本日は大阪の市場に出張。
友人と夜、心斎橋の「大阪料理」を標榜する「浅野」に入店。
「この店は俺の中でも重要なやつとしかこんところよ」とのこと。ありがたし。
3階建ての小綺麗なビルで、全ての階が清潔感溢れる割烹作り。個室に通されると、まずは置かれてある品書きにびっくり。B4サイズの紙を2枚横向きに張り合わせた横長の紙いっぱいにびっしりと料理が並んでいる。それも「イカの海胆まきおつくり」や、「グジの唐揚げ野菜あんかけ」などが、小椀手の込んだ料理ばかりだ。これらが、小ぶりの椀に少なめに盛られて出てくるという趣向だ。料理が出てくるまでが圧倒的に早いため、出されたものを楽しみながら次を考えることができる。
食べたもの(特に旨かったものには*を付けている):
コチ薄造り
関さばお造り*
イカの海胆まき造り*
のど黒煮付け
カラスミと大根サラダ
さえずりと青菜煮*
鯛の納豆蒸し*
鱧の焼き霜造り肝ポン酢添え
スッポンのスープ煮*
レンコンまんじゅう*
グジの唐揚げ野菜あんかけ
穴子と茄子のおろし煮
合鴨中国菜くず煮
冷やし白ズイキ
イカとワケギのぬた*
水茄子浅漬け
納豆雑炊*
うーん半分以上が「特に旨い」ではないか。そう、つまりはほとんどが旨いのである!お造りはとりあえずあまり*をつけていないが、実はどれも鮮度抜群にして、お造りのそぎ方も適度でスバラシカッタ!醤油も魚に合わせて変えており(関サバには甘めの醤油、淡白なコチには濃い口というように)、仕事の繊細さが見えた。
また、出汁の精緻な味わいにも吃驚した。やはり関西の上品な出汁なのだが、例えば殆ど味の無いズイキには出汁がほのかに香るくらいのぎりぎりの線で出汁を含ませている。しかし透明感がありながらきっちりと仕事の余韻を残すことろが「大阪料理」の所以なのだろう。文句なしに旨い。
いや、正直言って勘定についてわからん。ご馳走になってしまった。これだけ食べたら相当いっただろうなぁ、、、ごっそさん。
念願の帯広の農協への出張。体調は万全に整っている。帯広の旨いものと言えば、一も二もなく豚丼である。豚丼、、、単に少し厚めの肩ロース豚肉を焼き、甘辛いタレで少し煮詰め、それを飯の上に並べるだけのものである。しかし、こいつがすこぶる旨い!
初めてこれを食べたのは、ある懸賞論文コンクールで同席した酪農家と友人になり、家に遊びに行かせてもらった時のことだ。この辺では豚丼が旨いんだぁ、という友人に連れられて行ったのは、何の変哲もない食堂。だまされてるなぁと思いながら運ばれてきた豚丼を一口食べて、あまりの旨さにのけぞった。以来、周りの人間が帯広へ行くときにはかならず市販の豚丼のタレを買ってきてもらっている。しかし、あの味には及ばない。そして4年がすぎたのである。
4年ぶりの帯広空港。空港2階の食堂「白樺」は、レトロな百貨店食堂のような飾り気のないたたずまいにも関わらず、カツ丼1000円というように強気の価格設定の店だ。ここに当然豚丼がある。ちょうど羽田発が早朝だったこともあり、朝食をとっていないので、開店したてのこの食堂で小手調べである。
1食目:
帯広空港 二階食堂 「白樺」
豚丼 900円

久しぶりに相まみえる豚丼は、色の濃いねっとりチャコール系の豚であった。人工的につきささる赤い紅生姜とキューリのキューちゃん、味噌汁のセットだ。これが予想外に旨い!空港の食堂とたかをくくっていたのだが、なんとも深い豚丼のタレである。しかも意外なのだが、いつもは手を着けないキューリのキューちゃんと豚丼の相性が最高なのである。びっくりした、、、10時30分のブランチとしては非常に秀逸。これから帯広空港ではかなり楽しめること間違いない。しかし、隣席でおばちゃんが食べていたカレーからもかなり良い芳香が。気になる、、、後ろ髪引かれつつ、仕事へ。
仕事先のJAで昼飯に連れていってもらう。この辺はそばも旨い、ということで近くの蕎麦屋へ。JAの人に「この辺でしかないものってなんでしょうねぇ?」と聞くが、いつものごとく「いや、特に変わったものはないよぉ」という。こういうケースは非常に多い。でもこういう発言を鵜呑みにしてはいけない。地元の人はいつも食べているから「変わったもの」という感覚がないけど、外の人から見れば「ええええっ?」というものは結構多いのだ。案の定、帯広周辺の蕎麦では「とりごぼう蕎麦」という定番があるのだった。温かい汁で鳥とゴボウを煮た蕎麦なのだが、これがしみじみ旨いという。当然ながらそれをオーダーするのだが、品書きに豚丼の文字発見。朝(というかブランチ)に引き続き無性に食いたくなる。だって帯広にこられるチャンスはそうない!
ということで豚丼もオーダー。JAの職員さんがこの私の食欲に大笑いして、「だったらあんた、蕎麦に天ぷらものっけなさいよ!」という。すさまじい食卓になった。
二食目:
幕別町 蕎麦「いつき」
とりごぼう・天ぷら蕎麦 700円
豚丼 700円

まず豚丼が運ばれてくる。空港食堂よりあっさり風味だが、家庭の味に近く旨い。なぜだろうか豚丼は、牛丼よりもお腹へのインパクトが薄いように思う。どんぶり一杯食べても、それほどもたれないのだ。豚丼を片づけると同時にとりごぼう天ぷら蕎麦がくる。

こっちのほうの蕎麦のかけづゆは、北国だからだろうか、とても色濃く甘め。そこにごぼうの風味と鳥の出汁が出て、美味なるものだ。蕎麦は精白度の低い、これまた濃厚な麺であり、つゆとマッチしている。実に滋味あふれており、さらっと食べ終えてしまうとJAのみなさんから拍手がおきる。
後で言われたが、「あんた、大したもんだ。記憶に残る人ってのはそういないけど、あの食べっぷりであんたは俺の気を大きく引いたよ」
食は身を助くのだ。
「これは、夜も下手なところには連れていけんなぁ~」
と期待を残しつつ会議終了。いったんホテルに帰り、夕刻に迎えにきていただくことになる。
ホテルから車で帯広の繁華街まで30分。入ったのは韓国料理の「あんじゅ」。ここでは詳細は述べない。一人4000円というコースで、おびただしい量の肉が運ばれてくるのだ。
タン塩
ネギタン塩
豚トロカルビ
上ロースぶつ切り
ハラミ
上カルビ
魚貝(えび、ホタテ、イカ)
焼き野菜
モツ(シロ、コブクロ、レバー、テッチャン)
ネギと小エビのチジミ
イカの辛味噌炒め
ビビンパ
豆腐チゲ
これらの中で圧倒的迫力説得力を振りまいていたのが、上ロースぶつ切りだ。並のステーキ二枚重ねた厚さのロースの表面をこんがり焼き、はさみでぶった切ってかぶりつくのだ。肉を喰う、、、という気分が最高に高揚する一瞬。しかしこれだけの量、1人どう考えても500gは肉を食べないと喰い終わらない。最後の方は必然的に俺だけが箸と口を動かしていた。
JAのAさんの一言。「十勝にきたら、肉食うのが一番お得だよ」
まったくその通りです。

場所をクラブに変えて飲む。おいらは隣に女の子がいても全然嬉しくないので、とにかく旨い店の情報を訊いて、箸袋の裏に書き付ける。おっとデジカメを焼き肉やに置き忘れた、ということで取りに行こうとすると、JAのOさんが一緒についてきてくれる。無事カメラを受け取り、店まで帰る通りに、かなり気を引く小径が。路地裏というのは人の気を引くのだ。「ここの蕎麦が旨いんですよ!」
Oさんがいう。ああ、Oさんやっぱり俺の性格をしらない、、、
「じゃあ食っていきましょう」
入店、ざるを一枚。旨い!なぜかここは麺にクロレラを打ち込んでいるということで緑がかった麺なのだ。
(続く)
まだまだ終わらないのだが、ちょっと待って。このあと2食も食べます、、、
さて、帯広の夜はまだ終わらないのだ。
JAの職員さんに連れられていったのは、必殺のみどり色の蕎麦が出るという蕎麦屋さん(名前忘れた!)だ。一体、緑色の麺とは何か?10月の新蕎麦の季節には、水分含有量の問題か、うっすらと青みがかった蕎麦に出会えるが、この時期そんなはずはない。
ざるを頼んで出てきたのを観ると確かに緑色だ! ↓

仕掛けは、蕎麦を打つ際のつなぎだった。店のおばちゃんが出てきてニコニコと教えてくれる。
「うちじゃあ健康のためにも、クロレラを入れてるのよぉ」
そうかクロレラか!でも、別に風味にはあまり影響がないな。
このおばちゃん、ほっといたらいつまでも話していそうな、いいおばちゃんだ。俺好みである。

でもクラブに残っている人たちをあまり待たせても都合が悪いので席を立つ。
クラブに戻ると、みないい感じで酔っぱらっている。
「おう山ちゃん!ラーメン行くぞラーメン!」
焼き肉を死ぬほど摂取した後に蕎麦をすすってきて、すぐにラーメンである。おそらく俺以外の人には捌ききれまい。連れて行ってくれたのは、北海道なのになぜか「八丁堀」という名前の横町。ここに名店「頓珍館(とんちんかん)」がある。

「とにかくよぉ、ここのじいさんがよ、今にも死にそうにブルブルふるえながら作ってくれるラーメンが旨いんだ!」
それは旨そうだ。いや、旨くなくても食べてみたい!
ということで店に入る。確かにここのじいさんは、今にも消え入りそうなのに、なぜか光る存在感を醸している!

醤油ラーメンを頼む。厨房を覗いていると、なんだか麺を茹でる鍋が、余り大きくない。嫌な予感がした。麺は多量の湯に泳がせないと、うまく茹で上がらないものだ。生茹でヌチャヌチャ麺はゴメンだな、、、と、この時点ではちょっと失望した。と、じいさんが麺を3玉のみ投入し、やおら鍋を菜箸で一定方向へかき回し始める。もしかしたらこれは計算尽くの方式なのかもしれない。と、2分程度で茹で完了。 早っ! スープの鍋も小さい。丼にスープを張り、麺を盛り整える。出てきた醤油ラーメンはオーソドックスな面構え。一口すすって驚いた。旨い!

鶏ガラベースのあっさりめのスープだが、きちんと味がでている。化学調味料もあまり使われていない。心配していた麺だが、若干柔らかめではあるものの、それが最適化されたゆで加減であると思える、絶妙のバランスだ。メンマ、チャーシュー、麩、ネギという具の分量と味も言うことがない。何より、嫌なインパクトがないのだ。和食のようなラーメンだと言いたい。
「いやー旨い旨い!」
「何だ山ちゃん、もう一杯食べるかい?」
いや無理無理、、、と思ったら、なんと同行の女性が「私もう食べられない」といって、塩ラーメンのほぼ1杯分をこちらに寄越す。うわー でも塩か。食ってみよう。
食べてみた。美味しかった。
(以下、醤油ラーメンの部分をリピート)
あーーーーー
今夜はよく食べた!
JAの皆さん、俺の胃袋にマジで驚いておられる。次回来た時にはこれでは済まないだろう、、、
帯広の飯は本当に旨い。豚丼も焼き肉も蕎麦もラーメンも、、、
PS: この翌日の朝、帰京するために空港に行き、そしてやはりまた豚丼大盛を食べて帰りましたとさ。めでたしめでたし、、、
福島にて明日、講演がある。東京から新幹線に乗り、郡山から在来線に乗り継いで3時間半の車中で、田口ランディの小説を初めて読んだ。読んだのは文庫本の「コンセント」だ。あまりに面白いので、一気に読み終えた。もったいないことをした、、、どうも俺には、流行っている作家の本をあえて読まないという、斜に構えた性向がある。これは、無駄だな。ユタとかシャーマニズム、セックスを露わにしていて、しかもエンタテインメントになっている。この小説で書かれている世界はずっと前から存在していたわけだけど、このような語り口が出きる人が現れてきたのだな。こういうのが売れるようになってきたのだな。それは一方で社会にこうした物語を求める人が多いということだな。やはり火星の接近と関わりがあるのかな。
火星の接近の話題は、昨晩の藤幡正樹展のレセプションで、藤幡さんと交わした会話からのものだ。僕が影響を受けた農法にバイオダイナミック農法というのがある。思想家のシュタイナーが拓いたものなのだが、特徴の一つに天体のリズムと植物の生育に規則的な相関があるとし、これに合わせた作業をするということだ。天体の運行は軌道計算ができるので、365日分のカレンダーが制作されている。バイオダイナミック農業(BD)の実践者はみなこの農事カレンダーを携えているのだ。
でもこれは当然植物への影響だけではない。菌類や動物にも作用する。ある星位になると、ヨーグルトやパンの発酵は調子が悪くなったり、養蜂家はミツバチがあまり蜜を集めてこないことを不審に思う。とすれば人間の生活にも何らかの作用があるはずだ。最近の社会に溢れるいろんな出来事も、我々がまだ意識に取り入れることのできないほど大きな秩序からの影響として引き起こされているのかもしれない。
どちらにせよ、個人がどのように生きるのか、ということが決定的に重要なのだという気がする。そんなことを思わせるに至ったのは田口ランディの本の力だ。週末にでも他の本を読んでみようと思う。
福島の会津若松にきた。実は会津若松は初めてと言っていいくらいだ。ただ、かなり昔に会津田島でラーメンを食べて感動したことがある。そこは、ごくふつうの食堂なのだが、厨房にはいとも当然のようにかまどがあり、よれよれのお婆ちゃんがそれで麺をゆでていた。透き通った醤油スープにちぢれ太麺。シンプルきわまりないそのラーメンは、オーソドックスにして感動を呼ぶ味だった。今日は絶対にどこかで食べていこう。
講演前夜に歓迎会を開いていただく。割烹「てんぐ屋」では、素晴らしい郷土料理が並んだ。中でもとりわけ舌の記憶に残ったのが下記。
・身欠きニシンの山椒漬け
ニシンと山椒の葉を重ねて酢醤油に漬け込んだもの。これが滋味溢れて旨い!カチカチに干したニシンを戻した特有の苦みとえぐみ、薄い酢醤油のじんわりした味、それに山椒の葉の高貴な香りが絡んで、深くて立体的、重層的な味だ。地元の人から見たら
「そんなの特別なもんじゃないよ」
という感じだろうが、感動した。

話は飛ぶが、この福島出張の帰りの電車で駅弁を買ったら、そこにも同じモノが入っていた。それを食べ、そのすぐ後に隣に並んでいた海鮮サラダのようなものを食べたのだが、その味の次元の違いに驚いた。マヨネーズと油脂、アミノ酸によって着味されたサラダは、1次元的に平坦な、のぺっとした味世界だった。これだけ食べていれば、全く問題はない。とてもわかりやすい味だ。しかし、ニシンの山椒漬けを口にすると、その味わいを認識するのに少々時間がかかる。香りと味があまりに複雑な組成だからだ。この旨さを、ファーストフードに慣れた人がどう捉えるだろうか。あまり美味しいと思わないかもしれないな、、、と思った。
・厚揚げの田楽
これは本当に絶品。この田楽は味噌がミソだとのことだったが、台となっている厚揚げに感動したのだ。見事な脱水加減の豆腐を、供する直前に菜種油か大豆油で揚げ、軽く表面を炙った後に味噌を塗って出している。それがわかるのは、厚揚げの揚げ部分と中の豆腐の境界がぶよぶよと厚くなく、カリッとした歯触りが伝わるからだ。甘めの味噌との相性は最高で、文句なしに旨い。

そして、クライマックスは、ここの女将が手打ちしてくれる蕎麦だった。小さな椀につゆと一緒に盛られてきた蕎麦は、繊細な細打ちで、訊けば10割だという。期待せずに口にしたら、あまりに清々とした、背筋の伸びた味に、してやられた。
大満足なのであった。
とは言ってもこの後、スナックでしこたま飲んだ後、会津のラーメンを食べにいたのだった。ネギラーメン。あの懐かしい味が、そこにあった。

この講演をお膳立てしてくれたのが、日本のカスミ草の生産関係者では知らぬ者のいない管家(かんけ)さん。以前、太田市場の卸売会社での僕の講演を聴いて、福島に呼んでくれるために奔走してくださった。静かな語り口、でも日本の花の生産・流通に人生をかける凄みのある人だ。こういう人に会えると本当に嬉しい。多謝である。

福島講演当日
会場セッティングを終えると、管家さんが昨夜の酒宴で話題になった地元の伝統食材「さんぼ茸」をアルミホイルに包んできてくれる。さんぼ茸とは、サルノコシカケみたいな茸で、木の上になっているのを採集するのだが、堅くてそのままでは食べられないとのこと。それでどうするかというと、味噌の中につけ込んで3年ほどおいておくのだそうだ。そうすると良い具合に熟れて柔らかくなり、食用になるという。何時の遠くなる話か、、、
今日持ってきてくれたのは塩抜きをしているのでそれほど辛くはないという。楽しみだ。
、、、蕎麦やの桐屋にて、蕎麦を頼む。頼んでからくるまで時間が長かったので、サンボ茸を食べる。見た目はきのこ(茸)そのものだが、傘の上の部分がテラテラとしていて、不思議なテクスチャだ。僕のデジカメでは残念ながらそのテクスチャと質感が撮影できなかった。口にすると、やはり塩抜きをしているせいだろうか、歯触りも柔らかい。味は、思ったほど塩辛くないのだが、全体的に輪郭がぼやけてしまっているかもしれない。やはりこれは、地元の人がいうように
「一口舐めただけで、どうしようもなくしょっぱくてご飯が一杯食べられてしまう」
くらいの方が、それらしいのではないかと思った。管家さんには、次回があるならばぜひ塩抜きしていないモノをお願いしますとメールしておいた。
さて、それはそうと蕎麦である。昨晩の宴席は割烹だったが、そこの女将が打ったという蕎麦が絶品だった。山形蕎麦とはまた違う、細目だが角の立った、繊細な蕎麦だった。それをまた体験できるかと思い、この辺の名店と皆がいう「桐屋」にきたのだが、、、
結果から言おう。会津若松で2回食べただけという、非常に浅い体験ではあるが、旨い蕎麦は、その割烹の女将が打つ蕎麦であった、、、
会津若松・福島出張から帰った翌日、すぐさま兵庫県加西市に向かう俺であった。今回も農産物のトレーサビリティについての講演。そもそもは淡路島の農業改良普及員の小谷さんという方が、いきなりお誘いのメールをくれたのがきっかけで、結局、県の農協全体が結束して呼んでくれた。その際には勿論「夜は淡路にわたって旨いものをぜひ」とお願いしていたわけだが、淡路には今回初めていくことになるのだ。
さすがに出張二連戦で疲れていたこともあるが、新幹線の中で爆睡。新神戸にて、迎えにきてくださった県の方と落ち合う。神戸から加西市の試験場まで1時間半の間に、車中で兵庫県の食について伺う。
まずどこでも「この辺にしかない料理ってなにがありますか」と訊くことにしているが、ほぼ例外なく相手の反応は「いやぁ、、、ふつうですよ」というものだ。そう、彼らは生まれてからずっとその土地の食文化で生きているから、普通のものしかないと言ってしまう。けれども、外からきた人間が観ると「えぇ~ こういうものがあるの?」と言ってしまうようなことが多いのだ。
今回面白かったのは、車の運転手をしてくださった榎本さん。いろんなことを訊いたのだ。例えば下記。
・兵庫では海でいかなご(小魚)がたくさん獲れる。これを甘辛く炊きあげて佃煮のようにするのを釘煮(くぎに)という。何で釘というか、だが、実はこれを作るとき、年代が上の人はわざわざ釘を水に漬けて錆びさせたものを鍋に入れる。すると酸化鉄の作用か何か知らないが、照りが出て美味しそうになる。黒豆もこうして釘を入れて煮るとよいとされている。この釘を入れるタイミングと時間が微妙なこつで、適当なタイミングで引き上げないと、鉄臭くなるのだ。
・加古川市では、「かつメシ」という食べ物がある。関西では割と有名でテレビにも取り上げられているが、、、どういうものかというと、ご飯に千切りキャベツを乗せたうえにトンカツが乗り、そこにデミグラスっっぽいソースをかけて食べるというもの。このソースが旨い。加古川では「かつ一」という店が元祖とされるが、運転手仲間では、その隣町のイナミという町のある喫茶店のカツメシの方が旨いとされている。高速道路の三木のSAでも食べられるよ
・姫路駅構内の立ち食い蕎麦屋には不思議な蕎麦がある。ここで「そば」というと、だしは普通の醤油だしで、麺が中華麺というものが出てくるのだ。もし、通常の蕎麦を食べたいならば「和蕎麦」と言わなければならない。そしてこのソバの味は、、、
とこのようなヨダレのたれそうな情報をたくさんくれる。
この話をしているときは昼食時で、加西市の近くの小野町にある「豊後」という魚料理の店。〆鯖の丼定食と、豊後巻きという、長芋と海鮮の海苔巻きという、二人前のメシを食べてしまった。悪いのは、旨そうな情報を教えて、やまけんの食欲を増進しまくる榎本さんである。
■豊後
〆鯖丼定食
豊後巻(山芋と海の幸を巻いた、超ビッグ海苔巻き)


午後から始まった講演自体は大成功。それほど大きくない会議室に150人がすし詰めになり、熱心に訊いてくれた。会の終了後、そもそものきっかけをつくってくれた小谷さんと落ち合い、淡路へ。
その途中、例の三木SAに寄っていただき、カツメシを探す。なんとこのSA、地元の名門ホテルである宝塚ホテルのレストランとベーカリーが入っていて、とてもきちんとした料理を食べさせる。うどんコーナーで出てくるカツメシもしっかりとしたものが出てくるのだ。
出てきたカツメシは、確かにソースカツ丼のソースがデミグラスベースのものになっているものだったが、それだけではない、何か特徴的な旨さがあった。それで680円である。スバラシイ。思わず榎本さんに電話で感謝の意を伝えてしまった。
■中国自動車道 三木SA 宝塚ホテル直営うどんコーナー
かつ飯 680円

さて、淡路である。まずは旅館にチェックインし、すぐさま宴席へ。ここで、実に実に旨い創作魚料理を堪能することになったのだ。淡路と言えばタマネギ。このタマネギをふんだんに使ったドレッシングが活躍するのだ。
■魚佐太(淡路島津名町)
0799-62-0215
太刀魚と焼きなすのおろしタマネギマリネ
レンコン豆腐のあんかけ
ハモとタマネギと水菜の小鍋仕立て
お作り三種(サンマ、鯛、鮪赤身)
瀬戸内の穴子のソテーゴマソース
鰻蒲焼きと茄子素揚げ トマトジュレ添え
穴子の磯部揚げ
茶碗蒸し
但馬牛のたたき



この一つ一つが旨かったが、非凡に美味しかったのが、最初の太刀魚と、ハモとタマネギの小鍋仕立てだ。列席してくれた改良普及員さんから、淡路特産のタマネギの技術情報について色々教わった。いかにして糖度がきっちりと乗ったタマネギを作るか、いろんなノウハウがあるのだ。そうしたプロフェッショナルな話を聞いていると、マーケティングやトレーサビリティについてのコンサルをしている自分の足下がずいぶんと軟弱な地平のような気になる。ああ、生産技術っていいなあ、、、やっぱり早いとこ、畑がほしい。
なんと残念ことに今日の宿泊施設は11時が門限。一次会で切り上げということに。明日は淡路の農家の現場を数件のぞかせていただき、一路大阪へ移動である。
関西出張3日目。あまり時間はないが、淡路島の北の方(北淡という)の農場を視察。花と稲作、そしてあまり規模の大きくない蔬菜生産が主流で、のんびりしている。南淡では対照的に大規模農家が多く、品目はレタスやたまねぎなどに絞られる。小谷さんが説明をしながら車で案内してくれたのだが、北淡の農村部は実に暖かい風景だった。高台から海が見えたとき、心がさっと開いた気がした。その後、市街地に戻ると、心の温かみはすっと引いた。小谷さんが「街はどこへいっても画一化されていますからねぇ、、、」と言う。そうか、植物はその環境によってまったく態様を変えるから、土地によって差異が出る。けど、街のありようは、どこに行ってもあまり変わらなくなってきている。では、街には郷愁を持ちづらいのだろうか、と考えてしまった。
淡路港から出ている高速バスに乗って大阪へ。小谷さん、どうもありがとう。淡路の暖かい気の流れと、農業を正面から考える普及員さんたちに出会えてよかった。
大阪に着くとすでに12時。仕事先に行く前に昼を取ることができる。幸い阪急梅田の地下街がすぐにある。ここで探そう、とさ迷い歩く。いくつか気になる店があったのだが、見つけたのはカレー屋「インディアンカレー」。バーカウンタースタイルのカレーショップで、店構えはこぎれい、メニューはカレーとハヤシしかない。あとは卵のトッピング。この店が繁盛していた。サラリーマンのおっちゃんばかりではなく女性もかなり入っている。こういう店は美味いはずだ。列に加わり店に入ると、食券を買うことになっている。通常のカレーを注文する。大盛りを頼まないのは、いまいちだった場合、すみやかに他の店をはしごするためだ。

この店、店員の態度がよい。何がよいかというと、自分たちが供している食事がおいしいものであるということをよく理解していて、それを誇りにもちながらも、あくまで冷静に、客の邪魔にならないようにサービスをしていることがわかるからだ。不味い店で、従業員がそれを認識していて、かつ自分の仕事が淡々とその不味いものを出すことだと割り切っている店には、このピンとした空気は漂わない。これはイけるな、と確信した。
すぐに席が空き、並べられたカレーを見てそれが真実であることを知った。かなり盛りのよいライスに、インディアンといいつつもトロミの強いルーがかかっている。色は淡い。匙で一口目を味わう。最初に甘味を感じ、すぐにその色からは創造できない辛味が立ち上がる。こういう路面店で、客が辛さを指定できないカレーとしてはかなり辛い。そして、とても旨い!付け合せは福神漬けではなくキャベツの甘酢漬けだが、この相性がまたいい。一気呵成に食べてしまった。正直、大盛りを頼まなかったことを後悔した。でも、また大阪にきたときの楽しみが増えた。この店、東京に出ないかなぁ、、、

蛇足だが、しばらく前に東京の蒲田で食べたおいしいシナそばとカレーの店も「インディアン」だ。このキーワード、押さえておこう。
すばらしい気分で店を出て、もう少しお腹に入れたいなぁと思い、もうひとつ気になっていた代わりカツ丼の店へ。いろんなトッピングができるのだが、大きなミスを犯した。キムチマヨネーズなるものを選んでしまったのだ。運ばれてきたのは、キムチ味のマヨネーズソースが豚カツにかかっただけのもの。ひたすら咀嚼し、すぐに店をでた。でも、インディアンカレーの味と香りはきっちりと舌の記憶に残っていた。
2003年8月11日
和歌山出張である。和歌山といえば魚が旨いのだが、旅程が限られている場合は迷わず和歌山ラーメンである。ちなみに和歌山では「ラーメン」とはめったに言わない。通常は「中華」というのだ。僕は通常、ラーメンはそれほど好きではないのだけど、和歌山の中華は大好きだ。8年くらい前に和歌山で農業情報ネットワーク大会というイベントが開催された時に、当時すでに全国的に有名になりかけていた「井出商店」に行き、その旨さにノックアウトされたのだ。
それと、他の地域では見かけないが、和歌山ではラーメンを食べながら「早寿司」という、一口サイズの鯖の押し寿司をつまむのが普通だ。この早寿司が旨い!僕はこれを中華の汁につけて食べるのが大好きで、ラーメン1杯に3個の早寿司を食べるのが普通だ。

ちなみになぜ「早」とつくのか。本来この地域には、鯖に塩をして、米と一緒に1ヶ月以上漬け込んで乳酸発酵させる「なれずし」があったのだ。今は郷土の伝統食として、メジャーではなくなっているようだが、いわば滋賀県のフナ寿司のようなものだ。その簡易バージョンというか、発酵させていないものが早寿司なのだ。これがまた美味。以前、果樹農家さんの集会に寄らせていただいたら、お土産に20本くらい持たせてくれて、それを2日で全部食べきったときは、至福の時間だった。
さて和歌山ラーメン(中華)である。今回は変則的だが、ある市場への野菜の入荷風景を視察するのが目的だったので、夜から和歌山入り。すでに10時だが、今回アテンドしていただける津田さんが、
「ま、まずは井出商店にいきたいでしょ?」
と連れて行ってくれる。美人の奥様の運転で、井出商店到着。ああ、懐かしい、、、儲かってるだろうに、まったく変わらない外観だ、、、もうかなり遅いのに店は満員である。なんと残念なことに早寿司が机の上に見あたらない。売り切れてしまっているらしいのだ、、、 悔しがる僕をみて、津田さんの奥さんは「相当におかしな人だ」と思ったらしい、、、
憂さ晴らしではないが、中華大盛り、である。和歌山の中華は、注文から出てくるまでが早い。今回も速攻で出てきた井出の中華は、懐かしい濃いスープであった。

スープをすする。 ん、旨い、、、 けど、化学調味料が前来た時より鼻につくなぁ。麺をすする。ん、若干柔らかすぎ、、、 カタ麺で頼むべきだったかも、、、 と細かい部分は気になるが、秒殺で食べ終わる。
正直なところ、ほっとする旨さがあるけど、和歌山の人が「もっと旨いとこあるよ」というのも納得という感じだ。ま、一日目(というか一食目)だし、いいスタートということにしておこう。
その後、津田さん宅にておもてなしをいただき、非常に心地よい時間を過ごす。夜中の1時から4時くらいまで市場と物流センタの見学と、ディスカッション。うーん大変。青果物の流通ってのはかなり大変なんですよぉ、読者の皆さん。
仮眠を2時間くらいとって、午前中にやるべき仕事をし、店舗視察をした後、午後1時半ころにようやく昼飯。
「これくらいの時間にいかないと混んでて、、、」
といって連れてきてくれたのは「和歌山市内の人しか行かん」という、激レアな店「山為食堂(やまためしょくどう)」である。なんでもここは、一般的なラーメン店ではなく、うどんとかトンカツとかもある、普通の食堂。でも、客が「中華とご飯」以外を頼んでいるところをほとんどみないということだ。この店、通常の和歌山の中華に比べると「とにかく濃い」んだそうである。なので、自動的にご飯を頼んでしまうということらしい。ふむ、濃い味好きの私にはビッタシではないか。

■山為食堂 073-422-9113
和歌山県和歌山市福町12
営業時間 11時~17時 ただし売り切れ可能性あり
日祝休み
中華そば 650円
山為の店内は本当に食堂。名物のおばちゃんが居て、すべてを采配する。中華は大盛りはできない。ので、中華とご飯を頼む。しばし後に運ばれてきた中華&ご飯は、確かに「濃ゆい」存在感に満たされていた。スープをすする。確かに濃い!豚骨醤油に魚系の出汁が混ざったような感じだが、とにかくねっとり感が強く、それだけでオカズたり得る味だ。迷わず白飯を一口。そして麺をすする。若干太めで黄色がかった麺はスープがよくからむ。煮豚チャーシューがいい相性だ。文句なしに旨い。化学調味料のにおいもあまり感じない。ゼロではないだろうが、それよりも魚系の出汁を使っているのではないか。スープを飲み干すと大量に残る粉っぽい堆積物が、それを物語っている。麺→スープ→白飯の繰り返しであっという間に食べ終わる。実に満足した。これで650円は安いぞ!

