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2006年08月31日

時間の重みが酒の深みになるのだ! サントリー山崎蒸溜所にてモルトの旨さとブレンドの神髄を観た! その2

13:30、書きかけだけど中途アップします(汗)
9月1日0時44分 ようやく書き終わった!
”カスク”つまりニューポットと呼ばれる蒸溜したてのウイスキーを詰める樽は、何種類かのオークかシェリーなどの木材の樽に仕込まれるのが普通だが、日本ならではの木材の樽に詰めることもあるという。なにせこの樽の中で、数十年、もしかすると100年近くも熟成させるわけだから、その樽の香りなどの成分が酒に大きな影響をもたらすことは間違いない。

そして、この蒸溜所には、日本ならではの木材で仕込んだ酒がある。後述するけれども、例えば通常は樽の材として使われることのないミズナラやスギなどの樽を使い、仕込んだモルトもあるのだ。そういった個性派も含め、サントリー創業者の思いがつまったカスクが、このだだっ広いスペースいっぱいに鎮座ましましている。中々にすごい光景なのだ。


このようにアクリルで中身をみえるようにしている樽があった。これは、何年のものかはわすれたが、つまり樽にいれておくだけで微細な穴から揮発・蒸発したりすることで、ウイスキーが目減りしていく様を表しているのだ。長く置けば置くほど熟成されてこなれてくるけれども、量が減っていってしまう。これぞエネルギー不変の法則のたまものか!?

さて町工場3つ分くらいの広く、そして涼しい、時の流れが停まったかのような一角に、格子で囲まれたスペースがある。そう、これこそがオーナーズカスクの部屋だ。オーナーによって選ばれたカスクが眠る専用スペース。

購入されたカスクには、誇らしげにその企業や個人名、チーム名などが書き込まれている。へぇ~、あの企業がねぇ、というようなものも多々あり、にやっとしてしまう。考えてみれば、たとえば企業が創業年度のカスクを一本買い、記念にそれを社員にボトリングして分けるなんてのはカッコイイ話だ。僕も、儲かる仕事をできるようになったらそんなこともしてみたいな、、、なんて思ったり。

オーナーズカスクルーム(っていうか檻(おり)だけど)から出て歩いていると、樽の中から僕の生まれ年(1971年)のものを発見!

「輿水さん、これ、買ったらいくらですか!?」

と訊くと、「う~ん、、、」としばし熟考ののち、「値段はつけられませんね」というお返事。

広報部のミラノ風伊達男・越野さんが説明してくれる。

「ここに並んでいるウイスキーは、全て個性が違いますので、それをブレンドしていくことで一定の味を生み出しています。ですから、一つ一つの樽がものすごい価値を持っているんです。ですから、オーナーズカスクに出している樽も、輿水チーフからすれば『おまえ達、売れなくていいんだぞ、売れ残れよ』って思っているはずなんですよ(笑)」

なるほど。ウイスキーのカスクとは、農産物における遺伝資源のようなものなのだろう。多様性に富む植物がたくさんあることで、何か突発的な事故である品種がなくなってしまっても、豊富な遺伝資源の中から代替作物を得ることができる。多様性を狭めてしまうと、それができず絶滅してしまうこともあるわけだ。ウイスキーにとって一つ一つのカスクこそが、標準的な守るべき味、そしてこれから作り出す新しい味の原資となるわけだ。どの樽も、手放したくないというのがホンネだろう。オーナーズカスク制度はそういう意味では、チーフブレンダーにとっては「お客さんが多くならない方がいい」サービスなのかもしれない。

さて永劫に続くかと思われるほどに広い熟成庫内を一通り歩き、陽光がまぶしくふりそそぐ外界へと出ると、そこは一転して美しい、動的な水辺が広がっていた。

「やまけんさん、これが山崎の水ですよ。」

蒸溜所周辺に数カ所あるという水の採取地から引いてある流れが、実に涼やかだ。
「山崎12年」を飲んだとき、すごくまろやか、やっぱり日本のウイスキーだなぁと実感するのだけど、それは水の違いによるものも大きいんじゃないかという気がする。蒸留酒だから軟水硬水だけでは決まらないと思うけど、麦汁の時点での成分抽出の度合いなどが微妙に変わるんじゃないか(というのは素人考えですが)。結果的に、ハイランドのスコッチと比べてみると、最初のアタックが強いハイランドと、一瞬あとから効いてくる山崎という感じなのではないだろうか。

輿水さん、どんなもんでしょうか?

なんてことを考えながら、静かでひんやりしたカスクの空間から、一気に陽の気が満ちる外界に出て、しばしみんなでボーッとするのである。

しかし ほんとに広報の越野さん、ミラノ風である、、、

さてカスクスペースを出てからぐるっと外周を回ると、いきなり公道に出て、その脇に神社がある。

「この蒸溜所内を公道が突っ切ってるんですけど、神社も昔からあるんです。よく、ここも敷地なのかって訊かれるんですけど、とんでもない(笑)」

しかしこれは山崎の旨さに貢献しているなぁ、と思う。

古来、神社仏閣は(特に神社は)村や集落の中でもっとも気の流れのよい場所を選んで建てられているものだ。事実、全国の神社の境内の生態系は、境内から出た外界と比べて気温が低く、生物の生息数も多いという調査結果を以前に見たことがある。

そんなクールプレイスである神社が蒸溜所の取水場内にあるのだ。好影響を及ぼさないはずがないではないか。

結構車通りの多い道を横切り、元の建物の横にある、極めてでかい樽のあるスペースへ。

「このクラスの樽はなかなか無いんです。ここのは、山崎以外のブレンデッドウイスキーの原料を入れたりするんですよ」

そう、当然ながら先ほど歩いてきた、静寂の熟成スペースに置いといたままでウイスキー製品ができるわけがない。運搬し中身をブレンド作業しなければならないわけだ。

「さて、それではいよいよ、我々ブレンド担当者が作業を行う部屋へご案内します」

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
とうとうブレンダーの巣窟へ行くのかぁ

階段を上り建物の中に入ると、ガラス張りの大部屋で20人くらいの男女が事務をしている。

「事務室ですか?」 と訊いたが、答えに思わずのけぞってしまった。

「いや この全員がブレンダーです。」

意外に多い!
年齢層もかなり様々な方がおられ、そして女性も多いんである。
ブレンダーの採用基準って何なんだろうか。ちょっと訊いてみたくなった。ていうかその場で訊くべきでしたね。

「さあ ここが我々がテイスティングを行っている部屋です。ちょうど、評価をすべて終えたところですので、自由にテイスティングしていただいて結構ですよ」








もう、圧巻である。テーブル上にところ狭しと並べられたモルトの列。全て瓶には年代と樽の材質などのデータが記入され、それがグラスに水割り(おそらくトゥワイスアップ)にされた状態でおいてある。揮発しないように蓋をされた状態で静置してあるのだ。

何種類かテイスティングさせていただくが、まあ僕のごとき素人が知ったかぶりをしても始まらないので、詳細については控えたい。しかし、外観が同じような濃度の琥珀色のものでも、香りと味は全く違うというものばかりだった。正直なところ、水割りにしているとはいえ、蒸留酒のテイスティングはかなり舌に負荷がかかる。5種類くらい舐めたところで、ちょっとよくわからなくなってきてしまった。

「輿水さん、ぜひテイスティングのお作法を見せていただけませんか?」

とF岡さんがいうと、

「特に作法なんてないんですけど、、、ま、最初に香りをしばらく味わって、、、」

とグラスを持った瞬間に、温和そのものの輿水さんの顔がビシィッとチーフブレンダーの顔に変化した!

ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
かっこいいぜ、、、
俺もこれからは、味がわかるかどうかはともかく、テイスティングしてるときにビシィッと顔だけはキメておこうとおもったのである。

「実はやまけんさんにぜひ味わっていただきたい、特殊な樽で仕込んだモルトがあるんですよ」

と輿水さんが仰る。隣の部屋のテーブルには7種のモルトが準備されていた。

琥珀色から紅茶色、そして極めて濃褐色のものまで様々だ!
このワインのバーガンティのような色の説得力はいったいなんだろうかと、かなりビックリしてしまった。

「これらは、樽でどんなに個性が変わるかということをきちんと把握していただくために選びました。味わってみてください」

それぞれ水で割って試飲。
あきらかに樽によって大きく個性が全く変わる。
濃厚なシェリー樽で仕込まれたものは、イメージとしては横の方向にが限りなく拡がっているイノシン酸のような世界を感じる。北米のホワイトオークのものは、香りがブワッと炸裂してから、球状に閃光と煙が立ちこめるような世界だ。面白かったのは、梅酒を仕込んだ樽で仕込んだものや、珍しい杉の樽で仕込んだもの。それぞれ、本当に樽の香りが酒質のかなり大きな部分を決定づけているように感じたのだ。

その中でも僕がもっとも関心をもったのが、北海道産のミズナラの樽で仕込まれたものだ。楢(なら)の木は適度に柔らかく、くりぬいて太鼓にしたりもするが、こうして酒樽に活用されているとは知らなかった。杉や檜のような派手な香りではないが、背筋が伸びるような、奥深く厳かな香気を感じる。一言で言ってしまえば、まるであの敷地に隣接した神社の境内のような香りと味がするのだ。


「ミズナラは日本ならではの素材なんです。やまけんさんのように、このミズナラが好きっていう人はたくさんいらっしゃいますね。」

そうだろうなぁ
本当になんというか、「あるべき日本人の姿」ともいうべき味わい、香りなのだ。いや参った。


ちなみにこのテイスティングルームには、この山崎蒸溜所の酒だけではなく、世界各国のウイスキーがところ狭しと並べられている。アスキーのF岡総編集長とカメラマンの八木澤さんがその棚をみて「おおお~っ!」と叫んでいる。さすがはプロフェッショナルの館、すごい酒も予算で買えるというのが非常に羨ましい(笑)。

けれども僕はやっぱり山崎に来たんだから山崎の酒が飲みたい、ということでこいつを所望。

これは数年前にネット限定で販売された特別なカスクだ。さきほどまで味わったカスクとはまた違う、少しバリッとエッジの効いたモルトだった。

いやー堪能した!

と思ったらまだ先があったのだ!

「じゃあ、オーナーのテイスティングルームに戻って、試飲をしていただきましょう。」

今までのはあくまで「テイスティングの見学」だったのであった!

テイスティングルームに戻ると、僕とF岡さん、八木澤さん用に、4種の個性の異なるカスクのモルトがグラスに用意されていた。

左から、下記のようなカスクと内容だ。

1)1992年
カスクNo.2D3048

樽:バーレル/ホワイトオーク
内容量:約78L(約112本)
度数56%
色:黄金色
香り:バーボン様/ヴァニラ様
味わい:しっかりしたバーボン様/ほろ苦い
余韻:バーボン様/ウッディが長く伸びる
80万円

2)1990年
カスクNo.OU70406

樽:シェリーバッツ/スパニッシュオーク
内容量:約306L(約437本)
度数63%
色:茶褐色
香り:熟した果実様/スパイシー
味わい:甘酸っぱい/濃厚/芳醇
余韻:バーボン様/ウッディ、レーズン様がしっかりと伸びる
410万円

3)1991年
カスクNo.1V70374
樽:バーレル/ホワイトオーク

内容量:約106L(約152本)
度数56%
色:黄金色
香り:スモーキー/ヴァニラ様
味わい:バーボン様/しっかりとした/甘い
余韻:スモーキーがしっかりと長く伸びる
120万円


4)1986年
カスクNo.6G5013
樽:バッツ/ミズナラ

内容量:約201L(約287本)
度数56%
色:赤みがかった黄金色
香り:香木様/熟した果実様
味わい:甘い/濃厚/芳醇
余韻:香木様/甘みがしっかりと長く伸びる
500万円

この4種はどれもオーナーズカスクとして購入することが出来るものだ。
そして、正直なところ、上記のカスク紹介コメントにかかれている内容が全てを言い表している。
蒸溜所のブレンダーがテイスティングした結果をこのようにコメントしているわけだから当たり前なのかもしれないが、コメントを読まずに味わってみて、その後に読んでみると「おおぉ まさにそういう感じ!」というビタッと決まった内容になっているのだ。

やはりテイスティングは面白い。
野菜のテイスティングはもうイヤというほどやってきているが、味わったものを言語化・イメージ化した後、それを記憶貯蔵庫に入れておくことが必要だ。その蓄積がたまっていくと、初めての味に出会ったときにも、以前味わったもので共通性のある味要素の記憶を引っ張り出してくることで、産地や品種、栽培方法の類推をすることができる。
ウイスキーも同じ作業なのだな(僕などとはあきらかにレベルが違うが)、と思った。それにしてもやはり伝統のなせるワザだろうか、実にこの味や香り、余韻の表現の文言がわかりやすい。こうしたテイスティングの要素を野菜や果物でもばしっと明文化しておく必要があるな、と思い至った。

「やまけんさんはどれがお好みですか?」

と輿水さんに訊かれたが、、、
それはもうミズナラのカスクだ。
先にも言ったように、一本の縦線がスッと伸びているという印象、すがすがしさ、控えめな神々しさを持った酒質だと感じた。その他のカスクだが、シェリーのカスクは、口に含む前からブワァッと横方向に拡がる濃厚な香り。鰹節のようなうま味の強さを感じるが、これをストレートで飲むのはちょっと僕の好みではない。ホワイトオークは、うま味の濃さと求心力のバランスのとれた酒質だが、若干派手さがあり、静かに飲みたい酒ではないと感じた。そう、僕はウイスキーに静寂を求めているようだ。その点、ミズナラは孤高の人という印象なのだ。

「しかし、、、どれも世界観があまりに強くて、料理に合わせたい酒ではないですね。」

と何気なく言うと、輿水さんが興味深そうに眼をキラッとさせた。

「どんな酒だと料理に合いますかね? サントリーでは”膳”というウイスキーを、和食と合うブレンドにして出しているんですが、、、」

そういえばそうだな。
ちょっとうかつなことを言ってしまったかと思ったが、コレは面白いな、、、と思って瞬間的に熟考。

僕が持つスコッチウイスキーの印象は、とにかく香りの強さと、強いうま味の世界だ。
口に含んだ瞬間に爆発的に拡がる香りが料理素材の持ち味を消してしまうおそれがあるのは、それはもう仕方がない。ウイスキーのウイスキーたるゆえんを消すわけにはいかないのだから、逆にその強い香りに抗することができる強い料理、素材を持ってくることが重要なのだ。そういえばアイリッシュパブで出てくる料理は、油脂やクリームといった濃厚さと強い癖をきちんと持っているものばかりではないか。

もう一つ、うま味についてだが、やまけん語になってしまって恐縮だけれども、今回味わった4種のウイスキーの持ち味は、横軸に拡がる二次元的世界観を持っていると思う。それがさっきから書いているイノシン酸のような、という表現なんだけど。舌の中間地点をまんべんなくカバーするような平たいうま味。それだけではちょっと退屈な印象があるが、香り成分の複雑さが十分に酒に陰影を付けているので、それが際だたないのではないかと思うのだ。

「、、、なので、逆に料理に合わせるためには、その横軸を少し狭めて、逆に縦軸を補強するというのが重要なんじゃないでしょうか。縦と言っているのは、例えば酸味や辛みです。そう、酸味の強いウイスキーというのに出会ったことがないのですが、そういうのがあると刺身や煮物に合わせることが可能かもしれませんね。」

そう言うと、輿水さん、「ほう!」と仰り、もう一方のブレンダーさんに「あれ持ってきてくれるかい?」と言う。

「実は酸味が強いカスクもあるんですよ。どういう使い方をしようかな、と思っていた、個性の強いものなんですけどね。これが、仰っているような酸味の世界を表しているかどうか、、、」

持ってきていただいた瓶には、茶色みがかった黄金色の液体が湛えられていた。

ぬあっ

確かに酸が強い!

これは面白いカスクだ! 実は香りの印象がほとんど残っていないのだけども、野太い印象の酸味が強く記憶に残っている。日本の米酢のような、針金のような芯の酸味ではなく、モルトビネガーのような強さを持つ、さびて赤茶けた鉄棒のような、ズドンと強い酸味だ。

この酸味と、しなやかで奥深いミズナラの個性を合わせることができるなら、イカやブリの刺身に合う酒が出来るような気がする。また、ブレンドしないでも、小麦粉を衣にした唐揚げやトンカツといった揚げ物にはピタッと合うだろう。

「ほほう そうですか、コレは使えますか、、、ふむふむ」

と輿水さん、表情からはそれをどう思ってらっしゃるのか全く伺えない。チーフブレンダーはポーカーフェイスである。

ちなみにこの時点でもう相当に飲んでいる!
けっこうフラフラになってきて、自分がちょっと饒舌になってきてしまったのがわかるくらいだ。

「そろそろ舌が疲れてきたでしょう、ソーダ割りにしてみましょうか」

と、ハイボールを作ってくださったのだが、これが非常に旨い!

