うえーん忙しいよぉ 今月は恐怖の出張月間。東京にいる間に処理できないうちに次の旅先へ出張、、、まあいいや。そうしている間にも、僕の牛たちは育っている。
岩手県二戸市で僕がオーナーになっている短角牛の子供「さち」と「国産丸」は、まったくもってすくすくすくすくと育ってます。
二戸市の稲庭岳にある大清水牧野。45頭程度の一群が放牧されている。
この日、いつもお世話になっている杉澤君は地元の祭りがあるので欠席。個体識別の名人がいないので耳標の番号をつてに国産丸を探そうとするが、見つけられん! 実は「ここにはいない!」と勝手に判断して他の牧野を探したりしたのだが、じつはきちんとここにいた。しかも僕は最初に僕のオーナー牛母子をきっちり写真に撮っていたことが判明(涙)
この二頭が僕の短角牛です。何しているところかわかりますか?授乳シーンです。牛はこうやって身体をたがいちがいにして授乳をするのです。
ということで今回は授乳シーン特集。
この子が黒いのは、短角の母に黒毛の精液をかけたタンクロだから。
この日も爽快な晴れ。牧野は最高に気持ちがいい。
実はこの日、岩手県北部では名門企業である十文字チキンカンパニーの十文字社長が「僕も時間空けますから、遊びましょう!」とついてきてくださった!もちろん手にはニコンD90を携えて、、、
この日はそもそも雑誌「専門料理」の連載につかう写真撮りだったので、大山カメラマンがバシバシと写真を撮る。
彼はキヤノンユーザ。5DマークⅡと40D。
僕が国産丸たちに近づいているところを撮りたいのだけど、なかなか上手くいかない。短角牛さんは基本的には人間を避けるのですよ、、、
ああ、シャイな子達、、、ブラウンスイスだったら何もしなくても寄ってくるのに。
さて
稲庭岳を降りて「さち」が肥育されている漆原さんの牛舎へ。
二戸もすっかり秋だ。
これは長芋。もうしばらくしたら収穫かな。
漆原さんは二戸市最大の短角牛肥育農家だ。もちろん腕前も確か。食物残渣を中心に、雑穀のヌカなどを与えて短角を育てている。
はい、さちはこんなにでかくなりました。
もう少女じゃないなぁ、、、
この子は来年のいまごろ、肉になります。まだ考えたくない。あーあ。
さておなじみ短角牛といえば山長ミートの経営する「短角亭」にて。
めったに食えない短角牛のタン。
美味しゅうございました、、、
明日から高知に行ってきます。
今回の北海道はそもそも、登別の加工食品メーカーさんたちとの商談・商品開発相談会という仕事だった。当地の商工会がらみの組織が僕と百貨店の丸井の食品バイヤーである溝口さんを呼んでくれて、地域メーカーの商品に関しての相談にのるというものだ。
うらで動いてくれたのはもちろん、「ラーサラ三郎」の大ヒットの主役である望月製麺所の泉田社長だ。
空港から会場をめざしながら、昼食はもちろん望月製麺所のラーメンを食べたいので、登別の「鉄平」へ。
前回食べられなかった醤油味を所望。
いやここのラーメンが旨いのですよ。僕がラーメン喰いたいって言うのは本当に珍しいんだけど、、、
無化学調味料でキレのある味を出していて、再仕込み醤油の深い香りがとてもいい。でもなにより、麺が旨い。望月製麺所の麺は道産小麦にこだわっている。グルテン少なめの食感と風味重視の麺だからだ。
いやー旨かった。店長、また寄りますワイ。
さて商談会。いろんな製品がでてきてこれがまた楽しい。一件40分という時間が果たしてもつのか?と当初は溝口さんともども心配していたのだけど、そんなのは杞憂だった。どの商品もストーリーがある! 詳しくはここでは書けないけど、、、
面白かったのはこのうずらの玉子製品。
国内ではここしかないという、完全に外部からの病原菌が入っていないうずら農場のオーナーさんだ。元々、大手養鶏生産者組織の飼料担当者だったので、飼育のノウハウは全て持っている。その人が、「ここはすごいぞ」と目をつけたうずら農場。

とくに右側のうずらの玉子の燻製が実にいい。類似商品は多々あるが、これは半熟なのだ! しかも使っているのは塩のみ。あとは燻製するだけ。これは言い商品です。
とまあ、そんな感じでいろんな商品開発の相談を二人で受けた。商品開発のコンサルはあるけれども、このようにまとめて一日でいろいろなメーカーさんの相談に乗るのはかなり疲れる。けれども、実に面白かった。溝口さんは百貨店のバイヤーの視点から、現実的にどうすれば購買できるのかをアドバイス。僕は、世の中的にどんな要件を持っていて欲しいか、荷姿はどうか、といったことをアドバイス。
「二人で全国行脚して『鑑定団』みたいなのやろうか?」
と溝口さんが言う。うん、それ、ニーズもあると思うし、やりたいですね。地域の商工会さん、ニーズあれば声かけてください。
さて合間におやつを食べに、山の上の泉田家へ。
奥様お手製、ラーメンサラダ。ものの数分でできてきたのでビックリ!おかひじきのシャキシャキした食感が実にいい。
そしてこれは開発中のカレーラーメン。
ん、もう商品化していいくらいの完成度!
さてこの後は溝口さんと僕とで講演。フルに話して疲れたが、二人で事に当たると分散できるので助かったのだ。いつも一人でやってるからなぁ、、、
さてこの日のクライマックスはこの後の打ち上げだ。
「やまけんさんは、普通の店よりもご当地らしさのほうが大事だと思いまして、急遽焼き鳥屋へいきます!」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
この地の焼き鳥といえば、室蘭焼き鳥である! 「やきとり」といいながら、具材は豚肉!間には長ネギではなくタマネギが刺してある。これを甘辛しょうゆダレで焼き上げるのが、労働者向けの堪らない味なのだ!
結論からいうけど、スゲー旨い!
タレが普通の室蘭焼き鳥とまったく違うんですよ。なんだか不思議な酸味がある。果物?ようわからんけど、この酸味がクセになるのだ!
もちろん炭火。
「最近は室蘭でもガスで焼く店が多くて、いやなんだよねー 気持ち悪い匂いになるんだよ」と泉田さん。
ほいっとタレにつけて、「精肉」が出てきた!
うーん
素材の味とかそんなものをブワッと吹き飛ばすような照り照りの外観。いいですのう!
それに注目すべきは黄色いカラシ。
「俺、大学で東京に出て焼鳥屋いってビックリしたもん。鶏肉だし、カラシがついてこないんだもんね。」
と真顔でいう泉田さん。いや、東京に出たことがある人達みんなが頷いている。
まあとにかくこのタレがすばらしく旨いのだ。水飴と醤油とみりんで煮詰められただけじゃなく、なんだか清涼感のある甘さと酸っぱさ。これ、なんなのよ!?
「それだけは言えないのよねぇ」
とおかみさん。うーんそうだよな。