さて山為は美味かったものの、朝から何も食わずにラーメンとご飯(ドンブリ入りだったが)だけで満腹になる訳がない。同行の津田氏は「まだ食うの~?」と引くが、もう一軒ぜひ!
行きたかったのは、これも津田さん情報で、あの井出で修行していたらしい人が始めた「丸三」という店。市内をしばらく走り、見えてきたのは比較的綺麗な一軒家の店だ。

■丸三食堂
和歌山市塩屋6-2-88
0734-44-1971
営業時間11時〜23時
日祝 休み
中華 500円
特製中華 600円
大盛中華 600円
大盛特製中華 700円
早すし 100円
おおおおやった~! この出張で初めて早寿司に出会えた~!
歓喜の私である。大盛特製中華をオーダーした後、早速1つ食べる。旨い!
中華が出てきた。ちなみに特製とはチャーシュー大盛りのことだ。それに麺も大盛りにしたのが大盛特製中華。説明しなくてもわかるか。この、丼に表現された世界が実に美しい、、、写真をみていただきたい↓

どうですか!? 小宇宙が見事に表現されている!(なんのこっちゃ)
井出も山為も、いい意味でぶっきらぼうな感じなのだが、丸三は芸術点を挙げたくなる完成度なのだ。そしてそれは外見だけではなかった。
「旨ぁ~い!」
個性が違うことを差し引いても、どう考えても今回一番の旨さである。よく考えて欲しいのだが、私はすぐさっき中華とご飯を食べている。その上に大盛を食べて「旨い」というのだから、客観的評価としてはすさまじい高得点になるはずだ。
一番感じるのはスープの繊細さだ。豚骨醤油のベースは変わらないが、雑味が少なく、味わせたい要素を絞り、その各要素を際だたせることに成功している。濃厚さをあまり意識させない内に食べ終わってしまうのだ。麺は今回の3店中で最も細いので、これがスープを繊細に感じさせている要因の一つだろう。しかもチャーシューも手抜きナシで、旨い。バラ肉だと思うけど、味がきちんとしていて、口でとろける。とにかく旨いのである。
おもわず早寿司をもう一つ食べる。中華のスープに少し浸して口に運ぶ。スープと酢飯は絶妙のコンビネーションだ。一口大のガリがスープの脂を引き締める。と、津田さんがレジに立って会計をしてしまう。あああ、、、この「あああ、、、」は、おごって頂いてしまったどうしよう、という気持ちともう一つ「早寿司もういっちょ食べたいんだけどなぁ」という2つの意味がある。
それでもう一つ店員さんに100円払って早寿司を食べたのであった。それで諦めたけど、本当のことを言うともう一つ食いたかった。何せ最高なのである。
大満足して帰途へ。なんと津田さんの奥様が、早寿司を10本セットで買っていてくださり、お土産にもたせてくれる。なんと出来た嫁さんなのだろう、、、でも、告白しよう。この10本の早寿司、東京の自宅について、寝る前にすでに5本食べてしまったのだ。だって旨いんだもーん、、、
こうして和歌山ラーメン紀行その1は終わった。しかし情報によればまだまだいい店があるらしい。続編を期待して欲しい、、、
20030920
本日から熊本3連戦である。20日(金)は八代農業改良センタと、地元の農業生産者のパソコン利用クラブである「ぐりーんネット」の共催による講演会に招聘されたのだ。題目は勿論、「農産物のトレーサビリティ」。
八代とは実は関わりが古い。まだ学生の頃、農業情報ネットワーク大会で知り合ったネットファーマー(ネットを駆使する農業者のことだ)に、八代の鶴山さんと宮本さんがいたのだ。二人は、ともに八代名産のフルーツトマトである「塩トマト」生産に取り組む篤農家達だ。生産圃場を見せていただき、その味に驚嘆して以来、取引させていただいたりしながら今に至る。
熊本空港に着くと、鶴山さんが迎えに着てくれている。半年前の農業情報ネットワーク大会ぶりの握手。
「最近、熊本では黄化萎長病が流行しているんで、トマト農家は壊滅的な被害を受けてるんよ」
という穏やかならぬ情報を聴かせてもらいつつ、1時間半程度で八代へ。昼食には生け簀寿司の店で握りとバッテラをいただいたが、意外(!)に美味しい寿司をいただいた。

「実は熊本の魚は旨いってことが、知られてないんだよねぇ」
本当にそうだ。僕はすばやく認識を改めた。
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講演会場には60人くらいの聴衆が集まっていた。どうやらこれは「めずらしか」ことらしい。やはり今日的な話題で、しかも何をやらねばならないのかがかはっきりわからないテーマだからだろう。皆、熱心に1時間半の講演を聴いてくださった。
さてこの宴席で一番面白かったのは、実は食べ物よりも生産者との話だ。それも、食べられる品目ではなく、いわゆる「い業」の話だ。い業とは、い草を生産して畳表(たたみおもて)をつくる仕事を言う(へぇ~)。やまけん的には食べられない作物にはあまり関心がないのだが、これは話を訊いていると非常に面白いものだった。いや、まずは話をしてくれた古島さんという若手生産者さんが面白いキャラクターだったので引き込まれてしまったのだが、、、ごつい外見でかなり笑わせてくれる陽の気を持った人だった。

■い草の話
1反部(10アール)の畑から、畳表4~500枚分のい草が収穫できる。そのい草を畳表に一次加工したものが、1枚分で900円~1200円になり、1反部あたり大体60万円前後となる。
この畳表の流通構造だが、やはり一般の青果物と同じく、卸売市場があって、JA経由でそこに出荷、問屋を通じて全国の畳屋に流通することになる。これが一般的なルート。
そして、ここで登場するのがネットだ。このぐりーんネットの生産者のうちの数人はいち早くWeb上で畳表の直接販売を始めた。顧客対象は当然ながら畳屋さんだ。実は、畳の世界でも、流通場の不具合が散見されていたのだ。例えば畳屋が問屋を通じて仕入れをする場合、いい畳表が手に入った時、「これと同じものを欲しい」と思っても、次回同じものを入手できる見込みは低い。卸売の仕組上、生産者までの指定が難しいらしいのだ。
つまり、もし「よい畳表」が安定的に入手できるとなれば、直販ルートでも何でもよいという畳屋さんもいるということなのである。
ここで重要になるのが「よい畳表とは何か」ということだが、これについては僕も選別眼は持ち合わせていない。ただ、もう1人話をしてくれた岡さんの話では、い草のニッチ市場があるという。
「通常、い草は泥染めといって、保存性をよくしたり独特の色合いを出すための着色をするんですが、アトピー等の問題もあって、これを嫌う人たちも居るんです。なので、うちでは完全に薬品等を無添加にして、安全な畳表を出荷しています。生産品の9割以上が直売で売れますね」
面白い話である。い草にもそんな市場があるのだ。世の中深いというか、農業はやはり面白い。どこにもあるのが、従来型の市場流通の構造的問題。そしてそれを踏み越える意欲的な生産者がいる。
勿論、世の中の従来型の市場構造は、悪い側面ばかりではない。ただ、実状に合わなくなった構造は多数存在する。この構造を逆手にとって自己を確立する人たちもいる。日本の農業の衰退は目を覆わんばかりだが、まだまだ元気で面白い人たちがいると実感した。


こうして熊本の第一夜が更けていった、、、
9月21日 八代より阿蘇へ移動
八代から、阿蘇の長陽村にきた。長い陽と書くだけあって、南と北には山が走っているが、その間の平野部に村が広がっている。熊本と高森を結ぶ幹線道路を降りてすこし入ったところに、ぽっこわぱ農園がある。僕が大学時代に、神奈川の藤沢から後輩達を連れて合宿に通っていたのがここだ。この農園は、思想家のシュタイナーが拓いた「バイオダイナミック農法」を実践していることで有名だが、そういうことよりも、完全に無化学肥料無農薬で4町歩近くの農地を耕し、野菜、米、茶をセットにして数百の世帯に宅配をすることで生計を立てていることに敬服する。ここに年に一回はこないと、自分の中のリズムが狂うようで、落ち着かない。

ぽっこわぱに向かう道の風景は昔とまったく変わらず僕を迎えてくれる。今、ぽっこでは、創始者であるよし子さんとドニーさん(フランス人だ)の家族と、よっちゃんの家族、そして研修生数人の、計10人程度で運営されている。すぐにぽっこの空気に戻り、作業をする。
日曜日は基本的には作業は休みだが、研修3年目のヨウゾウ君がレモンバーベナを摘んで茶を作るというので、手伝いをさせてもらった。バーベナは大好きなハーブだ。これを摘んで洗い、葉の水気を切って茶葉乾燥機に入れ、水分を飛ばすのである。

その他、ナスときゅうりの収穫、にんにくの選別、牛にやる草刈り、葉物野菜のセルポットへの種まき。農作業は、人と話しながらするとにぎやかだが、一人で黙々とやるのもまたよい。それは瞑想に似ているが、実は生産という活動に直結している時間の流れだ。それはゆったりとしていて、コンデンスミルクのように濃い時間なのだ。

午前6時から朝作業、8時に朝食をとって9時から作業、日中は午後3時まで日差しを避けて休み、暗くなるまで作業。夕食をとって、選別などの中でできる作業。
このリズムがだんだん気持ちよくなっていく。

心地よい阿蘇時間が流れているのだ。
待ちに待った大阪出張だ!過去ページを観ていただいていればわかると思うが、今回は2店舗、絶対に行きたい店がある。行きたいというよりは再訪したい、だな。前回行って、実に関心感動した2店なのである。大阪ってほんまに旨いんやね、ということを知った店だ。
それは、阪急梅田駅地下街などにあるインディアンカレーと、心斎橋にある「おおさか料理」を標榜する割烹「浅井」だ。それぞれ過去ログを観ていただきたい。
大阪へはのぞみで行く。3時間かかる時間、出張先へ持っていく資料を整理しながら、文集文庫から出ている名著 「すきやばし二郎 旬を握る」 を読み直す。
すきやばし二郎は、言わずと知れた銀座の江戸前寿司の名店。その主である小野さんが、いかにして今の握りスタイルにたどり着いたかを、豊富な図解入りで語っている本である。感動させられるのは、この人の寿司に対する探究心の深さだ。車えびを旨く握る最適な方法を見つけるため、手を変え品を変えながら実験をし、大量に自分で食べる。そして「車えびは人肌で出すのが一番香りがたって旨い」などの知見を得るのだ。そう、食べ物については、味覚の正確さと、自分が経験した味の記憶の蓄積と、そして執着心がないとたどり着けない境地がある。それをまざまざと見せ付けられる本なのだ。今回はこれを仕事先でお見せするのだ。
さてそうこうするうちに、新大阪に到着。まず目指すのは、前回の大阪訪問時に偶然入って、瞬時にその虜になってしまった「インディアンカレー」である。

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前回は、淡路からバスで移動したのだが、そのターミナルのすぐ地下に店があった。今回は電車なので、大阪に不案内な僕には位置関係がようわからん。前行った店は「阪急梅田」にあるらしい。とりあえず大阪駅にきてみたが、どう行けばいいのかわからないので色々とモバイルで地図を探す、、、よくわからない。仕方ないので通りがかりの人に聞いたら、
「阪急梅田は大阪駅から歩いてすぐやで」
と言われた。ほんとだすぐだ!と足が浮き立つ。地下2階に降り立つと、強いカレーの香りが漂っている。再訪だ。
このインディアンカレーについては、読者から情報をいただいた。
・ご飯大盛りにすると、ルーが足りなくなるので、ルーも大盛りにした方がいいよ。
・「目玉」と言うと、生玉子が乗せられてきます。これを混ぜながら食べると最高。
なるほど!そいつぁありがたい。これを踏まえて注文は「ご飯とルー大盛り、目玉入り」とする。1030円なり。カウンター席に座ると、隣の人はハヤシライスを食べている。ケチャップ色に近く、玉葱がゴロゴロしていてこちらも旨そうだ。次回は両方食べよう、、、
と思っているとカレーがすぐに運ばれる。キャベツの甘酢漬けも別皿に盛られてくる。一口カレーを口に運ぶ。一口目から強い辛味が弾ける。旨い!
そしてこの一瞬、実はインディアンカレーを構成する重要な要素に対する理解が瞬時にできたのだ。それは、このカレーを忘れがたくしているのは、この辛味ではなく、その裏にある「甘さ」なのだということだ。絶妙な辛みに隠しているが、このカレーには糖類の甘みがかなり入っている。それも、「タマネギをじっくり炒めて甘みを出しました」というようなものではない。直接的に甘みを入れているはずだ。思うに、、、浅めに火を通したカラメルではないだろうか。この甘みがあることによって、「辛い」→「けど甘い」→「辛い」→「うまーい!」というサイクルになるのだろう。
卵の黄身を割ってまぶして食べると、これまたマジ旨!うーん やっぱり大阪のランチはインディアンカレーに限る!次回はハヤシライス大盛を食べることにして、一路仕事に向かうのであった。
2003-10-08の続きだ。
さて、夜の部は心斎橋にある おおさか料理 「き川浅井」だ。この店は実に素晴らしい。前にも書いたが、勢いのある品書きだ。きらめくお品書きと言っていい。こうした、発光しているような品書きがある店は実に美味いことが多い。勿論この「浅井」も最高だ。
しかし、、、申し訳ないことがある。全ての画像をデジカメで撮影したのだが、デジカメが故障し、その画像を取り出せない!不測の事態になってしまった、、、この日食べたのは下記だ。
怒濤の品数、、、念のために言っておくと3人で食べたんですよ。まあ、ほとんど私が食べてましたが、、、
三寸
ナスごまクリーム和え
くじらベーコン
つぶ貝のお造り みそ醤油添え
コチのウニ巻きお造り
関さば生寿司
穴子白焼き
明太イカのお造り
かわはぎお造り肝ポン酢
甘鯛のポテトサラダ湯葉巻きグリル
レンコンとウニ餡の饅頭
合鴨ロースのマスタードクリームソース
鯨さえずりの土手鍋
ナスとあわびのウニ乗せグラタン
蟹入りひろうすの冬瓜あんかけ
うるか和え
納豆雑炊
特に絶品だったのは「甘鯛のポテトサラダ湯葉巻きのグリル」だ。甘鯛の身でポテトサラダを巻き、その上からさらに生湯葉を巻いてアルミホイルでくるみ、蒸し焼きにしている。ポテサラの酸味が利いて、実に旨い!これが「おおさか料理」なんだなぁ、、、としみじみ納得。飾っていないのだ。ポテサラなんて、例えば京都では甘鯛に合わせないはずだ。でも、実質的に旨い。だから巻く。これが大阪のおおさか料理たるゆえんだろう。
ここは今度、怖いけど自腹で来よう、、、 と堅く心に誓ったのだった。
さて岐阜の夜は、大垣随一の名料亭、「四鳥(よんとり)」である。
四鳥
大垣市東外側町1-15
http://www.spi.ne.jp/~yontori
ここは県知事が食べにいらっしゃるような超名店だ。料亭の跡取りであり、板長でもある津谷秀次郎さんは、日本料理の枠に囚われない自由な料理を創り出す。フォアグラがよく出てくる料亭ってそんなにないだろう。日本酒とワインにも精通している、素晴らしき人なのだ!

なんでそんな格式の高い料亭に僕なんぞが行けるのかというと、この四鳥と昵懇にしている僕の先輩に連れて行って頂いたのだ。その時、食材の話になり「美味しい地鶏が欲しいんだよね~」という話があり、「それならば!」ということで、僕が食材を紹介したのだ。
その食材とは、静岡県で育種された「駿河若シャモ」。このシャモについては、この日曜日にシャモを育種した静岡県中小家畜試験場に行ってハムとベーコンを作ってくるので、その際に詳しく紹介したい。とにかく今最も注目すべき地鶏である。特に鈴木さんという生産者さんが育てた地鶏が最も旨いのだ。この鈴木さんの地鶏を秀さんに送ったところ、ムチャクチャ気に入ってくれ、その後、鈴木さんとの取引が始まったわけだ。
今日は、そのシャモを秀さんがどう料理しているのか、楽しみにして来たのだ!
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帰京するので2時間しかとれないのであわただしく入店。店の前にはハイヤーが数台停まり、お付きの人たちらしい黒服が数名。VIPがいるらしい、、、そこに俺ごとき若造が入っていくのはとっても違和感がある。
たたきで靴を脱ぐと、女将さん仲居さんが「あらまあようこそ」と迎えて頂く。びびりそうな個室に通され、いざ宴(独りだけど)が始まった。
前菜
シャモの笹身の塩じめと霜降り
皮煎餅(竜田揚げ)

通常の鶏肉(ブロイラー)はどうしても短期間で仕上げるためか、旨味に乏しいのが常である。特に、牛肉と違って酸味が乗っていないというのが鶏肉の欠点と言われる。しかし、この駿河若シャモは、肥育期間が120日以上と長いため、鶏とは思えないほどの旨味が乗る。最もあっさりしているササミでさえも、ほのかな酸味を感じるのだ。その辺のエセ地鶏とは違うのである。これを気持ち濃いめの仕込み醤油でいただく。新鮮なササミにしか感じられない微細な繊維感とヌメ感。皮煎餅は片栗をまぶしてカリっと揚げており、心地よい。否応なく期待が高まるのだった。
酒はぬるかんの「みちざかり」。僕はワインより日本酒だなぁ。特に燗酒は優しく身体に浸透し、心地よさを倍増する。仲居さんが良いテンポで皿を運んでくれる。
若シャモの首肉と茸、白菜の椀

鶏の部位で最もうま味と歯ごたえが良いのは、なんと言っても首肉だ。骨の周りに少ししか就いていないこの部位が、僕は最も旨いと思う。これを椀にしている。白菜が首肉の濃いスープに絡んで何ともいえず旨い。
若シャモ炭火焼き

待ちに待った腿と手羽先が焼かれて出てくる。正直言って、若シャモらしさを最高に活かすのはただの炭火焼きだと思う。これは秀さんも同意見とのこと。ここでは肉に塩まぶさず炭火であぶり、皿に添えられた塩につけるようになっている。塩は伯方の岩塩だそうで、適度に尖った酸味があり、若シャモに合う。シャモのモモ肉は強い弾力と驚くほどの旨味を含んでいる。どんな人でも噛んだ瞬間に他のモノと違うことがわかるだろう。
手羽先はねっとりとしたゼラチン質がビッシリついており美味。ただし余分な脂がないので食べるところは少ない。これが平飼いの地鶏の特徴だ。
卵管、腹卵と肝の山椒甘露煮

この若シャモ、なんといっても肝が妙味だ。僕も驚いたのだが、丸で捌いたときに目に付くのは、肝がオレンジ色と言うこと。そんなの始めてみた。今回は肝、卵管、腹卵がこっくりとした甘露煮にされている。山椒の実と葉がアクセントになっている。実に酒が進む、、、
甘露煮の甘濃さが強すぎる管もあるが、それは岐阜特有の甘めの味付け故と思えるし、第一甘くとも全く嫌みはない。山椒の実を噛むと広がる強い香りが甘さを緩和するので、爽やかだ。
手羽元のフライ味噌ソース添え

この日最高の一品がこれ。手羽元は細かいパン粉でフライに仕上げている。肉は驚くほどにほどに弾力に富む。かといってかみ切れない訳ではなく、絶妙の繊維感を歯の記憶に穿ちながら噛み切れていく。そう、肉の繊維の一筋一筋がきっちりと自己主張をしており、みっちりほくほくと歯に感触を伝えるのだ。これはどうやったら伝えられるのだろうか?食べてみれば、言っていることがわかると思うが、、、
そしてこのフライと味噌ソースの相性が最高!味噌ソースとは、名古屋や岐阜では一般的なみそカツのあのソースに一手間かけたモノだ。秀ちゃんいわく、みそカツソースそのものだとシャモの味を壊す。レシピ教えてくれたけどここには出さないよーん。これがまさに絶妙で、シャモの味と香りを最大限に引き出すチューニングになっている。フライには塩よりも味噌ソース!こいつは大発見である。
モモ肉と胸肉の地鶏すき焼き

厚手の鉄板で、鶏すき焼きを作ってくれる。僕一人のためになんと手が込んでいることか、、、申し訳ないっス。甘めのタレで仕上げてくれるすき焼きは、「頼むからご飯をドンブリ一杯くれ~」といいたくなるが、ここで若女将(秀ちゃんの奥様)が登場。お相手をしてくださる。
その後、冷や酒の純米大吟醸を持って秀ちゃん登場。酒は 可児市の林酒造の酒で「美濃天狗 いひょうゑ 純米大吟醸」←劇ウマ。

料理にも満足した旨を伝える。俺、秀ちゃん大好き。飾らず、食への執着、探求心が子供のように純粋。僕が知っている旨い食材をすべて紹介したいと思う。ちょうど冬場のフルーツトマトを知らないというので、八代の塩トマトを今年は送ることにしよう。楽しみにしておいてね、秀ちゃん。
〆はオムライスと冷やしうどん(本当はどっちか一品だけなんだけど)。満腹になり、大垣駅へ向かう。こうして一日が終わった、、、若シャモについては今度ゆっくり書きます。
本日は岐阜に出張だ。目指すは郡上八幡。はるかなる道のりだ。
東京から新幹線のぞみに乗り、名古屋にて乗り換え。乗り換えの際には迷わず新幹線ホームの両端にある立ち食いきし麺屋に行く。これ鉄則。カレーきしめんが割と旨いのだけど、かき揚げ天ぷらきしめんを食べる。

多くの名古屋人が「新幹線ホームのきしめんがいっちゃん旨い」というのだが、数年前に店舗を新しく建て替えてからめっきりと味が落ちた。ダシが不味いのである。それでも標準以上の味ではあるので、食べる。
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さて岐阜羽島から車で郡上へ。郡上八幡は、最高に風光明媚で空気と水の旨い地域だ。ここは水道水でさえも旨いのだが、多くの家庭で井戸や山からのわき水を使っている。極めて品が良く力強い水なのだ。旨い水と山々に囲まれた地域では、例外なく蕎麦が旨い。この日も昼食は、郡上出身のT氏が「この辺じゃここが一番旨い」という蕎麦屋「善兵衛」へ。
盛り蕎麦500円。天ぷら蕎麦650円。ん?安~い! 郡上は何故か安いのである。この辺では冷やし蕎麦のことを「コロ」と呼ぶらしい。僕は天コロ蕎麦大盛りを頼む。程なく運ばれた蕎麦、実に旨い!細めの堅麺で、角がビシッとしている。つゆがシャッキリ濃いめの塩梅。天ぷらは大海老と、海苔の天ぷら二枚がアクセントになっている。

なかなか感動してしまった。おかげで長引いた仕事の打ち合わせもきっちり済ませることができた。もうへろへろである。
そして日記は夜の部へと続くのであった。
これは2003年8月8日の記事だ。
自宅で普段使っている塩は「赤穂の天塩」だ。その「赤穂」が地名で、しかもあの赤穂浪士の赤穂だというのはうっすらとは知っていたが、余り正面に捉えては居なかった。しかし今や、赤穂と言えば!それは激旨イタリアンの赤穂と言うほかないでしょう!という認識が俺的宇宙の中で強く礎を築いたのだった!
一言で言ってしまえば「赤穂には素晴らしいイタリアンがある!」ということです。
大阪出張の後、本来なら熊本に講演で飛ぶはずだったのだ。しかしなんと台風が来ているため、前日夜にいきなりキャンセルの電話がかかってきたのだ。うーむ困るなぁ、、、しかし気持ちをエイヤと切り替える。神戸の親友である西垣内(ニシガイチと読むのだ)に相手してくれ~と言うと、「それなら俺も行きたかった店にいってみよか?」となる。いい友だ!
その「いい店」が、兵庫県の端の端に位置する赤穂の「さくら組」だ。この店、結構有名らしく、大阪から車で食べに来る人もいるらしい。有名なのは石釜焼きのピッツアだという。けど、海っぺりにあるわけだし、ピッツア以外にも魚貝が旨いだろう。関西方面のイタリアンの実力を知るいいチャンスだ、ということで一も二もなく賛成した。
翌朝、大阪から神戸に移動し、西垣内の車にて一路赤穂へ。これがムチャクチャ遠い。しかも台風の影響で大雨。雨も断続的に降る。いきなりあがる。晴れ間が見える。と思ったら視界20メートルくらいの大雨。大変な赤穂行きになっちまったのである。でもそのおかげで、西垣内の半生をだいぶ理解した。こいつ、本当にいいヤツなのだ。
2時間半くらいかけて赤穂についた。西垣内も実は店の場所はよくわかってなくて、あてずっぽうで走っているうちに、その店が忽然と現れた。

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瀟洒なつくりの店を想像していたら、小さいカフェのような、しかも雑然とした作りの店だったのでちょっと驚いた。いや、これはいい意味で言っているのだ。綺麗すぎる作りの、いわゆるリストランテではない。漁師町のトラットリアといった風情。実際はピッツェリアなんだが、その雑然さが、なんとも旨そうな予感を漂わせている。しかもすし詰め満員である。
この店に来る前に西垣内が、
「きっと客層の大半が、近所のちょっとお金のある中年主婦ばっかりやろ」
と言っていたのだが、まさしくその通りだった。テーブルを囲むマダム達。思わず笑ってしまった。しかし、予約しておいて正解だ。平日の13時なのに待ちが沢山入っている。ちなみに男性は俺たち二人だけなのであった。
10分ほど待ってテーブルが空く。メニューを観ると、ぉお!あの、本当に美味い店でしか観られない煌めきが見える!メニューはオーラを放つのだ。ひと皿の単価は1200円~1800円と高めだが、それだけの内容なのだろう。じっくり考えたあげく、
前菜盛り合わせ
パスタ
カジキのソテー
ステーキ
デザート
というセットを2名で頼み、かつピッツアマルゲリータを頼む。足りなかったら追加するのだ。我々の軽妙なトークで可愛いウェイトレスちゃんを笑わせつつ、キリッと冷えた桃入り白ワインを飲んでいると、前菜の盛り合わせが出てきた。ドドーンと盛られたイタリアによくある威勢のいい前菜は、見た目も味も最高の一言だ。食事はたいていの場合、前菜で決まる。前菜の満足度が低くて、最後まで楽しめたことは少ない。しかもここは盛りがいい。

次に出てきたペスカトーレが出色だ。かなり太めのリングィーネを使ったこのペスカトーレ(漁師風)、とにかく魚貝のダシが濃厚。アルデンテより固めに仕上げた麺にサルターレ(熱を通しながら絡める)をして、濃厚な味を麺に吸わせている。思わず西垣内と顔を見合わせて
「旨いっ!」
麺がもう200gくらい欲しくなるような、そんなパスタだった。

ここでピッツアが出てくる。生地を捏ね、焼いているのは小柄な女性だ。しかし業務用の小麦粉袋を運ぶ彼女はタフだ。プロの匂いがする。出てきたピッツアもタフだった。なよっとした生地では全くない。台はパリっとし、小麦の香りが立ち、熱いチーズとうっすらと塗られたトマトとバジルの香りが相乗する、絶妙の味だ。森下にある某店で石焼きピッツアにがっかりした僕にとっては、目からウロコのピッツアだった。(食べるのに夢中だったため、写真はない。下の写真は、ピッツアを焼く石釜と西垣内だ。)

そしてここから怒濤のメインだ。カジキマグロのソテーにはタマネギと赤ピーマンのソテーと粒ケイパーが絡まっており、レモンを搾って食べるだけのシンプルな構成。しかし、旨い。何というか、皿の裏に見えない文脈があるかのようだ。そう、勢いがあるのだ。そのスピード感に乗って食べるのが心地よい。