「なんでだろう、ハイボールって邪道かと思ってましたけど、旨いですね!」

「全然邪道じゃないですよ。それに、この炭酸水が実は特別なものなんです。新しく発売した、その名もザ・プレミアムソーダというんです。さっきみていただいた、山崎の水に炭酸を入れてるんですよ」

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

てことは、いわゆる「仕込み水」ではないか!
なるほどそれは旨いはずである、ウイスキーを仕込んだ水で、ウイスキーを割る。これほどの親和性は他ではなしえないだろう。

もう販売開始しているんだろうかザ・プレミアムソーダ。海外物のガス水とはまた違う味わいなので、ぜひ試してみて欲しい、ていうかがぶ飲みしたいので、ペットボトルを出していただきたいものである。

いやそれにしてもプロのブレンダーはやはりすごい!
自分が飲んだものを全て分類し記憶する。そして、「山崎12年」というスタンダードな味を毎年同じようなレベルの製品にするため、ブレンドをし続けているわけだ。カスクは有限のものだから、毎回同じ原料があるわけではないのに、常に販売される山崎12年は同じレベルを保つという宿命を負わされている。それを何とかするのが、ブレンダーの密かな愉しみ、醍醐味なのかもしれないなと勝手に思った。

「いやー本当にありがとうございました!勉強になりました!」

「こちらこそ勉強になりました。実は私、よく東京に出ると門前仲町のオーパに飲みに行くんですよ。今度ぜひご一緒に」

マジですか!?
それじゃあ、黄金の門仲フルコースを是非!

そして、、、すごいものをもらってしまったのだ。
帰り際、輿水さんが手渡してくれたのは、僕のために特別にブレンドしてくれたシングルモルトウイスキーなのである!
ふがぁーーーーーーーーーー!

「やまけんさんがどういう人かわからないでブレンドしたんで、お好みに合っているかどうかはわかりませんが、、、」

いや、もうそれをいただいたっていう事実だけで十分です!!
創業者像の前で、F岡さんと悪のり撮影。
いや
本当に素晴らしいツアーであった。
ミラノ風伊達男・越野さんとパーティで出会えてヨカッタ。
輿水さんの淡々とした凄みにふれることが出来てヨカッタ。
そして、山崎蒸溜所のウイスキーは旨かった!!

お世話になりました!
次はぜひ、白州にいきたーい!! と言ってみるテスト。



■山崎蒸溜所のブログ


■オーナーズカスク

Posted by yamaken at 13:18 | TrackBack

2006年08月28日

首都近郊の農業王国・三浦半島は旨いもの宝庫だった! 速報版

この週末は週刊アスキーの「旅三昧」むけの取材で三浦・横須賀へ。
いつものごとく長島農場の勝美君をキーマンとして繋がる人的・食的ネットワークをたどってきた。

死にそうになるまで食べました、、、
以下、速報画像。






























Posted by yamaken at 10:45 | TrackBack

2006年08月25日

時間の重みが酒の深みになるのだ! サントリー山崎蒸溜所にてモルトの旨さとブレンドの神髄を観た!


とある異業種交流会に参加した夜。サントリーが協賛の会で、各種ウイスキーを参加者に振る舞ってくれていた。僕は「山崎」が好きなので所望しにいったら、ちょっとイタリア人ぽい広報部の二枚目オトコ前の方から声をかけていただいた。

「やまけんさんですよね?一度、蒸溜所に遊びにいらっしゃいませんか?」

マジですか!?

「実はサントリーでは、”オーナーズカスク”という企画をやっているんです。山崎蒸溜所で仕込んだ年代物の樽の一部をお客様に開放し、オーナーになっていただけるという企画です。」

と分厚いパンフレットを繰りながら説明してくれる。
カスクとは樽のことだ。蒸溜所で熟成しているカスクにオーナー制度を導入したということなのだ。1本のカスクから100~500本のボトルがとれるということで、企業が記念に購入したり、仲間と共同出資したりということができる、実に貴重なオーナー制度らしい。

なんといっても、シングルモルトであるというところがココロをくすぐる。
ブレンデッドウイスキーは、様々な個性の原酒を混ぜることで、それぞれの長所を活かした味のウイスキーを作り出すものだ。お米も、実は巧みなブレンドを施したものの方が旨かったりするが、ウイスキーもまた同じだろう。しかし、シングルモルトの潔さ、個性の魅力はそうしたブレンデッドとは全く違う楽しみを僕らに与えてくれる。一つ一つの樽の個性がもろに前面に出てくるシングルモルト。そのオーナーになれるというのはものすごい精神的快楽ではないか!

ぜひ、蒸溜所に観に行きたい!
いや、正直に言おう 飲みに行きたい!

名刺交換をしてお別れした後、しばらくあれは社交辞令だろうなぁ、と思っていたのだが、その後きちんとお誘いの連絡をいただいた!すばらしいぜサントリーさん!

サントリーは山梨県の白州と、京都府の山崎にウイスキーの蒸溜所を持っている。白州は何かと縁があって好きな場所だが、今回は山崎の方にお誘いいただいた。これは単にブログのためだけに行くのはもったいない!と、アスキーで連載中の「旅三昧」でも取り上げさせていただくことにして、いつものごとくF岡総編集長と八木澤カメラマンと一緒に京都へ向かったのである。従って、サントリーさんから足代をいただいているわけでもない。いつものごとくこのエントリもガチンコ勝負の記事である。

しかし「山崎」という駅があるとは知らなかった。そして着いたとたんにもう「蒸溜所の街!」と宣言しているかのような風情である。

この山崎の駅はなぜか観光客でにぎわっていた。でも蒸溜所見学者とは思えないジジババが多い。登山の入り口なんだろうか。時間調整のためコンビニでアイスクリームを買う。すさまじい熱気が押し寄せてきてとにかく暑いのだ!さすがは京都。夏の暑さは並じゃない。はやいとこ、クアッとモルツを飲みたいんである。

しかし山崎蒸溜所まではちょっと歩く。この写真の道の彼方に移っている大きな建物が蒸溜所だ。F岡さんも「うひゃー 暑いねぇ」といいながら歩く。

ここはやっぱりサントリー蒸溜所の街だな、と思ったのは、とにかくべらぼうに「山崎」という小さい看板があることだ。しかしこのシチュエーションには笑った。焼き肉屋の「山ちゃん」という看板の下に「山崎」という看板があり、いったいもうなんなんだかワカランという絵なのである。

さて10分ほど歩き、踏切を渡ると、その広大な蒸溜所が視界をめいっぱいに塞ぐ。視野に納めきれないこの大きな敷地が、サントリー山崎蒸溜所なのである。


資料館の入り口に着くと、誇らしげにSINCE 1923と掲げられている!

そう、サントリー創業者の鳥井信治郎氏が、「赤玉ポートワイン」などの大ヒットで得た資金をつぎ込み、日本に本物のウイスキーをと建設したのがこの山崎蒸溜所なのだ。ということは、ここで仕込まれたもっとも古いモルトは1923年のものということか!いったいそんな年代物のモルトの味はどんなモノなんだろう?

ということを考えていたら、このクソ暑い中を、なんとも涼しげな薄青のスーツを着こなしたミラノ風伊達男が坂を上ってきた。サントリー広報部が誇るミラノ風伊達男・越野多門さんである。 名前もすごい!「こしの・たもん」さんである。いったいこの人何者?というそのルックス、一度あったら忘れられないだろう。

先日、長岡の花火大会に行ったとき、その辺にあった週刊誌DIMEのページをめくってたら、この越野さんがドドーンと企画広告ページに掲載されているではないか!ひえええと思っていたが彼の容姿なら当然か。検索してみたらちゃーんとWeb化もされていたので、リンクしてしまおう!

■DIME男前プロジェクト
http://www.digital-dime.com/otokomae/004.html

「ようこそお越しくださいました! 暑かったでしょう、こちらのテイスティングルームにお越しください!」

山崎蒸溜所では一般向けの見学ツアーがあるので、全国からひっきりなしに人が訪れている。ちゃんとガイドの女性がついて、蒸溜所見学をできるのだ。このツアーも実におもしろそう。年間で14万人(!)が訪れるという。

しかし!
カスクオーナーは、そうした一般の見学とは全く違う待遇となる。当たり前だ、だってオーナーだもの。
蒸溜所の建物の上にしつらえてあるテイスティングルームへと進むと、エレベータを下りたところに、涼やかな水色の制服を着た美女が立って待っている。

「今日、皆さんをご案内するお手伝いをしてもらう松本さんです」

外の熱風の世界からひんやりした室内に入っただけでも極楽なのに、いったいここはドコ!?と思わんばかりの歓待である。おそらくオーナーズカスクの見学をしにきた人は、コロッと参っちゃうだろうな。その念はテイスティングルームに入って確信となる。

美しい竹林をのぞむ部屋に、豪華な木製カウンターがしつらえてある。その背後の壁にはずらりとならぶモルトの山。こんな部屋を仕事部屋にしたい、、、

この写真の右側にいらっしゃるのが、チーフブレンダーの輿水(こしみず)精一さんだ。つまり、山崎蒸溜所のブレンドの頂点に立つお方である!この人が味を決めているのである!