もちろんタレ焼き以外も旨い。
「はいよ」
と山ワサビ。ツンと来て旨い!
「これ食べたら明日、大変よ!」
といいながら出してくれたギョウジャニンニク。
「これ食べると寝られないよ」とか言われるモノって結構嘘が多いが、これは確かに大変。それは匂いが、、、
食いも食ったり28本。これ私の戦果です。
しばらく前の朝日新聞週末版「Be」誌上で、B級グルメランキングをやったのを覚えている人もいるだろう。実は僕も選者の一人だった。室蘭焼き鳥はトップ10に入ったのだけど、もしこの店と早めに知り合っていたなら、もう少し点を入れてしまったかも知れないな、と思ったのであった。
この店、マジで旨いです。泉田さん、皆さん、ありがとうございました、、、
どうやらウィルコムが難しい局面にあるようだが、俺は最後まで応援する。ウィルコムのPHSは、唯一残された低電磁波携帯電話だからだ。
僕はいまだに3G回線を使っていないけれども、その最大の理由が電磁波なのだ。科学的な観点からは携帯電話の電磁波による健康被害は確認されないと言うけれども、それはあくまで「現在の科学では」という話である。そんなもの、俺は信じない。巨大な電磁波発信器を頭の横につけて通信することが、なんともないはずがない。
しかし携帯電話とくに3G端末の電磁波にくらべ、PHSは1/20の電磁波で効率よく通信を行う。音声品質は間違いなく携帯端末のなかでいちばんよい。しかも、安い。新幹線では無理だけど、ほとんどの移動時にも繋がる。
だから無くなってもらっては困るのだ。頑張ろう、PHS。
6月に畜産システム研究会で訪れた北大の静内牧場を再訪している。放牧に向く肉牛である短角和種とヘレフォード種を完全放牧で飼っているキャンパスだ。
マルイの溝口さんと、望月製麺所の泉田さんも牧場まで来てくれた(というか送ってくれた)。北大の秦先生が迎えてくださり、ウニモグにて夕暮れ時の牧場内をさっと散策。

都府県に住んでいるぼくらには、470ha(東京ドーム99個分)の面積はにわかに想像がつかない。その中を、ゆうゆうと牛たちが生きている。

溝口さんも思わず「広いよねぇ、、、」。
間の悪いことに、なぜか〆切が17日昼あたりまで、という原稿が3本もあることが昨日に判明。牧場内はもちろんウィルコムのアンテナはない。今(23時)から書いてなんとか回線を借りて送信しまーす。
料理人向けの雑誌「専門料理」(柴田書店刊)で連載を書いているのだけども、そのテーマが牛肉だ。短角牛のことから始まり、赤身肉・ドライエージングビーフという、これまでの日本の牛肉流通とは別の価値観の話をしている。これが密かに反響があるらしく、編集部に某有名料亭などから「あのヤマケンさんがやってる牛肉の食べ比べ、うちでもやりたいんだけどな」という連絡があるらしい。実に面白くなってきた。
で、最近はまっている面白いキーワードが「経産牛」だ。お産を経た牛を経産牛(けいさんぎゅう)という。このブログでも数回書いているように、肉牛にはオスを去勢した去勢牛か、メス牛を肥育するという二通りある。メスのほうがきめ細かく肉質もよいと言われることが多いが、オスより生育スピードが遅く、肥育に時間がかかる。で、メスは通常は未経産牛、つまり子を産ませない状態で一定の期間肥育して出荷する。
一般的に、肉牛にする牛と、子を産ませる牛とは明確に区別され、肉牛は最初から濃厚飼料と呼ばれる穀物中心の餌を与えて育てる。子を産ませる牛を繁殖牛というが、こちらは長く健康に飼わないといけないので、粗飼料とよばれる草などと配合飼料をバランス佳く与えて育てることとなる。
通常、繁殖牛は4産、5産と子を産んでもらわないともとが取れない。えさ代がずっと掛かっていくわけだからね。そしてある程度の子を産んで、乳の出が悪くなったり、生まれてくる子供に問題が出たり、もしくは人工授精が上手くいかなかったりすると、「淘汰」される。淘汰とはつまり廃用牛として出荷してしまうことだ。その場合、と畜された肉はミンチなどになることが多い。これも以前書いたとおりだ。
しかし、経産牛は旨いという信念を持っている人達の中で、子を産み終わった経産牛に半年程度濃厚飼料を与え(再肥育という)、肉牛として出荷することがある。以前書いた、島根県のかつべ種畜牧場さんのお母ちゃん牛は、もの凄く旨かった。料理人達もみな「なんじゃこりゃ!?味も香りも濃い!」と驚いたものだ。
■ご参考:下記エントリの後半に出てきます↓
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2009/04/post_1306.html
実はこの肉を食べる前から、いろんなところで「経産牛は旨いよ」という話を聴いており、肉も分けてもらって食べてきた。そしてここのところ意識をして経産牛と未経産牛の食べ比べをしてきて、自分のなかにきちんとした尺度が生まれつつある。
経産牛は、未経産牛よりも風味が深くなり、脂の質も向上し、味も濃くなって旨いようだ、というのが僕の現時点での認識である。
こういうことを考えて書いていたら、北海道の十勝のとある牧場で、F1牛を経産牛にして肉にしている農場の人達から連絡があったのだ!
「やまけんさんのブログを見て思わずメールしてしまいました。私たちは牛肉本来の味を取り戻すことを目標に、F1(黒毛×ホルスタイン)のメスを経産肥育しています。肥育をやられている大先輩から経産の牛は美味いと教えられ、現在の経済効率優先の若齢肥育に疑問を持ち、美味しい経産牛を再現してみたいと思っています。」
この方によれば、経産F1を肥育すると肉色は濃い赤になっていき、サシはあまり入らない。そして味には深みが出てくるという。月齢が進むにつれて脂肪融点が下がり、不飽和脂肪酸とアミノ酸の含有量が増えていくらしい。この、F1の経産牛の肉、特別に生の状態で送ってもらえることになったのだが、どうせなら通常の未経産牛の肉と並べての試食会を開いてみたいと思って東京バルバリの小池シェフに肉を分けた。もちろん僕も食べた。
いやもう びっくりした。黒毛に特有のブドウのような香りも持ちながら、脂があっさりとしているので嫌気なく食べられる。同量の黒毛A4クラスの肉だと重すぎてイヤになってしまうところだ。
小池君からも「うーん こんなF1は初めてです。うちでもよく使いますけど、これは旨いですね。」という。
せっかくなので、このF1の経産牛肉をいろんな牛肉と食べ比べよう!と言う話をしたら、その牧場から社長と営業担当者の二名が上京してご一緒したいと言う。それならばこちらも布陣を整えようと、某料理専門誌二誌の編集者をお呼びして食べ比べを行ったのである。
その上士幌にある牧場の担当者さんとはメールや電話などでやりとりしていたのだが、その時は結構年配の人が担当しているんだなぁ、と思っていた。しかし、東京バルバリで待ち合わせてやってきたのは、実にパワフルな若者だったのだ!
会社名はノベルズ。しかしほとんどネットとかには企業情報は出てこない。それもそのはずで、できて間もない会社だ。親御さんの代からF1牛の肥育をこなしてきて、今回社長さん自身が、「経産牛に賭けてみよう」と作った会社なのだ。現在は市場出荷などが中心だというが、市場ではF1というだけで叩かれてしまう。経産牛のF1は旨いということをきちんと訴求できなければならないので、彼らの課題はマーケティングである。
ちなみにホルスタインのメスに黒毛の精液をつけたものがこの国で主流のF1牛。肉質は、牛肉の格付からすればそこそこのB2~B3クラスがメインとなる。F1牛は安い国産牛肉の代名詞なのだ。
しかし、、、まあ予想はしていたが、経産牛のF1は実に実に美味しかったのだ!それも、ロースだけじゃない全部位が!
今回のためにノベルズが提供してくれたのはこんな部位!
うちもも 5.5kg
いちぼ 3.4kg
しきんぼ 2.5kg
ともすね 2.2kg
まえすね 4.4kg
ネック 3.6kg
肩ロース 4.3kg
三角ばら 2.6kg
ともばら 3.7kg
うで 2.1kg
とうがらし 2.4kg
リブロース 3.2kg
サーロイン 3.2kg
ひえええええええええええええええ ほとんど全部位じゃん!
これに小池君が答えないわけがない。プレミアム短角牛全部位コースをヤッタ時を彷彿とさせる料理が並んだ!
■前菜
■シンタマのチーズソース。詳しい名前は失念、、、
■ウデ肉(だったと思う)のコンソメ仕立て
もちろんコンソメはF1経産牛からとったもの!
■ちりめんキャベツを添えた経産牛ラグーのパッパルデッレ
ここまでは小池君の料理センスがビカッと光るわけだが、どれも実に美味い。同席した料理雑誌編集者のみなさまも熱心に話を聴きながら舌鼓を打つ。
ちなみにこの日は、赤身に合うリーズナブルなワインということで下記3本を飲む。どれもエノテカのワインですな。