そして牛肉のステーキ。網焼きではないけど、イタリアンパセリと粒胡椒を載せて、ヘタな味付けをしていないそれは、肉汁と野趣の溢れる、これまたスピード感抜群なひと皿だった。

満腹。はるばる来た甲斐があった。西垣内も満足そうだ。
ドルチェには、桃のプリンとティラミス。桃は、生桃を裏ごしして固めたもの。ティラミスはでかくて甘くて下品で旨い。ヴォーノ!
これで二人で9600円程度か。安いとは言わないが大満足だ。あまりに遠いが、また来たい店である。
関西のイタリアンは旨い!少なくとも赤穂にはいい店がある。これは真実である。
またも大阪出張である。しかも朝からの仕事なので、前泊する。うーむ嬉しい!大阪には友人が多々いるのだが、同じ農産物の業界にいる親友と会うことにした。今回は翌日の仕事の関係で京橋というところにホテルをとったのだが、着いてみてビックリ、繁華街というか歓楽街というか、東京でいえば新大久保のようなところだった。びっしりと店が並んでいるが、立ち呑みの店や串揚げ、魚料理やラーメンなど、素晴らしく雑多にして猥雑な空間が広がっていた。こういうのは大好きなのである。片っ端から食いまくりたいという活力が身体からみなぎってくる。
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友人と落ち合い、店に移動。実は、大阪出張編ではすでこのblogに2回登場している「インディアンカレー」が好きだ、と言っておいたのだが「この近くにあったよ。そこに行こう」という。インディアンカレー、京橋にあったっけ?と思いながら風俗街を抜け、繁華街のはずれまで歩いてきたところに、非常に美しいアジア女性が店先で通りをじっと見つめている光景に出会った。年の頃30台後半か。アルカイックな眼がとても印象的だ。と、思っていたら友人が「ここだここだ」という。
えっ?インディアンカレーじゃないじゃん、と思いながら合点がいった。友人は、僕が「インドのカレー」を食べたいのだと思ったのだ。僕は「インディアンカレー」というチェーンに行きたかったのだが、説明不足だった。が、くだんの店は明るいログハウス風喫茶のような綺麗な店構えで、何よりこの印象的なアジア(っていうかインド)美女がいらっしゃる。非常に速やかに僕の心は本格インド料理向けにリセットされた。
店名:アルナーチャラム
大阪市都島区片町2-7-21
06-6881-6771
店内はきれいな喫茶店風だが、厨房を覗くと本格的なタンドールがある。ナンやタンドリーチキンを焼くための壺だ。金属製の壷の中に火をおこし、内壁にナンの生地を張り付けて焼くためのものだ。本格的なタンドールがあるということは、きっちりとしたナンが食べられるということだ。しかも料理人はネイティブのインド人が2名だ。それに先ほどのインド美人が厨房にいる。うーん楽しみになる、、、
メニューはワープロうちされたもので、全てに日本語の説明が入っているが、料理自体は全く北インドのバリエーションだ。タンドール料理各種にパコラ(揚げ物)、いわゆるカレー各種にビリヤニ(ピラフのようなものだ)。その各種に、チキンかエビか野菜か、素材を選ぶことが出きるようになっているようだ。
店内でサーブしているのは日本人のお姉さんである。この人もなかなかに美しいので、いろいろと相談しながらメニューを決める。
・ベジタブルパコラ

・チキンサグワ(チキンとほうれん草のペーストカレー)
・シュリンプガルニ(エビのカレー)

・チキンのガーリック焼き
・チキンビリヤニ(ピラフ)

・ナン
運ばれてきてびっくりした。どちらかというと王宮料理系の、まろやかにしてリッチな味わいのインド料理なのだ。二種のカレーのうち特にシュリンプのカレーは、トマトが多用されていて真っ赤で、そしてマイルドで非常に旨い。本気で旨い!東京でもあまりお目にかかれない系統のインド料理だと思う。
お姉さんにヒンディー語で「美味しい」はなんというのかと尋ねると、
「アチャ」
だという。ここから店内にブルースリーが2人いるような状態になったことは言うまでもない。
「アチャ、アチャアチャ!」
しかし実際に旨いのだ。マサラの芳醇な香りが、トロリとしたサグ(ほうれん草)と溶け合っている。いたずらに尖った辛みはなく、実にマイルドな王宮ぶりだ。
あまりに「アチャ」が多いので、料理人が代わる代わる僕らを見に来る。ひたすら食べて、最後に茄子のカレーとご飯をまた頼んでしまった。

デザートはクルフィーというアイスキャンディーにチャイだ。もう大満足。友人Mよ、よくぞ俺の真意を誤解してくれた!なんと良い店に突き当たったことか。
最後にみなさんと記念写真を撮った。なかなかインド美女は入ってくれようとしなかったが、、、
これだから大阪はやめられない。もっとこよう、と思いつつ友人と別れる。その後、俺の足は自然と繁華街に向かっていた。風俗店の兄ちゃんが客引きをしてくる。その兄ちゃんに「あのさ、ラーメン旨い店ってどこ?」と訊くと、気勢を逸した兄ちゃんは「僕やったらサイガのスタミナラーメンですわ」という。その兄ちゃんを信じて、2分後にはサイガのカウンターに座ってスタミナラーメンと餃子を食べたのであった。
さて明日は仕事だ、、、
今日は久々に完璧な食い倒れが満喫出来た。静かな満足が僕を包んでいる、、、
朝から重要な会議。きっちり仕事しましたぜ!マジで! 朝飯も食べずに、客先を辞去したのが12時半過ぎ。もう腹は減りまくっているのであった。同行の青果物流通業者の方々と共に昼食をということになる。
会議が住道(すみのどう)という場所だったのだが、駅までの道のりにいろんなものがあって冷やかして帰るのが面白かった。豆腐屋ではいかにも旨そうな生湯葉が売っていたので足を止めると、ひろうす(がんも)も旨そうだ。2つずつ買い求める。湯葉はわさび醤油か、柚子胡椒で食べると旨いらしい。
商店街に入る前の空き地の横で、何やら面白い車が停まっている。なんと業務用の電気オーブンを積んで、その場でメロンパンを焼き、直接販売をしているのだ!焼き上がり時間の目安が書かれており、すでに5,6人の行列ができている。俺の闘魂は一気に燃え上がった。

並ぶこと5分、見事焼き上がったメロンパンを同行の皆さん分も買い求め、出来たてアツアツのメロンパンにかぶりつく。表面は当然ながらクリスピー感たっぷりでカリっとしているが、クッキー生地の部分以外は驚くほどにフワフワ。生地に空気をたっぷり含ませているので、大きめなのに実にライトなのだ。内部に密に詰まっていないので、軽く食べられてしまう。これは幸先がよい。
■シャレードのメロンパン 120円/個
移動店舗(っていうか、車)なので、大阪府内を適当に巡回しているらしい。
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さて電車にのり目指すはキタすなわち梅田界隈である。実は大阪オリジナルのファーストフードである「イカ焼き」をまだ食べたことがなかった。阪神百貨店の地下食品売り場に旨い店があるというので、行ってみる事にした。そうしたらそのすぐ近くに551(蓬莱)の豚まんがあったので、豚まんと肉団子の甘酢タレ、シュウマイを買って立ち食いコーナーにて食いまくった。イカ焼きは、お好み焼きとは明らかに違うものだった。今後数回は食べてみないと理解できないかもしれない。
さてその後は同行の方々とみっちり2時間の会議であった。梅田の地下街の喫茶店で会議をしている間、地下街のトイレに行ったとき、どうにも気になる店を見つけてしまった。それが「ピッコロカレー」である。
インディアンカレーと同じように数店舗のチェーン展開をしているようだ。雑誌に取り上げられたりしているようで、店先には記事のコピーが貼られている。同行の皆さんに聞くと、
「うちのおかんは大阪ではピッコロカレーが一番美味しいって言うてました。」
という。
実は本日は、昨晩食べられなかった「インディアンカレー」に絶対に行こうと思っていたのだ。しかしこのピッコロカレー、非常に気になる。なんといってもトイレの横にある8席しかないカウンターだけの店というのが、絶妙にソソルのだ。
その時、食い倒れの神が俺にこう囁いた。
「心配するでない。ピッコロカレーではビーフカレーを食し、その後インディアンカレーにてハヤシライスを食べればよいのだ。さすればカレーが重なることはない。」
おおっ そんなことは考えてもみなかった! なんと素晴らしい啓示だろうか!? 実は昨晩、本格派インドカレーを食べ終わり床に就き、ひそかに悩んでいたのだ。
「インディアンカレーは実に旨いのだが、あそこのハヤシライスも食べてみたい、、、でもカレーも食べたい、、、どおしよう!?」
この悩みが一挙に解消されるのである。あとは、肉まんやら何やらを詰め込んだ胃袋にカレーとハヤシが入るのか?という点だけであるが、そんな心配はないことは読者の皆様はご存知だろう。
ピッコロカレー店内は、渋く光るカウンター席と、8席の丸イスで構成される純喫茶風の調度だった。ビーフカレー、チキンカレー、シーフードカレーが品書きされている。ビーフが旨いと聴いているので、ビーフを頼む。店番の女性がまず別皿に白菜の浅漬けを出す。大阪のカレーの付け合せは面白いなぁ、インディアンカレーでもキャベツの甘酢漬けがでるし。業務用アルミ鍋に一人分のルーを入れ、熱を通す。ご飯を盛ってその上にたっぷりと濃い茶褐色のルーをかけ、それは供された。
■ピッコロカレー
・ビーフカレー 980円
濃い。
とにかく濃厚なプレゼンテーションである。茶褐色というか暗褐色のルーは、見るからに煮込まれ度の高さと深さを感じさせる。スプーンで軽く混ぜ、口に運ぶ。インディアンのようなパッと散るような辛味はない。見た目通りの濃厚でねっとりとした芳香が立つ。牛肉はスネか肩を長時間煮込んでいるようで、やわらかい身がゴロゴロと入っている。これもおそらくバラ肉をつかってトロリと仕上げているインディアンとは対照的だ。無論これはこれで好ましい。美味しいカレーだ。量的にも価格相応に盛りがよく、満足いく。皿を舐めるようにいただいた。これは、家庭で食べる日本風カレーを、限りなくプロフェッショナルに拡張したカレーだ。そのため、実に心地よく懐かしく、期待を裏切らない味だと言える。いい店を見つけた。
しかし、
と、地下街を「インディアンカレー」に向かって歩きながら自問した。俺が求めていたカレーはあのピッコロカレーだろうか、と。昨晩から俺の魂が欲していたのは、鋭くエッジの立った、風が通り抜けてゆくあの感覚ではなかったか、と。
と、格好つけてみたが、単にインディアンカレーにも行きたいだけである。ここ1ヶ月半の内に3回目だ。いや、今後もできることなら大阪にきたら必ず寄りたいのだが。今日はしかし、カレーではなく、前回隣の人が食べていて気になったハヤシライスを頼んでみよう。エッジの立ったカレーはまた次回だ。
ちなみにカレー780円に対してハヤシは600円と安い。スパイスや手間がカレーよりかかっていないのだろうか。カウンター中央の飯櫃(めしびつ)のまん前に座る。これまでも観察していたのだが、この飯櫃前にいるのが店のチーフである。山田と名札に書かれた、20代後半っぽいそのチーフは「いらっしゃいませ」を言うとき、愛想笑いのひとつもない。かといって不快な無愛想感を漂わせているわけでもない。そして飯櫃から適量のご飯を皿に盛り、カレーをレードル一杯分、綺麗にかけて供する手際は、どうみてもプロフェッショナルである。このカレーかけはどんなに店が混んでも彼一人が担当している。
ハヤシが出てくる。なんとも初めて見る色彩である。オレンジに近いトマト色、玉葱は櫛型カットが大量にのっている。そしてグリーンピース6粒。うーむ適度なチープ感が漂っている。このハヤシは山田チーフではなく奥の厨房でソースがかけられて出てくる。さて、どのような味だろうかと一口食べて、驚いた。カレーで感じたあの甘さが、ハヤシだとストレートに出てきている。甘い。無論、好ましい甘さである。玉葱のプンとする香りが鼻腔を抜ける。ハヤシのソースはこれもまたねっとりしており、口中に適度な摩擦感を感じさせながら甘味を発しつづける。う、、、旨い!こんなハヤシライスは初めてなのだった。
無論カレーとは違って辛味は一切ないのだが、なぜかあの「エッジ」を感じる。それは、完成度といってもいいかもしれない。全く、隙や脇の甘さがないのだ。それも味だけではなく全体の世界観を通じて、である。これはびっくりした。
その世界観の礎を発見した。さきほど触れた飯櫃である。
この飯櫃、単なる業務用のガス飯釜かと思ったが違う。本当に飯櫃なのだ。ステンレスの胴の中に、キャンバス地のような布の飯袋をいれ、そこに炊き立ての飯を詰めて保温しているようだ。これに気が付いて感動してしまった。大体どこのカレー屋でも、業務用ガス釜から直接飯を盛っている光景を見る。でもこの店では、飯櫃ひとつにもこだわりを見せている。そう思いながら見ていると、貴重な場面に出くわした。飯を使い切って、新たな飯を充填するシーンだ。奥から新しい飯釜を持ってきて、入れ替えをするところだった。残念ながらハヤシを食べ終わってしまい時間が経っているので席を立たざるを得なかったが、なんだかこの店の世界観を構成する重要なポイントを発見したような気持ちになった。
大阪は、善い。顧客を喜ばせるためのプロフェッショナリティとサービス精神に満ち溢れている。仕事がうまくいったこともあり、気持ちよくのぞみ号に乗り込み、帰郷して、これを書いている。あー、旨かった。
SAVAさんからリクエストがあったので、静岡駅周辺の旨い店をお教えしよう。ちなみにSAVAさんは、高知県出身のカメラウーマンでありアーティストであり、よくわからない楽しいねーちゃんである。
静岡県は、お茶の仕事や畜産関連でいきまくっているので、知っている店は多い。ただしその多くは山の中だったりするのだが、、、そんな中、駅から歩いていける距離に素晴らしい店がある。ちょっと値は張るが、その価値がある店だ。ぜひ参考にして欲しい。
以下は過去に書いた記事で、まだ日の目を見ていなかったものだ。ちょうどよいのでここに収録したい。
やまけんの出張食い倒れ日記
「静岡伝説の職人の店で襟を正した。の巻」
ずいぶん久しぶりになってしまった。ここのところ大変な繁忙だったのである。途中になっている九州編などちょい面倒で更新していないのだが、、、しかし!超絶美味いもんに出会ってしまった時にはついつい書いてしまう!本日も大変な店に出会ってしまったのである。
読者の皆様からは「どうでもいいけど場所とかきちんと書いといてくれないと、出張とか行ってもわからない」というお声をいただいている。ので、今回はきっちりと記しましょう。
この出張食い倒れ日記でも数回、静岡の旨い店を紹介しているが、そういうところを元々私が知っていたわけではない。私の静岡での導師は、おそらく日本最高レベルのお茶メーカーである「葉桐」の専務である。この葉桐との付き合いを書き出すと5万字くらいかかるので辞めておくが、とにかく茶も一流なら、食にかける情熱と旨い店を嗅ぎ出す嗅覚も超一流なのがこの専務なのだ。その専務が言う。
「やまけん君、いい店があるから、次に仕事で静岡に来る時は前日の夜からおいで!」
わざわざ携帯にかけてきてくれるのだからこれはただ事ではない。超繁忙のスケジュールを力技でこじ開け、静岡に前泊をしてその専務と落ち合ったのであった。
静岡駅に19時に着き、市内繁華街のはずれの道を5分ほど歩くと、夏場には敬遠したくなるアンコウ鍋の店があり、その横に小さな、趣味のいい玄関口を持つ店があった。
牛味 「堪三」(かんざん)
静岡市昭和町10-9
054-273-3773
18:00~20:00(夜のみ営業)
薄藍色の暖簾をくぐるり店内に入ると、10名程度が座れるL字ウンターと6人がけくらいの奥座敷のみの小さな店である。すでに7割方埋まっているカウンターに腰をかけると、ごま油の香りとパチパチと油がはぜる音が聞こえてくる。
実はこの店が何を売りにしている店なのか、この時点では全く知らなかったのだ。
「牛味って書いてあったけど、天ぷらやなのだろうか???」
と専務に聞くとニヤッと笑い、「俺もここで何が出てくるのか、いつもわからないんだ。とにかくお任せなの。」とのこと。
店の大将は50前後。眼光するどいが良く笑ってくれる北川さんと、女性が一人。僕はビール、専務は迷わず「お茶!」。なんとこの店の厨房にはこの葉桐の専務が書いた「お茶の入れ方十ヶ条」が貼ってあるのだそうだ。店の女性の煎れた煎茶を飲ませてもらったが、確かに上手に煎れてあった!
突き出しはカニときゅうりの三杯酢だが、オレンジの何ともいえない味の珍味がまぶされている。大将に聞くと「柿。」柿を粗くおろしたものを加えているのだ。絶妙な味の突き出しで、もう一鉢頼もうとしたら刺身が出てきてしまった。静岡らしく新鮮そのものの鰯と鯛、中トロ。私は食べるペースが速いのだが、刺身を楽しんでいるうちにすぐ天ぷら用の和紙をひいた皿がでた。まずはオクラ、みょうがと夏の旬味が揚がり、旨味たっぷりのさいまきエビが添えられる。ちなみに、天ぷらで美味しい海老はやっぱりさいまきだなぁと思う。そしてそのむこうではなんと客前にある火鉢の網の上に、生きアワビがどさっと載せられた。俺の手前の鉢には松茸がどっさりと炙られている。やがて火のとおりがころあいとなった段階で、甘く火の入ったアワビの切り身と肝(これがめっぽう旨い)、そして松茸の盛り合わせにすだちが添えられてきた。この段階ですでにしみじみと幸せを噛み締める俺だった、、、
しかし!!! ここまではほんの序の口だったのダ!
実はこの大将、この「食い倒れ日記静岡とんかつ編」で軽く触れた、清水市の伝説の名店「かつ好」が一時期新業態店として出店していた牛舌の炭火焼店の板前を勤めた方だったのである。この牛タン店は実は今でもある。が、そこで出される料理の味は、北川さんの在籍時からすると比べることさえ罪だという。とにかくこの北川さんの技の最大の発揮ポイントは、、、やはり肉!なのである。
そう、北川さんが焼き始めたのはまぎれもない牛舌。市販の薄いスライスではなく、ふっくらと厚みをもたせたタンである。炭火に脂が落ちて炎が上がり、タンをさっと舐める。旨そうな焦げ目を十分につけた後、皿に盛ってくれる。その芳醇な香りにしばし、我を忘れる。この香りは、低温冷蔵庫で2週間以上熟成させないと出ない香りだ。口に運び、一噛みするとほぼ抵抗なく繊維が割れ、ゴージャスな肉汁が染み出てくる。そしてあの香りだ。牛肉は香りで食べるものだ。そして香りは脂から立ち上る。旨いなぁ、、、
と、北川さんがすき焼き鍋を用意している。マツタケと牛肉、糸こんにゃくという豪勢なすき焼きだ。うーむこれも食いたいと思っていると、北川さんが「これは向こうのだよ」と、カウンターの対面にいるお客さんグループを目で指して、微笑する。後ろ髪を引かれていると、僕ら用の牛肉を出す。やたらとサシの入ったロース肉だ。牛の格付け上、A4は確実に獲っている上肉だ。これを厚めに切り分け、やおら網で焼く。そして、あの香りがやってくる。供された肉をいただく。これも見事に熟成されたロースだ。とろりと溶けていくあの感覚。そして甘味と香り。牛肉のもつ複雑な味の組成が、分解されていくのだ。
この後ご飯と香の物、フルーツが出て、北川さんとしばし歓談す。気さくな人だが、仕事には厳しい。仲居の女性は3人いるそうだが、そうとうに厳しくしているらしい。葉桐の専務はそれをいつも観ている。もちろんいじめではない。理由を述べながら怒る。だから、女性はみな、辞めない。今日いる女性はお腹に赤ちゃんができているそうだが、「ぎりぎりまで働かせてください」と言っているそうだ。
これだけの店が、なぜ話題にならないのだろうか?非常に不思議。静岡名店の1店。都内で1万円以上の飯を食べるくらいなら、ここにきて食事をしてみてはどうだろうか。感動することは間違いない。
過去に書いた静岡編の一番最初の記事を掲載し忘れていた。SAVAさん、これだけあれば困らないと思いますよ。感想よろしく。
2002年3月22日
たった今、新幹線で静岡に向かっている。本日はあるお茶産地の生産者グループに対して実施しているコンサルの最終報告会である。
静岡には、農業関連の仕事をしている知人が多く、そうした人が私を講師として呼んでくれたり、コンサルの仕事を紹介してくれるため、接点が多い。また、そうした知人がほとんど全て食に関心の深いため、県外人である私に静岡の美味い物をこれでもかというほど食べさせてくれる。おかげで、静岡についてはその辺の人よりは通じていると思う。
静岡というと、ほとんどの人が反射的に「お茶」を思い浮かべるだろう。事実、私の仕事としての静岡との関わりはお茶関連のものが多い。私がまだ大学院生だった頃、静岡市内にあるお茶メーカーとお付き合いができた。深蒸し茶全盛のこの時代に、あえて若蒸し(業界では「伸び」という)の本物志向のお茶を前面に押し出すそのH社の最高級茶は、かの高級スーパー紀伊国屋にて一番高い価格をつけている(なんと100g5000円である)。このH社の専務が、船乗りになろうと水産大学にいったのにもかかわらず家業の都合でお茶の道を目指すこととなった快男児であり、かつまた食道楽なのである。私の静岡美味いものの旅はこの専
務との連れ食いから始まる。
当時まだインターネットの普及が始まったばかりの頃、このH社のWebを立ち上げるべく、泊りがけで毎月若手社員に指導にいった。3度の飯より食べることが好きな私のために、専務は本当にいろんな美味しいスポットに連れて行ってくれたのである。
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■とんかつ「かつ好(よし)」
特製ロースカツ定食 2500円(当時)
中でも最高だったのは、とんかつの名店「かつ好」。静岡と清水に店があるが、最近では恵比寿ガーデンプレイス内にかっちょいい店を出しているので有名である。ここに入ったら、トクロー定食(特製ロースカツ定食2500円!)を食べるべし。包丁の入ったかつが銅製の網にのせてやってくる。それをソースを使わず、店独自に調製した塩でいただくのだ。今でこそこうした食べ方は珍しくなくなったが、当時初めてこのとんかつを食べて私のとんかつ観は抜本的見直しを要することになったのであった。豚特有の獣臭みを抑えながらよい意味での香りはなくさぬように飼育された豚肉を、あくまで軽くふんわりと揚げている。噛むと肉のジュースが口中に染み出てくる。塩を使うことで甘味が引き出され、これまた店で調製された芥子をつけることで一層味が引き締まる。元来とんかつにはソースをどぼどぼとかけたいのだが、このかつはそれを許さない凛とした佇まいがあった。
「学生時代からよくここで食べてたからここのオヤジはよく知ってるんだ。今は一番いい職人が○×店にいるから今度連れてってやるよ!」
と専務は言っていたものだが、数年後の最近、「いい職人が辞めて味が落ちたからもうあまり行ってない」とのことだった。あのカツがまた食べたい、、、その後、恵比寿店に何度か足を運んだが、確かに「あの味」ではなかったのである、、、
■しずはた蕎麦 静岡市内
(詳細わからず)
もう一つ忘れ得ぬ店がある。静岡の郷土の陶芸に「しずはた焼き」がある。市内に、このしずはた焼きの器でそばを供する小さな店がある。何処にでもあるようなその気取らない市中の蕎麦屋で「しずはた蕎麦大盛り」を頼むと、しずはた焼きの大きな鬼の面を器に、蕎麦が盛られてくる。この店のスタイルで素晴らしいのは、つゆと薬味である。薬味には白葱、青葱、ゴマ、天かす、鶉の卵が付いてくる。これをつゆに投入しどろどろになったところに麺を「和える」。これが素晴らしく美味いのだ!以来、家で蕎麦をゆでる際には、この薬味が私の定番に
なった。
しかし今回は新たにチャレンジをしようと思っている店がある。それは前回そのお茶メーカーの営業の人に聞いたとんかつ屋である。何でも、そこの「特上」は、皿の上にとにかく肉が食いきれないほど載ってくるというものらしい。
「とにかく肉を食べたぁ、って気になりますヨ!やまけんさんでもあの特上を食べたらばっちりなんじゃないですか?」
という。で、あれば絶対に食べよう!と決心しているのであった。
そうこうしているうちに静岡に着いた。これから山間部に入るのでしばらく筆を休める。
、、、最終報告会の午前の部、終了!ここ静岡の新間地区には、素晴らしい中華がある!それは、満留賀(みるか)という店なのだ!私はこの産地に来るたび、お願いしてここに昼食に来ている。はっきりいって静岡市街から30分ほど山に入ったところにある、完全に田舎(失礼!)の川沿いの店である。知らない人もいると思うので言っておくと、静岡という土地は、中心部である駅から10分も車を走らせるともう山と川、、、である。私の通う産地は新間という地域にあるが、どだいここの街道筋に中華の店を出してもなぁ、、、というロケーションである。
しかし!この満留賀、むちゃくちゃに繁盛していて、昼なんぞは時間をずらさないと入れないくらいに四方八方に名声がとどろき渡る店なのだ。店構えは小さくて汚いその辺の中華屋なのだが、店内の厨房はビカビカに磨かれ、使い込まれている。大火力コンロは4口ほどあり、熟達の料理人が鍋を振っている。聞けば、この満留賀の店主は、大ホテルの中華部門でコックを長年やっていたのだという。
その料理は本当に驚嘆の味と価格なのだっ!!
■満留賀 静岡県新間
坦々麺 550円
上海焼きそば 550円
五目あんかけご飯 650円
鶏とカシューナッツの炒め物 650円
セットB レバニラ炒めセット 700円
セットD 豚の角煮セット 700円
この値段を見よ!この店のロケーションがなせる技であろうが、この価格で出てくるのは、本格中華料理である。横浜中華街の名店のレベルと大差ない技術がおしげもなく使われている。特に坦々麺の美味さは特筆に値する。ちまたの日本風坦々麺は、チーマージャン(ごまのペースト)がやたらと使われて味のりんかくがボヤケタ坦々麺で、あまり美味いと思うものに出会ったことが無い。しかし、この店の坦々はスープの味ベースがしっかりしている上にチーマーと肉味噌が乗っている。肉味噌を崩し溶かしこみながら麺をすすると、きっちりと味の輪郭が浮き上がりながらゴマの香りがするのである。美味いのだ。これが550円はないだろう。そして鶏のカシューナッツ炒めを食べて、その技術の確かさと食材への妥協のなさ、そして価格との落差を実感し、気が遠くなるのである。
この店で私は毎回確実に2人前は食べる、、、麺とご飯ものと単品。本日は夜もあるしとんかつもあるし軽めにしよう!と思ったのだが、結果的にレバニラ炒めと上海焼きそばを頼んでしまった。カシューナッツ炒めはみんなで頼んだがみなおなかいっぱいと言って残しているので食べてしまった。産地の人手、私より1つ年下の石原さんがご飯を大量に残しているので、ご飯食べ残しを許せないやまけんとしてはつい引き受けてしまった。都合3人分だろうか、、、夜が思いやられるのである。
そして最終報告会はバンバンに終わり、夜の打ち上げに進むのであった。とんかつはさすがに本日はムリだろう。まずは産地の方がいきつけの活け魚料理の店へ。
■克巳(かつみ) 静岡市羽鳥
石鯛お造り・ぼたんえび・ホタルイカ刺身・しめさば・かつお
黒はんぺんのフライ
黒はんぺん焼き
フライ盛り合わせ
すき焼き
鯖のバッテラ
多くは言うまい。私は本気で静岡への移住を考えてしまった。なんで街中の家族経営のこんな小さな店で素晴らしい料理が出てくるのだろうか、、、
活け魚料理は美味くない(いけすの中で身が細った魚が出てくることが多い)といわれるが、この店はなんとオヤジが船を持っており、底引き網で漁をしているのである。料亭にも魚を売っているらしいが、このオヤジ(ひょうひょうとした、ごくふつーのめがねオヤジである)はめっぽう魚好きらしく、いいネタは自分の店の水槽に持ってきてしまうのである。石鯛、おいしゅうございました。ホタルイカ、新鮮で目が飛び出そうになりました。そしてお酒は、静岡が誇る磯自
慢。端麗すぎて食中酒っぽくはないんですが、好き。
そして私の大好きな黒はんぺんのフライ。静岡といえば黒はんぺんである!これは声を大にして言いたい!黒はんぺんとは、江戸前の白いはんぺんとはまったく異なる。いわしなどの小魚をすり身がベースとなったはんぺんで、どちらかといえば愛媛の名産であるじゃこ天に近いものがある。これの食べ方で私が一番すきなのが、フライである!パン粉をはたいて揚げた、湯気の上がる黒はんぺんフライにソースをどぼどぼとかけて食べるのである。底力のある黒はんぺんだからこそ、こんなタフな食い方ができるのだ!ちなみに私はこのフライにかけるには中濃ソースがよいと思うのだが、地元の人たちは「ウスターが定番じゃ!」とのことであった、、、
そしてその後になんとすき焼きが出てくると言う、??という料理の展開。しかしこれがまた、素晴らしい肉が出てくるのです。私も肉牛農家にたくさん友人がいるので、牛肉のグレードは判別つきます。最上クラスのA5というグレードの肉がきっちりと出ていました。この時点で私は、本日はこの店で打ち止めでいいや、、、と思い、食いまくりました。
そして最後に出てきたバッテラ。鯖の切り身がちょこんと寿司飯にのっかっているような物とは違います!大型の鯖の半身がご飯を抱きこむような形の変則バッテラ!つまり、外からご飯が見えないのです!切り分けるとご飯が身に抱き込まれているという、贅沢なシロモノ。しかも酢で締めすぎていないから新鮮な鯖の切り身感を存分に味わえるのである!ヤラレタ、、、
さすがに私も満腹。次にもう一軒、県職員の知人の方々が集まっている二次会の店ではおとなしくしていました。海老しんじょを種に酒を飲む飲む、、、
しかしそこを出た後に私は米の飯がくいたくて仕方なくなってしまったのです.お茶漬けかなんか、、、といったら県の方がつれていってくれました。隠れ家のような小料理屋(もう場所もわからず、二度といけないと思う)。ここの料理が美味くて、結局どんぶりめしにいわしの酢〆め、じゃがバター、茄子の味噌炒め(絶品!)。穴子の煮物があったのでこれでどんぶりめしおかわり。
これにて打ち止めとなったのでした。超ド級のとんかつは翌日に持ち越し!
(つづく)
むふふ。本日は名古屋出張である。
名古屋と言えば、、、という店がいくつもあるのだ。
とりあえず昼食時間に間に合えば、下記を回ろうと思う。夜はそんなにゆっくりしてられないので、昼にかけるのである。こう期待。
チャオ 菱信ビル店のあんかけスパゲティ
住所 : 名古屋市中村区名駅4-8-12 菱信ビルB1
電話 : 052-562-5668
営業時間 : 11:00~(L.O.21:00)
矢場とんの味噌カツ
住所 : 愛知県名古屋市中村区椿町6-9エスカ地下街
電話 : 052-452-6500
コンパル テルミナ店 のエビフライサンド
住所 : 愛知県名古屋市中村区名駅1-1-2 テルミナ地下街B1
電話 : 052-565-0211
営業時間 : 朝8:00~夜9:00
名古屋出張である。名古屋は大好きなのである。名古屋には独特の食文化がある。それは関東とも関西とも違う、やはり「名古屋」としかいいようのない文化が存在するのだ。鰻の焼き方が関西流になる(蒸さないで焼く、アレだ)のがだいたい名古屋からだし、とんかつのソースに味噌が使われるのもやはり名古屋だ。いや、ちょっと手前の豊橋でもそうだけど、マイルストーンとしては名古屋ということがいえるではないか。
その名古屋の食の中でもひときわ異彩を放つのが、「あんかけスパゲッティ」だろう。これは、ちっと信じられない料理だ。まず麺は2.3ミリの超極太麺だ。ボルカノ食品というメーカが作っているもので、これをゆで揚げておいておく。そして注文が入るとその極太面をラードでこってりと炒めるのだ。ラードがまぶされて風味の就いた麺を大きな皿に盛り、そこにかけるのが洋風ソースだ。これがまた超弩級のオリジナルソースで、トマト風味ではあるものの、正体不明のとろみソースなのだ。ちょっとピリカラで、どう考えてもとろみは片栗粉系のトロトロ加減である。これを先の極太麺にたらーりとかけて、その上から各種の具をトッピングしていただくのである。これが見事にはまる。ラードがしつこいとか、とりあえず量が多すぎるとかいろいろとあるのだが、大体、僕が薦めてこれを食べた関東人は「おいしい」と言っている。そのあんかけスパの元祖が「スパゲッティハウスヨコイ」という店だ。テレビ塔から栄を錦通り方面に歩いたところにあり、数年前に僕はそこで衝撃の初体験をしたのであった。このヨコイ、愛好家が多く、こんなページもある。↓