「ようこそお越しくださいました。私もたまに東京に出たときは、オーパ門前仲町店に遊びに行くんですよ」

ええええええええええええええええええ
本当ですか!
ぜひ今度ご一緒に、、、

輿水さん、全く偉ぶらず、腰の低い方で逆にこちらが恐れ入る。
早速、蒸溜所内を見学することに。一般ツアーとは違い、チーフブレンダー輿水さんの解説による蒸溜所めぐりである!ゴージャスリッチなことこの上ないではないか!

これまで日本酒と焼酎、ワインの仕込みを見学したことがあるが、ウイスキーは初めてだ。
とはいっても蒸留酒。焼酎の仕込みとそれほど代わりはしない、、、とはいうものの、その製法やポイントはやはり大きく違っていておもしろい。日本酒や焼酎の場合は、米のでん粉質を酵母が糖化して、その糖をまた酵母がアルコール化する。

一方、ウイスキーの素材である二条大麦は、芽が生えかけの状態、つまり麦芽の状態にすると、糖化酵素が発生し、自らを甘く糖化するという特性を持っている。本当に、この麦が糖化しているのを舐めると「甘い!」と驚くのだ。

3本並んだ瓶に、原料となる麦芽とそれを粉砕したものが入っている。

そしてこの黒いカタマリが、ウイスキーをウイスキーたらしめる重要な役割を担う”ピート”である。
昔、何かの海外小説を読んでいたらこのピートという言葉が出てきて、いったい何だろうと思った。その後、違う本で「泥炭」とかかれており、これまた何か?とますます迷ったものだ。

ピート(泥炭I)とは、植物が炭化し石炭になる前の段階のものだ。このピートを燃やして燻して麦芽を乾燥させるときに、あのスモーキーな香りがつくのだ。シングルモルトの中でもラガブーリンなどの銘柄を飲むと、初めて飲む人は「グワッ なんだこの煙っぽい香りは?」とのけぞってしまう。けれどもその強烈な香りに慣れるてしまうと、それなしではなんだか物足りない、癖になってしまう味わいなのだ。

そのピートの現物の横に、おもしろい農具を発見。

これ、ピートを掘り出すのに使う鋤(すき)である。
実は僕は農具が大好きである。学生時代に自分の畑を耕す際に持っていた鍬(くわ)は、近くの農協でもっとも高い価格の業物を購入した。農具はその土地の風土を反映している。耕土の堅さによって鍬の刃や柄と刃の角度などが変わったり形状が変化する様が実に佳いのだ。このピート用の鋤は、スコップのように足でピート層を切り分け掘り出すためのものだ。この形状でできるところを観ると、ピートは存外に柔らかいのだろうな。

さてこのピートで燻香をつけられた麦芽が甘~いジュースとなり、いよいよ酵母が添加されてアルコール発酵するのである。

大きな樽の中を覗くと、ぶくぶくと発酵が進んでいる。いわば日本酒におけるモロミである。

こいつを飲んでみたいが、酒税法上、やってはいけないので、残念。

ここで立派なアルコールとなった麦酒を蒸留することで、ウイスキーのニューポットと呼ばれる透明な液体ができるのだ。

蒸溜所内にででーんと鎮座する6機の蒸留釜。この蒸留釜は2機の対になっており、対面に同じ形の釜が対をなしている。つまりウイスキーは二回蒸留するのである。

「おもしろいもので、この蒸留釜の形で味や香りが変わります。この、単純な形の釜からは、骨太でストレートな味と香りのモルトが生まれます。ひょうたん型に球が二つついているような釜からは、香りが強調されたようなモルトが生まれます。こうした釜の形状を考慮しながら仕込むことになるんですよ。」

なんと!非常におもしろいではないか!
釜の形状によって味が変わるというのは、日本の蒸留酒(たとえば焼酎)にももっといろんなバリエーションができるという可能性を示している。

これらの釜はスコットランドで職人が打ち出して作る業物だそうだ。こんなのを輸入するのは大変だろうなぁ、、、普通の町工場2つ分くらいの面積に6対、計12基の釜が鎮座している風景はムチャクチャ絵になるんである。

さてこの蒸留釜から出てくる液体は、、、

「コレがウイスキー?」

とびっくりしてしまうような無色透明な液体である。そう、蒸留したてのニューポットとよばれるウイスキーには色はついていないのである。これを樽に詰めて熟成させることで、あの深い琥珀色の液体に変化するのだ。

「じゃあ、いよいよカスクを観に行きましょう、、、」

こうして僕らは、山崎蒸溜所の心臓部といえる、数々の樽が眠る宝庫に、足を踏み入れたのだ。

Posted by yamaken at 09:09 | TrackBack

2006年08月23日

大阪の伝統野菜”なにわ野菜”の商いをみる

「大阪ではね、買参人さんによっては『引きゼリ』っていいましてね、2800円なら3本だした指から2本をスッと折るんですよ。そんなん、0.5秒くらいの動作でしょ?これを一瞬のうちに見渡して誰がいくらで落とそうとしてるかを判断して競りを決めるんですよ!」

大阪東部市場の近郷野菜のセリ人をやっていた三谷君が、愉しそうに笑う。
大都市・大阪は、実はその近郊にまだまだ伝統的な野菜の種を残す地域だ。東京近郊にも産地はあるが、大阪の方が若干元気で、まだ普通に農業をしている地域が多いという印象がした。

一通りなにわ野菜の現状を訊いたところで、伝統野菜を出してくれる居酒屋に移動。


さて伝統野菜とはいっても、生の野菜をそのまま切ってもあまり面白くはならないなというのが印象だ。

手前にあるのが毛馬キュウリという大阪の伝統野菜の一種だが、表面を軽く炙っている趣向だが、持ち味はまったく引き出せていない。大体キュウリをこんなに小さく切ってしまうと、食感がかなりそがれてしまい、キュウリのキュウリたるゆえんがほぼ味わえないではないか。やっぱりいかに品種が面白くても、それをどうやって皿に盛り込み活かすかは、料理人さんに頑張って開拓して頂かなければならない領域だ。

水ナスの浅漬けは文句なしに旨い。

「皮が色落ちしてますね。そろそろハウスものが終了する時期で、これから露地物主体になってくるんですが、そうなると皮の色ももっと黒々になりますよ!」

と三谷君が渋めのコメント。
これからどんどん無くなっていく近郊の農家さん。それと相反して、料理の世界で求められるようになる伝統野菜。両者の狭間にいて日々苦闘する彼のような人を応援したい。
三谷君、なにわ野菜の発掘と応援、頑張ってね。

Posted by yamaken at 09:34 | TrackBack

大阪市立大前の学生さんは、とんかつ屋「もんきち」で腹を満たしてください。

高校時代の僕は、先のエントリに書いたとおり素晴らしい食環境に居たわけだが、大学生の頃は、とにかくお金がなかった。だから自炊をするか、600円以内で腹が一杯になる定食屋にいくか、それか近所で僕にしょっちゅうメシを食わせてくれた大工の棟梁の家で食べるか(!)の三択だった。自炊が一番安上がり(学校で野菜も栽培していたからね)だったわけだけど、たまには外の味が食いたい。曲がりなりにも学生街であった、神奈川県藤沢市の湘南台駅周辺で、安くて旨い店を攻めていた。学生向けの食堂はとにかく味も重要だけど、盛りが命だ。「とん菜」のスタミナ定食、「ニューオリンズ」のニンニクアサリスパ、藤沢の栗原豆腐店が一時やっていた定食屋など、大好きだった(SFC卒業生にしかわからないローカルネタだな)。

さて
大阪市立大学に通う皆さん。キャンパスの天王寺側の外周道路にあるとんかつ屋「もんきち」をご存じだろうか。ご存じでなければぜひ行ってとんかつや各種フライと、ご飯キャベツお代わり自由を満喫していただきたい。

■ 手作り厨房 もん吉
大阪市住吉区杉本2-8-3-105
06-6609-0610
AM11:00~PM11:00

なんでいきなり肩を持つのかというと、僕の従姉妹が働いているのである(笑)
母の実家の今治で、いつもいたいけな僕をマシンガントークでいじめて泣かせてくれたチエちゃんが、そこに居るのである。

阪和線杉本町の駅から歩いて数分、さすがに定食屋ばかりの通りだ。

「あらぁ 謙治! よくきたねぇ! あ、これ、従兄弟!」

と迎えてくれるチエちゃん。元気そうでよかったよかった。
ここはとにかく揚げ物の店だ。

ロースカツ定食
おろしロースカツ定食
ロースかつとじ定食
700円

一口かつ定食
600円

ヘレかつ定食
ヘレかつとじ定食
おろしヘレかつ定食
750円

ミックスフライ定食
700円

★定食のご飯はお代わり自由
★オカズのみは200円引き
★各種定食お持ち帰りできます

ということで、とりあえずミックスフライの単品と、チエちゃんお勧めの「かつとじ定食」をダブルで食べる。

昔、エビフライが付いている定食はそれだけで豪華なものと思っていた。しかもタルタルソースが付いてくるとそれはもう本当に別次元の食べ物という感じだった。もちろん今日もその胸のときめきは忘れていない。

「うちはね、かつとじ定食美味しいよ!これ食べなさい!」

とチエちゃんがいうかつとじ定食、つまりカツ丼のアタマ(具)を別盛りにしたものだが、たしかに旨い!