一番赤身肉に合うと思ったのは左端のカラバス2006年。個人的にはデキャンタージュされない尖った感じのうちに呑んだ方が美味しく感じた。
さていよいよ食べ比べだ。正直、われわれが感じた感想を書いても余り伝わりにくいと思うので、とりあえず列記。
■経産牛F1(一経産)と未経産の黒毛A4のカルパッチョ
左がF1。もうこの時点で編集者3名が「うーん 全然違う!」。脂の重さが、質的に違うのだ。
経産回数が多くなると、脂肪が黄色くなってくるというけれども、2産、3産くらいまではそうはならないらしい。脂は綺麗な白色、しかも融点は低い。
さて、焼きだ。
■経産牛F1
■短角牛(未経産)
そしてこの日のために冷凍保存しておいた、島根県のかわむら牧場から送られてきた9産したおばあちゃん牛!
■黒毛和牛(9経産)
■未経産の黒毛和牛
ざっと最初からの流れを言えば、経産牛F1は濃厚さとさっぱりのバランスのとれた、食べやすく満足感も高い牛肉。その次に短角牛をたべると、やはり若干あっさりしている。赤身中心だからこれは想定内。ということは、経産牛F1は赤身肉ファンよりは、黒毛的な味わいを好む人に対するいいソリューションだということだ。
そして、、、次に食べた、かわむら牧場から送られてきた9経産の牛は実に実に最高だった!冷凍だから比べるのが可愛そうかと思ったが、肉の味・風味はものすごい濃さだった。個人的にはベスト。ただし、濃厚飼料をたっぷり与えた味が全面に出てきているので、食べ続けるならば経産F1に軍配があがる。
面白かったのは、最後の黒毛和牛A4の肉に至って、みんなが「うへー きつい」と言いながら食べていたことだ。まったくこの肉だけ異質。少量しか食べない(一人一切れずつ)のにも関わらず、胸にずどんと落ちる重さがものすごい。しかも、あんまりいい重さじゃない。
ということで、この経産F1にはみなが「すごい可能性あるんじゃないの?」という声を上げた。経産F1も、そして9経産の黒毛も旨かったのだから、これはもう経産牛という、古くて新しいジャンルがもっと注目されていいと思うのだ。
というわけで、、、
明日から北海道に出張してきます。一日目は登別にて商工会関連の仕事。商談会プロジェクトなのだけど、二日目以降は畜産研究デー。18日の午前中に、ノベルズの牧場に足を運ぶこととなった。
リアルタイムは無理だが、報告します。
最近、牛ばっかだ、、、でも、大型動物って、写真映えするのですよ。大好き。ではいってきます、、、
実は大学生の頃、パン焼きが大好きだった。中古の電気オーブンを友人からただでもらってから、かなりの回数、パンを焼いていた。きっかけは、当時好きだった女の子が「私パンが好きなの~炊飯器も持ってないのよ」というのでそうかそうかじゃあ俺がということが始まりだったのだけど(笑)、その後、パン作りの深淵にどんどんはまってしまったのだ。最初はイーストで粉はカメリヤだったけれども、大学の教授でもありコンピュータグラフィックアーティストでもあり僕の畑サークルの顧問でもあった藤幡正樹さんの奥様の天然酵母パンを食べて、ガツンとショックを受けた。とんでもなく旨いのだ。彼女はホシノの酵母を使っていたと思うけれども、発酵にも気を配り焼きもきっちりだったので、それはもうお店のパンのような完成度だった。
僕はと言えば、最終的には当時は入手経路が限られていたオーガニックの全粒粉を1割程度と国産の強力粉を使い、ホシノの酵母、バター、塩、粗糖という布陣での焼きに行き着いた。ただしかなりの手抜きで、夜にでかいボウルで捏ねた後、冷蔵庫にいれてそのまま眠る。朝、大々的にふくらんだのをパンチングしてガス抜きをし、二次発酵はしないで3玉に分割し、食パン型に入れてしばらくベンチタイムの後に焼き上げるという超・手抜きパンだった。それでもまあ食える味にはなった。148円で売ってる大手パンメーカーの、原材料の一括表示欄に「これは本当に食品なのか!?」と声を上げそうなくらいに添加物が行列する食パンよりはよっぽど旨いと思いながら食っていた。
卒業後、会社の寮に入ったのでオーブンは手放した。その後も、僕の家にはオーブンレンジしかないので、食パンは焼いてない。そもそも、食べたいと思う食パンがあまりないので、我が家では嫁さんがたまに買ってくるパンくらいしか存在していなかった。
最近ではパンの世界も多様化していて、技術的にも素材的にも相当にこだわりのある人達が多いようだから、パンを語るつもりはまったくない。けれども、なかなかに心打たれるパンに出会ったので一筆。
藤花(とうか)という、オンラインのパン屋さんがある。齋藤利恵子さんという型が秋田県の湯沢で営む小さな規模のパン屋だ。きっかけはこれまた大学時代の同期の友人が、
「涙が出てくるような味の、身体に優しい高品質なパンなのよ」
と教えてくれたことだ。
■藤花
http://shop.syokupan-tohka.com/
Webの会社紹介をみればわかるが、材料は全て理由があって納得できるものばかりだ。
小麦粉は国産の「ゆきちから」。北海道以外の都府県で栽培されている品種だ。そして酵母は、レーズンから培養した自家培養酵母。砂糖はてんさい糖に塩、地元湯沢の低温殺菌牛乳、そしてモルトとバター。
これだけだと何がこだわっているのかわからないひともいるだろうけれども、ひとつひとつに理由がある。バターを使わないのはおそらくショートニング等に含まれるトランス脂肪酸に配慮してのことだろうし、テンサイ糖とサトウキビ糖では風味が変わる。そして、やはり自家製酵母でやっているところだろうか。
天然酵母にもいろいろあって、一般的には粉末状にされたものを買って家で水やスターターを加えて加温し、酵母をめざめさせて使う。けれども、こうした方式の酵母には「天然」といいつつ、いろんな添加物を使用していることが多い。僕はそうした天然酵母のユーザーでもあったので、まあいいじゃん美味しければと思っていたけれども、実際にどういう物質が添加されているかというのを観たときには「ゲッ まじで?」と思ったものだ。まあ、酵母は培養していくものだから、量的には希釈され微々たるものになるので問題はないと思うが、化学物質に対して過敏になる体質の人もいることだし、問題として重大ではある。
で、藤花の齋藤さんのパンは、天然酵母をレーズンからおこしている。レーズンといっても黒っぽいやつではなくて、オイルコーティングしていないグリーンのものだ。これを水に漬けておくとある時点からブドウの周りに付いた野生の酵母がぶくぶくと起きてくる。そこに餌となる小麦粉とかを加えて温度管理をすると、にちょーっとネトネト伸びる天然酵母になる。ま、それは初心者のやり方だけど、これをきちんとやって培養して酵母にしているのだろう。僕ももちろんやっていた。ブドウだけじゃなくて山芋とかニンジンからも作ったことがある。
けれどもね、、、 僕のレシピのせいかもしれないけど、あんまり美味しいパンにならなかったのだ。だから僕は、市販されているホシノ酵母をよく使っていた。美味しい天然由来の酵母ができればそっちを使いたいけどね、、、と思いながら。
まあここまで書けば藤花のパンがどうだったかというのは想像つくだろうけど、ブドウ酵母を使っていて、とっても美味しいのだ!