ヨコイではその独特のソースをレトルトで販売しており、僕の家にはかならずこのソースとボルカノ食品のスパゲッティが常備されている。
名古屋名物はいろいろあるが、まあ僕にとってはこのあんかけスパをもって嚆矢とするのであった。
さて名古屋では午後イチに重要な会議があるので、スケジューリングが難しい。昼の一歩手前に名古屋に着き、かつ手早く食べ歩かないといけない。なぜならそう、ハシゴする気満々だからだ。せっかくの名古屋だもんね~
とりあえず13時から市内で会議なので、11時には名古屋に着いていなければならない。また、食べ歩きをするならば、できればあまり離れていない場所で2~3店を回りたい。また、今回は、まだ「行った事がない店」に行きたいと言う気持ちだ。ということを条件設定し、名古屋駅周辺で食べられるあんかけスパと味噌カツを食べることにした。
店は下記である。
チャオ 菱信ビル店のあんかけスパゲティ
住所 : 名古屋市中村区名駅4-8-12 菱信ビルB1
電話 : 052-562-5668
営業時間 : 11:00~(L.O.21:00)
矢場とんの味噌カツ
住所 : 愛知県名古屋市中村区椿町6-9エスカ地下街
電話 : 052-452-6500
そう、どちらも名古屋駅に隣接する地下街の中にある店だ。豚カツの矢場とんは、これまた有名だがまだいったことがなかった。矢場町というところが本場らしいが、名古屋駅横の地下街にあるので、まずはここからとしよう。で、味噌カツを食ってから、あんかけスパのチャオに行くことにしたい。チャオとは、先述のヨコイで修行した人が開いた店らしい。ここも超人気とのことなので、前から行ってみたかったのだ。この2店舗を攻め、その状況によってはもう一店攻めると言う計画を練り、就寝。
~起床!
朝食は摂らずに「のぞみ」で一路名古屋へ。名古屋着が10時30分。地下街はすぐとなりなので移動に10分もかからない。早く着きすぎて、店の人たちの朝礼中だった。
「お客様に感謝して、一日をはじめましょう!」みたいな。
この「矢場とん」の外観は、、、恐ろしくベタである(笑)このブタちゃんマークを観て欲しい。

このブタが店内にも跳梁跋扈している。さて11時ジャストに入店。僕が一番目のお客さんです。店のおねーさん(カワイイ!)に「初めての人が頼む場合、どれがいい?」と訊いた。「そうですねー基本はロースかヒレの定食ですよ。」とのことなので、ロース定食(1100円)にする。また、串カツでヒレも一本(200円)頼んでみる。

程なく運ばれてきたヒレ串をかじる。久しぶりのドテカツである。あ、ドテというのはこの味噌ソースの俗称である。串カツとドテソースの相性は素晴らしい。この矢場とんのドテは実にマイルドかつドライな風味だ。つまり甘すぎないと言うことだ。これには好感が持てる。
そして運ばれてきたロース定食。とにかくカツが味噌色に染まっている。

先ほど書いたとおり、ここのソースはどちらかというと甘味抑え目のドライ。これも実に旨い。不思議なことに、なんだか家で食べているような懐かしい味である。僕の後、カップル2組がはいってきたりしているが、外では「お土産20本!」という声が聞こえる。あ、そうか、串カツを20本ということだな。中々いいお土産だな、、、ロースは1本150円だし。
ぱくぱくぱくぱく
12分で食べてしまった。御馳走様でした。
うん、旨いです。矢場とんの味噌カツ。ただし、なんとなく先入観としてある「甘~い味噌」というイメージではなく、甘味控えめのドライなソースなので、少し残念感があるかも。でももちろん、問題なく合格点。
さて15分経過だ。すぐさま駅の反対側に渡って地下街に潜入。あんかけスパのチャオに向かうのだった、、、
(つづく)
みそカツを食べた直後だが、目指すはあんかけスパの「チャオ」。あんかけスパといえば、本記事の「その1」に紹介した「スパゲッティハウス ヨコイ」が元祖だが、このチャオは、そこで修行した人が開いた店で、人気を二分しているという。実は僕はヨコイ一辺倒で、チャオにはいったことがない。今回は「矢場とん」もそうだが、行ったことのない店で攻めてみたい!ということでチャオを目指すのであった。
さて、西口地下街の「矢場とん」から速やかに移動。目指す「チャオ」は東口の地下街にあるなのだが、、、見つけるのにすごい苦労したぁ~
名古屋の地下街というのは非常に充実している。そして網の目のように張り巡らされており、初心者には全く全容がつかめない。駅前の地上にそびえたつビル群の地下にそれぞれ地下街があり、それが相互に連結して巨大な地下空間を形成しているといった感じなのだ。これはLANが相互接続することで形成されるインターネットの構造と同じだなぁ。
「名古屋地下街はインターネット方式だった」
ということだな。名古屋の地下街もLANの世界は保持されていて、例えば「テルミニ街」とか「ミヤコ地下街」など、ストリートや区画ごとに名称がある。新参者には訳がわからないのだが、、、しかし、この地下街でほぼ必要なものが全てまかなえるようになっているのはすごい。あらゆる業種の店があるようである。当然、食べ物についても困らない。名古屋のB級グルメの名店の支店がかなり揃っているのである。
さて11時に矢場とんに入店し15分で完食。そこから5分で移動するハズだったんだけど、、、どこだかわからん!ビルの名前「菱信ビル」をアテに地上部を探すのだが、全くもってわからない。しょうがないので電話で店に聞いた。要するにメルサを背にしてみえる東京三菱銀行のビルの地下ということだ。道の向かいから地下に降りてその方面に向かったが、同じ所をぐるぐる回ったりと、苦労してたどり着いた。もう11時35分である。
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■チャオ 菱信ビル店
住所 : 名古屋市中村区名駅4-8-12 菱信ビルB1
電話 : 052-562-5668
営業時間 : 11:00~(L.O.21:00)
ミラネーズカントリー レギュラー 650円(だったかな?)
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チャオは非常にきれいな店の作りで、地下街のカフェという感じである。しかし、そこで出てくる料理はギトギトなのだが、、、店内にはサラリーマンと家族連れに二分されている。12時過ぎには殆どがサラリーマンになるという。

オーダーは当然「ミラカン」である。これが一番出ているメニューだそうだ。ミラカンとは正式には「ミラネーズ・カントリー」。ミラネーズというのはタマネギ、ピーマン、マッシュルーム、タケノコを炒めたもので、カントリーというのはそれにウインナーが加わるということだ。ここでスゴイのが、ウインナーは、ちょっと本格的な粗挽きウインナー、、、などではなく、皮が赤いあのウインナーなのだ!絶句であるが、これでないとあんかけスパではない!という痛快さだ。みよ、このプレゼンテーションを↓

まずは麺とタマネギ、ソースをちょいっと絡めて食べる。うん、マイルド!ヨコイにくらべると食べやすい感じがする。麺がかなり強めに炒められているので熱い。ちなみにこのスパ、最初に麺とソースを混ぜたりしない方がよい。なぜかというと、麺にタップリこってりとラードが絡まっているのだが、そのままにしておけば下に流れ落ちて溜まってくれる。それをソースと丁寧に混ぜたりすると、ソースの中の片栗粉が油もまとってしまい、ギットンギットンになってしまうのだ、、、
さて順調に食い進むが、なんだか違和感も感じる。チャオのスパは俺には合わない予感。食べやすい味なんだけど、なんか引っかかりがなさ過ぎる。それにちょっと油っぽさが好かない。ヨコイのラードもギトギトなので量的には同じかと思うのだが、こっちのは少し腹にもたれる。あ、いや、トンカツ食べてるからじゃないですよ。おいら、トンカツとスパなんてたいした分量じゃないっす。なんだか量的な問題ではなく、質的な問題なのだ。
ま、そうはいいながら完食。ごちそうさまでした。割り切れない思いはあるものの、立派なあんかけでした。時刻は11時50分。11時から50分間で2食。ほんとうは喫茶コンパルの海老フライサンドも食べたかったのだが、今回は断念だ。
急いでとある卸売市場に向かう。さ、仕事、、、
(更につづく)
ラフランスが美味くなる季節がやってきた。洋梨は、食べ方とくに食べ頃の見極めが難しく、苦手とする人が多いのだが、ピークの時期を見極めて食べると超絶に美味しく、やみつきになる果物だ。ただし、それは「よく栽培されたラフランスであれば」ということになる。何でもいい訳ではない。
そして僕は素晴らしい生産者を知っている。つい最近ぶどうを送ってきてくれた、山形県上山にある尾形果樹園がそれだ。僕はここの2代目、匡弘ちゃんと昨年取引をしたのだ。でも今年は取引はしない。けど、売れて欲しい。ということで、頼まれてもいないし仲介手数料も発生しないが、紹介したいと思う。その代わりテキストは昨年使用したものに少し手を入れただけだが、、、果物好きな人は必読だ。
山形といえば何を思い浮かべますか?さくらんぼ、ぶどう、、、はいはい、それもそうですが、今回はあの、山形が誇る高級フルーツをご紹介します!それは、、、秋冬の山形の味覚の女王、「ラ・フランス」です!
山形県が誇る洋梨、ラ・フランス。これほど、有名で誰でも知っているにも関わらず、その真価を味わっている人が少ない果物もないでしょう。というのは、この果物、食べ頃を見極めるのが難しい!輸送中の事故を防ぐため、たいがいの産地では硬い実のまま出荷し、フルーツ店の店頭でもまだ硬いまま販売します。これを家庭で適度に熟させて食べ頃を見極めなければなりませんが、、、このラ・フランスは本当にデリケートなので、追熟に失敗することが多い!ですから、この旨極をみて「な~んだ今回は洋梨かぁ、、、」という人は、きっとまだ最適に熟成されたラ・フランスを食べたことがない人なのではないか!と思います。(個人的私見ですけどネ!)
そこで!今回は、農家さんの段階で、最適な環境で追熟させたラ・フランスをお届けします!熟し加減の見分け方もきちんとご説明しますのでご安心。お値段は、絶対に安い!今回ご紹介する生産者さんは、山形でも有数の技術を持つ、地域の農業普及員さんが「あそこだったら間違いない!」とお墨付き太鼓判を押す生産者さんなんです!本当だったら超高級フルーツ店で、目が飛び出そうな値段になるハズの実を、、、今回は無理をお願いして限定で分けて頂きました!
■やっぱり山形はフルーツ王国だった!
山形の上ノ山温泉(かみのやま)駅から車で15分のところに、その農園があります。尾形匡広(まさひろ)さん。当年とって27歳のこの若武者が、今回ご紹介のラ・フランスの生産者です。尾形さんの一家は本当に果樹一家。3.2ヘクタールの西洋梨農園をもつ大規模生産者さんなんです。
今回出荷のラ・フランスは、その中でも自信のある畑で栽培された、超一級品なのです!
「ラ・フランスはいろんな地域で作られているけど、今回出荷する畑では、化学肥料は使っていません。うちも入っている生産車グループ独自で原料(魚かすなどの有機質資材)を吟味して配合した肥料を施しています。また、よく陽が当たる畑で棚栽培にしているので、ひとつひとつの実に日光があたって味が抜群に乗るんですよ!」
この畑、蔵王を背中にしょっている最高のロケーション。メチャ空気が澄んでいて旨い!水も旨い!用水路をちょろちょろと水が流れている音をバックに蔵王山系を眺めていると、こんな環境で育った果物がまずいわけないよなぁ~ と納得。
さてこのラ・フランス、実はすでに収穫は終了しています!ラ・フランスは、この時期(10月中旬)に一気に収穫し、最適な温度帯に設定した冷蔵庫で保管して、長期熟成の期間に入るのです。この熟成によって、あの高貴な香りと滑らかな舌触りが産まれるんですネ~。今回はその冷蔵庫まで入ってきましたヨ!5分も入っていると身体の芯まで冷え切ってしまう環境の中で、じっくりと寝かせられ、熟成され、出荷を待つラ・フランスたちに対面してきました!薄緑色と、ところどころに黄金色がまざったような微妙な色合い。あの洋梨型のスタイルに微妙な凸凹があり、それが複雑な陰影を産み出しています。
■お買い求めは
キロ数と1玉の大きさで決めます。たとえばLサイズだと3K箱で11個入り、3Lだと9個入りになります。
3K 5K
L 2300円 3000円
2L 2800円 3800円
3L 3200円 4500円
4L 3300円 4700円
5L 3500円 5000円
連絡・注文は下記に。
尾形果樹園
(FAX)023-674-3374
■最重要!おいしいラ・フランスの判断方法と保存方法
ご説明したように、生産者さんの冷蔵庫にてぎりぎりまで熟成させますが、ご自宅についた時点ではまだ完全な食べ頃にはなっていません。食べ頃になるまで、一工夫が必要です。下記をご参考に、ご自分の好みの熟し加減を模索してください!
①到着したら!まずは箱をあけて、一目その姿を愛でてください!ただしまだこの時点では食べるべからず!
②追熟・保存をするには、お届けした箱で保存するのがベスト!ラ・フランスは、20度を超す室温だと呼吸が激しくなり、香りが飛び、日持ちしません。18度以下の室温がベスト!ただし、冷蔵庫は×ですヨ。例えば、雨や風が激しく吹き込んでこないベランダがあれば、その日陰に置いておくのもよし。ただし、日光で段ボール自体の温度が上がらないように、一枚別のの段ボールを上に置くといいでしょう。
③箱にシールで貼られている「食べ頃日付」は、正確には食べ頃というより食べ始めてよい日付です。ですからあくまでこの日付を目安に、追熟させた箱を開けて、香りをチェック!甘く麗しい香りがプ~ンと漂うようになったら食べ頃に近い!一つの実をそっと取り出し(両手でネ!)包装キャップをはずして、軽く指でお尻の部分を押してみて、抵抗なくスッと押せるようであればOKでしょう!ここから先は、ご自分の好みで更に熟成させるなどしていただくのが一番いいと思います。
④美味しい食べ方、、、お菓子に使ったりといろんな食べ方があるけど、、、やっぱり私は、熟したラ・フランスを食べる40分くらい前に冷やして、切りわけてそのまま食べるのが好きですねぇ~ 芸がなくてスミマセン。でも、本当に極上品だから、手を入れるのはもったいないカモ、、、
やまけんは、いくつか手に入った時は、一度に食べきらないように、若い熟成の段階から、柔らかくなってちょっとやばくなる手前の、熟成しきった味までをまんべんなく味わうのが好きです!とはいっても、あんまりおいしいとすぐに食べ切っちゃうんだけど、、、
ここまでやって美味しくないはずがない!本当の極上のラ・フランスを、ぜひご賞味あれ!!
僕は宮崎が大好きだ!大好き!愛してる! 学生時代に農業情報ネットワーク大会というので初めてその地を踏んで以来、こんなにも好きな県はない。静岡とならぶぐらいだろうか。その後出張機会多数で、さんざん食い倒れさせてもらった。特に宮崎市の橘通りの裏側については「地元の人間より知ってますね」と言われたこともある。過去、こんな食い倒れ記事を書いたこともあるくらいなのだ。
で、大学時代の友人(先輩)が宮崎によく出張にいくとのことなので、絶対に抑えておくべき店を紹介しておこう。
まず宮崎空港に着いたら、即座に空港内の3Fにある魚山亭(ぎょっさんてい)に直行して欲しい。11時半くらいにならないと空かないので僕は15分くらい、開店準備をする店員にプレッシャーをかけながら店の前で待っていたことがある。「おまたせしましたー」と入店し、すかさず飛行機が離着陸する様をみられる窓側の二人掛け席に座し、メニューも見ずに注文するのが「鶏南蛮定植」いわゆるチキン南蛮である。
このチキン南蛮という料理、九州一帯では昔から食べられており、関東圏でその名を訊くようになったのはつい最近である。簡単に言ってしまえば「鶏の竜田揚げを甘酢にくぐらせてタルタルソースをかけたもの」なのだが、こいつが最高なんである。甘酢とタルタルの組み合わせがポイントで、酸味と甘みとタルタルの油分が食欲中枢を刺激しまくりなんである。店によってモモ肉を使ったり胸肉、ササミなど色々なバリエーションがあるが、やはり弾力があり旨味に溢れるモモ肉の南蛮が一番好きだ。宮崎では「小倉チェーン」というレストランチェーンが元祖ということなのだが、ぼくはこの魚山亭の南蛮が一番好きだ。小倉のタルタルは白っぽいのだが、魚山亭のはトマト系の何かが入っているのか、ちょっとピンク味がかかっている。もうこのソースがスペシャルで、ご飯4杯くらいはいけてしまうのだ。ちなみに恐ろしいことに、この魚山亭ではご飯おかわり自由である。ふふふ、、、
ちなみにこの日、僕は「鶏南蛮定食」に加え「冷や汁定食」も食べた。この写真がそれを証明している。店員は3度くらい「両方食べるんですか?」と確認していた。ちなみに昼飯である。

