「ねぇやまけん、いまブラに来てるの!? 私のワイナリー、食科学大学から30分だよ! ご飯食べにおいでよ!」
そんなメッセージが入ってきたのは、食科学大学にて講義を受けている最中のこと。 えっ、マジ? と声に出そうになる。
宮﨑県が誇るスペシャル食品スーパー「Foodaly」を営み、ワイン部門を統括していた理恵ちゃんだが、第二の人生をイタリアで過ごしているとは識っていた。でもそれってブラの近くだったわけ!? こんな出来すぎた巡り合わせが、僕の人生ではよくあって嬉しい。
食科学大学での最終講義を終えて、学生達は宿へ移動し最後の夜を愉しむ行程だったが、僕は一人大学に残る。歴史的建造物の中で一息ついていると、向こうの方から、陽のエネルギーに満ちた光が、、、
「やまけーん!」
理恵ちゃんだ!!! いやホント、こんなこともあるんだな、、、
そして、理恵ちゃんのパートナーであり、ワイナリーである「カッシーナ・リエーテ」を営む佐々木ヒロトさん登場!
「初めまして、ヒロトです。」
なんだよ、雰囲気あってかっちょいいなあ、理恵ちゃん、幸せそうだ。
ヒロトさんはもう30年以上イタリアに居て、イタリアの食品やワインを日本の輸入商社などにコーディネートしたりプロデュースしたりしてきた方だという。車の中でポツポツと話を聞いているだけで、イタリアの食文化に関する造詣の深さが伝わってくる。
「といっても、僕がずっといたのはローマ。北の方に来て、食文化はかなり自分の好みと変わっていますけどね。」
そう、この辺はなんといってもあのバローロやバルバレスコといった、イタリアワインの最高峰の園地があるところ。
車窓からの風景どこをみてもブドウ畑があるのだ。
「私たちのワイナリーは、バルバレスコの隣の区域なの。カスティリオーネ・ティネッラという街になるんだけど、景色に惚れちゃったんだー。まあ、バローロやバルバレスコは到底買えなかったんだけどね(笑)」
いやいやいや、どっちにしても素晴らしい場所じゃないかぁ
さて車は石造りの古い建物が並ぶ小高い丘の町へ。
「やまけんさんに何を食べてもらおうかと思ったんだけど、やっぱりこの地の肉だよね。ってことで、僕たちがいつも通っている肉屋へ行きます。二店舗あって、一軒はビステッカにしておいしい肉を出す店、もう一軒は生肉が美味しい店です。」
ま、マジですか! 最高ではないですか、、、
一軒目、豚ちゃんがシンボルマークの街の肉屋さん。
ショーケースを埋め尽くす、精肉と肉加工品。日本の精肉店の、薄切り肉が並ぶショーケースとはまったく違う光景だ。
食肉加工品はサルシッチャ(ソーセージ)やハムだけではなく、この店ならではの手間をかけたものも多い。
「たとえばこの↓肉、ワインにつけ込んであるんですよ。」
ええええええええええええええ、そんなの日本でみたことが無い。かたっぱしから食べたくなってしまう、、、
素晴らしい肉が並ぶなか、入り口横にひときわ輝く存在が!
「ちゃんとここで、肉を熟成して売っているんですよ。何種類かあるはずです。ちょっと店の彼に聞いてみますね」
と、イケてる兄ちゃん出てきて肉の説明をしてくれる。
「これはファッソーナのメスの25日熟成で、下にあるのは4歳のキアニーナ経産牛の肉だね。どっちもおいしいよ!」的な感じだったと思う。
ここがフィレンツェ近郊ならまちがいなくキアニーナをいただくところだが、ここはピエモンテである。ピエモンテーゼ種のなかでも選りすぐられたファッソーナを食べなければ、意味が無い! ということでファッソーナを所望した次第。
指2本分の厚みで、とヒロトさんが指示し、そこからノコで切り出してくれる。いや、マジ最高。
「この店はね、肉だけじゃなくてチーズもパスタも、店頭に並んでいるものはすべて一流です」とヒロトさん。自宅用にチーズなど買いました。
「さあ、もう一軒の店に行きましょう!」
車での移動中に、理恵ちゃんが「わーーーー観てみて!」と。
なんと、虹だ!
「ちょうどあの虹の根本あたりが、私たちのワイナリーなのよ!」
そ、そんなこと、あるのですか!? 吉兆もいいところである。
さて、こちらの精肉店は小綺麗な造り。
精肉ラインナップもあるが、惣菜的なものも多い。日本でもよく観るタレ漬けされた肉も、ローズマリーやスパイスが絡んでいて、おいしそう。
「この鶏肉がおいしいんですよ。我が家では唐揚げなんかにしてますけどね。」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
旨そうな鶏! なお、日本と違いヨーロッパでは乾式の食鳥処理工程なので、水にジャバッと漬けたりしない。写真のように乾いた状態で売られるので、日本より熟成が効くし、凝縮感があって鶏肉がおいしいのである。
ここでもファッソーナ。内モモ肉をスライサーでカルパッチョ用にしてもらっていた。
「さて、家に行きましょう!」
と、高台を登っていく。
ほどなくして着いたのは、こんなパノラマが拡がる丘の上。
まさに、ブドウ畑の合間にお家が建っている!
いや、、、もう、、、なんて景色なんだ! しばし無言である。
中編につづく