食パンは、バターを使った通常のものと、奥にあるのが全粒粉パンかとおもったらさにあらず、焙煎した小麦胚芽と亜麻仁(アマニ)を使ったものだ。 パッケージに書かれている原材料名をみて欲しい。二行で簡潔に終了。これがパンだよなぁ。

ベーグルも二種。プレーンとカフェオレ。カフェオレベーグルが意外にもとってもいいお味だった。コーヒー豆についてもかなり厳選されているようだ。
で、食パン。

ご覧いただければおわかりの通り、断面のきめの細かさ、均一性がとても素晴らしい。
僕にはこんな食パンは逆立ちしても焼けない。そしてお味は、本当に華美なものを削ぎ落としたシンプルなもの。でも、発酵の香りがプワンと美しく立ちのぼる。胚芽とアマニ入りのパンは風味とこくがあり、個性の強いおかずを挟んだサンドイッチにするとイケルはずだ。
僕の友人が「優しいパン」というのがよーくわかった。そして、大手メーカーの、さまざまな油脂や添加物が入った食パンに慣れているひとからすると「物足りない」と思うかもな、とも感じた。それほどまでにいま市販されている大手の食パンは人工的な味だからだ。
僕の母校である自由の森学園高校の食堂でも、天然酵母のパンを毎日焼いている。そのパンの味も、実に実直でシンプル。それを食べつけていたら、おそらく大手のパンは気持ち悪い味に感じるのだろうなと思う。そんなことを思いながら、久しぶりに食パンを食べた。
もっとも、僕はたまにジャンキーなものを思いっきり食べたくなる性分であり、事務所で仕事が詰まってくると、コンビニでランチパックのコロッケ&玉子とか買ってきてわさわさと食べてしまう。とことん人工的な味のパンも実は好きだったりする。けれどもさすがに、家では喰わん。家できちんと食事として食べるなら、こういう食パンが食べたい。そう思えるパンに久しぶりに出会った気がするのである。
教えてくれてありがとうね、廣瀬。
うーむやっとこのうどんのことを書ける、、、実際に足を運んで衝撃を受けたのは、舌の写真をみればおわかりのとおり、桜の咲く春だったのである。

愛媛県大洲市と深く関わり合い始めているわけだけれども、市役所の河野さんから
「ぜひ連れて行きたいうどんがあるんですよ。これがまた、お店とかそういうんじゃなくて、絶景の山の上ですする炭焼き集団のうどんなんですよ!」
という興奮気味 の紹介があったのである。なにかというと、集落の仲間が集まって小屋を建て、共同で炭焼きをしている「平野煙友会」という集団がある。「煙の友」というのが楽しいネーミングだ。

で、この平野煙友会のメンバーが、炭焼きだけじゃつまらんし、弁当もってきてもなーということで、いろんな旨いうどん店を歩き回り、修行もし、いつしかうどん打ちのスペシャリスト集団になってしまったのである。
最初は炭焼きの仲間達が、作業の合間にうどんをすするというだけでやっていたのだけれども、炭焼き小屋を見に来るひとも増え、どうせなら観に来た人にふるまおうということになり、こんな風↓になったのである。

そう、毎月7日を「うどんの日」として、集まってくれた人々にうどんを食べさせる。ただし飲食店ではないから、うどんを出すということではなくてあくまで炭焼きの模様をみていただくというのが趣旨。そのついでにうどんも食べてってや~というものだ。
実は、、、 驚いたことに毎月7日をめがけて予約が殺到して、定員をオーバーすることが多いと言うほどに人気を呼んでいるのである!
今回、特別に7日以外の作業日に、うどんを茹でていただいたのである!