冷や汁も宮崎を代表する郷土食だ。ただみそ汁を冷やしたものではない。まず、すり鉢で魚(アジなどを焼いて身をほぐしたもの)をあたり、すり身になったところに地味噌を混ぜ、滑らかになるまで擦る。これをすり鉢の内部になだらかに塗り、コンロ(本当は炭火)に逆さに置いて火をつけ、表面が乾き軽く焼き目が付くまで焼く。こうして香ばしく変容した味噌に水・きゅうりの小口切り、シソ、ごま、みょうが等を投入し、混ぜたものが冷や汁だ。どうだこの手の混み具合!これをご飯にかけて食べるわけだ。うちの会社にいる宮崎出身の女性は、夏場には大量につくって冷蔵し、毎日食べていた。だいたいの居酒屋等で食べられるので、酒や食事の〆に食べてみて欲しい。
さて。
宮崎の旨いものでもうひとつ特記すべきものがある。意外だろうが、それは「釜揚げうどん」なのだ。宮崎市内では3軒の有名店がある。「戸隠」、「しげの井」そして「緒田薪(おだまき)」だ。このうち有名なのは「しげの井」と「戸隠」。しげの井は巨人軍キャンプの時にかならず長嶋監督が訪れたという店だ。そして戸隠は、タクシーの運ちゃんが必ず「あそこは旨いデスよぉ」と言う店だ。僕は3軒とも行ったが「戸隠」は推さない。先日行ったところ、一口で帰ろうかと思うまずさだった。それにくらべしげの井と緒田薪は素晴らしいの一言だ。今回はしげの井を紹介しよう。
しげの井に行きたいなら、夜の宿泊は「宮崎観光ホテル」にとるといい。何故ならその裏手にしげの井があるのと、そのまた近くにレタス巻きの元祖「一平」があるのだ。この一平についてはまたいずれ書こう。ただし、しげの井はひっそりとたたずんでいるのでわかりにくい。近所の人に聞きながら行こう。
宮崎の釜揚げうどんは、細めの麺でそれほどコシはない。ムッチンブリブリのコシを効かせた讃岐とは全く違うベクトルで、のど越しとダシの旨味で食べさせるうどんだ。そう、ダシ概後なのだ。しげの井でも緒田薪でもそうなのだが、注文がはいってから茹でるので8分くらいは待つことになる。ついついその間、いなりずしを食べてしまう僕だ。店内には巨人軍のサインなどもあるのでそんなのを眺めていてもいいだろう。
そうこうしているうちにうどんと茹で湯が入った碗と、濃いダシつゆが張られた碗がならぶ。ダシは濃厚茶褐色で、関西の透明感のあるダシとは文化圏が違う。万能ネギと揚げカスなどが最初から投入されており、椎茸の香りがプンプンする。うどんをたぐり、つゆにつけてすすりこむ。熱い!そして芳醇な旨味と魚貝の濃厚な香りが口腔中いっぱいに拡がる!あとは一気呵成にすすりこむだけだ。しげの井ではうどんの量で大中小があるが、お代わりを頼もうと思っても、「最初から茹でるから時間かかるよ~」となってしまうので、とにかく大盛りを頼むのが吉である。ちなみに写真は「中」だ。旨かったんでぼくは10分まってもう一杯「大」を食べた。それにいなりも食べたので、店のおばはんが喜んでいた。
あ、ちなみにこれは、チキン南蛮と冷や汁を食べた日のおやつである。この後の夜にはさらに快進撃が続き、摂取カロリー数が5000を軽く超えることになるのだが、それはまたいずれ書こう。当時の僕の記録によれば、下記を食べていたらしい。
> ■朝10時半
> 魚山亭にて
> ・とり南蛮定食
> ・冷汁&ご飯
> それとおかわり1杯
>
> ■夕方6時
> 茂の井にて(巨人長島監督のひいきの店)
> ・釜揚げうどん 中盛と大盛
> ・いなりずし 3個
>
> ■夜8時
> 鳥の里にて(地鶏専門店)
> ・鳥のたたき
> ・地鶏モモ焼き
> ・冷汁&ご飯
> ・焼酎(銘柄忘れた)×1杯
>
> ■夜9時
> 弁天寿司にて
> ・レタス巻き(宮崎が元祖らしい)×2本
> ・チキン南蛮巻き×1本
> ・サーモン&中トロあぶり握り
> ・キスの南蛮漬け
> ・自家製烏賊の塩辛
> ・霧島オンザロック×1杯
僕がよく書いていることだが、旨い店のお品書きは例外なく何かの輝きを発している。。「旨いぜ!」という店主の意気込みが、オーラとなって品書きの背後から見えてくるのが、いい店の絶対条件である。そんな店に、また出会った。
今日も大阪出張である。もう、ほとんど旨いものを食べるためだけに出張をしているということをよく知ってくれている友人が案内してくれたのは、中国酒家「福龍園」。
■福龍園
大阪市北区天満4-16-8 ハイツ天満宮1F
06-6353-7224
車以外ではなかなかアクセスが悪いところらしいのだが、僕は車で行ってしまったので本当によくわからない。確かに裏通りにひょっこりとある店だ。しかも小さい。友人が「屋台に毛が生えたようなもん」といっていたのがなるほどという感じだ。
そして引き戸を開け、小さなテーブルについたとたんに目に飛び込んできたのが、壁に掛かった小さな黒板にぎっしり、びっしりと書かれた品書きだ。その勢いと確信的な配列が一瞬で僕を魅了した。
だってまず最初の行に
「アイガモとオレンジの炒め物」などという料理が載っている店はそうない。思わず品書きの端から順に頼んでいきたくなるが、この日はコースを頼んでいるそうなので、流れに任せるコトにする。
そして、至福のひとときがやってきたのだ。
・前菜5種
豆モヤシとアナゴの中華和え物
バンバンジー
小茄子の四川風挽肉炒め
エビのカレー風味揚げ
大根甘酢漬け
魅惑の前菜だ。クラゲやザーサイなどで誤魔化さないのがよい。イタリアンやスペインの前菜盛り合わせのように、勢いを感じる構成だ。特に豆モヤシとアナゴの和え物が秀逸だった。それと意表を突く小茄子の四川風には美学を感じた。
・豚ヒレ肉と花ニラ、カリフラワーの炒め物
この店の味付けの傾向がよくわかった。こんなにわかりにくいところにある小さな店で、高級中華のマイルド感を見事に出している。つまり、労働者階級に向けた味付けの濃い、一皿で満足する料理ではなく、重層的な味覚の積分でコースを堪能させるあの味付けだ。
・エビマヨ炒め
きわめてポピュラーになったこの料理も、突出せず非常にマイルド。独自のマヨネーズとエバミルクをベースにしているが、香り付けにジンは使われていないみたいだ。
・生牡蠣のトウチ蒸し
品書きだけで旨そうだったのがコースにも入っていた。白菜の芯を縦に裂いたものが敷かれ、牡蠣がトウチソースに浸されて蒸されている。牡蠣の半生の触感と、トウチジャンの濃い味付けがガツンと合って、職が進む。
・グレの甘酢あんかけ
グレは癖のない魚だ。これをコイのように丸揚げして甘酢をかけている。みてわかったが、甘酢はスープと黒酢をベースにしたしつこくないもので、これも箸を進めさせるものだ。骨までばりばりと食べ、堪能した。
この辺まで、皿がくるごとに僕が「いや旨いな~」を連発していたせいか、店の奥の料理人のおっちゃんが、にこにこして話しかけてきてくれる。
「このあとマーボー豆腐がでるけど、スーパーマーボーにしたろうか?」
よくわからんけどスーパーの方がいいに決まっている。
「それでいって!がつんとね!」
というと、ニヤリと笑って鍋を振りだした。
・スーパーマーボー豆腐のチャーハンのせ
劇辛である。四川の山椒である花椒(ホワジャオ)が、直線的にぱっと散る辛さと痺れ感(麻という)を降り散らす。辛くて痺れて、4人一同気を失いそうになる。もう僕はTシャツ一枚になって、汗をだらだらとかきながらメシをかっこむ。ああ、メシといっても白飯ではない。チャーハンである。
・蒸し鶏ソバ
地獄のマーボーの後にはマイルドな鶏ソバだ。見事な上湯(シャンタン)で、実に滋味深い。極細ながら腰のある麺が大量のネギと絡んで実に旨い。
と、ここでコースは終わりなんだが、僕がどうしても食べたいのでもう一品いただく。
・茄子と豚の味噌炒め&ご飯大盛り
やはりこういうオーソドックスな料理を食べないと、店の真価がわからない。果たして、テンメンジャンのこってり甘みが利いた炒めものは、ご飯大盛りをたいらげるに十分な味だった。
このあとデザートに、上新粉の餅でカスタード餡を包み、ココナツフレークをまぶした温かいまんじゅうがでたが、これも旨かった!
いやー ひさしぶりにこんなに旨い中華を食べた!充実である。壁にはダンチュウなどに掲載された記事がたくさん貼ってある。知る人ぞ知る店なのだろうなあ。
結局最後の客になったが、みせのおっちゃんもあきれかえっていた。
「ふつう、おなかいっぱいになってくれるようにコース組んでるのに、バンバン頼むからコースの流れが全く変わっちゃうよ。でもよく食べるねぇ、、、」
そういいながら笑っていた。
大阪で中華を食べるなら、ここ福龍園にきて損はない。またこようと、ココロに誓うのであった。今度は絶対に合鴨のオレンジ炒めを食べたい!
すでにご承知の通り、初めてであったその日から、僕は大阪のインデアンカレーの虜である。一口目の甘さと、二口目から火花を口中に散らすがごとくの散弾銃的辛さの対比は、実に最高である。ルーの滑らかさ、牛バラ肉のとろける感覚、ご飯の粒の立ち方、そしてそれを盛りつける山田リーダーの手つきは、僕を魅了してやまない。
しかし前回、ライバル(?)のピッコロカレー梅田地下店に入った際、チキンカレーが旨いという情報を訊いた。その時はビーフを食べて、インデアンの方が好きだという判定を下していたのだが、正式にはピッコロのチキンを食べてからジャッジしなければならないだろう。
ということで、本日は年内で最後の大阪ということもあり、再度両店をハシゴすることにした。業界新聞の記者をしている友人女性と共に阪急梅田地下にあるインデアンへ直行する。今回はカレーのレギュラーで「目玉」(←卵の黄身2つのせ)を頼んだ。カウンターに座ると、やはり特製の飯びつの前にいるのは、あの飯&カレー盛りのエキスパートである山田氏だ。本日は若干余裕があるのか「いらっしゃいませ」と声をかけてくれる。すぐに我々のカレーを盛ってくれる。友人女性も初めてのインデアンということで、山田氏の無駄のないフォーム、寸分たりとも変わらない精確な飯盛りについて解説をしてあげたら笑われた。
目玉二つは実に贅沢で旨い!黄身の油分が舌を保護するらしく、若干辛みが緩和されてしまうが、ルーを大盛にすれば比率的にも合うハズだ。しかし本当に旨~い。付け合わせであるキャベツの甘酢漬けのシャクシャク甘み感とのマッチングも最高としか言いようがない。まさしくこれが現時点でのマイベストカレーである。思わず、ピッコロにハシゴするのを辞めてもう一皿食べようかと思うが、食倒ラーとしての尊厳がそれを許してくれない。
やっとの思いで「もう一杯!」という思いを振り切り、店を出る。ピッコロを目指し、梅田地下街を迷いまくる。もう一杯食べるぞというと、友人は仕事途中だしもう一杯なんか食えるか!と帰ってしまった。
それでも俺はいかねばならない。今日こそ自分の心にけじめをつけるのダ。
ピッコロ到着。狭いカウンタに座り、チキンカレーを頼む。先回ビーフカレーを食べた印象としては、マイルドすぎて今ひとつパンチに欠けるというもの。しかし隣の人とそのまた隣の人がチキンを頼んでおり、目をやると若干色が黄色み強く、辛みが強そうな印象。その後いろいろと訊いてみたところ、味が違うというコメントあり。そこでチキンを頼んでみたのである。もしかして、インデアンを上回る味があるかも!?
結果だけ記そう。やはりインデアンは最強だった。ピッコロのチキンは、ビーフと同じまったり系だ。肉の量はインデアンよりも多く存在感があり、これはこれで旨い。しかしパンチがない上に価格が850円と、インデアンの730円にくらべパフォーマンスが低いのだ。少なくとも僕にとっては。
食べ終わって勘定をし、店外に出た瞬間に自問自答した。
「もう一杯インデアンを食べられるだろうか?」
答えはさすがにノーだった。憤死してしまう。
でも、心の中には充実感が残っている。
アイ・ラブ・インデアン。
今後の僕の人生において、大阪を訪れてインデアンに寄らない時はないだろう。
どんなガイドブックも見ずに出会ったこの感動は何者にも代え難い。
大阪「インデアンカレー」を、謹んで出張食倒れの殿堂入りとしたい。
新たにこのWebの右ツールバーに「出張食い倒れの殿堂」というカテゴリを作成した。ここには、最高グレードの評価を与えられる店のみを殿堂入りとして表記していくこととする。
5日から日曜日まで、帯広を再訪します。
あの伝説の食い倒れの夜の再現となるのか、、、
念願の第二回帯広出張だ。前回は壮絶に食い倒れた。この記録を読んで友達付き合いを考え直したいと言う人もいたくらいだが、今回は前回に勝るとも劣らない食い倒れをしたのだ。
今回のテーマはずばり「豚丼」だ。前回は帯広を広く味わうための回だったが、今回はその中でも特に豚丼にスポットを当ててみたいと思うのだ。しかし、結果として豚丼以外にもとてつもないインパクトの食に出会ったので、それについてもレポートする。まずは第一日目の顛末を観ていただきたい。
12月5日 JASの飛行機で帯広空港に降り立つ。同行の新人君とまず向かったのは、前回ダークホース的に旨い豚丼を食べさせてくれた空港2Fのレストラン「白樺」だ。レストランといっても、10年前のデパート最上階の食堂的雰囲気の店なのだが、ここの豚丼がめっぽう旨い!どのように旨いかは前回に詳しく書いているので、ご覧いただきたい。果たして、2ヶ月ぶりに食す豚丼は旨かった。肉をタレで少し煮詰めたスタイルの白樺豚丼は、すんなりと胃の府に収まった。
しかし今回は、もう一つテーマがあるのだ。前回の白樺編を見てくれればわかるように、僕はここのカレーライスにも関心があったのだ。そう、隣のおばちゃんの頼んでたカレーがとてもいい香りを漂わせていたのだ。と言うことで豚丼に引き続き、カレーを頼んだら、給仕のおばちゃんに変な顔をされた。 、、、カレーは間髪居れずに運ばれてきた。嫌な予感がする。すぐに出てくるのは、鍋でずっと保温されているということだし、一手間もかけていないと言うことだ。
香りはいいのだが、、、トロミたっぷりのカレー。しかし、肉片がかなりバラバラにほぐれている。つまりこれは極度に煮込みがかかっているか、、、もしくはレトルトか缶詰の高圧調理の結果だ。
食べてみた。
缶詰だった、、、
豚丼の幸せな記憶が、缶詰カレーに上書きされてしまった、、、まあ仕方が無い。こんなこともあるのだ。トライ&エラーが大切だ。明日に同じことを繰り返さないことが重要なのだ。
「一つの店に豚丼とカレーは両立しない」
これが今回の教訓だ。
「さあ、山ちゃんを今回はどこに連れて行こうか、迷ったんだよぉ」
たった2回目でこう言ってくれるまでになったということで、すでに満足である。
いったんホテルに帰って街に出るということになった。小一時間あくことになったが、この間ぼやっとしているわけにはいかない。今回泊まったホテルは「パコ」という変な名前のホテルだが、帯広では有名なシティホテルだ。そしてなんと、このパコから50メートルのところに、豚丼の元祖といわれている有名店「ぱんちょう」があるのだ!ホテルのフロントのあんちゃんに訊いても、「行列してますよ」と言う。そういわれるとますます行きたくなるのダ!ということで、駆け足(マジで)で行ってみた!
17時半と、時間的に谷間だったのか、それほど混んでいない。面白いのは、女性の一人客が数組いることだ。そういう食べ物なのだな、豚丼って。店のおばちゃんはじめ給仕の女性達は皆一様にやたらと礼儀正しい。
「どうもありがとうございました。」
「またぜひいらっしゃってください。」
などと客に声をかけている。持って来てくれた品書きを見ると、豚丼にはグレードがあって、
松 850円
竹 950円
梅 1050円
華 1250円
という順になっている。ここで注意して欲しいのは普通と逆で、「松」が一番低いランクになっているのだ、なぜかというと、、、どうやら女将さんの名前が「梅」なんだと(笑)
ということで梅がいままで一番高かったのだが、どうやらもう一つ上のクラスを新設したようだ。
これから僕は会食があるので、華にいきたいのをぐっと我慢し、梅にしておいた。ちなみにここの店は豚肉を炭火焼きにするので有名だ。家庭などでは、豚をフライパンで炒めた後にタレを絡めて少々煮詰めるなどの方法が主流のようだが、豚丼専門店では炭火で焼くことが多い。そのせいか出てくるまでに時間がかかる。
6分ほどして出てきたのが、蓋をされた丼にはいった豚丼だ。しかし、蓋は閉まってないゾ!そう、梅とか竹とかの違いは、肉の量なのだ。期待に胸をときめかせながら蓋をとると、ふうわりと香ばしい炭火焼き独特の香りと、醤油ダレのこげた燻し香が鼻を刺激する。肉のプレゼンテーションはばっちりで、これは文字通りご飯が見えないまでに重ねられている。
肉を食べてみる。うーむ 厚みのある肉がフカフカの食感に焼きあがっている。表面はカリッと香ばしくこげているが、噛むとふんわりフカフカもっちんもっちんとした優しい感触なのだ。そして肉にまぶされているタレは淡い。「白樺」の豚丼は、肉がチャコール色に染まるほどタレを絡めていたが、ここでは炭火で炙りながらタレはさっとしかくぐらせていないような風情だ。だからか、肉自体の味、とくに脂の甘味が際立つ。しかしながらおもしろいのは、ご飯にはしっかりと
した味のタレがまぶされており、こちらは塩気も強く、肉と合わせたときの感触は最高なのだ! これはさすがに元祖と言うだけあって、非常に練られた世界だと実感する。同時に、豚丼の奥の深さを思い知った次第だ。この豚丼は確かに旨い。けど、これまで食べてきた豚丼がこれに劣っているわけでもない。豚丼の味は、店ごと、家庭ごとに違うのだ。そしてその違いはすべて許容されるものなのだ。炭火焼もうまいし、フライパン煮詰めタイプも旨い。自分がどれを選択するのか、だけなのだ。
(その2に続く)
(その1より続き)
さてぱんちょうのソフトにしてこってりした豚丼をたいらげた後は、夜の宴席である。もう先方も僕のことをよくわかって下さっているので、美味しい店に連れて行ってくれた。今回は魚貝である。前菜的位置づけでまず、毛ガニが並んでいる。当たり前のように一人一杯だ。身をほじくりだして食べていると、
「あのねぇやまちゃん、味噌の部分にかぶりつくだけでいいんだよ、カニはさ。」
という。ちょうどいいのでさっきからさがしているもののことを聞く。
「あの~、カニ酢みたいなのってないんですかねぇ?」
というと、先方お二人ともやおら首を振る。
「カニに酢なんかつけたら、カニの味がしないだろ!」
なるほどぉ、、、そう言うモノなのか。そして二人とも、身がぎっしり詰まっているカニの皿を
「おれはもういらね。」
と僕に流してくる。これをすべてほじくりだし、皿一杯になったところで一気に食べているのが下記の写真である。
カニ、揚げ物、焼き物、魚の煮付け、寿司と食べ進み、コースがはねる。
「じゃあラーメンいくか!」
と向かったのは、当然ながら前回も行った、手がプルプル震えながらラーメンを作ってくれるおっちゃんの店「頓珍館」である。
ここの塩ラーメンはやっぱり旨い。何でだろう、、、あんな小さい鍋で、、、
ここで一同お別れ。どうもありがとうございました!次は年始に、、、
僕ら出張3人組はホテルに帰る。帰る道すがら、前回来た時に
「あそこは居酒屋だけど豚丼が旨い」
と言われて、行ってみたけれどもご飯がなくて食べられなかった「田悟作」の前を通りかかった。そのエピソードを知っている同行者が
「いいの?いかなくて、、、つき合うよ」
と言ってくれたので、これはもう突き進むしかない。田悟作に入店し、豚丼を3つ注文したのであった。
運ばれてきた豚丼は、白樺で見たようなちょっと煮詰めスタイルの豚丼だ。口に運んで「ん?」と思う。この香りは、、、山椒だ!鰻丼のように、軽く山椒がふられている。しかもこれはタレに最初から仕込んでいるようだ。この山椒の香りと風味がアクセントになり、イケル!ただ、肉は少々ぱさつき感が強いようだ。タレは甘めの濃いめ。酒を飲んでの最後の締めにいい感じかも知れない。前に座っていたT氏が早々にギブアップ。半分くらい残っているのを僕が食べる。でも全部はさすがに食べられない。このころになるとさすがに僕の胃袋も相当にハードな状態である。
下記がこの一日の食事だ。
(昼)
白樺の豚丼 ★★★
白樺のカレー ★
(夜)
ぱんちょうの豚丼(梅) ★★★
魚貝料理の店(名前ワスレタ) ★★
頓珍館 塩ラーメン ★★★
田悟作の豚丼 ★★
もー食えん、、、
ただ、集中的に食べて、豚丼については定見ができた。
「豚丼に同じ味なし」
どの店や家庭でも、自分なりの味というものを持っている。それが豚丼だ。方程式としては、
焼きの方法(炭火かフライパンか)
肉のカット方法と厚み
タレの濃さ
タレのつけかた(煮詰めかさっと塗って焼きか)
ご飯へのタレの絡め方
という要素があるように思うのだが、肉やタレなどのベースが旨いから、どんな風にしたってまずくはならないのだ。従って、
「豚丼のベストチョイス」というものは存在しない。
と言える。あえて僕的に好きなのは、、、空港レストラン「白樺」の豚丼は旨いなぁ。
ちなみにこの豚丼のタレ、有名なのは空知(ソラチ)というメーカの商品だ。これは空港でも売っている。スーパーでもドドドドンと並んでいるので、北海道に来た人はぜひ買って帰って欲しい。ちなみにこれ、僕の冷蔵庫には常備されている、、、
■ソラチの豚丼タレ
注意が必要なのは、肉を焼いてタレをかけるというのではなく、フライパンの中で肉を焼き、頃合いを見計らってタレを絡め、少々煮詰めたほうが旨いということだ。それと、豚肉は集めの方が旨いので、トンカツ用の肩ロースを買って、これを包丁で3枚くらいに切り出すとよいと思う。
また、コンロが汚くなって良いなら、魚焼き用の網を十分に熱し、肉を焼くと旨い。いや、炭火を用意できるならそれがベストだが。この場合は、タレを最初に肉に絡めながら焼くと良いと思う。
まあとにかく言えるのは、「豚丼は帯広限定にするにはもったいない料理だ」ということだ。一日に3杯食べた人間がそう言うのだから間違いないだろう。北海道にいくならぜひ、食して欲しい。
帯広での質量ともにおびただしい夜が過ぎた。仕事は終わったので、本日は夕張の生産農家の友人宅に遊びに行くことにしている。 僕はホテルの朝飯は陳腐なのでいつも頼まない。それより、町に出て何かおもしろいものを探す方が楽しいに決まっている。特に、昨晩農協のOさんから聞いた一言が頭から離れない。
「山ちゃんさぁ、帯広でカレーって言ったら、ふつうみんなが思い浮かべるのがインデアンっていう店のカレーなんだよ。」
帯広にもインデアンという店があるらしいのだ。フジモリという駅前にある食堂がその発祥で、道内に数店舗のインデアンというチェーンがあるとのこと。帯広の学生たちはこのカレーを食べて育つのだそうだ。ご存じの通り、大阪の名店「インデアン」カレーは、この出張食い倒れ日記の殿堂入りを果たしている(右側のツールバーを参照のこと)。名前が同じだし、旨いカレー、しかも地元での評判が高いということで、行ってみたいと思う。
まずは帯広駅のビル内の喫茶店でコーヒーを飲む。やたらとひとなつこいお姉ちゃんで、
「まだいるよね、ちょっと買い物行って来るから」と客に店番をさせ、20分ほどもどってこない。帰ってきた姉ちゃんにフジモリの場所を聞くと、
「フジモリも近いけど、駅前のスーパー長崎屋の中にもインデアンが入ってるよ。そっちの方が安いから、、、」
ということだった。ではそっちに行ってみよう。
長崎屋は本当に駅前すぐだ。2Fに上がると食品売場だ。ふつうスーパーといえば地下や1Fに食品売場があるが、ここは2Fからメインフロアが始まっている。もしかして、豪雪で1Fが使いものにならないからだろうか、、、それはともかく食品売場を回る。
僕は初めての場所では必ずスーパーの食品売場とくに調味料売場を回る。その土地ならではのものがいっぱいあるからだ。特に北海道帯広である。調味料コーナーにはまず豚丼のタレが数種類おいてある。一番シェアが高いのは空知(そらち)のタレである。それと双璧をなすのが、ベルというメーカーのジンギスカンのタレだ。
タレだけではない。ラム肉をジンギスカンダレに漬け込んだものが1つのコーナーを形成している。牛肉とか豚肉とかのカテゴリと同じように、ジンギスカンコーナーがあるのだ!思わずかって帰りたくなるココロを鎮めるのに苦労した。
食品売場ですでに興奮してしまったが、そこを抜けると、ほのかにカレーの香りがしてくる。おお、あった!インデアンである。
キッチンの中にはちゃんとした調理スペースがあり、職人さんがタマネギなどを刻んでいる。基本中の基本であるインデアンカレーを注文。なんど380円という安さである。ここでびっくりしたことがある。
このインデアンカレーのシンボルマーク、大阪のインデアンとそっくりだ!!
上の画像の上部の「インデアン」という名前のネオンの左側に、ターバンを巻いたインド人のようなマークがあるだろう。これと、このページにある大阪のインデアンのマークを比べて欲しい。
うーむ なんだなんだなんなんだ? もしかして系列店なのか?そうでなければどっちがオリジナル?
と、カレーが出てきた。ネットリ感の強そうな真茶色のルーが、定番のアルミ皿にもられている。ビーフの角肉の量も多く、ご飯の盛りもよい。一口食べてみる。
これは旨い!380円の味ではないぞ!
糸を引きそうなネットリ感とともに、まずは甘さがドンと舌にくる。大阪のインデアンだとこの直後に機関銃掃射のような辛さが点滅するのだが、ここ帯広インデアンではそれはこない。あくまで甘みが続く。しかしこの甘さがコクと絡み合って非常にイケル。子供から大人まで食べられるカレーだ。薬味は福神漬けを中心に3種。けど、オリジナルのカレーの味が旨いので薬味はいらないかもしれない。あまりに感動して、さきの疑問も含めて職人クンに聞いてみる。
「いや 旨いね~ 東京から来てるんだけど、このマークって大阪のインデアンカレーと似てるね」
「そうなんですよ、、、実はココのオーナー(フジモリ食堂の社長)が大阪でインデアンカレーを食べて感動し、自分なりに作ったのがこの店らしいんです。」
「ええ?じゃあ資本関係はまったくないけどマークは似てるの?」
「まあそういうことになりますかね、、、」
いいんだろうか?これ、意匠としてはまったく近似しているぞ。ま、北海道の帯広に数店舗ということで許容されているのだろう。職人君も、旨いウマイを連発しながらいろいろ聞いてくる俺に興味が生まれたらしく、
「同業者さんですか?」
などと聞いてくる。ちなみに彼曰く
「もう一つある長崎屋の近くにある「一品」という店の豚丼が旨いです」
とのことだ。
いやーしかし旨いカレーだ。そういえば昨晩農協の人に連れられていったクラブのおねーちゃんが
「やっぱりインデアンでは、シーフードカレーが一番よね」
といっていた。
シーフードカレーは670円である。380円からいきなりグレードアップだ。気になる。ということで、もういっぱい食べることにした。本当はカレーを食べて、昼飯には駅で打っている豚丼弁当にしようと思っていたのだが、ここのカレーの方が今となっては興味の的である。
「シーフードもう一つ!」
というと職人君、目を丸くする。そしてやおらナスの細切れをフライヤーで素揚げにし始める。平行してルーを鍋に盛り、シーフードを投入する。さっと火を通し、ナスの素揚げを混ぜ込んでご飯にかけて供される。
これは絶品である!びっくりした!
シーフードは、よくあるシーフードミックスの安物ではなく、小エビ、ホタテ、アサリがきちんと入っている。バター風味がほのかに香る。タマネギ、シシトウ、ナスがうまみを引き立てる。言うことないのである。いやほんとうに脱帽だ。てきとうに探したこの店でこんなにおいしいカレーに出会えるとは思わなかった。やばい、この店も殿堂入りさせたくなってきてしまったが、そうそうは簡単に殿堂には入れられない。しかしこのコストパフォーマンスは、大阪インデアンよりも遙かに高い。
今や職人君も僕とある種の共感を分かち合うようになってしまった。また来てくださいね。おう、また来るよ。
帯広のスタンダードカレー「インデアン」は旨い!
しかも、大阪の殿堂入り名店「インデアン」の影響を受けた店である。必食である。
そして物語の舞台は、夕張の生産農家の親友宅に移るのである、、、北海道編はまだまだ終わらないのであった。
さて帯広に別れを告げ、特急「スーパーとかち」に乗り、一路夕張を目指す。帯広インデアンカレーの余韻が消えないうちに、と車内で原稿を打っていると、にわかに景色が変わってくる。いつの間にか雪が降っているのだ。みるみるうちに空が曇り、パラパラとまばらに降っていた雪が、すぐに横殴りに降り積もる重めの雪に変化する。これが北海道なのだ。
カレーの余韻に浸る2時間はあっという間に過ぎた。新夕張に着くと、雪は止んでいた。簡素な駅の簡潔な改札に、ツナギを着た岩崎英伯(ひでのり)氏が迎えに着てくれていた。彼との出会いは7年ほど前。農業情報ネットワーク全国大会というイベントで出会い、その後、北海道に講演として呼んでくれたのだ。
この岩崎氏、夕張特産のメロンの生産農家としては僕が今のところベストと思う人だ。実際、一昨年前までは僕も売らせて貰っていた。夕張メロンといえば一玉5000円クラスが相場だが、彼は殆どを直販で売ってしまうため、見栄えにこだわらず(ネットが綺麗でなかったりという些細なこと)、とにかく味を追求している。彼のメロンを食べたら、おそらく今まで口にしていた夕張メロンとは何モノか、と思うこと請け合いだ。
ちなみにメロンは昨期がほんの一時期に限られてしまう。彼の農場では主力商品として中玉の高糖度トマトを作っている。こちらは僕の好みの味ではないのだが、かなりいい条件で販売ができているようだ。それと、日本では珍しくルバーブも生産している。東京近辺で手に入る生のルバーブがあったら、ほぼ間違いなく彼が生産したものだと考えて良い。築地市場には彼のものが入っているし、新百合ヶ丘にある某有名洋菓子店のルバーブケーキも彼のものが使われている。とにかく、一生付き合っていきたい素晴らしい生産者なのだ。
今日は、せっかく北海道にきているので、彼の家でお世話になることにした。実を言うと彼が上京する時は、僕の家に泊まることが多い。まあ、持ちつ持たれつと言うことだ。
新夕張駅から車で20分くらい、栗山町という田園地帯が彼の拠点だ。一昔前に流行ったウインダムヒル・レーベルのCDジャケットのような自然風景が目の前に拡がっている。隣家との距離は通常200メートル先という感じだ。今のメイン品目である中玉トマトの巨大ハウス内を観る。イスラエル製の養液栽培システムを導入し、コンピュータ管理をしながらトマト生産をしている。養液水耕栽培は僕はあまり好きではないのだが、彼の作る中玉品種のレッドオーレはいい線いってる方だとは思う。岩崎農場の一族(母ちゃん父ちゃん、そして嫁さん)となつかしの再会をし、夜は近所のジンギスカンに行く。
■ジンギスカン 「かねひろ」
・上ジンギスカン 9人前
・野菜セットA 1つ
・野菜セットC 2つ
・大盛ご飯1杯+普通盛りご飯1杯
このジンギスカンがムチャクチャに旨かった!北海道内でもジンギスカンには2種類ある。ラム肉をあらかじめタレに漬け込んで焼くものと、味付けしていない肉を焼いてタレにつけて食べるものだ。栗山町ではタレにつけ込む派。僕もどちらかといえばこちらの方が好きだ。それにしても全く臭みが無くて旨い。思わずご飯大盛と普通盛りの2杯を食べてしまった。
この後、彼の部屋で酒盛り。本場韓国産のジンロ(日本で出回っているジンロは不味い。)と金沢の銘酒「萬歳楽」1本を空ける。話題は農業の話からシュタイナー教育、そしてインターネット産直の話へと変遷を続けていった。
朝がきた。さてお楽しみの本番である。この岩崎農場にて、販売を目的として作っていない作物がある。「ソバ」である。自家製と、好きな人にだけ分けている分しか栽培していないというソバなのだ。しかも、幻の品種である。とても旨いのだが、収穫量が少ないということで試験場では採用されなかった品種のソバなのだ。このソバはものすごくて、終了は少なくても10割ソバとして(つまりツナギなしで蕎麦になる)食べることが可能な蕎麦なのだ!
ソバの収穫は秋の終わりだ。岩崎農場でも収穫し、つい先日堅い殻を製粉所で取り払い、むきソバにした状態で保管をしていた。つまり、ちょうどこの日、岩崎家でも今年の新ソバを初めて食べるタイミングだったのダ!
6年前にこの地を訪れた際にも、このソバを蕎麦に打っていただいたことがある。無論、美味しかったのだけど、実を言うとあまり心に残っていなかった。しかし、今年の蕎麦は全く違った。自分のこれまでの蕎麦観が変わるような体験を、してしまったのだ、、、
(その2へ続く)
皆さんは、蕎麦の粉を挽くところから蕎麦を打ち、茹でて食べるという経験をしたことがあるだろうか?まあ、身内に自家製粉するこだわりの蕎麦屋でもいないかぎり、ある訳ないわな。今回はそれをやってしまったのだ。しかも、そのソバを生産した農家の家で、、、とてつもなく贅沢なことをしてしまった。
しかも笑えることに、まずはソバ挽き用の石臼マシンの改修作業から入るのだ。
「ちょっと機械を直すからサ。」
といって岩崎氏、電ノコで火花を散らしながら鉄板を切り始める。石臼マシンとは、簡単に言えば、石臼を自動的に回し続ける機械だ。ソバの剥き実を石臼内に流し込み、それを回転する石臼が挽き続けるのだ。そうして出てくるソバ粉は、まだ粒子が粗いので、目の細かい網でふるって、粒子の粗い粉を再度投入して挽いていく。ふるいにかけるのも自動的に行う機械があり、石臼マシンと篩(ふるい)マシンをドッキングさせたのが先の改修内容だ。これを繰り返し数時間かけて、数キロのソバ粉が出来上がるという算段。
■これが石臼&篩マシンだ! 今、ソバむき身を投入しているところ。
■これが剥きソバです。ソバは秋の終わりに収穫後、製粉所で殻を取ってもらう。このむき実を一つまみ口に入れる。唾液が浸みると粒がボロっと崩れる。その瞬間、なんとも甘い、優しい味が拡がる。本当に旨いんだ。生でも。
■石臼が回転して、ソバ粉が出てくるのダ。
このソバだが、先に書いたように、他にはあまり出回っていない品種だ。10割で打てて、しかも薫り高く旨いということなのだが、作りにくく収量が少ない。まあ、それでは誰も作らないわな。でも、味はバツグンなのだ。実はこのソバ、地元の蕎麦屋や製粉所でも大評判になっており、来年以降は作付けを増やして出荷するそうだ。
通常、ソバは輸入だと1俵3000円程度で販売されるという恐ろしい安値なのだが、岩崎農場のこのソバは1万円をはるかに超える高値で売れるというすさまじい高級食材になるのだ。このソバ粉は、、、まあ、俺は数度食ったことがあるので、何の疑問もないのだが。
さて粉を挽くのに時間がかかったので蕎麦打ちは翌朝。ああ、ちなみに先程来、「ソバ」と「蕎麦」とかき分けているのにお気づきだろうか。原料としてのそばは「ソバ」と標記し、調理の手が入ったものを「蕎麦」と記載するのである。
さて蕎麦打ちは全くの素人ではないが、家でトライしても生地が割れたりしてナカナカ繋がらない。岩崎氏の指導のもと、トライすることに。これが意外にもすんなりと伸び、繋がってくれるので本当にビックリ。やはり素材の良さが最も重要なのだと痛感する。
■捏ね鉢とソバ粉
■水回し。適量を見極め加水していく。ここが命といって過言ではない
■捏ねた生地を「のす」作業に入る。面白いように滑らかに伸びてくれる
■伸びた生地を切る。あっしも結構旨いんですぜ。揃ってるでしょ?
■茹ではほんの数十秒
■完成!画像ではわからないだろうが、新ソバ特有の青みがかっている
さて打ち立て茹で立てを食べる。
蕎麦通はよく何もつけずに蕎麦を一口すすり、味を確かめるという。が、おいらは濃い味好きなのでそんなんはどーでもいい。どーでもいいんだけど、まずはつゆにつけないで食べてみようかな、と一口すすってみる。
衝撃が走った。
蕎麦が、甘い、、、
また、噛み締めた後に、蕎麦の香りが強く濃く香り立つ、、、
どこの名店にいっても味わえなかった(竹藪にはいったことないけど)蕎麦の味だ、、、
呆然としながら、つゆにもつけずに半分くらい食べてしまう。岩崎夫妻が次の蕎麦を打ちながらにやにや笑っている。お母ちゃんが通りがかりに
「あたしはねぇ、街に出てもぜったいに蕎麦屋には行かないんだよ。どこいってもがっかりしちゃうからね、、、この蕎麦を食べちゃうと。」
それはそうだろう、、、でもお蕎麦屋さんは泣くよ!
いや本当にビックリである。この蕎麦には薬味のネギもいらない。僕が薬味好き、濃いダシ味好きであることを知っている友人がこのシーンをみたら驚くと思う。そんなの要らない味なのだ。
しかしそれより価値崩壊だ。それなりにいろいろと回って旨い蕎麦店を発掘していたつもりだったが、価値の尺度が根底から覆ってしまった。ああこれからどうしよう、、、お母ちゃんのようにがっかりしてしまうのだろうか。
そうはならないように、とりあえずソバ粉はしっかりと分けて頂いた。ありがとう!家で打ちます。岩崎家では年越し蕎麦用にまとまった量の粉を挽き、その後は大体1月~2月で食べきってしまうそうだ。ううううう またそれまでに行こうと心に誓った俺だった。
申し訳ないがこの岩崎農場の蕎麦については、まとまった量が出荷可能になるまではあま詳しいことは教えられないのであった。ふふふ どうだ羨ましいだろう? これぞ優越感というものである。
蕎麦を食べ終わり、千歳空港へ。途中、北海道でしか売っていないアイテム(清涼飲料水コアップガラナ、ナポリン、ガラスープの素など)を買い込み、しばしの別れを告げる。
ああ、北海道。そこは夢の世界だ、、、
郡上八幡方面に出張なので、更新は夜以降ということで、、、
夜も眠れないほどに気になっていたのだ。
岐阜県の郡上八幡といえば、自然に囲まれた風光明媚な観光地だ。といっても、繁華街はつつましいもので、自然環境もきっちり残っており、美しい街だ。そのメインストリートから校則のインターチェンジに行く途中の街道に、あまり美しくない看板で「ベトコンラーメン」という店がある。ここに出張に来るたびに、車窓からその看板を眺め、気になっていたのだ。足を運ばなかった訳ではない。いつも「食べてみよっか」と寄ってみるのだ。しかし、、、なぜか僕ら一行が足を運ぶと、必ず店が閉まっているのだ。定休日の時もあれば、5時まで休みになっていたりと、地団駄を踏むこと多数であった。
いったい、「ベトコンラーメン」とはいかなる物体なのだろう? 謎は深まるばかりだった。
そして遂に、その謎を解き明かす時が来たのだ!本日は定休日でもなく、すんなりと入ることが出来たのだ。ベトコンというくらいだから、攻撃的な、中途半端エスニック風な店内を予想していたのだが、以外にこざっぱりした、普通の店だ。
「いらっしゃーい」
夫婦らしいおじさんおばさん、そしてホールのおばちゃんが3人で切り盛りしている。店主らしいおじさんはバンダナを締めて黙々と鍋を振っている。カウンターに座ると、目の前にスナップ写真が。
なんと、ベトコンラーメンの店主夫妻と、えーとなんていったっけ、俳優の記念写真だ!

