたのが冒頭の写真に写っているものだ。

2019-12-20-13-49-23_1

これが乾燥した地とうきびである。若い人はとうきびといってもわからないかもしれない、トウモロコシのことである。ただし、みなさんが想像し、夏に茹でて食べているであろうスイートコーンとはまったく違う。スイート種とよばれるあのジューシーで甘いトウモロコシは、突然変異で見つかった品種群だ。

では、突然変異する前のトウモロコシって何? それは、穀物としてのトウモロコシのことだ。もともとトウモロコシはデント種、フリント種、ワキシー種といった種類があって、そのどれもがデンプン質に富み、収穫してしばらくするとガチガチに硬くなってしまうものだった。でん粉の塊のようなものだから、干しておけばカチンコチンの穀物と化し、長期間保存できる。熊本や四国の山間部にいくと、軒先に紐で結わえて吊してあるのをみかけた人もいるだろう。あれがその種のトウモロコシだ。

下の写真を観て欲しい。

2019-12-20-13-53-11_1

つるんつるんのピカピカ。つまりガラス質である。この地トウモロコシは岡さんが来年に播種するための種として保管しているものを、特別にお貸しいただいた。見事にカチンカチンに乾燥している。

この状態のトウモロコシを長時間茹でるまたは蒸かしたものを、高知市の朝一で購入することができる。僕は何度かいただいた。

だが、本来こうしたデンプン質の穀物は、ひきわりにしたり微粉に加工して食べていたはずである。そのひきわりトウモロコシと、「花粉(はなこ)」とよばれる微粉加工したものの双方を送っていただいた。

2019-12-20-16-06-19_1

いや、本当に感動しちゃうよね!

2019-12-20-16-00-33_1
Nikon Z6 + PC-E 85mmf2.8

これがひきわりにした地とうきび。アメリカでコーングリッツと呼ばれているものより粗い挽き加減だ。ツブツブ感が強く残っている。

これをさらに細かく挽いた「花粉」が、下の写真手前の粉。

2019-12-20-16-05-01_1

指で触るとふわふわ、サラサラと心地よい触感だ。

ひきわりトウモロコシのほうは、例えばハレの日のためのお餅に練り込むそうだ。

2019-12-20-13-42-47_1

これは、特別に正月よりだいぶ前なのに、とうきび入り餅を搗いていただいた。ご覧のように地とうきびの黄色が美しいが、岡さんによれば下記の通り。

地とうきびもちですが、昔はもち米が貴重で、それこそ地とうきびで かさ増ししていたため、
もち米2:とうきび1ぐらいの割合(体積)で 作っていたようですが、現代人の口には合わないので(笑)、我が家の今の 時代の配合割合(4:1)でついてあります。このくらいが食べやすいです。

とのこと。そのままフライパンで焼けばいいのかと思ったら、岡さんからこれまたダメ出しが。

普通の餅と違って、このまま焼くと中のほうが柔らかく焼けません。レンジで30秒ほど温めて、そこからは5秒くらいずつ温め、全体的に柔らかくなったところで、焼くのがよいです。

ということで、細心の注意を払ってレンジで内部まで温めた上で、フライパンへ。

2019-12-20-11-07-35_1

こちらは自宅で、トースターにいれて焼いたもの。

2019-12-21 08-28-51

こんな感じで、ひきわり地とうきびの存在感がとても強いみためどおり、触感もプチ感があって楽しい。

2019-12-21 08-29-33

しっかり噛まずに呑み込んでしまうとわからないが、じっくりと噛み込んでいくと、トウモロコシのでん粉の甘さと香ばしさが感じられる。いや、とても佳いものをいただいてしまった!

2019-12-20-16-03-23_1

そして、花粉(はなこ)である。

ぜひ、あの「宝メシグランプリ」でたべた花粉ねり汁を食べてみたい!と思ったら、なんと煮干し出汁と地元の素材で作ったつゆを送っていただいた。作者は、番組に登場して実演してくれた渡部さんである。ありがたや、ありがたや!

2019-12-20-10-18-23_1

これに鶏肉を足して軽く煮て、、、下の写真、ミックス光でホワイトバランスがおかしくて、マズそうに写ってるのごめんなさい。

2019-12-21 08-13-25

ここに花粉を入れるわけだが、、、

2019-12-21 08-14-02

そのまま振り入れたらダマになっちゃう。だから、水または汁のだしで溶くのがよいと。

2019-12-21 08-14-19

しかし、量の加減がまったくわからない。割りとさらさら水っぽいし、これくらいでいいかな。

2019-12-21 08-15-55

鶏肉、ごぼう、干し椎茸の汁に投入!

2019-12-21 08-17-01

火を入れていると、いきなり粘性が強くなり、とろみが着いてくる!

2019-12-21 08-23-02_001

あれあれあれあれあれれれれ? ドロドロになってしまった!

2019-12-21 08-26-05

この写真を岡さんに送ったところ「あー 入れすぎです」と言われてしまった!スミマセン!!!

2019-12-21 08-27-00

でもね、、、

これがとても美味しい!

煮干しベースの汁に干し椎茸の風味が乗ったおだやかな旨み、ごぼうの土臭い薫りを地とうきびの花粉が吸い込んだうえで、花粉がふんわりした甘さを発揮している。花粉によってとろんとした部分には、片栗粉や葛では出てこない甘やかな香りがある。地とうきびの香りとしかいいようのない優しい風味だ。本来のトウモロコシはこうした使い方をして、このような優しい味わいを楽しむものなんだということがよーくわかる。

メキシコ人がトウモロコシ粉で焼いたトルティーヤを愛する理由がわかる気がする。

これは本当に心の底から佳いものをいただいた!

2019-12-20-16-06-42_1

予告しときますが、今年ぼくはこの地とうきびを自力で取材に行くことに決めました。こんなに素晴らしい食文化、どうしてもこの眼でみてみたい。博士論文が終わったら、本格的にスケジュールを決めようっと。

久万高原町の岡さん、渡部さん、ぜひご案内をお願いいたします。本当にごちそうさまでした!

なお、あさっての日曜日朝5:32分より、NHK第一ラジオ「マイあさ!」の僕のコーナー「全国食べ物うまいもの」にて、この地とうきびのことを紹介します。どーぞお聴き下さい!(聞き逃し放送もありますのでご安心)

■マイあさ!
https://www4.nhk.or.jp/my-asa/

(コーナー)全国食べものうまいもの

全国の農産物生産現場に足を運ぶ食生活ジャーナリストの山本謙治さんが、旬の食べ物と生産者の声を紹介する“食べ物紀行”です。