山の中腹にある炭焼き小屋の横に、うどんののれんがかかるスペースが。奥にみえる大釜 にすでに湯が沸いている。

こちらが 代表の松平さん。いきなりうどんを茹でてくれという要望を聞いてくださってありがとうございました!
さてぐらぐら沸いた釜でさっそくうどんを茹でる。ちなみにここのうどんが旨い理由は、湧き水を使っているからだという。たしかに水道は通っておらずでかい水タンクがしつらえてある。湧き水で茹で、湧き水で締めるのだからそりゃぁ旨いに決まっている!
松平さんが捏ねて打ったうどん麺を釜に投入。

ちなみに会にはうどん打ちの名人が数人いて、人によってもまた味が違うらしい。
それにしても、山からの風景はとても美しい里山のみはらしである。釜から上がる湯気をすかして眺めているだけで心地よい時間が流れていく。

ちなみにここの本当の趣旨はあくまで炭焼き (笑)炭焼き窯をみせていただく。
僕も昔、新潟の山中で炭焼きをさせていただいたことがあるが、これまたいい時間が過ぎていく作業だ。
この日、煙友会では竹炭を仕込んでいた。

窯に竹を隙間無く詰めていきながら、 その横で窯の口をふさぐための粘土を練っている。この赤い粘土のテクスチャーがまた美しい。
「おおっと、まだうどんが茹だるまで時間があるから、豆腐田楽やいといてよ」
と松平さんから、田楽サイズに切った硬豆腐と竹串を渡される。

しっかりと焼き目をつけて、フキ味噌を塗って香ばしく炙る。

絶品だぜ、、、 ちなみに大洲の豆腐は田楽に向いた堅めのものだ。風流な味である。
さてそろそろ茹で上がり。ちなみにここのうどんはお隣香川県のさぬきうどんの流儀だけど、味付けはじゃっかん愛媛風。なにが愛媛風かというと、つゆがさぬきより少し甘い(笑)それがまた旨いのだ。
薬味もお好みで一杯。

生み立ての玉子もほれこの通り。

さーて茹で上がり。
まずは茹で上がったのをそのまま、あらかじめ玉子を溶いておいた器に入れて、釜玉だ。これを最初にやった人は本当にエライ。釜玉はうどん会の地位向上に確実に資する発明であったと思う。

ここに、例の甘いつゆを注ぐ。つゆはもちろん松平会長のお手製である。何度も言うが甘くて旨い。

うん、いいうどん、美味しいうどんです。 愛媛のうどんはそんなに腰がないのが多いけど、平野煙友会のうどんはほどよい腰を追求している。釜揚げ状態だとホヤンとした柔らかさと適度な腰が共存する。

思い思いにみな、ざるからうどんをたぐって食べに掛かる。
「さーて ひととおり食べたら、今度は水で締めるよ!」
と松平さんの声が掛かる。

ここで出てくるのが、湧き水タンクである!
考えてみればこれは一番の贅沢だ。水の美味しくない地域でやったって、絶対に叶わない。よく締まったうどんを、こんどは特製つゆと大根おろしと青ネギでいただく。写真取り忘れるほどに旨い。またたくまに4杯くって、お腹いっぱい。

炭焼き作業が一段落した煙友会のメンバーさんたちも合流して、思い思いの食べ方でうどんをすする。

いや、なんともたまらないいい時間です。

食べたい人は毎月7日に、事前に予約の上で集まること。それだけじゃなく、心構えとしては「お店じゃないんだから、仲間に入れてもらうという気分で」行くことをお薦めする。ほんとに味のあるおじちゃんばっかりだから、炭焼きの講釈を伺っているだけでも楽しい。そしてその脇で茹でられたうどんを、この景色の中で啜り込むのが、、、また素晴らしい。
隠れた愛媛県大洲市のスポットであった。ああ、また喰いたい、、、
告知がむちゃくちゃ遅くなっちゃったのだけど、岩手県北部でまた違うイベントが今週末に開催される。
■全国雑穀サミットinかるまい
H21年9月12(土)、13(日)
軽米町民体育館
http://www.pref.iwate.jp/view.rbz?cd=20391
日本最大の雑穀産地といえば岩手県である。軽米町や二戸市は季節風の影響で稲が獲れにくかったこともあり、昔から雑穀を食べる文化が発達していた。そう言う意味では昨今の健康ブームで注目される前からずっと雑穀料理を食べていたわけで、先進地域であり雑穀料理の先駆者達が居る地域でもあるわけだ。
今回のサミットは二日間に分けて開催されるが、とくに二日目の雑穀圃場見学ツアーと、その後に開催される雑穀料理昼食会が圧巻である。きっとすごいことになるだろう。
今から参加したいと言う人、もう申し込み〆切はしていると思うけど、連絡してお願いしてみれば何とかなるのではないかと思う。といっておいて、僕はこの日、足を運べない。残念だが、行く人いたらレポートお願いします!
出張三昧で告知が遅くなりましたが、岩手県北を巡る旅へのご応募、定員を上回っているのでまたもや抽選になります。明日で申し込みを〆切って抽選とさせていただきます。ご当選のかたも、残念ながら漏れてしまった方も連絡を差し上げますので、どうぞよろしくお願いいたします。
今年の応募者は飲食関係者が多い!お店をやっている方、これから開業されるかたなどがけっこういらっしゃるので、向こうでつっこんだ話になりそうで楽しみです。
放牧された短角牛のバックに、ご覧の通り綺麗な海が、、、まさに絶景、最高のロケーションだ。でもじつはここ、短角の里である岩手県じゃあない。ここは京丹後の網野町。海を望むこの放牧地は、「日本海牧場」という会社法人がとりくむ「京タンクロ和牛」の母牛のためのものだ。
短角牛に短角牛をかけると純粋な短角牛が生まれる。短角牛に黒毛の精子をつけるとタンクロという交雑種(F1)になる。このF1は割と美味しいのでよくつくられているけれども、市場取引では非常に安値で買いたたかれてしまう傾向がある。
通常のF1は乳用種であるホルスタインに黒毛の精液をつけるのがほとんどだ。でもそのF1と短角×黒毛のF1とでは、あたりまえだけど全然味が違う。もちろんタンクロは非常に美味しい。だから、京都の丹後ならではの育て方をしたタンクロを、なんとか普通のF1としてではなくブランド展開していこうというのが、この「京タンクロ和牛」プロジェクトだ。プロジェクトの推進をしているのは、西日本で短角牛のすばらしさを伝導している第一人者である焼き肉「南山」の楠本社長だ。僕もこの取り組みの委員を拝命したので、お手伝いをしているのである。
日本海牧場の牧野はほんとうに傾斜のきつい山に展開されている。
放牧されているのは母牛のみ。本当は生まれた仔牛もそのまま半年くらい親子放牧すると佳いと思うのだけど、面積や傾斜のきつさを考えると、ちょっと難しいらしい。