熱い陶器の鍋皿にぐらぐら煮立ったまま出てくるとじカツをめしに乗せて食べると、甘辛いつゆをご飯が吸って凶暴な旨さに変化する。

「もうすごいコなんか、ご飯4杯お代わりするよ!」

ときいた瞬間、俺も4杯ぐらい、とむらむらしてきたが、はやる心を押さえつけてお代わり一杯でやめておく。

チエちゃんごちそうさん、満腹。
見ていると、盆で学生は夏休みなのに、ひっきりなしにお客さんが入ってくる。近くの病院の看護婦さんらしき人たちが持ち帰り弁当を頼んでいる。けっこうこの辺では味のいい店として知られて居るんだろうか。ともかく、商売繁盛を願う。

大阪市立大の皆様、ひいきにしてあげてくださいませ。

Posted by yamaken at 09:07 | TrackBack

2006年08月22日

日本最高峰の学食は、僕の母校にある。 埼玉県飯能市・自由の森学園の素晴らしい食への取り組みをみていただきたい。


僕が通っていた高校は、埼玉県飯能市にある自由の森学園高等学校という。僕が入学したのは1986年。その頃の点数序列教育花盛りな風潮の中で、自由教育を標榜して生まれた学校だった。同じような名前の自由学園、自由が丘高校などあるが、どれも自由の森より伝統があり、かつ教育方針も全く違うので、混同されないよう。

実は、僕が農業や食というテーマを一生の仕事としていこうという決意は、この自由の森学園で獲得したものだ。

自由の森では校則というものがない。当然、制服もない。そして僕がいた当時から、授業の成績は数値評価ではなく「評価表」という、各教科の先生が文章で評価をするというものだった。授業自体もユニークなものが多く、例えば体育では日本の郷土芸能を採り入れ、岩手県の鬼剣舞(おにけんばい)やさんさ踊りを踊ったり、各地の和太鼓を叩いたりしていた。僕はこれにはまって、太鼓グループを結成し、大学卒業まで叩きまくっていたのだ。その他、美術にはかなり力が入っており、絵画や木工だけではなく染織
(染色と織物)や製本など、通常にはみられないような授業がてんこ盛りだった。最高なのは民族音楽という授業があった(今はない)ことで、僕は高校時代にインド古典音楽の太鼓であるタブラを学んでいたのだ。今から思うと本当にすごい学校だった。

その自由の森学園の校長となった鬼沢さんから、連絡があった。(ちなみに自由の森では生徒は先生のことを”○○さん”と呼ぶことが多い)
鬼沢さんは僕が入学した年に同時に教師として赴任してきた、社会科の先生だ。そして現在はなんと高校の校長なのである!

「あのさぁ、『まなびの森』っていう、自由の森を受験する親御さんや子供にむけたオープンキャンパスがあるんだけど、そこでちょっと話をしてくれないか?」

訊けば昨年はサックスプレーヤーの坂田明さんがきて、ミジンコの話をずーっとした挙げ句に最後にサックスをぶっぱなすという素晴らしい講演をしたそうだ。その翌年に俺じゃあ釣り合いがとれないじゃないかぁ~

「いやでもね。卒業生を呼ぶというのはこれが初めてなんだよ。保護者からみれば卒業生が話をするというのは非常に意義があることだと思うんだよね。だから頼むよ」

確かに、卒業生がいちおう会社を立ち上げて曲がりなりにも食べていけている、ということは、それだけで在校生や新入生の親ごさんには興味のある話かもしれない。僕の食べ物への関心のルーツである自由の森のために貢献できるならば、と思い、引き受けることにした。

8年ぶりくらいに訪れる母校は、やはり遠かった。
西武線飯能駅か、JR八高線の東飯能駅からタクシーで15分山に入っていったところにある。市街地を抜けるともう山。狸や鹿がまだ出没する名栗の地に、自由の森学園はある。坂を上っている時、僕らが入学したての頃に植樹した木々が、うっそうとした立派な”林”になっていることに驚く。
事務室に着くと、鬼沢校長と事務局長の河本さんが迎えてくださった。感無量だ、、、


いろいろ四方山話をしながら、変遷のあった学校内をまわる。
「学校内の一番いい場所」という中学生校舎の前の庭は、昔はなにもない広場だったのだが、いまや巨大なビオトープとなっている。

僕も建設当時はちらっとみた気がするが、まさかこんなにうっそうと植物が茂る環境になるとは、、、生き物も結構ここに生息しているらしく、理科の生物の授業のネタにはことかかないそうだ。

新しく建った美術棟では、自由の森らしい授業である染織の部屋が充実している。

この藍染めはこの日のオープンキャンパスに訪れた父母や子供達が作ったものだそうだ。

こちらはキウイの蔓を描くという授業らしい。

そして自由の森の木工授業。木工部屋には機械がほとんどなく、生徒は手と工具を使って木に向かう。
材料となる木も、製材されたものはほとんど使わない。周辺の木材屋さんなどからいただいた原木などがそのまま材料となる。その結果、平らな材を使ってできるスクエアなものではなく、木の形を活かした椅子や机が量産されるのだ。この椅子たち、とても中高生の授業で作られたものとは思えないではないか。

そして図書室へと向かう。

実は僕はここで図書委員長という役割をしていた時期がある。選書は基本的に司書の大江さんが行うのだが、そこにいろいろ要望を出したり、機関誌を出すためにマガジンハウス社の編集者さんに取材にいったりと、結構アクティブな活動をしていたのだ。久しぶりに図書室の空気を味わったが、僕の著書が並んでない!寄贈することを約束して体育館へ行く。

さて自由の森の一つの象徴ともいえるのが郷土芸能への取り組みだ。
体育館には2尺以上の宮太鼓や桶胴太鼓がごろごろしている。

僕は高校時代、授業後に毎日これを友人達とぶったたいていたのだ。

久しぶりに少し打ってみる。三宅島に伝わる神着木遣り太鼓という演目だ。2分叩いただけで呼吸が荒くなり、バチを握る手がジーンと微振動してくる。やっぱりいいものだ。
和太鼓は世界的にも不思議な楽器だ。鼓面の大きさは最高峰で、しかも打ち込むのに体力が必要だ。西洋の打楽器とは全く違う論理をもった楽器だと思うのだ。

「さてじゃあ昼飯でも食べるかい。ヤマケンが来るから、食堂には何でも何杯でも食べさせろって言ってあるから」

おおおおおおおおおおおおおおおお
やったぜ!

実はここからが本題なのである。
僕は小学校低学年の頃から料理に強い関心を持っていた。母がずーっと買って貯めていた「今日の料理」のテキストを丸暗記するほどに読んでいたのが僕の小学~中学校時代。そして自由の森学園の食堂で、一生を左右する大きな出会いがあったのである。

自由の森学園の食堂は、単なる「学食」ではない。国語科や英語科といった部科と同じ土俵で、「食生活部」というのが存在する。そこで、中学・高校の生徒たちにどんなものを食べさせるかをきちんと議論し、そして日々調理を行っているのである。

創立当初から、可能な限りどのような栽培をしているのかがわかる契約栽培農家さんとの関係を築くか、それを任せることができる卸売業者などと契約をし、野菜や卵、肉などを買う。それだけではなく、最も重要な調味料もきちんとしたもののみを使っている。

だからといって、よくあるオーガニック系レストランのような、食べた気がしないような食事が並ぶわけではない。

通常の定食やカレー、スパゲティなどもある。これらにももちろんきちんとした素材が使われ、調理がなされている。画像の中に見えると思うが、「伝統食」というのがある。これが、アレルギーを持つ子供に配慮した内容になっている、伝統的な食事を再現したものだ。今回これを食べたかったのだが、この日はオープンキャンパスだったので、ないとのこと。いずれ普通の日に来て食べてみたい。在学時は考えたこともなかったが、素性のしれた素材のみを使ってこんな値段(400~500円だ!)で提供するなんて、あり得ない話だ。