よく壁をみると、芸能人らしい人たちのサインや写真がけっこう貼られている。そういう店だったのか、、、ますます謎は深まるばかりである。
メニューはこんな感じだ。新調したデジカメのおかげで、テキスト打ちしなくても良くなったのは快適至極だ。

初めて頼むのをどれにするか、、、こういうときは一番オーソドックスなメニューにするのが基本だが、このメニューの場合、「郡上ラーメン」がいいのか、それとも看板である「ベトコンラーメン」がいいのか、ようわからん。それに、「新・郡上ラーメン」なんていう、まったく想像できない不親切なメニュー体系になっている。なんだこりゃぁ? 悩んだ挙げ句、「ベトコンラーメン」と、奥美濃古地鶏の唐揚げを頼んだ。
オヤジが振る鍋をのぞき込むと、肉・ニラ・もやしなどがスープと共に囂々と沸いている。愛知県によくある、台湾ラーメン系の作り方だ。スープを具材と共に中華鍋で煮立てて麺に合わせるスタイルだ。程なくあがったベトコンラーメンはこんな感じだ。
なんか、街の片隅にある寂れた中華料理店で出てくる「スタミナラーメン」という風情のラーメンだ。一同、予想と違ったので考え込みながら黙々と食べる。味は見た目ほど濃すぎず、少し塩が強いという範囲だ。もやしとニラはベトナム料理にも使われている食材だし、麺をすすっていると、ニンニクの素揚げが5片くらい出てくる。そうか、ベトナム戦争を戦いきったベトコンのパワーをニンニクで表現しているのか、と独り合点する。
唐揚げも食って、満腹だ。後ろの壁に貼っている紙をみると、本日食べなかった郡上ラーメンのスープには、「長良川の鮎、飛騨ケントン(豚)、奥美濃古地鶏」が使われているという。そうか、お国の素材で作ったから、郡上ラーメンなのね。それと、ベトコンか、、、
そう納得して、勘定をして外に出た。まあ、まずまずの味だったかな、、、と思って振り返ると、同行のI氏が、僕らより遅れて店から出てきた。満面の笑みを浮かべながら、
「君たち人生経験が浅いねぇ~ わからないことは訊かなくちゃ!」
と言う。そう、なんと彼は、「ベトコンラーメン」の由来を、おばちゃんに聞いてきたというのだ。そして、本日最高の衝撃が僕らを襲うのだった。
「あのね、ベトコンってのはね、『ベスト・コンディション』の略なんだってさ!」
えええええええええええ~~~~~~~~~~!
それなら「ベスコン」とかにしろよ!紛らわしい!!!
しかし、一つの謎が解け、歯ぐきの裏に刺さっていた魚の骨がスカッととれたような、そんな爽快な気分を味わったのであった、、、
もし岐阜県の郡上八幡にいくことがあるならば、お土産は「葉なんばん」で決まりだ。葉なんばんとは、郡上名産の唐辛子の実と葉を佃煮にしたものだ。当然ビリッと辛いものだが、甘辛という感じで、こいつがあると、ご飯が進みすぎて大変なことになってしまうのだ。
葉なんばんを売っているところもいくつかあるが、本家といわれているのが、街中にひっそりと店を出している「大國」という店だ。
■大國(おおくに) (05756)5-2366
http://www.net-club.co.jp/ookuni/
葉なんばん 1瓶 650円

この店の葉なんばんは、おばあちゃんとおじいちゃん夫婦が手作りしているものだ。しかもそのおばあちゃんが店番しているので、ついつい買ってしまうのだ。辛さも5段階くらいあるが、一番辛い「劇辛」にしても、僕にはちょうどよいくらいだ。これを納豆に混ぜて食べると、実に滋味深く美味しいのである。
この方がおばあちゃんである。可愛らしいおばあなのダ。

また、葉なんばん以外にも、仕入販売している商品がいくつかある。本日、うるかが売っていることに気づいた。うるかとは、鮎のハラワタの塩辛で、酒呑みにはこたえられない肴だ。そう、郡上といえば清流・長良川。ここで育った鮎のハラワタのウルカといえば、垂涎の的である。2瓶買い求める。

この辺では季節なのだろう、栃(トチ)の実を剥いたものも売っている。トチもちにするのだろう。

自然薯も売っている。画像では見えないだろうが、「絶対に、なぶらないでください」と書いてある。これはおそらく「さわらないでください」ということなんだろうなぁ。

こんなものを観ているだけで、なんだか幸せになるのが、郡上八幡なのだ。つまらない観光コースはどうでもいいので、この大國は絶対にはずさず、葉なんばんを買いに来ることを進める。そうそう、どうしても食べてみたい人は、上記のWebからFAXオーダーも可能だ。しかし、おばあちゃんに会って買わないと味が出ない気がするんだよなぁ、、、
正月明けで、しばらく出張の食い倒れネタがないので、これまでの膨大なアーカイブから、ぜひとも紹介しておきたいものを小出しにしていきたい。そう、「食い倒れクラシックス」である。
第一弾として紹介したいのは、愛媛県が誇る激烈旨うどん屋である 「踊るうどん 永木」だ。
先ず言っておきたいのだが、僕は愛媛の今治市で産湯を浸かった。愛媛県は、隣の香川県(讃岐)と同じく、圧倒的なうどん文化である。旨い蕎麦屋はほぼ皆無。しかも、瀬戸内といえば、極上品のいりこやうるめ干しが産出され、魚系の出汁には事欠かない。うどんがまずい条件がほとんど無いのである。
ま、讃岐のうどん文化にはひけをとるのであるが、そんな愛媛にも劇ウマなうどんがある。讃岐うどんがはやる一歩前くらいに、高知の親友と車で名店を回り、1時間半で13玉のうどんを食べたこの僕がみても「こいつは、讃岐より旨いかも、、、」と思ううどんだ。それが、「踊るうどん永木」なのだ。
ここは、愛媛の企画会社の女社長さんに「やまけんちゃん、愛媛の旨いうどんを教えてあげる!」と連れて行ってもらったのだ。松山市内から少し車で郊外に出たあたりにあり、わかりにくい立地。でも、この辺でこの店を知らぬ者はない。
「踊るうどん 永木」
愛媛県松山市須賀町2-1 リバーサイドナカオ
089-953-5162
営業時間10:30~午後2:30
金曜のみ午後7:00~9:00
定休日 毎週日曜・月曜
ここにきたら、先ずはとにかく生醤油うどんを頼むのが良い。お約束の、セルフサービス大根おろしセットが来るので、おろしを擂る。その内にゆであがったうどん玉を水でキュッと〆て水切りをしたものが運ばれてくる。これを、テーブルのおろしと生醤油でいただくのだ。
この一発で、ノックアウトされた。讃岐の、麺の角が立った感覚とも違う。とても柔らかく、はんなりふるりんとした感触なのだが、むっちりとしたコシがあるのだ。讃岐では、大体さいしょからブルリンというコシが目立つのだが、ここのうどんはムッチンとした官能的な腰使いだ。

むろんこれだけでは足りない。同時に頼んでおいたごぼう天ぷらうどんが運ばれてくる。かけスタイルのこちらは、牛蒡を薄切りにしたものを天ぷらにしている。ここでは油に細心の注意を払っており、酸化の形跡はほぼゼロだ。香り高く揚げてある。かけ出汁も旨味が濃く、うどんをすするにふさわしい強さを持っている。

瞬く間にたいらげてしまい、まだまだまだ腹が減っていたので、釜揚げを所望する。店の人もさすがに苦笑していた。手持ち無沙汰で店内を見渡す。小さな店だが、客足は全く絶えない。

天ぷらケースを覗いてみると、大好きなちくわ天とゆで卵天を発見。すぐにひっさらう。

それをつついていると釜揚げが出てきた。通常、釜揚げでは、どうしても麺の腰が決まらずふわふわした食感になりがちだ。讃岐の名店「わら家」や、満濃町の「長田」のように、釜でも腰がのり、歯をはじき返す麺が食べたい。しかし、この「踊る」釜揚げは実に素晴らしかった。うどんというもの、弾力だけではないのだなぁ、、、おいらの讃岐紀行、偏りがあったかも、、、
いやそんなことは無いと思うが、踊るうどん、最高に旨い。

ここのHPをつぶさに見ていただくとわかると思うが、店長の永木さんは若い。そして、なんだか顔が仏様のようだ。そして言動やモットーも宗教的ビジョンが色濃く出ている。そんな踊るうどん永木が大好きだ!
愛媛県人とくに松山在住者が羨ましい、、、
足を運ばれる人は、ぜひいっていただきたい。うどん一杯400円程度で大満足間違いなしである。
ライターの堺さんという方から、インデアンカレー情報をいただいた。
また、ご自分のblogにも所感を書いて頂いている。
堺三保さんのblog(1月8日のエントリを参照のこと)
FIAWOL-log
大阪の人からの反応が多いところをみても、本当に人の心に残るカレーなんだな、、、
そして私は、1月26日に大阪出張なのである!
今回は梅田店で食べた後、足を伸ばして堂島店にも行くつもりなのである!
そして、上記の堺さんが書いておられる日本橋にあるカツ丼専門店「こけし」にも行ってみたいという欲望がムラムラとわき起こったのである! よし、この日の昼は3軒ハシゴ決定なのであった。
日本が誇る発酵食品「漬け物」。しかし、ここのところ浅漬けブームで、ホンモノの漬け物があまり出回らない。スーパーに売っているのは、殆どが野菜を調味液につけて数日のうちに食べる「浅漬け」ばかりである。漬け物とは本来、冬季の農産物が収穫できないシーズン用の食べ物、つまり保存食として発展してきた経緯を持つ。長期間保存可能とするために、微生物による醗酵の力を借りる。乳酸醗酵に代表されるような醗酵の過程を経て、野菜は全く別の味わいへと変容する。それが「古漬け」や「本漬け」と称されるものである。
でも残念ながら、昨今、古漬けは売れない。消費者の好みが、よりあっさりした浅漬けに傾いてしまっているのだ。インパクトのない、調味液の味を食べるようなもので、僕は浅漬けはそれほど好きではない。乳酸醗酵してすっぱみが出ている本漬けが大好きなのだが、、、
ま、そんな文句を並べ立てたいわけではないのだ!今夜は、日本を代表する素晴らしい漬け物を、その本場で食べたのだ!それは、北陸が誇る「かぶら寿司」という漬け物だ。
寿司と言うだけあって、そのネタは非常に豪華。聖護院系の大きな蕪(カブ)をハンバーガーバンズのようにものをはさめるようにカットし、軽く塩漬けする。そこへ、北陸の海で水揚げされた寒ブリに塩をし、挟み込む。ここに麹(こうじ)と大根、ニンジンなどの酵素が強い野菜もはさみ、重しをして漬け込むのである。どのくらいの期間つけ込むかは知らないが、そうしてしばらく麹と野菜の酵素の力で乳酸醗酵させた蕪とブリは旨味を増し、上質な酒のような深い芳香を発散する。円形のそれを4つに割って断面をみると、漬け込んでいたとは思えないほどに深紅の美しいブリの断面が見て取れるのだ。
僕は漬け物大国・日本の中でも、このかぶら寿司は一、二を争う代表的な美しい漬け物だと思う。これに匹敵するのは、 北海道の厚岸にある大根と鮭のはさみ漬け(素材が変わるだけで作り方はほぼ同じ)位ではないだろうか。
で、食べに来てしまったのである。東京からはるばる金沢へ!遊びではないよ!明日、農水関連の団体のセミナーに、講師として参加するのである。山本センセイなのである。小松空港からバスで金沢駅まで40分、ホテルにチェックインして招聘元の皆様とおちあい、夕食をと言う運びに。あらかじめ事情通が教えてくれたのが、金沢港のすぐ近くにある有名な老舗「宝生寿司」だ。
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宝生寿司
http://www.housyouzushi.co.jp/cos/main.html
■所在地 :金沢市大野町 4-58
■TEL.076-267-0323 (フリーダイヤル :0120-100323)
■営業時間 :11:00~22:00
■定休日 :毎週水曜日
※金沢駅東口からタクシーだと2000円強程度。

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老舗旅館風の落ち着いた佇まいの引き戸を開けると、天井までの吹き抜けが心地よい、カウンターと座敷席が並んでいる。カウンターに正面腰を落ち着ける。後でわかったのだが、どうやらこの店のマスターの前に座れたようだ。ラッキーである。
地魚で決めるおまかせコースが、12貫でなんとたったの2500円!東京もんとしては金沢の物価指数を疑わざるを得ない。そうして官能のひとときが始まったのだ。


まず出てきた鯖は 「これは生鯖だからネ。」 えー生でっか?口に運ぶと、臭みなどというものは全く無縁の、ただただ綺麗な香りと脂がシャリと合わさって溶けていく。白身はおそらくヒラメだが、申し分ない。しかし、何と言っても旨いのは甘エビだ。
ご存じだろうが、金沢は海老の宝庫だ。「今日は3種類しかないけど、多い時は8種類くらいの海老があるよ。」というくらいなのだ。東京ではあえて食べたいとも思わない甘エビ、しかし金沢で食べると、本当に濃ゆい甘みがトロケルのだ。

鯵も旨かった!バイ貝も旨かった!貝類も豊富で、まんじゅう貝という、江戸前では余り見かけないようなネタが多数あった。
そして、クライマックスがやってきた。

写真の右端にある軍艦巻きにしてある握り。これは、「じゃ海老」という、変な名前の小さな海老を数匹分軍艦に盛ったものだ。
■↓これネ!

「おそらくこの辺で一番甘い海老がこいつだよ。小さいけどね。」
というそれを、少しだけ醤油を漬けて口に放り込む。途端に、ショッキングなほどに甘く、濃厚でネットリとした香りと食感が襲ってきた。旨い~。眉間にしわを寄せ、3分ほど噛み続ける。マスターがこちらを見て笑っている。
「旨いっしょ?」
旨い! こんなに素晴らしい海老は初めてだ。
ちなみにその隣にあるのはこれまた江戸前ではお目にかかれない「ガス海老」というもの。これも実に濃厚な旨味があり、旨い。けど、ショック度では「じゃ海老」が遙かに上だな。とにかく感動してしまった。
おまかせ12貫はこれで一回りだが、勿論食べ足りない。大将と相談しながら、白身の王様、クエとマンジュウ貝、そして椎茸の握りをお願いする。

このクエが実に最高。しっとりふっかりしたペルシャ絨毯のような食感と、のってりとした濃厚な脂分、そして上品なコク。どうしてこんなに旨いのか。マンジュウ貝は名前に反してあまり印象に残っていない。それより印象に残ったのは椎茸115という握りだ。実は日本海側には椎茸の面白い産地がいくつかある。その総本山は鳥取なのだが、金沢にもすごいのがあったのだ。この写真を見て欲しい。


でかい、分厚い、そしてずしりと重い。これを焼いて、握って貰うわけだ。椎茸の強い香りと、何とも言えない火を通した茸(きのこ)の優しい柔らかさが、実に素晴らしかったのだ。
この店、酒も実に素晴らしい品揃えだ。メインは地元の福光屋の「福正宗」だ。この福光屋はものすごい酒造で、2万石という堂々たる生産量にして、しばらく前に全量純米酒へと切り替えた銘酒蔵である。これはものすごいことなのだ。首都圏ではメインの福正宗よりも「黒帯」の酒造と言えば分かり易いかもしれない(「黒龍」や「黒牛」とは別モノです)。
「黒帯」の燗を頼み、寿司と合わせると、実にベストマッチだ。さらに、この宝生が特別に作ってもらっている、その名も「宝生」という酒がある。つい勢いで頼んでしまって後悔したのが、これは大吟醸であったのだ。酒米を30%以下の歩合に精米し、米の中心部のみで醸したのが大吟醸だ。とはいっても、やたらと香りばかりが強くたつ大吟醸が多く、食中酒としては飲みたくない。
ところが運ばれてきた「宝生」を一口飲んで唸ってしまった。余分な香りは全くない。いや、香りはとても強い。しかしそれはあくまで米と麹の香りだ。磨き込まれた酒米からしか醸せない、雑味を極限まで排除したストイックにして芳醇な味と香りが、酢飯で痺れた舌をうっすりとリフレッシュしていく。素晴らしい!
そうそう、書くのを忘れていたが、勿論「かぶら寿司」を頼んだ。この美しい切り口を見て欲しい。惜しいが一口で食べる。かぶらの「クニュ・シャリ」としたどっちつかずの食感の後、ブリが歯の上に認識される。漬け込み時間を経てもなお弾力に富み、噛み込んだ歯を心地よく押し返してくるブリから、パッと凝縮された旨味が弾けるのだ。麹の香りが濃いので、醸造系の味が好きでない人には勧められないが、とにかく一度は食べてみて欲しい一品である。
もう一つ、大根寿司というのも頼んだ。カブを大根にしただけと思ったら、切り身の魚の食感が違う。少々堅めで癖のある香りは、なんとニシンであるそうだ。これまた実に旨いのであった。
さて、寿司を都合15貫にかぶら寿司と大根寿司。そしてビール、純米酒、そして大吟醸と食べ・飲んだ。一体いくらになるのだろう、、、と勘定書を覗くと、なんと4人で18900円。ひとり5000円でおつりが来てしまう。何たることなのか?
しかしそれでもタクシーの運転手さんが、「我々庶民からすると、あれは高い部類だよ」という。うーん 素晴らしい。ビバ!日本文化!ビバ、金沢! 将来引っ越してもいいかなリストに加えてしまおうか。
ただ、一つだけ気になったこと、、、入店の際も、会計の際も、女将さんかどうかはしらないが、女性の方の対応が非常に覇気が無く、それだけならよいが、客を迎えるという心づもりがみてとれないのが残念だった。板前さんたちが快活なだけに、惜しい。
本日、食べ終わってホテルに帰り、速攻でこれを書いている。やはり食倒れ日記は冷静に書くなどできないのだ。酔っぱらって気分よく高揚している時が一番勢いがある!
さて明日は昼飯に何を食べようかなぁ、、、
JAでの仕事は無事終了した。トラブルにも見舞われず、本当によかった。これに向けて徹夜で頑張っていた後輩もホッとした表情だ。
「お疲れ様でした!」
「うん、じゃーどこいこうか。何食いたい?」
そう、これから夜の部開始なのである。
昼から一緒にいて下さる岡坂さんと、そのご同僚の野村さん(ノムさん)がお相手をしてくださる。ちなみに前回もこのお二人に美味い店に連れて行って頂いたのだ。お二人とも生粋の幕別生まれの幕別育ち。ノムさんは岡坂さんの高校の後輩である。
「いや、俺も岡坂さんと課長には頭が上がらないのよ。」
というノムさんはしかし、初対面の時には「こいつぁヤバイ」と思ってしまうムッツリ触れると切れちゃうヨ系の怖さを醸し出している方なのだ。でも段々とうち解けてきてくださると優しくニコッと笑ってくれるナイス兄ちゃんなのであった。
そして、金沢編に引き続き、このノムさんこそが帯広に於ける味の先導人となったのである!
■ノムさん

さて帯広に来るととにかく豚丼しか食ってないということもあり、普通の居酒屋にいってみたいと所望する。そういえば今回も泊まるホテル「パコ」のそばに「かかし」という店があって、そこの豚丼もナカナカだという噂を聞いた。ということで、今回は「かかし」に行くことになったのである。
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■かかし
住所 : 北海道帯広市西2条南10
電話 : 0155-25-5911
営業時間 : 15:00~24:00

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品書きにはやはり海産物が多い。とはいっても、首都圏でみる居酒屋メニューとそれほど変わるわけではない。問題は、そのありふれたメニューの中身が、首都圏で食べられるそれとは全く違うということだ。
■いも団子
これは北海道では広く食べられているものだ。じゃがいもをマッシュにし、片栗粉を加えてよく練り、団子状にしてあげたモノだ。これにバターと甘辛醤油タレがかかっている。
「これも豚丼系のタレの味なんだよ。」とノムさん。
■ししゃも
ししゃも、、、実は東京にいる僕らは、ホンモノのししゃもを食べる機会がそうないのである。いっぱんにホンモノのししゃもが出回ることはごくまれで、よく似た別物の子持ち魚が売られているのが殆どだ。

「ヤマケン、おめぇ、ししゃものホンモノ食べてケ!」とノムさん。
運ばれてきたししゃもは、なんともふっくらとし、かつ水分が適度に載った、我々が食べているものとは別物の出で立ちである。旅館の朝食とかで出てくるのは銀色だが、なんだかこちらのはオレンジがかった色だ。レモンを軽く搾ってかぶりつく。すると適度な塩の利いたジュースがじゅわっと溢れてくる。そして卵がモロモロと崩れる。まったくパサパサしていない!逆にトロリモロリと水分が絶妙なのだ。
「う、ウマいっす!」
「ヤマケン! これを食わないで出張食い倒れ日記なんて書いてちゃ ダメだ!」
そう、ノムさんはこれを言いたかったのだということが判明!ここから怒濤のノムさん責めが始まるのであった。
■イカの一夜干し
「ヤマケン! あのな、イカってのは北海道が一番旨いんだからナ!俺たちなんか、イカにゴロ(ハラワタ)巻いて凍らせたルイベで酒が何杯でも飲めるんだぞ。ま、とりあえずこの一夜干し食ってみろ。」

なんてことはない一夜干し、、、にみえた。しかし、驚くほどにふっくらとしたスルメイカの身は、一夜干されることによって旨味を増し、水分が抜けることによって絶妙に官能的な歯触りとなって、歯にむっちりとした弾力を返してくるのであった。
「おう、ちょっとまちな、今、特製ドレッシングつくってやっから。」

と言ってノムさん、やおらマヨネーズに細工をし出した。
まず、マヨの小皿に七味を入れる。まあそれは我々もよくやることだ。次に、それに醤油を加える。ふうむなるほど。そしてみていると、なんとそこに、日本酒を加え始めるではないか!そして一気呵成にかき混ぜる!

「これがポイントなんだぁ。知らなかっただろ?日本酒の性質で、いつまで経ってもマヨが乾いたり色が変わったりしねーんだよ。ほれ、食ってみろ」
この特製ドレッシングにイカをつけて放り込む。旨い!結構日本酒がはいっているのにも関わらず酒の香りは殆どしないが確実に旨味が増している。
「これ、「こまい」にも合うからつけてみろ」
と、丸焼きにしたこまいに漬けて食べる。当然ながら旨い。
「海老にもつけてみろ!これはブラックタイガーだな」
と、海老の丸焼きはかなり大ぶり。皮を剥いて特製ドレッシングで食べると、実に旨いのである。

この時僕は海老に付いている皮は全部剥いて食べたのだが、そこでノムさんすかさず
「ヤマケン! 海老はね、薄皮は残して食べる方がうめーんだよ!そんなことも知らないで食い倒れ日記じゃねーぞ!」
へええええ そうなのかぁ、、、と思ったが後の祭りである。次回また海老で試してみるとしよう。
■ホッケ
さて北海道といえばほっけである。塩焼きを所望すると、「だいぶ小さいな」というサイズのものが運ばれてくる。我々にとっては十分な大きさなのだが、、、
「さてヤマケン、このホッケ、開いてある骨側と骨なし側、どっち側の身が旨いと思う?」
うーむ それは考えたこと無かったけど、、、太陽光に干して旨味成分が凝縮されるのは骨の周りだよなぁ、と思って骨側を指すと、
「違うよ!骨側はな、骨の厚みで干しの旨さが身まではいっていかねーんだよ。だから骨の周りは確かに旨いんだけど、そこの一枚だけなんだよなぁ。で、骨なしの側は、ブロックされねーから、中身まで旨くなるんだよ。食って確かめてみろ!」
食ってみた。確かにそうだ!骨側は骨を除いてしまうと、あとは白い淡泊な肉があるだけだ。しかし、骨のない側は、干された旨味タップリの部分が中まで浸透している感じだ。
「仰るとおりっす!」
「だろ?ヤマケン! だめだよこれくってから日記書かねーと!」
全くその通りだ。そして、さらにホッケの一番旨いカ所というのを教えて頂く。
「それはな、ここだ!」画像参照↓

ホッケは背開きで開いている。つまり、開いた状態で頭の下の真ん中の部分が、いわゆる「はらす」の先っちょということになるのだ。
「せっかく俺がほじくってやったんだから食え!」
おお、たしかに歯触りがシコッとしていて、脂の乗りも旨さも他の部分とは段違いだ!
この後もしっかりシッポを持って皮をむけ等、実に含蓄の深い叱咤をいただきまくる。
そしてこの店の豚丼を食べたのである。
■「かかし」の豚丼
ここの豚丼は、フライパン焼きである。そして特徴としては、タマネギの千切りが一緒に炒められているのだ。

「これはね、家庭でやる豚丼でよくやる方法だね。」
なるほど。食べてみる。昼間に食った「鶴橋」の黒豚丼に比べると全然あっさりしているが、これはホッとする味である。タレは甘め、でも適度にしゃっきりした味だ。飲んだ後をしめるにはちょうどよい程よい豚丼だ。
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いや、ずいぶんにたのしませていただいた。
この間、冷や酒が何本も空いている。僕も後輩もかなり酔っぱらってしまった。岡坂さん・ノムさんも酔っぱらっている。
さてこのかかしを出て、我々はすぐに帰っただろうか、、、?
いや賢明なる読者の皆さんにはわかるはずだ、、、これで終わるわけがない。この日最大のクライマックスとなる必殺ストレートがノムさんから繰り出されるのだ。
「ヤマケン! お前、金沢の寿司くらいであんなに日記かいてんじゃねーぞ!寿司はな、帯広が一番うめーんだ!」
ええええええ? 帯広で寿司っすか?それは違うんじゃねーの?と思いながら歩くこと100メートル。帯広駅からすぐの大通り沿いにある寿司屋に我々は誘われたのである、、、
(つづく)
引き続き、岡坂さん、ノムさんが言う。
「ヤマケン! あのな、金沢の寿司食ったくらいで『最高!』とか言ってんじゃないよ!旨い寿司はなぁ、旨い寿司はなぁ、、、帯広にあるんだよ!」
えええ?本当ですかぁ?(半信半疑)
おいら、寿司は結構食ってるよ?いいんすか?そんなこと言って、、、というのが僕の内心の呟きだ。正直、大地の恵みが旨いこの十勝において、寿司が旨いというのはちょっとわからんなぁという気持ちだったのだ。
、、、しかしこの浅薄な推測は、とてつもなく仰天の寿司によって覆されるのである。
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■金ちゃんの店 吟寿司
帯広市西一条10丁目
0155-23-6641
※帯広駅からすぐ、繁華街の大通り沿いにある。

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「かかし」から100メートル程度にある金ちゃんの店 吟寿司の暖簾をくぐる。路面に出ている看板をみて驚いた。「牛トロ寿司」が一番上に誇らしげに書かれているのだ。
「ヤマケン、ここの牛トロを食ったら、もう忘れられねーよ」byノムさん
そうなのか、、、
しかしここで心の中には不安がよぎっている。牛トロかぁ、、、サシが入った牛肉を生で食ったって旨いもんじゃないだろうになぁ、、、
いや、例外はある。以前、北千住にてバードコートの野島さんに連れて行って頂いた焼き肉「京城」では、熟成されまくった肉をそのまま焼かずに食べて、ムチャクチャに旨かった。しかしそれはトロトロになるまで肉の熟成を進めているからだ。寿司屋の感覚で肉を使う場合、そこまで熟成させるだろうか、というのが疑問なのだ。
頭の中に「???」マークを点灯させながら入店する。顔はにこやかだが目つきが異様に鋭い大将(おそらくこの方が金ちゃん)と、よく似た顔の息子さん「ケンちゃん」そして控えめな女将さんが迎えてくださる。

ちょうど5人程度の先客の分を握っているところで、大きな板に寿司を握っている最中であった。
「ちょっとだけ待っててね、今すぐ握っちゃうから。」
そう言うや、金ちゃん大将が握りを始めた。
速い!
驚速の握り技術である。いろんな寿司職人さんをみてきたが、この吟ずしの金さんの握りに優るスピードはみたことがない!みるみるうちに25貫程度の握りが板を埋め尽くしていく。
その握りが出て、いよいよ僕たちの番である。
「じゃあオヤジさん、今日はね、、、今日はね、、、どうしようかなぁ」
とノムさんがしばし熟考。意を決したごとく怒濤のオーダーを決める。
「サバ、シャコ、タチ、トロ巻き、穴子、そんでトロ寿司。」
そして、快楽のひとときがやってきたのだ。
いい感じにトロトロと〆られたサバをいただくと、金ちゃんの握りは凄まじい速さながら、柔らかくまとめられたモノであることがわかった。
そして出てきたのが、とってもおおぶりのシャコだ。
■シャコ

以前も書いたが、僕は江戸前のシャコが嫌い。食べるなら瀬戸内のきめ細かいものが好きだ。しかし北海道のシャコは堂々の存在感と、強く濃い濃い旨味がすばらしいものであった!
とにかく身が大きく熱いため、その旨さを存分に味わうことが出来る。塗られたツメも程よく甘く、シャコの甘さと香りと、そしてみずみずしい身の食感と相まって、思わずため息が出る。

「うー、うー、ウマいっすよこのシャコ!」
「北海道もね、旨いシャコがあるんですよ。特に○○○あたり。」
残念ながら食べるのに夢中で、この○○○がどこだったのか忘れてしまった!うーん岡坂さん、どこでしたっけ?
そして、次にアレが出てきてしまったのだ!
■生タチ(真タラの白子)

タチの旨いのを食べようと思ったら、残念ながら築地では遠すぎる。北海道で食べなければ、、、北海道での何年かぶりのタチだ。当然ながら臭みもえぐみもない。極めて繊細でトロトロの冷たいポタージュが、むっちりと弾けるのだ。

さて、そして問題のネタが出てくるのである。
■牛トロ巻

よく冷やしてある牛を、柳刃包丁で細いスティック状に切っていく。それを軍艦巻に盛りつけたものが「牛トロ巻き」である。サシは入りまくっている。ご覧の通り美しいピンク色だ。
「醤油つけないで、このまま食べてください!」
どうかなぁと思いつつ口に入れる。
冷やしているため、牛のネットリとした脂は最初は溶け出してはいかない。しかし噛んでいるうちに、牛を載せる前に軍艦に仕込んだとおぼしき、濃い旨味を持つタレ成分の味がひょいと顔を出してくる。そしての旨味が牛を包み込んでいく。若干の塩気の強みが、牛のモッチリした脂に包まれ、結果的に絶妙なバランスの味となるのダ!