この短角ちゃんたちは、みな岩手県の市場で購入したものだ、じつはこのように短角が東北以外の産地に買われていくことはけっこうある。放牧に非常に適している牛田から、いままで短角をやっていなかった土地でも飼うのは楽だが、問題は販売だ。どこもまだまだ黒毛一辺倒の流通のなかで苦労している。
土佐あかうしや木次のブラウンスイスの際にも書いたけど、牛にも人なつこい品種とそうでないのがある。ここの短角はみな、温厚だ。いい環境で育っているから、ストレスがないのだろう。僕も安心して近づかせてもらった。

牧場で働く田茂井さん。長野県で酪農をしていたそうだが、実家の網野町で畜産をできると帰ってきたそうだ。この人に育てられれば、そりゃあ温厚になるという、優しき人である。
短角の歩くスピードは意外に速いので、きっと初めて見た人は驚くだろう。牛って敏捷なのだ。カメラを構えてぼやぼやしていると、鼻先まできてベロンとレンズを舐められることが多い。
放牧牛が食べるのは、野芝を中心とした、牧草となる草だ。数種類の種をまいておくのが基本らしい。
だいたい1ha(100m×100mだ)で一頭の牛をまかなえる。山という環境は放牧にもってこいなのだ。

それにしてもこの日本海牧場の牧野は圧巻に景色がいい。牛といっしょにここでぼーっとしていたいが、実際はばしばし写真を撮りつつあがったり下がったりする。
さて、これまで載せてきた写真の牛はみなお腹に子供をはらんでいる。それが出産すると、地上の牛舎に親子で入れて育成をする。

手前の子がタンクロだ。短角の褐色に、ところどころ黒が混じっているのがわかるだろうか。
この子は耳の付け根が黒い。それにしても可愛いでしょ?角が生える前のバンビのような赤ちゃん牛は本当に愛らしいのだ。

この子はかなり黒が入っている。
で、実はこの状態で成長するわけじゃない。どうも黒毛の黒色のほうが優性らしく、ある時点から真っ黒になるのが普通だ。こんなかんじ。
あんれまー あんなに可愛かったのに、こんなになっちゃうのか(笑)
でも、黒毛和牛はかなり神経質でさわるのが怖いのだけど、このタンクロちゃんたちは実にフレンドリー。この子は僕に興味を示して、ずーっと近くに居てくれた。感謝。

京タンクロは、できるだけエコフィードという、食品残渣などを餌に給餌する方法をとっている。右上は通常の配合飼料だが、その下が麦のふすま。左上がビールかす、左下はなんと有名な京都の豆腐店のおからを乾燥させたものだ。
尊敬する和牛コンサルタントである松本大策さんにならい、畜産の餌はとりあえず実際煮食べることにしている。で、これらぜんぶ実にフレッシュで旨い!ビール滓が旨いのはとくにビックリしてしまった。

こちらはサイレージ。草の古漬けだ。
短角牛の親子愛は非常に強い。とはいっても次の子をはらむとすぐにそっちに専心するようだけど、小さな子牛を守ってたつ母牛の姿には愛情を感じてしまう。
夜、間人地区の名旅館である「炭平」にて、丹後の宿泊・飲食業の女将さんたちと食卓を囲む。すでに京タンクロのプロジェクトに関心を持ち、しゃぶしゃぶを出す取り組みをしてくれているのだ。

ここででた京タンクロの肉が、びっくりするほど旨かった。これまで何回か食べてきたけど、熟成もベスト。いや、これは黒毛に伍するか、それ以上に旨い。

そして、丹後地方は京都府で唯一の特A米の産地でもある。この米が死ぬほど旨かった。
こちらは地方の名物、ばらちらし。しいたけと錦糸卵のしたにはそぼろが敷かれているが、なんとこれ、サバ缶でつくるそぼろだそうだ!すげー旨い。
京都と丹後と短角と黒毛。そして京タンクロ和牛が生まれる。日本の畜産にはまだまだ見知らぬ地平があるし、可能性があると思うのだ。
このブログでもかなり採り上げさせていただいた、島根県の木次乳業。パスチャライズ牛乳のパイオニア企業である。そして、牛舎でつなぎ飼いするのではなく、牛を山に放牧し草を中心に食べさせる「山地酪農」の取り組みを行う乳業メーカーでもある。
木次の山地酪農の特徴としては、牛にブラウンスイス種という乳用種をつかっていることだ。ブラウンスイスはヨーロッパで育成された品種で、乳糖を多く含む生乳ができ、そうするとチーズに向くのである。だから国内でもブラウンスイスを飼っているところはチーズ工房もやっているということが多い。
で、今回なんで木次にいったかというと、親友の津田君が「牛を放牧で飼いたい、できれば木次さんのブラウンスイスを」という依頼があったからである。
津田君は和歌山の有田でみかんの生産者団体を率いているが、地域の耕作放棄地が荒れるのを食い止めるために、牛を飼いたいという。実は全国的に、耕作放棄地が荒れるのを止めるために牛を放牧することは有効であるという事例が続出している。牛は繁茂している草を食べきり、景観を創り出してくれるのだ。
木次乳業の佐藤社長につないだところ、「ああ、普通はよそへ売ったりはせんけど、いいですよ」とご快諾いただき、晴れて面通しの日である。そしたら、呼んでもいないのに岡山県の高梁市から、これまた親友の徳田君が3人で来るという。なんでかというと、この徳田君のグループは先んじて牛の放牧事業に乗り出している。しかもなんと短角牛が欲しいというので、岩手県二戸市の杉澤君につないで、見事10頭の短角牛を導入。すでに3頭の子牛が生まれているのである。しかも、みるみるうちに景観が回復。荒れ果てた耕作放棄地がみるみるうちに綺麗になることで、地域の人たちの反応が変わってきているという。
本来、牛は放牧させて育てるものだった。はえている草を食べるから、あっさりした乳を出すし、肉もあっさりしたものだった。それを牛舎に押し込め、高カロリーのデントコーンなどの濃厚飼料を食わせることで、泌乳量や肉のサシを増やし、おかしな畜産物を創り出してきたわけだ。日本の耕地面積は狭いけれども、未利用高知が沢山ある。そこは放牧に供してまずいことはない。
さて 木次乳業の佐藤社長は相変わらず話の早い方だった。
「時間がないけん、すぐに牧場に行こうか。 あっと お茶が出てくるんだった。お茶一杯飲んで。あ、チーズが出てきたか。」
チーズをわらわらと食っていると、食い終わらないうちに「じゃあ行こう」と腰を上げる。出雲人はせっかちである(笑)
車に分乗するとき、木次乳業の営業者にプリントしてあるのをみて、津田君が大声を上げる。
「これみてよ、『赤ちゃんには母乳を』だって! 牛乳の会社だから、赤ちゃんにもうちの牛乳はいいよ、っていうのが普通だろうに、この会社はスゴイよ!」
実は津田家は僕の本を読んでくれたのち、木次乳業の製品を和歌山県内のスーパーで取り扱っているのを探してきて、それ以来ずっと買い続けているという。
「うちの子供はもう、木次以外のは飲まないよ、味がわかるんだね。こないだうちの親戚が集まったときにも牛乳の味が違うっていう話をしたら信じないから、色んな銘柄のを買ってきてブラインドで飲ませてみたんだよ。そしたら最後に「これがいい」ってのこったのはやっぱり木次だった。」
そう、飲めばわかる。パスチャライズ牛乳は、身体にいいとかじゃなくて味がいいのだ。
さて木次乳業本社から数キロ、木次が展開している「食の杜」へ。
5haほどの敷地内にはワイナリーを中心に、レストラン、豆腐工房、パン工房などが展開されている。
いま、農業法人などがこうした飲食を核にした複合施設の経営をしているケースが多い。以前、金沢で足を運んだぶどうの木もそうだが、農家の団体が経営しているとは思えないケースも多々ある。そうしたところが、しばらく前まではトントンと言った経営状態だったのが、ここしばらくはかなりいい状態になっているという話を聴く。
時代が荒れてきて、やはり生産者自身の匂いがするところを消費者が選ぶようになってきているのだろうか。
ご飯美味しかった!実はこのランチプレートのかなりの食材が「食の杜」で生産されている。説明がないとすらっと見落としそうだが、すごいことである。野菜や果物、米といった農産物だけではなく、畜産物があると一気に食卓が豊かになるのだ。
ごちそうさまの後、一瞬だけ山地酪農をしている日登牧場へ寄る。あいにく放牧から牛舎に戻っているところだったので、ここはスルー。
「さて、それじゃ山に行きましょう」
そこから小一時間。
島根県は奥出雲町のほんとうに端っこ、広島との県境にある八川の道の駅「奥出雲おろちループ」に「観光牧場」という看板がある。
この「観光牧場」の看板のあたりがまさに牧場。目をこらすと牛が動いているのがわかった。
ここは木次乳業が運営する牧場ではなく、北海道で放牧酪農をしていた成瀬悟さんが一家で移り住んで営む農場だ。面積はざっと20ha。濃厚飼料は一切やらず、粗飼料のみで牛を飼っている。
ブラウンスイスだけではなく黒毛やF1もいる。成瀬さんは北海道では弟子屈にて短角牛の生産もしており、しばらく前まではこの牧場にも短角がいたそうである。
津田君と、現場担当者の上田君が成瀬さんの話に聞き入る。
「餌は草だけだと栄養価が足りなくなるんで、一番いいのはみかんのジュース絞りかすとか、醤油かすも与えることなんです。」
という言葉に「おおっ!」となる。彼らはみかんの生産者団体で、ジュースかすはいまお金を出して引き取ってもらっている状態らしい。また和歌山は醤油の大産地。期せずして条件が揃っている!
さて「観光牧場」のどでかい看板の後ろにいるのが、候補となるブラウンスイス種だということでみにいった。
以降、また牛写真集です。

