
一般社団法人国産生ハム協会が開催した「国産生ハムフェスティバルVol.10 in 吉祥寺」に参加した。これにはちょっとしたきっかけがある。
ブログ読者で聴いてくれている人もいるだろうが、僕はここ10年ほど、NHK第一ラジオ放送の週末早朝のコーナーに出ている。食の時事ネタを扱うのでアフリカ豚熱発生によりスペイン産生ハムが禁輸措置がとられた時には、もちろんテーマに生ハムを採り上げた。イタリアとスペインが×になり、いまや生ハムメジャー国で言えばフランス産しか入ってこない状況だ。そうなると、国産の生ハムが引っ張りだこになるかもしれない、という内容でお話しした。
その時に、「ただ、国産の生ハムは、ほとんどが塩水に漬け込んで作るもので、、、欧州の生ハムとは違う」ということを話した。欧州で生ハムといえば、豚肉の塊に塩をすり込んで乾燥・熟成させたものだが、日本における生ハム(カルディで「切り落とし」が売られているアレだ)の主流は、調味液に漬け込んで速醸的に製造するラックスハムが9割以上を占めている。欧州スタイルの本格的な生ハムを製造する業者もいるが、とても少ない。
ということで間違ったことを言ってはいないと思うのだが、国産生ハム協会の関係者の方がこのラジオを聴いていたらしい!
「やまけんがこんなことを言っている」ということで、会長の野崎さんから「ぜひ日本にも本物があることをお伝えしたい」と連絡があった。
僕もこの食い倒れ日記でお伝えしているように、国産の素晴らしいヨーロッパスタイルの生ハムが生産されていることは重々承知している。秋田には、赤坂グランビアの金子シェフが開いた生ハム工房を訪ねたし、「うまいっ!」で生ハム回があった際には、セラーノ尾島さんがわざわざ梅山豚の生ハムを食べさせてくださった。最近では北海道の北一ミートが取り組むクラフト生ハムを何度もいただいている。ただ、そうした本格派を製造する人達も全国的に増えているようで、そこにはとても興味があった。
で、この国産生ハム協会が開催する「国産生ハムフェス」があるという! ありがたいことに野崎さんにご招待いただいたので、台風大雨の中、行って来たのである。
いちおう、取材という呈で、午後の部が始まる小一時間前に。24生産者のブースではお弁当を食べて休憩をとっているところだった。一般消費者が複数業者のハムを食べ比べできる貴重な機会ということで、午前の部も盛況だったようだ。
おっと、日本で最も豚の品種を保有する人、富士農場サービスの桑原さん発見! 民間でさまざまな種豚を保有し、その精液や生体を販売しておられる。ご自身でもブランド豚を作っており、最も有名なのがあのルイヴィ豚である。
食い倒れ日記オフ会やってた初期だから、もう20年ぶりくらいだろうか。お元気そうで何よりだ。豚の育種の話しをちょろっと伺う。日本中で種豚の確保が難しくなっているようで、準メジャー種と言えるバークシャーでさえも、鹿児島方面から提供要請が来るそうだ。日本で黒豚を食べられなくなる日が来る可能性があるのだろうか、、、桑原さん、長く頑張ってください。
入り口近くで知った顔、発見!
いわて沼宮内の「肉のふがね」府金くんだ。短角牛の後腿を使った生ハム「セシーナ」を大成功させている。そのセシーナを持ち込んでいるのかと思いきや、「セシーナは売り切れ状態なんですよ~! 今日は、また違う豚の生ハムを持って来てます」と。
これがとても美味しいものだった。塩だけではなく麹カビもつけているそうで、なるほどなんとなく和を感じる風味がある。LWDの通常豚だが、ネットリした肉質、濃い風味で美味しくいただいた。
また別のブースにも岩手組、発見!
「佐助豚」の久慈くんだ。相変わらずデカい。
僕も肉のサカエヤの「わくわく定期便」の会員なので、数ヶ月に一度の割合で佐助豚が届く。これがまた美味しい。生ハムもなかなかにイカしていた!
会場内にいる生産者のバックグラウンドは、同じように養豚を行う生産者さん、そして肉を受け取り加工する精肉店またはシャルキュトリエ、そして生ハム製造だけを行う専門業者というように分かれていた。
一般入場者はチケットを購入すると、6生産者の生ハムを食べられる。24業者すべてのハムを食べたければその分チケットを購入するということになる。24種類の生ハムを食べ比べできる機会などそうそうないので、これはとてもいい機会だし、お得だと思う。
ここから僕は、24生産者を一気に回って試食をした。メモをとっている余裕は無いので、Pixel8のボイスレコーダーを回しっぱなしにして、そこにボソボソと「ええっと、●▲■さん、品種はLDB、熟成期間は30ヶ月、、、」といったように録音していく。まわりから観たら変な人だったと思うがゴメンナサイ。
クラテッロのように豚の膀胱で肉を包んで熟成する方法にチャレンジしている、北海道のサッカム・セタナイ。まだ取組はじめたばかりとのこと、面白かった。
青森県の大鰐町で、以前は放牧自然豚を育て、その肉を生ハムにしておられたおおわに自然村生ハム工房の三浦さん。残念ながらしばらく前の豚熱の関係で豚を放牧で飼えなくなり、いまは県内の通常豚を仕入れて生ハムにしているという。それでも、実に味わい深い(なんと30ヶ月熟成だった!)美味しい生ハムだった。
そして北一ミートの田村さん(右端)!クラフト生ハム、ビシッとした味わいで美味しいです。
霜降りがスゲぇな、と思ったら、なんとこの豚、望来豚(もうらいとん)だそうだ! 食物副生物をリキッド状のエサにして給餌する先駆けともいえる存在。美味しゅうございました。
そして、いらっしゃいました、赤坂で生ハムの美味しいスペイン料理店を営んでおられた金子シェフが率いるグランビア!
国産生ハムの製造についてはかなり初期から取り組んでおられた金子シェフ。さすがの貫禄の味わいだ。
そして小豆島からやってきた草壁生紅腿製作所!
なーんと! 赤身が濃いなと思ったら原料はオリーブ夢豚だという! うわーそうか。オリーブ夢豚はLWB、つまりバークシャーが50%以上入っているのだ。
こちらも、醤油の島である小豆島の特性を活かして、白カビに加えて醤油麹をつけて熟成しているそうだ。日本らしく旨味が効いた味わいだった。
この調子でいろいろ話しを聴きながら24生産者を廻ったのだが、10種くらい食べた段階で、かなり舌が疲れてくる。塩味が強く、発酵食品のようなものなので、キツいのである。水を補給しながらひたすら食べていく。
群馬県の赤城にある和豚もちぶたを使用した生産者さんが2軒あって(地域は違う)、その生ハムの味わいに共通項が多々あって、原料豚の質が生ハムの味わいに大きく出るのだなぁ、と実感した。どちらも言っていたのが「皮付きの肉を仕入れたかったんです」とのこと。面白い。
豚の品種と言うことで今回もっとも際立っていたのが、マンガリッツァ豚を用いた生ハム。もう見た目が他のものとまったく違う!
真紅の赤身、これはなんと36ヶ月齢の母豚だからだ。そして、常温においただけでテロテロと溶け出す脂!
味わいも一線を画していた。やはり品種の力はスゴい!
いつの間にか、会場内は一般の参加社でごったがえしていた。ワインやパンも一緒に食べながら、食べ比べをしている。
むっちゃいいイベントだな。野崎さん、いい機会をありがとうございました。本格的な国産生ハムのこともしっかり伝えていきます。