さて食堂に入ると、僕の在学時からいるおばちゃんが居たり、直接面識はないけれども、以前フジテレビの「スタメン」に出た際に取材が来たので僕のことを知っている人などが笑って声をかけてくれる。

「あらまあ テレビでみたより太ってないわね!」

と笑われながら列に並ぶ。
この日は学校公認で何でも好きなだけ食べろということなので、遠慮無くメニューをすべていただいた。
豚カツ&ドンブリご飯にカレー&スパゲティである。

実はこの自由の森のカレーは激旨なのである。

手前にはきっちりとチャツネがかかっている。福神漬けも無着色のものだ。そしてカレーのルーも何もかも、全て食生活部の皆さんの手により作られたものなのだ。味も絶品。ちまたに溢れる、オーガニック製品を使っているということが最高価値であるといわんばかりの不味いオーガニックカフェの連中はここで食べてみるべきだ。ただし、日によっては「おお、肉が一杯はいってる!」と思ったら、全部ナスの塊だったということもあるのでご用心(最近は無いのかもしれないが昔はあった)。

この日は豚カツ定食と、若干一般色の強いメニューだったが、肉も可能な限り投薬回数の低いものを選んでいた(と思う。昔と同じであれば。)。ヒカリの中濃ソースで食べる豚カツ、美味しゅうございました。

定食の美味しさはみそ汁で決まる。自由の森の料理には化学調味料は一切入らない。だから天然素材のみで出汁をとっている。きょうび、そんな贅沢な汁を食べられるのはありがたいことだ。生徒諸君、残しちゃダメよ。

この日のもう一品、スパゲティも、自然食品系のケチャップをたっぷり使った甘めのものだが、優しく旨い。全部平らげて腹一杯である。

いやー
久しぶりに自由の森定食を食べた!
講演は夕刻なので、食堂のバックヤードに入って、いろいろと見せてもらうことにした。

「本当に、あのテレビ番組ではやたら食べ過ぎてるから、身体を壊すんじゃないかって心配してたのよ、、、でもまあそんなに不健康そうじゃなくてよかった!」

と笑いながら言うのが泥谷(ひじや)さん。現在の自由の森食堂の母である。ちなみに僕がいた頃の食生活部長は小林節子さんといい、学校の食事関連については避けて通ってはいけない方だ。

「ちょうどいいわ、夜にまた父母の皆さんに出す料理の準備をしてるから、みていらっしゃい」

と招き入れてくれ、食材を一つ一つみせてくれた。通常、食堂で使われている食材なんて、原価率を低くするために通常の市場経由の一般品の野菜だったり、冷凍の精肉類だったりするものだが、ここでは全ての食材から基本調味料まで自慢することができるものばかりなのだ。


ご飯やおにぎりの米。熊本は阿蘇にある、木之内さんという生産者さんのグループで、特別栽培で作ってもらっている契約栽培米だ。

玄米の状態でストックし、都度精米する。むろん玄米ご飯も出してくれる。

そして、最も重用視すべき、基礎調味料。

「砂糖はね、キビ砂糖なの。」


低精製度の、ミネラル分が一杯に詰まった砂糖だ。
塩もミネラルを含んだ塩田系のものを数カ所から取り寄せている。

厨房ではジュワジュワと美味しそうな音を立てて、鶏の唐揚げが揚がっている。

ここで注目すべきは何か?油だ。揚げ物に価格の安いサラダ油を使わない学食なんて、ここだけではないだろうか。安い油は、薬品を使って搾油している。もちろん遺伝子組み換え作物が混入している可能性を否定しきれない。自由の森では、圧搾の菜種油で揚げている。

おそらくこれを読んでも、基礎調味料にあまり関心のない人は「へええ」と思うだけだろう。しかしこの、安いサラダ油と圧搾菜種油の価格差たるやものすごいのだ。こういった見えないところに本当にお金をかけて佳いものを使うことができるかどうかが、本当の「心づくし」というものだと思う。

バックヤードの旅は続く。

「今年もピクルス漬けたのよ~」

と、大量にキュウリを酢漬けにした瓶が並ぶ。

こうした保存食を可能な限り自前で仕込んでいるのも食生活部の特徴だ。
日本で保存食と言えば、、、そう、梅干し。当然ながら、きちんと自分たちで作っている。

「これが今年度の梅干しね。ちょっとまって、こっちが、、、」

と引き出してきたのが、、、

平成16年度の梅干しだ!

きちんと漬けられた梅干しは年数を経るごとに塩分がこなれ、滋養に満ちた食品となる。
最近では調味液にザブンとつけた甘い、保存食にならない梅干しが多いが、いつになったら風向きが変わるのだろうなぁ。

このほか、昆布や魚節などの乾物をみる。馬鹿な質問だとは思いながら一応確認のためにきいてみる。

「化学調味料って使わないんですよね?」

「使うわけないでしょ! ここにはそんなもの一粒もないわよ。」

野菜庫に入る。いまは夏休みで、オープンキャンパスのためだけの食材を調達しているのであまり在庫はない。

全ての箱の産地を確認したが、関東近郊で僕もよく知る、中には取引関係のあった、信頼のおける産地グループのものばかりだ。

肉製品についても同じだ。
ハムやソーセージなど、コストを下げようと思えばいくらでもできるものにも、ちゃんとしたものを使っている。みよ、この美味しくなさそうな色のハムを!
これは撮影時の光のせいではない。亜硝酸塩などの添加物を極力使わないでハムをつくると、こんな色になるのだ。色が悪くても味にはもちろん影響はしない。

こんなハムを使ってサンドイッチを作ってくれていることに、じわっと感謝の念がこみ上げてくる。

しかし!
もっと驚くべきことがある。
以前僕が在籍している時はしていなかったことだが、、、
最近は、なんとパンすらも自家製で焼いているらしいのである!

「そうなのよ天然酵母で毎日焼いてるのよ!」

とこともなげにいう泥谷さん。これが天然酵母だ。

酵母には日本では一般的なホシノ酵母を使っている。
天然の干しブドウ酵母のように連続培養が効かない酵母だが、安定しているし、何より日本人好みの味のパンになりやすい。これを使ってパンを焼いているという。

「あなた、今日はこれお土産に持って帰りなさい」

と一斤(!)いただいて帰った。今朝トーストして食べたが、余分な味の付いていないパンだ。おそらく油脂をほとんど添加せず、酵母と塩だけで焼いていると思われる。通常売られている食パンには信じられないほどの調味料や添加物がぶち込まれていることを考えると、実にプレーンなパン。パン肌のきめ細かさは十分で、発酵技術もかなりのものだと思った。

さんざん色んなものをいただいた後、学校見学にきた父母や子供、そして在校生の親御さんたちにお話しをさせていただいた。90分しゃべり倒したが、どうだっただろうか。

再度、食堂に集まると、オープンキャンパス参加者の夕食の支度がしてあった。なんと宿泊も可能になっている3日間の大イベントなのである。在校生による和太鼓演奏や、岩手県盛岡市周辺のさんさ踊りが繰り広げられる。

そして食堂の皆さんによる心づくしの夕食。本当に心づくし、なのだ。バックヤードをみてきた僕には、一品も無駄にできないなと思い、可能な限り料理を腹に詰め込んだ。


自由の森学園を巡る評価は、よい評価も悪い評価もとにかく極めて振幅が広い。
点数序列による評価をしない自由教育を標榜して、今年で創立以来21年目になるが、荒波に揉まれない時期はなかったといってよい。その教育方針に対して外部からの圧力があったり、父母との対立、ひいては辞めていった教職員との確執など、列挙したらいろいろ出てくる。それだけ「自由」というものをこの国で体現していくのは大変なことなのだ、と思う。

しかし今、自由の森は教育内容的には、ゆったりと成熟した時を刻もうとしているようだ。
僕が入学した二期の頃にいた先生はかなりの数が去られているが、残っている先生方も多い。懐かしく会った皆さんから、現在の自由の森は、教育方針も落ち着いて腰が据わってきた姿だというような感触を、僕は感じた。

僕は、教育を専門としていないから教育についてナニゴトかを言うつもりはない。
しかしはっきり言えるのは、この自由の森以上にレベルの高い中高生の学校食堂は、他にみたことがないということだ(いやあるかもしれない。僕が知らないだけかもしれないので、そこはご容赦)。
食育ブームのこの時期、小学校や幼稚園といった、子供が幼年期を過ごす場での食事に気を遣う事例は増えてきた。塗り箸や塗り椀を使わせる学校給食も増えてきた。