これは僕の人生で初めての生牛肉の味だ。「京城」のようなトロトロ感のある熟成肉ではない。どちらかというと熟度はそれほど進めていないフレッシュな感じ。そしてそのこなれ具合をビンビンに加速する謎の調味料があるのだ!
「こ、これ、どういう味付けなんですか?」
「ヤマケン!それが秘密なんだよ!特殊なミソなんだよ!」byノムさん
いやこれは素晴らしい。
「じゃあ、穴子で一息入れるよ。」
「うちの穴子はねぇ、東京には負けないよ。絶対に自信があるんだよ。○本譲二なんて、15貫食べてったんだから!」
そうして出てきた穴子は、実に見事、本当に江戸前でもナカナカ食べられない旨い穴子だった。
■穴子

僕の好きな「焼き」の強い穴子である。タレは最初から刷毛で塗りつけて焼き目を入れているらしく、非常に香ばしく身にまとわりついている。代々木上原「カストール」の藤野シェフによれば「おそらく今の時期だと、築地から北海道に行ってると思いますよ。旨いのは産地よりきっと職人さんの腕でしょう。」という個人的コメントがあったのだが、実際そうなんだろう。この穴子、好みです。10貫食べたい。
しかし、そうはさせてもらえないのだ。この後、いよいよこの吟寿司の最大の目玉である「牛トロ寿司」が来るのだから、、、
■牛トロ寿司

見よ!この誇らしげな切り口の立った牛肉片を!秒速の握りの工程をみていると、この牛の裏に瞬時に塗ったのは、ほぼ黒い粘着性のペーストだ。岡坂さんが言うように蟹ミソ系のものだろうか。それを塗り込み素早くシャリと合わせ握る。
「はいよっ これが牛トロ寿司!」
「ヤマケン、これを食ってみろ!ヤマケン!」byノムさん
食べた!
う~ん これは旨~~~い! 先に出てきた、細口切りの牛を軍艦に載せたトロ巻きとは全く違う感覚だ。一体なんだろう、肉の旨味が強く感じられる。生で食べるともっさりするはずの牛脂が、心地よい甘みで、溶けている気がする。ご存じと思うが牛脂は融点が高く、人間の体温では溶けない。マグロは溶ける。従って牛は生で刺身で食べると旨くないはずなのだ。しかしこの牛トロ寿司は、舌にロウがかぶさるような嫌味が全くないどころか、、、いやマジで旨いのだ!あの魅惑的な謎のミソの味が、噛んでいるうちにどんどんと染み出てくる。

「どうだヤマケン!帯広の寿司は旨いだろ?」byノムさん
「、、、はい、初めてです、こんな旨いの、、、」
岡坂さん、ノムさんは満足げに微笑んででおられる。
「俺たちもここんとここの店ばっかり通ってるもんな!」by岡坂さん
「はい、岡坂さん野村さんは、この店の常連ベスト3に入ってます!」byケンちゃん
そう、そういうことなのだ。今回の組み立ては、店に通い詰めていないととうてい辿り着けない。例えば、牛トロ巻の後にいったん穴子を挟んでリセットしてから牛トロ寿司にいくあたりなんぞ、観光客には絶対にまねできないだろう。

岡坂さん、ノムさんはご家族の分を包んで貰っている。お二人の心根の優しさがビシビシと伝わってくる。
「ヤマケン!旨かったか?」
「はい、もう最高っす!」
それしか言えない。ここでお二人とお別れ。僕も通常ならもう少し何かを食べに行くだろう。しかし、、、そうする気になれない。今日はこれで心の満足を持って打ち止めにしておきたい。それほどまでに素晴らしい寿司だったのだ!
お二人とお別れする。本当にありがとうございました。しかしこのお二人を上京時にはどこへお連れすればいいのだろうか。悩みが増える今日この頃であった、、、
明日は帯広を発ち札幌へ向かう。その前にまたもや帯広インデアンカレーを襲撃する予定なのであった。
朝、目覚めると空腹である。昨晩あれだけ食べたにも関わらずきっちりと腹が減るのはどういうことだろう。でも、ホテルの朝飯などを食べるつもりは毛頭ない。帯広駅周辺のブランチといえば、インデアンカレーしかない!
インデアンカレー。前回も述べたとおり、どうやら大阪の「インデアン」とは全く関係ないらしいのだが、そのシンボルキャラクタはそっくりである。ただ、似ているのは名前とそのキャラクタだけで、味のほうは全く別物である。別物であるが、実に旨い!一番ベーシックなカレーが380円。日本風トロトロカレーであり、スープ系カレー好きの友人Yには敬遠されそうだが、僕はこの帯広インデアンのカレー、衝撃的に好きになってしまった。
さて今回も帯広駅前の長崎屋に行く。開店前の5分間、中学生やらオババやらがうわーっと押し寄せる。そうか本日土曜日だもんな。でももしかしてこの人たち、一斉にインデアンカレーの店に向かったりして(笑)
開店後の奔流にのって店内へ。インデアンカレーの看板が見えてくる。前回職人芸を見せてくれた眼鏡の彼が居る。
「いやーまたきちゃったよぉ!」
「あ、、、いらっしゃいません、、、」
彼の中のおぼろげな記憶が、この図々しく話し掛けてくる人間に見覚えありと囁いている。そしてしばしたって合点がいったらしく、にっこりとしてくれる。
「あんまり旨いんでねぇ、また東京から来ちまったよ。」
「ありがとうございます。」

彼の名前は吉田君。
「店では下っ端です」
というものの、腰の据わったいい動きを見せるカレー職人だ。
本日食べるものは決まっている。それは、、、お世話になっている農協の、岡坂さんとノムさんのご上司であるI澤さんがいつも食べるという「シーフードカツカレー」だ。これは実はメニューには載っていない。

I澤さんが頼むってことはそりゃぁ旨いと言うことだろう。
「シーフードカツカレー大盛りね!」
「はい!」
吉田君がすぐさま調理にかかる。まずフライヤーでカツを揚げる。カツは中々立派なもので、正直、こういったスタンドで出てくることが想像できないようなものだ。そして平行してナス・ピーマン・たまねぎといった野菜類を素揚げする。

カツに火が通ると油を切り、素揚げした野菜を大盛りご飯にのせ、そこにシーフードルーをかける。ルーは味別に鍋に蓄えられているのが見えた。

これで完成だ!大盛りにした分と、カツが載っている分で、てんこもり状態になっている。
■シーフードカツカレーライス 大盛り 950円

これが一番この店で高いメニューだと言う。
スプーンを入れるとカツの層にぶち当たり進まない。仕方が無いのでカツをすくう。カレーの邪魔をしないよう、衣は微細できめの細かいパン粉で仕上げている。カリッと仕上がったその揚がり口はお見事である。このカツとシーフードのルーが実にベストマッチング!
「やっぱ旨い!東京から食いにくる価値あるよぉ」
「ありがとうございます。」
吉田君ともどうやら二回目で心の交流ができそうな気配だ。僕が自分のWebを見てもらおうと、メモにアドレスを書き始めると、
「それ、インターネットのアドレスですか?聞きたいと思ってたんですよ!」
と言ってくれる。よしよし、見てくれよな。ぜひ社長さんによろしく。
さてシーフード大盛りは中々のボリュームだった。旨かった!本日はこれで打ち止めにするつもりで、「大盛り」にしたのダ。
し、しかーし!
大変なことが発覚してしまった、、、机上にのっているメニューを何気なく持ってみると、裏面にも何かが書いてある。

なんと!ここのカレー、辛さ調節ができたのだ!
メニューを良く見てなかったから、辛さは一つしかないのかと思ってた!
これはどうしたものか!?そのとき神の啓示のような内なる声が僕に囁いた。
「そこに山があるから登るのだ!」
僕の闘魂は燃え上がった。
「吉田君!大辛ちょうだい!」
もう厨房内のもう一人の女性も大笑いしている。やっぱ食べるんじゃん!
でも実は少々日和っているのだ。一番辛いのは極辛。でも本日は戦闘態勢ではないので、一歩手前の大辛で様子見なのだ。
すぐさま出てきた大辛は、やはりどことなく唐辛子の赤色が指しているような気がした。

そういえば厨房にはGABAN社のカイエンヌペッパーとカレー粉の大缶が出ている。あれが辛さの源になっているのだろう。一口食べてみる。二口食べてみる。三口食べてみる、、、
「辛い。」
いや、辛い。これは辛い。なんといってもトロトロ系の強いルーなので、したの上に滞留する時間が長い。したがって唐辛子の刺激成分が刺さりまくる感じである。もうすぐさまブワッと噴出す汗。この情けない顔を見よ!↓

写真では見えないだろうが汗が頬を伝っている。ていうか、すでにTシャツ姿であるところに注意。
だがもちろん食べられない辛さでは全然ない。けど、吉田君はこう言う。
「女性でいつも、極辛の3倍というのをオーダーされる方もいらっしゃいます。みていると、平然と食べていらっしゃるんですよねぇ、、、」
上には上が居るものである。その勝負は放棄したい。
あー辛い。辛かった!
でも旨い。やっぱ大好きだ帯広インデアンカレー。
社長さん、このカレー、東京でも受けると思いますよ。いちど進出考えてみてください。
超満腹になり、勘定。ここのカレーだけで一人1000円を越すのは中々居ないだろう。吉田君で再会を約束し、長崎屋を後にする。
帯広編、ご満足いただけただろうか。引き続き、札幌ススキノ編が始まるのである。
帯広から札幌へ。前回、夕張から近くの栗山町の生産農家、岩崎氏の家で自家蕎麦を粉に挽いて蕎麦打ちをしたエントリをご記憶だろうか。あの岩崎氏が本日はメロン生産者の会議に出ているということだったので、札幌で合流することにしたのだ。
北海道のメロンの世界では、如何にして味を向上させビジネスを安定化できるかという技術・経営双方についての生産者レベルでの議論がガンガン行われているらしい。そっちの会議も覗いてみたかったな。
さて札幌といえば一 大歓楽街であるススキノだ。僕が札幌を訪れるのはこれが二度目。最初のススキノも、やはり5年前に岩崎氏に呼んで貰って北海道の農業者に講演をした際に連れてきて貰ったのだ。 その時も食いまくったものの記憶で忘れられなかったのが、「ジンギスカン」、「手打ちの蕎麦」、「タチの寿司」である。
で、本日は岩崎亭ではないので蕎麦は無理だが、ジンギスカンとタチの寿司を食べようということなのである。

ところでジンギスカンには2種類ある。羊肉をあらかじめタレにつけ込んで焼くものと、生の味付けしていない肉を焼いてタレに漬けて食べるものの2つだ。前回食べた「カネヒロ」は、タレにつけ込んで食べるものだ(ちなみに帯広のノムさんには「あんなんだめだぁ」と言われてしまったが、、、)。僕は実を言うと漬け込みタイプしか食べたことがない。タレにつけ込んで旨~くなった肉のほうがよさそうじゃん、という感じであった。
「じゃあ今日は、生ラムジンギスカンを食べに行こう。」
と、岩崎夫妻は路面凍結しまくりの凍えるススキノをずんずん奥へと進んでいったのであった。小さな横町を入るとまさに雰囲気のある、汚い小さな店ばかり並んでいて興をソソル。そんな並びに、「だるま」があった。
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■ジンギスカン 「だるま」
札幌市中央区南五西四
生ラム 一人前700円
※しかし一人前では絶対に終わらない、、、

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すでに並ぶ人がいる。深夜までこの店は行列が途切れることがないという。うーむ人気店である。看板からは旨そうな雰囲気が漂っている。まどから覗いてみると、カウンターのみの店内は狭く、15~6人くらいで満杯になりそうだ。
「まあこの店の客の回転はラーメン屋並だから、ちょっと待とう。」
そうはいいながらも根の生えた客がいたりして、僕らが入店するまで10分はかかったのであった。
入店してからも壁に張り付いて待つ。秒速で動くおばちゃん4人で切り盛りされているこの店では、おばちゃんとの語らいとかは全くしている余裕がなさそうである。事実、客は一心不乱に生ラムを焼き、口の周りをタレでべとべとにしながら酒を飲んでいる。しかし女性が非常に多い。男性と半々ではなかろうか。水商売の女性らしき人たちと、一般の人が同等にいる。これは旨いってことだろう。
さてやっと席に着くことが出来る。
勢いよく燃える炭の入った七輪に、ところどころ穴の空いた鉄鍋がかぶさる。そのてっぺんには羊の脂が乗っている。てっぺんから鍋のふもとまでに数本のスリットが入っていて、それに沿って羊脂が流れて材料に絡まり、旨くなるのだそうだ。
「とりあえず生ラムと野菜。」
「はいよ!」
ときた材料をどーんと盛る。
炭火の威力で次第に肉が焦げ、旨そうな香りがしてくる。
「そんなに焼きすぎないで食べて大丈夫だから。」
という声で、すぐさまタレにつけて食す。
タレは醤油ベースだが爽やかな酸味もある。そして生ラムはというと、、、僕はこんなに旨い羊肉を食べたことはない!!!
まず、信じられないくらいに柔らかい。特にコッテリと白い脂身の部分はフンワリしており、筋目を全く感じない。
そして、、、旨いジンギスカンでいつも言われることだが、まったく臭くない。臭くないどころか、程よい羊の香りがするのみで、嫌な成分が全てカットされているような感じ。
「旨いよぉ!!」
ここからはとにかくラムを頼み、食べまくったのであった。総計10皿は行っただろうなぁ。何故かは知らぬが、牛肉と違って嫌になることがないのだ。純粋に胃袋の限界まで突っ走ることが出来る。タップリ盛られたタマネギや長ネギなどの野菜を挟むとますます食欲が増す。

あ!いかんいかん このあと寿司にも行くのに、大満足になるまで食べてしまった!しかしこれ一軒で打ち止めにしてもいいと思うくらいの美味い店なのであった。
帯広の岡坂さんノムさん、札幌のジンギスカン旨かったっす!(また怒られる、、、)
また連れてってクレー岩崎さん!
さてジンギスカンに舌鼓を打った後は、岩崎氏の手引きで少々アルコールを飲み、満を持して寿司へと向かう。
先にも書いたとおり、僕は人生においてこのススキノで初めて「タチ」を食べたのだ。タチとは、昨晩までの帯広出張記録にもあるとおり、真鱈(マダラ)の白子だ。これを湯通ししてポン酢と紅葉おろしをかけたものが関東でも並ぶが、生のタチを寿司ネタとして食べられるのは、やはり北海道ならではだ。この季節、札幌の寿司屋でタチがなければ何を食べるのだろうか、という感じだろう。僕にとって「タチ」の最初の一口が、ここススキノの名店「みのる」なのである。
この「みのる」、残念ながらどこを探してもWeb上に情報が載っていない。しかもまずいことに、住所や電話番号が載っていた箸袋を持って帰ろうとしたのに、落としてしまったらしい。今度訊いておくのでとりあえず場所データは無しとさせていただく。まあ、ススキノであることだけは間違いない。
雪が凍結した路麺をツルツルと滑りながら店にたどり着く。この写真に写っているのが岩崎氏だ。

「みのる寿司」は大将と女将さんの二人だけで切り盛りしている。オヤジさんは温厚そう、白髪交じりの頭は年期と風格を感じさせる。このみのる寿司と岩崎氏はいろいろと関係があるそうで、本当に昵懇である。旨い物を作るという双方の共通した目的があるせいだろうか、目に見えない信頼感で結ばれている感じだ。


さてここでは大将にお任せである。
「あのタチが忘れられません!」
「いいのがありますよ。」
そうしてまた、至福の時が始まったのだ。
順序は違うのだが、やはりまずこのタチ(真鱈の白子)から見て頂こう。
昨晩帯広で食べたタチも実に旨かった。そして本日のタチも最高!


このプリンプリンの輝きである。妖艶である。口に入れて歯を当てると、官能的にムッツリとはち切れ、口中にそのトロトロを放出させる。ブワっと拡がる旨味、しかしそこには一片の生臭みもない。
「フウンム、、、」
とフランス人ぽく唸ったまま僕は動けない。その動けない状態の写真がこれ↓だ。

なんだか歌舞伎役者の決めのポーズみたいだな。アホな顔である。
その後も素晴らしいネタが続く。昨晩の帯広に引き続き、シャコを所望する。北海道のシャコは旨いと言うことを知ったからだ。

口にするとザラリ、ホッコリとした歯触り。おお、これはメスのシャコだ!いわゆる子持ちシャコである。肉の旨味はあまりないが、卵を抱いた甘みがある。
「本当はオスの方を出したいんですけどね、メスがお好きなお客さんが多いんですよ。」
いや、これはこれで非常に旨いです!
そして北海道の旬、ボタン海老だ。

海老は金沢で旨いのを食ってきたが、北海道のボタン海老もやはり旨い。どっちがいいと言うことではなく、やっぱり質が違うような気がする。そう、北海道のネタは「大陸的」で男性的な味だと思うのだ。
と、岩崎氏が「おお、出たぁ!」と唸るネタ。生アワビである。

生のアワビなんて、実はそれほど好きではない。柔らかく煮たアワビの方が旨いと思う。でも、この生アワビは実に素晴らしかった。よく出てくる水貝のように固い歯触りというだけではない。適度に柔らかく適度にコリコリ、そして旨味ジュースがタップリである。うーん やっぱ素晴らしいなぁ。
そして出てきた「ホッキ貝!」。
この堂々の偉容を見よ!美しく角が立っている。

噛むと貝の甘みがシャッキリとした切り口から滲み出てくる。ホッキって旨いもんだ。貝の鮮度的にはやはり北海道の方が東京より有利だなぁと思う。
実はそれはウニについても同じだった。今回ぼくが一度食べたネタを所望したのは、タチとウニだけだ。

このウニが、、、このウニが、、、本当に素晴らしいのだ。いつも寿司匠で食べるバフンウニの赤も旨いが、みのる寿司のウニはそれを上回る鮮度とみえる。もう、雑味はどこにも見あたらない。10メートル平方の白い絹布をバッと拡げても、どこにも汚点が見あたらないという感じだ。清廉にして濃密、クリームが舌の上で溶けていくのだ。

と、程よい頃合いで、タチのみそ汁を女将さんが出してくれる。熱が入ったタチはまたその濃度を増し、味わいがふくらむ。ひたすら旨い。
昨日の帯広の寿司といい、このみのる寿司といい、「どちらが旨い」ということではない。北海道の寿司とはこういうモノだ、という気合と気概をストレートに打ち出してくる、誇り高き職人と、それを受け止める素晴らしい客がいる。そういう真剣勝負の中で、不味い寿司が生き残れようハズがない。
ビバ!北海道!
この1ヶ月で、また寿司に対する見識が拡がったのではないかと自分でも思う。そして以前にも増して、寿司が好きになった自分がいる。
ススキノに行かれる方は、ぜひタクシーの運ちゃんにでも訊いて、「みのる」に行ってみて欲しい。
満腹になった腹を抱え、凍結路面にツルツルと滑りながら、さらに奥深く分け入り、酒を飲みに行くのであった、、、
今回の北海道編はここまで。
大阪出張である。またもや講演なのだ。でもそれだけではない。関西で同世代の市場関係者、流通関係者に友人が数人居る。僕が大阪に行く時はほぼ必ず会って飲み、意見を交わすのだ。この友人達に言えるのは、キャラや強みがまったくかぶらないということだ。だから、非常に仲が佳い。その仲間が「やまけん、ハリハリ鍋食ったことがないならぜひ行こうや」と言ってくれた。そんな言葉に乗らぬ僕ではないのであった。
ハリハリ鍋といえば鯨肉と京菜(水菜)を出汁で煮て食べる、関西圏を代表する鍋の一つだ。現在大ブレイク中の水菜にさっと火が通るか通らないかくらいで引き上げ、鯨肉と共に噛み締めると、「ハリハリ」という歯触りが楽しめるというこから名前が付いたと言うが、本当だろうか。ま、それはともかく僕はどこかの料理屋で、小鍋仕立てのハリハリを食べた記憶はあるが、全くその味については印象がないほどにインパクトがなかった。
ところで鯨といえば相変わらず「食べちゃダメ」というワガママを押しつけてくる国際的なインチキ団体が多いが、全くもって腹立たしい。今や鯨は増えすぎており、イワシの漁獲量の低下などは実は鯨によるものではないかという推論もある。詳しくはこの本をご参照。保護しすぎてある個体が増えれば、そのしわ寄せがどこかに来るのは当たり前だ。しかもそれが食物連鎖の上の方に位置する動物なのだから、水産資源の圧迫は深刻だ。食い倒ラーとしては捕鯨反対には断固反対である。 ま、その理由の最たるものは「くじら食いたい」なんだけど。小中学生の頃に給食に出たくじらの大和煮が忘れられないのだ。あれは旨かった、、、
さて今回友人が連れて行ってくれるのは、「大阪では知らぬ者がいない」という老舗の名店だそうだ。その名を「徳屋」という。場所は千日前だそうで、これは東京で言う歌舞伎町のようなところだそうだ。たしかに商店街に足を踏み入れると、風俗店と通常の小売店と飲食店がワイワイがやがやと軒を連ねる猥雑な空間が拡がっている。こういうところには旨い店が多いこともまた事実。非常に楽しみなのである。
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■徳屋
住所:大阪市中央区千日前1-7-11 上方ビル2F
電話:06-6211-4448
ハリハリ鍋 単品だと一人前2000円程度だったと思う
各種鯨肉刺身、ベーコン、竜田揚げ
コロおでん、さえずりおでん等

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老舗と言うことで、喧噪の中に佇むあばら家を予想していたのだが、店はきれいなビルにあった。それも2階と3階にまたがっているらしく、相当に景気がいいようだ。店にはいると、テーブルや座席で客がつつく鍋の熱で、ムワッと熱い気がする。

友人が言う。
「俺ここを予約の電話かけた時、おばちゃんが『ああ、はいはい予約ですね、、、あ、チョット待って下さいネ』って言われて それから5分くらい戻ってこんかったわ。もうこんな店いくの辞めよて思ったけどなぁ。」
どうやらそれほどぞんざいに客を扱っても大丈夫なくらいに流行っているようだ。程なくもう一人の友人も来て、座敷に上がる。
品書きには鯨の各種料理と鍋料理が並ぶ。まあとりあえずハリハリ鍋を2人前と、鯨肉の刺身とおでんなどを頼む。
で、結論から言うと、この鯨肉料理がすこぶる旨かった。
■さえずりとコロのおでん
さえずりは鯨の舌。クニュクニュトロリとした食感がじつにかわいらしい。これがトロトロに煮込まれ串に打たれて出てくる。芥子をちょいと塗って食べると実に最高。
コロは脂身である。皮目もついていて、そこの若干固い食感と柔らかくとろける脂味との食感ギャップが楽しい。


■百尋(ひゃくひろ)の煮物
百尋とは鯨の小腸である。ソーセージの輪切りのような見た目だが、食感はまさにソーセージ系。ま、鯨はほ乳類なので当たり前か。歯触りが強く弾力に富み、味も非常に濃い。焼き目を漬けてポン酢に浸して供してくれる。

■くじらの刺身

最上と言われる尾の身と、赤身と脂身を交互に重ねたものを注文。しかしこれは感心しなかった。せっかくの尾の身はまだ十分に解凍しきっていない。刺身は切り身にする前に解凍しておかないと、旨味がドリップと共に流れ出て無惨なことになる。果たしてこの尾の身も、安酒場で頼むマグロの赤身のようなべったりとしたモノに化してしまった。赤身と脂の刺身は、まあ食えた。
■ハリハリ鍋
刺身のまずさにかなり気分的に冷えてしまったのを温め返してくれたのが、やはり真打ちのハリハリ鍋であった。鯨肉と水菜がてんこ盛りになって運ばれてくる。

これを一見すると量が多そうにみえるが、、、水菜なんてのは加熱してしまうととたんに分量が減ってしまう。鯨肉は数片あるのみだから、案外にこの店の利益率は高いのではないかと見た。綺麗なビルにはいることはある。
ただし味付けはまったくもって見事であった。しっかりした味の出汁には激辛唐辛子のハバネロが入っていて、これが全体の味を締めている。

そこに鯨肉を入れるのだが、一口大の鯨肉にはあらかじめ片栗粉をまぶし下味を付けて茹でてある。この片栗粉の衣が出汁に溶けてプルプルとろとろの絶妙な加減になるのだ。鯨肉が煮上がってくると鍋の表面に浮いてくる。そこに水菜をざっと投入し、しばし火が通るのを待つ。そしてグラグラと煮立ってくるところに箸を入れて、水菜とくじらをザクリと食べるのである。

「うーーー 旨い!」
鯨の癖のある香りと衣のトロ味、そして一緒に食べる水菜の食感が際だち、あっさりとしてはいるが強い味の出汁が実に旨い。ハリハリというのがこんなに風流で旨い鍋だとは思わなかった。しかし、あっという間に水菜が無くなってしまう。
「もう一人前ね!」
と頼むと、すぐに運ばれてくる。それをよーく見ると、、、???
なんだ?さっき二人前って頼んだのと、大差ない量が盛られている。鯨肉は若干量が少ないが、水菜の分量はさっきと同じくらいだ。水菜、皿に山盛りにすると崩れそうになるから、限界量があるのだろう。てことはつまり、ここでは一人前ずつ頼んで、追加しながら食べていくのが正解ってことだ!と三人ともに得心するのであった。
3人とも農産物の流通に携わっている人間だけあって、
「この水菜は土耕か水耕か?」
「いや絶対に土耕でしょ。味が濃ゆいし」
等々のつっこみが入る。そう、水菜は最近水耕栽培品が多いが、風味も食感も、土耕品とは別物。安い水菜はそれなりの味しかしない。だけどもキューピーなどのCMで採り上げられているせいか、流通の世界でも大ブレイク中である。
ハリハリを3人前食べて、濁り酒を飲み、議論を交わし、いい気分になった。
「やまけん、旨いうどんを食べに行こう!」
と、大阪の町をさらに探索することになったのであった。
はりはり鍋の徳家から5分ほど歩いたところにある「川福」にきた。

「大阪のうどんは、もっちりはんなりしてるのが多いけど、讃岐っぽくコシがあるうどんはあまりないんよ。でも、ここは最高!」
と友人が言う。彼が言うなら旨いはずである。
この店に至る道とかはよくわからない。酔ってたので忘れてしまいました。Googleで検索してみてください。
店内はこんな感じ。一杯飲んできた人たちが〆に入るみせという風情だ。

お品書きにはうどん以外にもいろいろなメニューが並ぶ。牛筋みそおでんなどひねりの効いたタネだけでも1面を占拠。その他オムレツなど旨そうだ。

「冷うどんも旨いけど、冬だしあったかいうどんを食わんと!」
と友人は言う。でも俺は冷も温も好きだ!ということで、かき揚げ天ぷら冷うどんときつねうどんのあったかいのを頼む。
ここ、厨房内はきっちりと割烹着を来た料理人が忙しく立ち働いている。非常にしっかりした、好感のもてる厨房であった。

出てくるものも非常に気が利いている。このエビのオムレツ(卵焼きと書いてたかな)なんぞ、中華か洋食家で出てきても不思議は無いほどの完成度だ。ニンニクがビシっと効いていて、焼きの加減も絶妙。餡ともよくからんで旨いの何の。

当然ながらうどんも旨い。サクサクのかき揚げにいろいろとのった冷うどん、実に綺麗。僕は型に入れて揚げたかき揚げは嫌いだが、ここのはそんな心配しなくても旨いかき揚げだ。全部よくかき混ぜて食べると、さぬき系のうどんなんだが、やはり大阪、いろんな旨い要素をとりいれたごちゃまぜうどんで最高である。

そしてきつねうどんがまた最高であった!
友人の言うようにあったかいのが旨い!出汁が実に滋味溢れている。

讃岐とは別系統の出汁。ほっとする。これで本日打ち止めしていい味だ!
あまりに旨く、秒速で食べる俺をカメラは捕獲できないのであった↓

大阪の一日目の夜はこうして素晴らしいものになった。
その代わり、体のことを考えてホテルに帰って腕立て伏せ160回、スクワット50回やって寝たのであった。明日もまだ続くのだ、、、
満を持して大阪で迎える朝。講演が始まるまで少々時間があるので、このblogの読者さんであり、ライターをやっていらっしゃる堺三保さんから教えていただいた、大阪日本橋のカツ丼・カツカレーの店「こけし」に行くことにする。色々とルートを調べると、宿泊した天満橋から地下鉄で日本橋まで行き、カツ丼を食べてから、地下鉄で1駅向こうの長堀橋駅構内に、なんとインデアンカレーの店があるらしい。僕にとって初めての「梅田店以外の」インデアンである。今回をこのコースを採用しようではないか。
それにしても大阪の人たちはフレンドリーである。地下鉄の出口の目の前の大通りで、いったいどっちにいけばいいんだっけ?と思って信号待ちのおっちゃんに「日本橋ってどっちですか?」と訊くと、大きなジェスチャーを交えて、熱の入った説明を3分くらいしてくれる。でも、その内容は「こっち側をまっすぐ行けばいい」という簡単な内容なのだが、懇切丁寧に教えてくれるのだ。しかもおいらのインチキ関西弁ではなく、ホンモノの大阪弁(いや、俺には判別できないが)である。なんだかその人情に感動してしまった。あまりに感動しておっちゃんの姿を遠くから盗撮(?)してしまった。
■この人だ↓

さて日本橋(にっぽんばし、と読む)は、東京で言う秋葉原、電気街である。その日本橋駅から地下鉄では一駅向こうの恵美須町近辺に、その「こけし」があった。
この店は、秋葉原に於ける牛丼「サンボ」のような位置づけなのだろうか、とても愛好者の多い店である。この店独特のの作法とおもしろさは、こちらのWebにかなり詳細にまとめられているので見て頂きたい。
さて堺さんからは「ダブルエッグ ダブルカツ セパレーツがいいですよ!」と教えて頂いた。これは、玉子2倍、かつも2倍、具とご飯は別皿でという意味だ。相当にボリューミーである。これでご飯が大盛り(スーパーという)だと、「フルコース」という符丁になる。しかし、その直後にインデアンカレーも攻めなければならないことを考えると、ここは自重しておきたい。出張が続くので、体調管理には気を遣っているのだ。ということで、すぐに見つかった「こけし」に入店する。
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■こけし
住所:大阪府浪速区日本橋4-5-18
電話番号:06-6633-4956

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店内はわりと綺麗で広く、明るい雰囲気だ。席の前にはこけしが沢山ならぶショーケースみたいなのがある。

この店のメニューが出色のできばえだ。表面はこのようなオーソドックスな品書きだが↓

裏面はこのように↓、系統図による分類がなされているのである(笑)!