ブラウンスイスは実に人なつこい。土佐あかうしのことを書いたときに、あかうしは人なつこいので飼いやすいという話があったと思うが、ブラウンスイスも双璧をなすかもしれない。
ちなみに津田君のところでは一頭だけ購入しようと考えていたのだけど、佐藤社長がいうには
「牛は寂しがりやだから、一頭だけだと脱走したり、病気になってしまう。可愛そうだけん、そんなに高くないし、二頭飼いなさいや」
ということだった。成瀬さんもうなずく。牛は団体行動をする動物であり、決して孤独を愛さないらしい。津田君のところも最低限二頭を飼うことで進みそうだ。
本当にこの子たちは、カメラのレンズに鼻を押しつけてくる。フードをつけておいてよかった、、、(笑)
土佐あかうしの放牧写真と同じように、またもや至近距離である。ブラウンスイスの子達はあのときほど緊迫はしない。去勢牛だから子供もいないしね。それにしても眼がかわいい。
はあ、堪能しました。
やっぱり牛はいい、、、本当に佳い。
それにしても成瀬さんの経営はじつに忍耐のいる営みだ。放牧牛の肉は通常ルートではサシが少なく、肉の量も少ないから、買いたたかれてしまう。よくぞやっておられると思う。
さて、津田君はこの子達のオーナーになるのだろうか?楽しみである。
さて実は道の駅「奥出雲おろちループ」の向かい側にある小さい小屋にて、この放牧牛乳を使ったアイスクリームを食べられる店がある。
山地酪農牛乳やその製品をはじめて飲んだり食べたりする人が一様に言うのが、
「きっと濃厚で美味しいんでしょうね!」
ということ。でも、それは間違いだ。山に放って草を食べさせたものは、ごくあっさりとした牛乳になる。それはそうだ、濃厚な餌を与えていないんだもの。だからあっさり、さっぱりした味わいになる。
元来、濃厚なものはハレの日のご馳走である。そんなのを毎日飲む必要はない。いまの日本は毎日がハレの食卓になってしまっているのが問題でもある。米も肉も麺も牛乳も野菜も、インパクトのある、甘い、ねっとりした、コクのあるものがいいとされる。でもそんなのが全てになってしまったら食文化の崩壊だ。
ほんものはあっさり、軽い。
それが真実だと思う。
成瀬さんの奥様。
「でもね、ほんっとうに、やってくの大変ですよ。」
うーん そう思う。本当に本当に大変なことをやっておられると思う。だから、道の駅「奥出雲おろちループ」を通る人は、一瞬足を止めて牛乳を飲み、そしてアイスクリームを食べて一休みして欲しい。お願いすれば山地放牧も見せていただけるはずだ。そうして可愛いブラウンスイスに出会えば、畜産について考える一歩となるはずである。
貴重な体験をさせていただいた、木次乳業の佐藤社長、そして成瀬さんに深く感謝します。ありがとうございました!