しかし、中高生という、不安定な精神が荒ぶる時期の食も大事だ。事実、自由の森の食堂のご飯を食べ続けることで、荒ぶる心や病んだ身体を治してきたという事例も多い。

そんな自由の森学園に子供をやりたいというお父さんお母さん、ぜひ申し込みの上で見学にいってみてください。11月には公開研究会という、各授業などの内容を対外的に発表するイベントが開催されるはずだ。

■自由の森学園
http://www.jiyunomori.ac.jp/

そうだ、これを書いておかなければならないだろう。
僕を農と食の道に誘ったのは、実はこの自由の森学園の食堂なのだ。

ある日、キャベツの、千切りではなく葉をざくざくとちぎったものが出たときがあって、それを囓って本当に心の底から驚いた。甘くてジューシーで、鮮烈な香りのするキャベツ。

「このキャベツを作ってる農家さんのところに遊びに行きたいよ小林さん!」

と、当時の食堂長をしていた小林節子さんに言うと、ニコニコしながら彼女は教えてくれた。

「これはね、私の娘夫婦がやっているぽっこわぱ農園っていうところで作っているのよ、紹介してあげるわ」

当時、千葉県にあったぽっこわぱ農園は、佳子さんとフランス人のドニーさん夫婦が拓いた農場だ。2町歩くらいの農地を完全に無農薬無化学肥料で切り盛りしていた。そこに埼玉から自転車で7時間くらいかけて遊びに行ったその日から、農業との関わりが始まったのだ。

だから自由の森学園こそが、僕の農と食の重要なルーツなのである。

この日の特別授業の中で、おそらく理科だとおもうが、なんと熱気球を作って上げていた。

とてつもなく熱い空気の中、さらに熱い空気の塊を得た気球がグワッと空に上っていく。

やっぱり母校はいい。
そして誇ることができる母校を持った僕は幸せだ、と思った。

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2006年08月21日

大阪浪漫放浪~串カツ 「川と山」 素材感を活かした珠玉の20本一本勝負!

大阪のホテルでFTPできなかったのは、通信回線の問題ではなく、単にアンチウイルスソフトの問題であった。先日から、年間更新料のいらない、ソースネクストのウイルスセキュリティ・ゼロをインストールして使用しているのだけど、そのファイヤーウォール機能をonにしたままだとFTPできないようだ。そんなこんなで更新ができなかったのである。

さて
大阪での公的・仕事的もろもろを終え、疲れ切って、大阪在住の親友・ガイチに連絡をする。

「おうおう来てるのか。俺もメシは食ったけど、いくわ。何か食いたいもんあるか?」

「そうだなぁー もうソースばしばしのお好み焼きとか串カツ食いたいなー」

「いまからかよ!わかった ちょっと考える」

僕のようなわがままな友人を持つと大変だなぁ、と我ながら思う。
こちらもすでに会食を済ませていたのだけど、ちょっと疲れた身体と精神がどぶどぶのソースを欲している。

新阪急ホテルのタクシープールでガイチと落ち合ってキタへ。

「とりあえずお好み焼きやな」

と連れて行ってくれた店は、当然関西風だろうと思っていたらなんと広島お好みの店であったことが判明。

「あっちゃぁ~ ま、しょうがないわ、とりあえずくっとこ」

ということで、ミックス天と豚ネギ焼きを軽く食べ、生ビールを飲む。



いい店だったが、僕的にはもっと濃いソースをドボドボと摂取して、明日への活力として変換したいという気持ちだったので、少しだけ消化不良。

「どうする?ギョーザにするか串カツにするか?」

「そりゃー串カツだよ!」

「わかった。それじゃ素材重視派の店にいこか」

と、とあるビルの4Fへ。それが「川と山」という串カツ専門店であった。

店内は、想像していたのと全然違い、バーか?と思うようなカウンター形式(テーブルもある)の店構えだった。中には焼酎の瓶が並び、カウンターの目の前に揚げスペースがしつらえてある。まだ若そうな店主がニコニコと好い笑顔で応対してくれる。

お任せだと、20種の串カツをぐるりと揚げてくれるので、腹が一杯になったらストップと言えばいいというスタイルだ。

「じゃ、とりあえず20種いってみよう!」

串カツの店には数回足を運んだが、大阪の人にとっては本当にソウルな位置づけにあるとはいえ、べらぼうに旨いとか、そういうことを楽しむもんじゃぁないのだな、と思っていた。しかし、中には純粋に旨い串カツを追求する店があるということもわかってきた。

「あのなヤマケン、串カツ店には二種類あってな。一つはこの店みたいに素材重視で、いい素材をその持ち味を引き出すように揚げていく。もう一つはネタに仕事をして揚げるような店。例えばキスの実でなんとかのすり身を巻いてあげて、、、とかそういうヤツね。今度はその、色んな仕事をする店にもいってみよ」

ということだが、今日の僕の気分的には素材重視派でよかったと思うのである。

さて目の前には4種のタレ(ポン酢、ソース、和風だし、塩)が並び、そこへ先付けの一口カツが並ぶ。

「鮎をパン粉有り、無しの両方で味わって頂きます。タレには、ハラワタを甘苦くしたソースを漬けておりますのでお好みで、、、」


この鮎カツが実にイけた!
カリッと揚がったきめの細かいパン粉の層の歯触りを楽しんだ後に、ホックリ、ギシッと詰まった鮎の身肉からジュッとジュースがしみ出してくる。そこに甘苦いというハラワタソースの甘さと苦さが絡んで、どうにも溜まらなく美味しい。

ここは単なる串カツ屋ではなく、きちんと日本料理を修めた人がやっている創作串揚げ料理屋なのだな、と認識を新たにしたのである!

次に出てきたのが、なんと椀だ。

お椀の蓋に刻みを入れて、鱧を揚げた串の両端がぴょんと飛び出るようになっている。

「この鱧揚げを汁に落として、衣が柔らかくなったあたりで身をほぐしながら食べて頂くと美味しいです」

と言われたのだけど、鱧カツが秀逸だったので、そのまま食ってしまった!
椀は一番出汁に鱧の頭と骨からとった出汁を足したのだろうか、これもきっちりとした味に決まっている。やはりますますタダモノではないのであった。

そこからはもう怒濤のごとく20本をたいらげるだけだった。

どこかの鶏肉だったと思うが、ミンチの肉でチーズを巻いてある。囓ると中のチーズがツーッと溶け出て美味。

そして驚いたことに短角牛が出てきた!

「岩手の短角です」

「えっ なんでこんな素材を、、、」

「僕、岩手出身なんですよ。」

なんと!
この若店主、岩手出身なのである。
ここぞとばかりいろいろ訊いてみると、予感はしていたのだが、やはり辻調理学校の出身であった!
店で一緒に働いているもう一人もその同期生だという。
さすがは辻調、、、

「岩手の美味しいものをさりげなく店で出していこうと思ってやってます。毎年、産地にいって食材をみる旅をしているんですよ」

と、食材に対してとても真摯な態度を持った店主なのであった。

エビ、魚、万願寺唐辛子、レンコン、芋などさまざまな趣向をこらした串揚げを楽しみながらあっというまに20本。

最後は枝豆のリゾットを串揚げ(というよりコロッケか)にしたもの。これが実に旨かった!
枝豆の香りがきちんと弾ける火の通し具合、米は和洋折衷のいいあんばいの味付けがしてあり、思わずもう一本食べたくなる味だった。

最後の締めにお茶漬け。

お茶漬けといっても、きっちり引いた出汁をかけるものだ。大根の角切りが共に茹でられた出汁がご飯にかけられ、塩昆布が別皿で提供される。出汁を一口すすると、なんともいえぬあまやかな香り。一番出汁の鰹臭さのない、野菜中心のまろやかな出汁だ。

「うす~い一番出汁に、串につかった野菜や肉の端っこを全部いれて出したスープなんですよ」

と教えてくれたが、この茶漬け、旨い。最後の食事は断ることもできるらしいが、これを断ってはいけないと思う。

いや、すばらしい20串と食事であった!

酒も飲んで、これで一人6000円程度、十分に見合う金額である。大満足して店を後にした。

「どーする?ギョーザは?」

「いくに決まってるじゃん!」

最後は大阪の一口餃子。

ガイチいわく「全然話しにならん」という味だったので店は載せないが。

一通りメシを食った後にこれだけ食べてしまった。大阪・キタは実に情深い食の街である。
さすがにもうはいらん。ホテルに帰り、とにかくひたすら寝るだけであった。

Posted by yamaken at 12:34 | TrackBack

2006年08月18日

大阪では「めし」と書く

現在、大阪出張中。
何度かトライしているのだけど、なぜかFTPを使うことができないため、画像アップができないので文字のみ更新。

昨日は堺の菓子工房に行っていたのだけど、ロードサイドに「めしや」という看板が多いのに気づく。
関東では「めし」という言葉は話し言葉として普通に使われるけれども、看板などに「めし屋」というように使うことはあまりないように思う。それが大阪ではドカンと「めし」という看板が立っている。
でも、「めし」と書いた方が旨そうに思えるのはなぜか。そういえば関東では肉まんといい、関西ではぶたまんと言うが、どう考えてもぶたまんというほうが旨そうだ。

関西の言葉の方が、旨そうな匂いが漂ってくる語感を多く内包している気がするんだなぁ。

ということを考えながら、大阪市立大学前のトンカツ屋「もんしち」へ移動中。

Posted by yamaken at 11:41 | TrackBack

2006年08月16日

ハンガリアン・ホットワックスについて情報をいただいた!


唐辛子のエントリで、写真にある「ハンガリアン・ホットワックス」という品種について書いたら、読者さんから下記のような情報をいただきましたので引用させて頂きます。
どうやら「メチャ辛い」ようだ、、、(汗)

2年前にブタペストに行ったとき, blogに書いてあるハンガリアン・ホットワックスと 似たものをよく見ました.

めちゃくちゃからかったです.
臭みが強い料理にやくみとしてよく使われていました.
レストランで適当に数品頼むとかならずお目見えします.
千切りに近い状態でスープにかかっていたり,
フォアグラステーキについていたりしました.
日本で言うとねぎやきざみしょうがや
みょうがににているのかな,という印象です.
スーパーでは入口に山積みになっています.
大きいものでは10cmくらいはあったと思います.
この食べ物は地球の歩き方などの
ガイドブックにも紹介されていると思います.

ちなみにハンガリーは食べ物がおいしいです.
毎日のようにフォアグラを食ってました.

ご参考になれば幸いです.

Jさん、どうもありがとう!

Posted by yamaken at 17:47 | TrackBack

キュウリのピクルスを仕込む


久しぶりに今年はキュウリのピクルスも漬け込もうと思い、神奈川県三浦市の高梨さんに連絡をした。大根19種食べ比べの時もお世話になった人で、とにかく無数の品種群を作付けするチャレンジ農家さんだ。しかもそれを全て直売で売りさばいてしまうのだからすごい。

「ピクルス用はもう収穫の最後の方なのであまりいい状態じゃないと思いますけど、大小合わせて佳いんでしたらお送りしますよ」

ということで楽しみに待っていたら、本当に大小とりどりのピクルス用品種が送られてきた。

種苗の世界では、ピクルス用のキュウリというジャンルがちゃんと存在している。ご覧の通りいぼがあまり高くなく、適度にブルームをふき、そして半白キュウリのような柄になるものが多いようだ。南方系のキュウリなんだろうか、ルーツはよくわからない。知っておられる方、ぜひ教えて下さい。
これを親指大で収穫しピクルスにしてもよし、もう少し大きくしてもよい。

ピックル液にはあまり凝らないようにしている。米酢と水、精白度の低い砂糖と海塩を混ぜ、胡椒とニンニクを振り込んだものを沸騰しない程度に沸かして冷ましておく。

しばらく前から、酢漬け用の酢は、京都府宮津市の飯尾醸造から「富士酢」の一升瓶を取り寄せてふんだんに使っている。

■飯尾醸造
http://www.iio-jozo.co.jp/about/about.html

お酢や醤油などの基本調味料は、日々の食生活の根幹をささえてもらっているのだから、妥協はしないでいいものを使うべきだ。大体、大メーカの製品にくらべて高いといったって、週に3回くらい使うとして、その量で価格を換算すれば微々たるものなのだから。

出自のはっきりした米で仕込まれた米酢である富士酢は、香りも味も濃厚なため、出汁や水で割っても濃度が下がらない感じがする。よく造られた純米酒のようだ。


キュウリには軽く塩をして下漬けし、梅ジュースが入っていた大ガラス瓶に詰め込めるだけ詰め込む。2Kgは入っただろうか。一緒に届いたハバネロも数個放り込む。さてどうなることやら、、、

ここにピックル液を満たして栓をする。

明日にはもうキュウリの緑色が落ちてピクルス様になっていくはずだ。
サンドウィッチ、カレーの薬味、ビールのつまみ。一年もつかどうかわからないが、たっぷり楽しもうと思う。どう考えても市販品を買うより、豊かな気分である。

Posted by yamaken at 13:36 | TrackBack

唐辛子軍団の襲来!

いつも面白い野菜を多種多様に栽培し、直売で全て売りさばいてしまうという三浦の高梨農場から、唐辛子が大量に届いた。ピクルス用のコルニッションきゅうりをお願いしていたのだけどおまけとしてつけて下さったようだ。これがまた特徴的な美しい唐辛子ばかりなので、思わず激写。

■ハンガリアン・ホットワックス

本当にハンガリーにこういう品種があるのかわからないが、ワックスという名の通り表面が照り照りと輝く品種だ。大型の唐辛子で、料理にいろいろ使えそう。ハンガリーではグラーシュにでも入れるのだろうか。使い方を知っている人は教えて下さい。

■福耳

これはかなり大型の品種。
名前からして、福井県の技あり種苗会社である「福種」が扱っているものかと思ったら全然違ってサカタのタネの品種だった。
万願寺唐辛子のようにあまり辛味がない品種かと思いきや、種と綿の部分に辛味が集積していてけっこう刺激がある。ちょうどカレーを作っていたので、大量に刻んで入れると、ルーは甘めなのに唐辛子の具で辛いという絶妙な塩梅になった。

■ハバネロ・オレンジ

最近、暴君ハバネロなどのスナック菓子でも有名になったハバネロ。世界で最も辛い唐辛子の部類である。アメ横のスパイス屋さんである大津屋商店で、まだ市販前のハバネロパウダーを分けてもらったことがあるが、そこには「取り扱い注意 目にはいると失明するおそれがあります」と書いてあり、戦慄したことを思い出す。これはオレンジ色の品種。辛味は赤と同等だ。

■ハバネロ・レッド

こちらが通常の赤くなる品種。カレーの辛さ調節のために刻んで好みで入れるようにしたが、青く若い実はやっぱり激辛で飛び上がるほどだ!

■伏見唐辛子

日本の青唐辛子はやはり関西品種が有名で出回っている。
お揚げと共に煮浸しにでもするのがいいかな。
ちなみに最近は辛味がまったくない品種の育種が盛んだ。料理屋では、シシトウガラシの全く辛味無しのものが嘱望されているという。唐辛子は辛いのが通常なのだから、それは無い物ねだりだと思うのだけど、、、

■カイエンヌ

カレー粉に入っているのは通常、このカイエンヌペッパーの粉末だ。
実に強火力、グワッとアタックの強い、そして後を引く辛さを持っているカイエンヌ。安定した品種である。

これら唐辛子はナス科植物だ。ピーマンの近縁種であり、外観もそっくり。全世界的に栽培されていて、辛さの耐性は民族によってかなり差がある。ブータンなどにいくと、ほとんどの料理に唐辛子が使われていて、日本人にはとても食べられないものがあるらしい。アフリカもしかり。僕は数年前、タイで食べたソムタム(青パパイヤのサラダ)に混入していたピッキーヌーの種部の辛味が舌の最もデリケートな部位の味蕾を直撃し、2時間ほど絶叫しながら悶絶したことがある。こんなに小さい唐辛子が人を悶絶させるとは凄まじいパワーだ。

高梨さん、どれも面白い品種です。ご馳走様でした!

Posted by yamaken at 13:15 | TrackBack

2006年08月11日

3Dトンカツの雄 静岡市「蝶屋」は健在なり! やっぱりこの肉塊はヴィビッドに迫ってくる!


3Dトンカツ」というのは僕が勝手につけたネーミングだ。
通常のトンカツは、二次元である。横に広く縦に薄いから2D。しかしトンカツ店の中には、たまに極厚のカツを揚げるところがある。それはもう、二次元ではありえず、三つの方向に肉の辺がせり出し、明らかに三次元の存在をなしているのである。そうした分厚いトンカツを僕は3Dトンカツという。その3Dトンカツを出す店の中で、僕が最も大好きな店が静岡市にある。

「スクランブル交差点」といえば静岡市の住民だったらすぐにわかるだろう。駅から歩いて5分程度の呉服町という繁華街の真ん中にある交差点だ。

その交差点のふもとの、よーくみなければわからない細い立地に、トンカツ屋があるのだ。


この店が蝶屋(ちょうや)。
実は、この蝶屋についてはずーっと前の過去ログに書いてあるので、詳しくはそちらに譲りたい。
ちなみに、まずこの過去ログを読まないと、以下に出てくる用語などわからなくなるのでご注意を。

■静岡駅周辺