昨年10月に開催して大好評をいただいた岩手県北部の食を巡るツアーを覚えておいでだろうか。
■2008年10月07日 岩手県北を巡る旅 二戸市・久慈市で雑穀・短角牛・ヤマブドウの生産現地に足を運ぶツアー 大盛況! 現地の人達と消費地の人達のふれあいは、やっぱり「何か」を生むのだと実感した2日間だったのであった!
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2008/10/2_17.html
このツアーは、岩手県の久慈振興局と二戸振興局という、二つの区域の局が共同で企画したもので、おそらくこんな企画は前代未聞だったというものだ。それが非常に盛況だったし、この前後に行った料理人向けの短角牛の食べ比べ会や、アクアヴィーノで昨年開催した岩手県北の食材を食べる会も大好評だったこともあり、、、
「今年もやりましょう!」
ということになったのだ!
ということで今年もやります岩手県北部ツアー。しかも昨年と同じではなく、今年は久慈市に重点を置いたツアーにしたいと考えている。
ツアー内容はこんな感じだ!
■岩手県北部の食材に触れるツアー2009
開催日時:10/4(日)~5(月)
定員: 35名
参加費: 46,000円程度(岩手までの交通費、宿泊費、バスチャーター費、飲食費を含みます)※もしかすると団体割引でもっと安くなるかも知れません。
申し込み方法:下記Webから申し込んでください。応募多数ですと、抽選になります。
http://my.formman.com/form/pc/8GMIwFwHkvWt3Puj/
昨年は二戸市の雑穀と短角牛の牧野を見学し、久慈市に移動してという流れだった。で、今年はまず二戸市に入るけれども、その日のうちに久慈市に移動し久慈グランドホテル泊ということになる。
とはいっても二戸市を過ぎ去るわけではありません。昨年のツアーで皆さんが最も印象深かったと評してくれた、雑穀農家のパイオニアである高村英世さんの農場で、刈り取り体験をまたさせていただくことになった!
高村さんは、雑穀でJAS有機の認証を取得している、岩手を代表するといってよい雑穀農家さんだ。昨年はその畑で、アワの脱穀とアマランサスの刈り取りをさせていただいたのだ。
アマランサスは、ビックリするほどに背の高い、鮮やかな紅色の作物であった!
さてそして、今年度の新趣向として、この雑穀で遊ぼうということになった。
実は昨年度参加者から一つ強い不満が出たのだ。参加者というのは料理人の皆様。実は昨年度は錦糸町「井のなか」、「ラトリエ・ジュエルロブション」、「バードコート」、「東京バルバリ」というそうそうたる店の皆さんが参加してくださったのだが、、、
「あのさぁ、俺たちにも料理させてよ!」
という声が上がったのだ!そう、食材の旅なんだから、他の人が作ってくれた料理だけじゃなくて、素材をいじってみたい、というニーズがあったのだ。
そこで! 今年はまずこの二戸の合同庁舎内にある調理室を借り切って、雑穀料理の講習会をすることにした!
雑穀料理を教えてくれるのは、もちろん昨年の昼食に雑穀弁当をつくってくれた「つぶっこまんま」の安藤直美さんだ!
残念なことに「つぶっこまんま」は店をクローズし、二戸駅前の跡地には別の居酒屋が入ってしまっている。でも直美さんは雑穀料理家として相変わらず走り回っている。
ここで、ぜひご参加料理人さん達には創作料理をしていただこうというわけだ(笑)
ちなみにすでに今年度もラトリエ・ジュエルロブションより飯塚シェフがご参加、井のなかチームも勿論参加ということになっている(料理人は一般とは別枠でお誘いしてるわけです)。どんな料理をしてくれるのかな~ 楽しみである。
その後、一路 久慈市に移動。先回は軽~く通り過ぎた「野田の海塩」の製塩工場をきっちりと見学させてもらう。実はこれがとても重要。なぜなら、短角牛の文化は塩と密接に関わっているからだ。その昔、久慈市の内陸部では沿岸部で製塩された塩を運ぶための荷役に、牛を使った。それが短角のベースとなった南部牛なのだ。だから、塩を運ぶという荷役があって初めて短角牛が生まれたといっても過言ではないわけなのである。
で、夜は僕もまだ行ったことがない「ビストロくんのこ」。楽しみである!
さて二日目はまた素晴らしい企画が目白押し。まずは昨年、雨の中でワイワイと楽しんだヤマブドウの圃場見学。
実はこの久慈市のヤマブドウがひそかに人気でてきているらしい。アクアパッツァグループではすでにアペリティフに、シャンパンのヤマブドウ割りという飲み物が人気を博している。それに、これから複数店舗で、ヤマブドウをつかったデザートが供される予定だ。
さてそして!
一つのメインイベントと言っていいだろう、、、昨年、後半にちょろっと寄っただけになってしまったが、「あの料理は本当に美味しかった!」と大好評をいただいた場所、、、
そばの匠館にて、成谷自然食の会のみなさんに、あの久慈市山形町の必殺の郷土料理「まめぶ」をご馳走になる!
まめぶとは山形町に伝わるハレの日の料理。とはいっても見た目は地味で、おすまし汁に根菜類と団子が入っているだけのものだ、、、
と思ってまず汁をすすってビックリ! ホンシメジ(その辺のスーパーで売っているシメジじゃない。天然のシメジ)を干したもので出汁のベースをとるという、現代日本ではあまりに贅沢な汁なのだ! 昨年度の参加者のなかで、特に料理人グループが「うっこれは、、、旨い!」とびっくりした味。
そしてこの団子をかじると、、、
なんと中には地元のオニグルミと、シュッと甘い黒砂糖が仕込まれている!
しょっぱいシメジの汁に甘くこうばしい団子、この組み合わせが実にスペシャル!100人いれば100通りの作り方があるという、この不思議に素晴らしい料理を、今年はじっくり味わおうではないか。
もちろん、この地方特有の「豆腐をつなぎにいれる」蕎麦も食べるぞ!
ちなみにまめぶづくりはこんな感じ。画像は2005年に僕が見せていただいたときのものだ。
こんな風にしてまめぶはできているのだあああああああああああああああああ!
さて、その後、これまたメインの一つである短角牛。昨年度は二戸で牧野をみていただいたけれども、今年は山形町。何を隠そう、僕が初めて短角牛と出会った地である。
実を言うと、久慈市山形村の短角牛は他にはない特徴をもっている。大地を守る会との契約取引をしているので、餌が全量国産なのである! これはすごいことですよ。国産100%の餌。プレミアム短角牛は県産の粗飼料を70%給餌するが、残り30%の飼料には国産以外のものもはいる。しかし山形町の短角は完全100%自給なのである。
こんな感じのツアーになる。いやー 長くなってスミマセン。
で、今回の参加費用ですが、昨年にくらべるとちょっと高くなります。なぜかというと、昨年は岩手までの交通費&宿泊費以外は全部県が負担するよ!という風にサービスしすぎて財政的に大変でした(笑)
今年は、バスの移動代や飲食費をちょこっとずつ負担してもらうので、昨年度より7000円ほどアップさせてください。なにとぞ、、、
■お申し込みは下記Webから
http://my.formman.com/form/pc/8GMIwFwHkvWt3Puj/
昨年はたしか1日で定員オーバーになって、4日くらいで締め切ったと思います。今年はどうなるかな?とりあえず1週間は受けつけたいと思いますが、定員35名ですから、応募が100名を超えるようであれば早めに締め切らせていただくことになると思います。お早めにご応募お願いします。
ではでは、楽しみにしております、、、