「ダブルエッグのセパレーツお願いします。」
「はい!」
待ち時間の間に、タクワンをぽりぽりと噛む。そう、ここは「たくわんのわんこ蕎麦状態」を味わえる店なのだ。タクワンが減ると、すぐさま店員さんが補充してくれると言うことで有名。これは、皿を伏せるまで続くという。果たして、店内を一定時間で回遊している店員さんが「たくわんいかがですかぁ」
と言って、2枚放り込んできた。タクワン自体は蛍光色の強い、みるからにその手のタクワンであるが、妙に美味く食べてしまう。ポリポリポリ。
そして程なく運ばれてきた「ダブルエッグセパレート」がこれだ!

盛りはそれほど多いわけではない。うーむやっぱりダブルカツオプションをつければヨカッタかなぁ などと思うが、ここは次のインデアンにむけて自制心をはたらかせたのであった。
セパレート(別皿)のカツをご飯にのせる。あれ?と思うほど薄い肉である。ショウガ焼き用に肉に少し厚みが加わったくらいか。しかし、この薄切り加減がきっとこだわりなんだろう。タマネギと玉子が絡まったご飯を一口食べる。関西風にしては濃く甘辛い香りが拡がる。カツ自体にもタレが染み渡っており、柔らかくかき込める。ナカナカに旨いではないか。というか、家でご飯を食べているような感覚だ。

店内を見回すと、同じようにホッとした顔をしながら、日本橋の各電気屋情報を交換したりというパーティが多い。そう、この店、やはり電気街のオアシスなのだ。秋葉における喫茶「東洋」(閉店しちゃうんだよなぁ、、、残念)や、牛丼「サンボ」(ここもBSE問題でやばいんじゃないかなぁ、、、心配)と同じ位置づけなのだなあ、と思う。
たくわん攻撃を2回受けたので、皿をひっくり返しておく。甘辛いカツ丼がすっきりと腹に入っていく。
「ごちそうさまでしたぁ」
ダブルエッグセパレートは820円。それほど割安とは言えないが、みな安心感と満腹感を味わいにやってくるのだろう。
日本橋の暖かな良心をみた。堺三保さん、情報ありがとうございました!
さて地下鉄恵美須町から、インデアンカレーのある長堀橋駅へと向かうのであった、、、
さて 「こけし」でカツ丼を食べ、すぐさま地下鉄で2駅戻り、長堀橋地下1Fにあるインデアンカレーに向かう。この店に対する僕の入れ込み度合いはすでにご存知と思われるが、大阪を訪れる時にこのカレーを食べないなどということは考えられない。
これまでは常に、大阪駅から地下道を歩いてすぐの阪急地下街にあるインデアンに食べに行っていた。しかし、どうやら大阪人によれば、店に寄って味が違うらしいのだ。この辺、情報が錯綜していて、「いや、あそこのカレーは一箇所で作っているから、味は同じだ。」という人が居たり、「店によって味が確実に違う。」という人が居るのだ。これは、真偽のほどを確認しなければならないな、と、やまけんが立ち上がることにしたのであった。
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■インデアンカレー 長堀橋店
住所:大阪市中央区南船場2 クリスタ長堀地下街2号8番
電話:06-6282-2040
メニュー:
インデアンカレー 730円
インデアンスパゲティ 680円
ハヤシライス 600円
ミートスパゲティ 600円
ピラフ 600円

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見てのとおり、梅田店と違ってメニュー数が多い。梅田店ではカレーとハヤシライスだけだが、ここではスパまであるという。ハヤシはこないだ食べて、独特の旨さを感じたが、スパとかピラフと言うのはどうなんだろう。いずれ試してみよう。けど、やっぱまずはカレーだ!
さっきカツ丼を食べてきたことだし、ここは大人になって普通盛りのカレーに卵の黄身ひとつで我慢しよう、と思っていたのだ。地下道を歩いているときは。でも、、、楕円形のカウンターの、一番奥の席に座った途端に、その大人っぽい決意や諦念は吹き飛んでしまっていた。
「インデアンご飯大盛り ルーも大盛り、 それと目玉!」
注)「目玉」とは黄身二つというオプションである。親友の竹から聴きました。

いやあカレーの魔力って恐ろしいもんです。
ここでシマッタ!と思うことが。店の一番奥の席に座ってしまったので、飯盛り人の背中しか見えない!これまで書いてきたように、インデアンはカレーを盛る人(私は勝手にチーフと呼んでますが)の美技が素晴らしいのだ。大きなレードルですくったカレールーを、綺麗に盛り上げた白飯の上に肘と手首のスナップをシャコっと返すあの技。美しいとしか言いようが無い。阪急梅田地下街店の山田チーフの美技に惚れた僕としては、あれクラスのカレー盛りを切望するのである。
ところが、この店に入店した時から感じるのだが、なんだか緊張感がない。飯盛り人は若い男性、その周りで接客をするのは4人のおばちゃんズだが、態度が悪いとか沿う言うことは無いのだが、あのピンと張り詰めた気が、漂っていない。いや、レベルが低いと言うわけではないけど、普通なのだ。ちょっとだけ、嫌な予感がした。
そして、僕のオーダーが運ばれてきた。

すでにこの時点で、全体のフォルムに緊張感が感じられない。スプーンで一口すくう。口に運ぶ。そして驚愕。
「味が、ぬるい、、、」
一言で言えば、脇が甘いということだと思う。店内と同じく緊張感が無い味なのだ。何故だろう?あの特徴的な甘味と、その後に襲ってくる辛さは一緒のような気もするが、やや甘さに傾き、マシンガンのように速射される辛さの粒子が感じられないのだ。
もう一口食べてみて、その理由がおぼろげにつかめた。ルーの温度だ。味がぬるいと思ったのは正解で、ルーの温度が若干低く感じる。したがって辛さも和らいで感じるのではないだろうか。
味の世界は第一印象がすべてだ。一度、ぬるい味と思ったものが、しり上がりでよくなるというのはそうないことだ。2つ乗っている黄身を崩して旨味を増してみる。通常の旨さはある。しかし、、、なんだか満足度が低いのであった。
あの梅田店の山田チーフの盛るカレー、そして店内にピンと張り詰めた「うちは旨いもんを出してる」という誇りが感じられる雰囲気、それが欲しいのだ。こんな風に僕は書いている。
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これまでも観察していたのだが、この飯櫃前にいるのが店のチーフである。山田と名札に書かれた、20代後半っぽいそのチーフは「いらっしゃいませ」を言うとき、愛想笑いのひとつもない。かといって不快な無愛想感を漂わせているわけでもない。そして飯櫃から適量のご飯を皿に盛り、カレーをレードル一杯分、綺麗にかけて供する手際は、どうみてもプロフェッショナルである。このカレーかけはどんなに店が混んでも彼一人が担当している。
大阪は、善い。顧客を喜ばせるためのプロフェッショナリティとサービス精神に満ち溢れている。
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この時おぼろげに感じていた印象が、味わいに大きな影響を及ぼしていたんではないかと、思うわけだ。ちなみに大阪在住の友人女性によれば、もう一つあるインデアンの店も、梅田店に比べてぬるい感じがしたそうだ。 うーむ、、、もしかしたらインデアンの中でも、梅田店は特別なのではないか?
ただし、本日は新しいオプションも発見した。なんだか興が乗らないので、いつもはついてくる分だけしか食べないキャベツの甘酢漬け(これをピクルスというらしい)を、追加で頼んでみようと思うのだ。
「おばちゃん、ピクルス!」
「大にする?小にする?」
「(え?大小があるの?そりゃ当然、、、) 大にして!」
「追加で50円になりますが、いいですか?」
「(おお、50円かぁ安いぞ。) ええよぉ!」
おばちゃん、ピクルスを皿に盛り始める。そこで一発。
「いやぁ ここのピクルス旨いもんねぇ」
おばちゃん、一瞬動作が止まってニマッとする。
「そうやろぉ、、、」
おお、ドンドンとピクルスが盛られていく!ぜったいにこれは規定の分量ではないだろう、キャベツ大盛りである。これは絶妙なタイミングであった。俺もこすくなったもんだ、、、
しかしこのピクルスが絶品の旨さなのだ。この旨さは梅田店と変わらないなぁ。ちなみに下の写真は、カレー皿にピクルスを半分いれてから、写真をとってないことに気づいて撮った。ので、皿の上部に写ってるピクルスと、皿に残ってる分の総量が盛られてきたと思って欲しい。通常は今、皿に残っている分より少ないのだ、、、むちゃくちゃ嬉しい。

さて本日食べたのは、カレーにほぼすべてのオプションが加わったオーダーだ。
「カレー ルーもご飯も大盛り、目玉(黄身二つ)、ピクルス大追加。」
これを表すのが下の写真のプラ札だ。

おばちゃんにこのプラ札の意味するところを教わったんだが、忘れてしまった。
このようにちょっとがっかりした、初めての梅田店以外のインデアンだったが、収穫はあった。俺は梅田店ファンなのだ。これで迷うことが無くなった。いや、ほかのまだ行ってない店が旨ければいくけどね、、、
そんなこんなで、仕事に向かうのであった。お腹は調度よい状態である、、、ウソです。
出張の合間だが、毎年の儀式を行う。それはこの時期最高に美味しくなるジビエの賞味だ。ジビエでは鴨が一番好きなのだが、鹿も好き。ウズラも癖があると言うけど好き。ウサギ大好き。とにかく冬のジビエと赤ワインは、毎年の儀式だ。野生のパワーをいただくことで、自分の内なる魂に活を入れるという感じなのだ。その際に生じるエネルギーは、なにもジビエ本体だけから発するものではない。そこにシェフの技巧と魂が乗じられることによって、ジビエが「料理」に昇華するのだ。そうして生まれた一皿を味わうためには自分の体調も完全に整えて、真剣に皿と対峙するというのが、客の立場に求められる姿勢だろう。そうしてこそ、ジビエを味わう感動を十二分に堪能できるのだ。
そんな至福の時を、この冬すでに2回迎えてしまった。今回はその2店を紹介させて頂きたい。
ご存じだろうか。首都圏でも有数の旨い物極楽地帯が三浦半島であることを。
私の友人である山口さんがやっている三浦半島まるかじり クック&ダインというインターネットショップを覗いてみればお分かりの通り、通が唸る、マニアが喜ぶ旨いアイテムがぞろりと並んでいるのだ。農産物について言えば、キャベツと大根の大産地であることが有名だ。極めて豊穣な三浦の台地の土壌で育てられた三浦大根は、煮物に最高の一品である。この三浦・横須賀地域において何か食べたいと思うのであれば、先のクック&ダインにも登場する長島農園の野菜をお薦めする。元々クック&ダインに長島農園を紹介したのは僕だったりするのダ!
けどその辺の話は、このエントリでは長くなるのでまたいつか紹介することにしよう。
で、三浦から山一つ超えた横須賀に居るわけだ。横須賀といえば港町というイメージだろうが、内側に入れば山と農地が街道沿いに点在している。YRP野比という駅からYRP(横須賀リサーチパーク)に向かう途中に、長島農園がある。現在跡取りとしてメインに働く勝美君は僕の1つ下の31才。見た目はおとなしそうだが、実はドイツ人の美人嫁さんをぶんどったどう猛な豪傑だ。
本日は、この長島農園に、雑誌「農耕と園芸」の連載企画の一環として気象ロボットを設置しにきたのだ。気象ロボットは、北海道の素晴らしき気象情報企業であるアグリウェザー社の横山社長さんが進呈して下さったのだ。この会社が本当に素晴らしくて、通常は250万円くらいする気象ロボットを、同等の精度で40万円以下で販売できるような商品を開発したのだ。それを一台長島農園に設置して下さるという。なんともありがたい。下の画像がその設置風景だ。

この気象ロボット関連の顛末については連載でも書くし、紙面に書けないことはblogでも書いていこうと思うので、興味のある方は連絡して下さい。
さて、アグリウェザー社の横山社長さんには、せっかく北海道から出てきて頂いたので、地元の美味しいものをご馳走したい。実は長島農園のある「長沢」という地区からすぐのところに絶品のフレンチを出すレストランがある。店は小さいが、これは本当にビックリするくらいの凄腕シェフの料理が楽しめるのだ。
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■シエラザード
http://www.sceherazade.com/
(↑今このWeb見たけど、なんとぶっきらぼうなページなんだろう。店の外観や地図さえ載っていないゾ。もったいない。)
神奈川県横須賀市長沢6-29-1
046-849-6649
月曜日定休
ランチ:1800円~
ディナー:4000円~

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道路沿いに畑や住宅、学校などが点在する中、ひょっこりと欧風の店構えのシエラザードがある。欧風なのは当たり前で、実はマダムの森川さんは、国籍をオーストリアに移している。つまりヨーロッパの人なんである。このマダムと、新進気鋭の伊崎 至シェフがタッグを組んで営んでいるのが、この店である。

テーブル4客に広めのカウンターの店内は、調度も美しく落ち着いた雰囲気だ。マダムのセンスだろうが、落ち着いたゴージャスさを気持ちよく味わえる。今日はもちろんかぶりつきでカウンターに座らせて頂く。長島君を通じて、我々仕様にスペシャルランチをオーダーして頂いているので、楽しみだ、、、
ただし、僕から長島君経由で鴨を所望していたのだが、一連の鳥インフルエンザの騒ぎで鴨が出荷できない状態になっているらしく「どうしても手に入らない」ということだった。今回はやっとの思いで入手できた鹿を食べさせてくれるという。鹿も勿論大好きだから全く問題はないのであった。
ボディのずっしりした赤ワインをとり、ブーケを楽しんでいると、一皿目が運ばれてきた。

北海道のホタテと長島農園の野菜を合わせた一皿。と言えば簡単だが、、、ホタテの鮮度は最高。シェフがさっき、オーブンに入れる寸前に殻から身を外しているのが見えたのだ。野菜は二種のカリフラワーと菜花だ。ホタテからのスープだけではなく、おそらくフィメ・ド・ポワソンだろうか、滋味溢れるスープで汁気の多い一皿に仕立てている。そしてこれを、北海道から来た(笑)横山さんが食べて唸っている。
「うーむ、、、美味しいですねぇ、、、北海道でもこんなに美味しい料理はそうそう、、、」
この一品、見事なホタテの分厚い貝柱も素晴らしいが、それ以上に肝やヒモといった、付き物が実に旨い。肝のほくほくとした食感と深く濃い味わい、そして柱以上に旨味の濃いヒモを、長島農園の野菜と堪能。とくにあまり出回っていないグリーンのカリフラワーを、絶妙のトロトロ加減に火を通してソースに仕立てているのが憎いのである。
そして、三浦・横須賀地域ならではの一皿が運ばれてくる。

神奈川が世界に誇る大根品種である「三浦大根」をコンソメで煮、中をくり抜いて蟹のフィリングを詰め、上にオランデーズ系のソースをかけてグリルし焦げ目をつけたものだ。まずその美しいフォルムにため息が出る。
三浦大根は、一般的な青首とは違って、大根の真ん中が太くなっている品種。従って、引っ張って抜こうとするとその真ん中部分がつかえて抜きにくいので、この三浦以外では生産されていない。しかし、年末から2月にかけて旨くなるこの大根は煮物にした時に最高のパフォーマンスを発揮する。みっちりと密に詰まった果肉と細胞組織は、スープを吸ってもまったく崩れず、絶妙の柔らかさとホッコリシャックリとした食感を抱き合わせで魅せてくれるのだ。
その三浦大根の絶妙な旨さを味わうにピッタリな料理だ。この大根を割ると、こうなる↓

どうダ!?
もう、最高のプレゼンテーションである。コンソメを十分に吸った大根に甘い蟹のフィリングを載せ、カスタード然としたソースを塗っていただく。これこそ「滋味」というべき味なのだ。噛んだ瞬間にトロリと崩れる、その絶妙な食感と、蟹の香り。そこに濃厚さを与えるソースのコンビネーションは、本当に素晴らしい。
ただ、僕はこの土台となる大根にもう少しコクのあるスープを合わせた方が好きかも知れない。フォンドボーだとおごり過ぎかも知れないが。大根は、素直にスープの特性を反映する。コンソメだとお澄まし風の上品な大根が味わえるが、イノシン酸中心の旨味だけでは少し平板かとも思った。何らかの形でグルタミン酸系の旨味や油分を合わせると、また違う味空間になるだろうと思った。いや、これは単に好みの問題なんだが。うん、また食ってみたい。
さて
この時点で大技が出てくる。ウサギとフォアグラである。

ウサギの部位はなんて言うかわからないが、筋繊維のまっただ中と思われる切り身と、長島農園の蕪(カブ)、その下にソテーされたフォアグラが敷いてあり、最後にほうれん草のソテーが全体の土台となっている。これに濃いめの赤ワインソースがかけて供されている。ソースの濃度、味と香りの立ち方、共に最高である。シェフのお若さからか、強い前進力を感じるソースなのである。ウサギの淡泊にしてきめ細かい味わいと、対照的に濃厚なフォアグラ。爽やかなカブの甘さと香り、そしてほうれん草のトロ味が素晴らしい。一点、ウサギ肉が少し冷めていたことだけが気になったが総体として実に素晴らしい!実に冬の恵みと言える一皿だ。一同、しばし無言で咀嚼し続ける。
そう、このシエラザード、農産物流通を生業としている僕がみても、実に皿から感じ取れる季節感が自然だ。それは、極めて単純にして恵まれた理由で、その時期その場所で獲れるものを使って料理をしているからだと思う。年間に120品目を作付けする長島農園が近くにあるので、シェフも農園に通い、その時期に収穫できる野菜を受け取ってメニューを組み立てている。また三浦横須賀が漁港町であることは言うまでもない。長井漁港までひとっ走りの立地であり、最高のものが手に入りやすいわけだ。これ以上に自然を表現できる方法はない。さっきから、今一番旨いと思う食材が出てきている。この店がこの立地にあるから出来ることの一つではないだろうか。
さて、皿は進む。この段階でウサギとフォアグラが出てきて、次はどうなるのかと思ったら、ビックリしたことに大技が出てきた。

黒アワビである。この美しさにしばし圧倒される。僕はアワビについては生ではなく蒸しか煮たものが好きだ。そしてここのアワビは、どうやら蒸してある。カウンターからつぶさに観察できる調理場には、中華に使われる蒸籠(せいろ)が積んであるのだ。旨味を素材から逃さず柔らかな火を入れていく最高の技術である蒸しで供されたアワビに、ネットリと絡まる濃厚なブールブランソースが素晴らしい合わせ技である。モッチリムッチリとしたアワビの食感は絶妙だ。どれくらい火を通したらこんな魅惑的な食感になるんだろうか。本当に素晴らしい。これがメインと言い切ってしまっても十分に満足してしまう一皿だ。
しかし、メインは別にあるのだった。そう、鹿である。この美しいプレゼンテーションを見て欲しい。僕はこの凝縮された世界観を崩したくなく、見ほれてしまった。デジカメの枚数もこの皿が一番多い。

「業者が、鴨がどうしても手に入らないから鹿で、というのでそうしたけど、なかなかいい肉でした。」
という通り、すばらしい熟成加減の鹿だった。蝦夷鹿は何回もいただいているが、今回の鹿は深いワイン色のレア部に、芳醇旨口なトロリとした味わいが乗っている。ソースサルミには、
「もう昨日から鹿の骨をローストして、フォンにとっていたものを使ってます。本当はもっと時間をかけて煮出したかったんだけど、入手自体が遅かったから、時間切れ。」
というが、実に旨かったですよ!いやビックリである。本当にこのシェフのソースの尖り加減は僕好みだ。そして、付け合わせを見て欲しい。スペイン風オムレツときんぴらゴボウである。醤油は使っていないだろうけど、、、これは実に正解。この時期最も旨い食材はゴボウとニンジンと大根とほうれん草。ここではゴボウとニンジン、それを鹿肉に合わせるとは最高な相性だ。油によって香りと味わいが引き出され、素材の色が滲み出ている。これとソースサルミ、肉のコンビネーションが全く持って素晴らしい。今度はきちんと時間をかけて準備できる時に、また食べさせて欲しいと強く願う。

デザートをいただきながらマダムとシェフとお話。マダムが実に面白い人生を送ってこられた方で、思わず欧州話に聞き入ってしまう。
デザートも二品。プリンとアイスクリームとパイだ。もう、満腹の一言である。


このような凄まじいコースをいただき(しかも昼から!)、ワインも一本空けて、勘定書はビックリするほどの安さだった。けど、おそらくは長島農園を意識して頂いた特別価格だろうと思うので、ここでは控えさせて頂こう。でも、おそらく確実に都心で食べるよりは安いと思うゾ。
最後にシェフが言っていた。
「本当はねぇ、やっぱり東京で勝負したくなってきましたよ。もうちょっと力をつけて、出てみようかなって感じです。」
マダムも言う。
「そうよぉ だってそうじゃなきゃつまらないもの。」
でも!
この三浦・横須賀という地域に店があるということは、素晴らしい重要なポイントになっていると思う。東京進出の際にも、ぜひこの地物の仕入ルートは手放さずにやって言って頂きたいと切に願うのであった。
こうして今年初めてのジビエの楽しみが過ぎていったのである。
(更にこの項、続く、、、)
ずーっと心待ちにしつづけてきた山形出張の日である。しかも2日連続講演、従って宿泊である。仕組んだわけではない。農業改良普及所の講演を受託した翌日に、こんどは県の方から農業者向けの講演依頼をいただいたのだ。どうせなら日程を連日にしてしまおうということなのである。
しかも今回、改良普及所も県の方も、どちらの担当者さんも僕が食倒れにしか関心がないことを よーーーーーく 知っている。 なもんで、綿密にコースをたてて頂いているのであった。
山形といえば僕にとっては蕎麦の一言に尽きる。東京で一番旨いと思う蕎麦屋は、虎ノ門「ゆとり都山形」というアンテナショップに入っている「出羽香庵」であり、ここは山形の名店「庄司屋」が出店しているのだ。そう、今僕が一番好きなのは山形蕎麦だったりするのだ!北海道の栗山町で、粉を挽くところから初めて自分で打たせて貰って食べた蕎麦が、これまで最高の体験ではあるが、店で食べるという場合にはやはり出羽香庵が最高だ。
そして本日、山形に足を踏み入れてすぐさま連れて行って頂くのは、この出羽香庵の本店である「庄司屋」なのだ!
庄司屋は蕎麦好きばかりの山形市内の中でも、まず最初に名前が出てくる老舗だという。老舗といっても、山形市内だけで10件は老舗と呼ばれる店があり、それぞれに麺やつゆの個性が違うらしい。通になると「あの店の蕎麦をこの店のつゆで食べたい」などという高度な談義をするらしい。店によっては箸を刺すとそのまま直立するくらいに盛りが深い(盛りがいいということだ)蕎麦だったり、本当にいろいろらしい。そう、山形蕎麦といっても、一口には語れない、個性に富んだ食文化なのだ。
しかし、そんな個性溢れる老舗群の中で、やはり筆頭に名が上がるのは間違いなく「庄司屋」なのだそうだ。その秘密はどこにあるのだろうか。東京の支店しかしらない僕としては、なんとしても本場のそれを味わってみたいと思っていたのだ。
僕を庄司屋に誘ってくださったのは、県の担当者のK氏とO氏だ。どちらも勿論蕎麦好き、そしてO氏は枝豆を自分で栽培している方だ。山形駅の改札で僕を迎えてくださり、駅ビルの上にある講演会場でPCのセッティングのみ行い、すぐにタクシーで庄司屋へ。1メーターで行けてしまう距離ではあった。ちなみに山形は雪である。先週まで北海道に行っていたから、雪ナンざぁびっくりもしないやと思っていた。しかし、、、東北の雪と北海道の雪は違うんだなぁ、、、なんというか、山形の雪は「重さがある」という感じだ。北海道は横にだだっ広いが、山形は世界がタテなのだ。勢い、雪の質もタテにつもり、重さを感じるのだ。
さて庄司屋は立派な一軒家ではあるが、老舗にありがちな観光対応ではまったくない。近在の勤め人が三々五々食べに集うという感じの、無理のない構えである。入店して板場近くの座敷に座る。
出羽香庵ではいつも板蕎麦のみだが、ここでは相盛りがある。相盛りとは、通常のせいろと更科蕎麦のあわせ盛りだ。僕はこれに天ぷらをつけたものを頼んだ。それがこれだ。

ふうむ、出羽香庵のせいろ蕎麦とまた少し違う。こちらの方が細め泣きがする麺である。海苔はいらないんだけどなぁ、、、と思いながらチョンチョンとつゆにつけ、たぐりすする。文句なしに旨い!やはりこれは出羽香庵で親しんだ蕎麦である。二八くらいの割合なのだろうなぁ。のど越しよく、外見よりストロングな噛み応えを持つ蕎麦である。

そして東京の出羽香庵には置いていない更科蕎麦をすする。これはとにかく抜けるような透き通った白色である。蕎麦の香りは当然ながら薄いが、ぷつりと潔く切れる感触が心地よい。

さてこの時点で僕にはこの相盛り天ぷら蕎麦ではまったく「足りない」ことがわかったので、即座に「鴨汁せいろ大盛」を頼んだのであった。要するに旨いので食欲に火がついたわけである。
鴨を使った蕎麦は、生来たんぱくな蕎麦に奥行きのあるコクを与えてくれる、ベストマッチな一品であるといえる。

鴨汁の濃さと鴨肉の厚み、ともにばっちりである。柚(ゆず)の皮が強く効き過ぎだったかもしれないが、それもまた風味があって旨い。蕎麦の盛りは僕にも満足モノであった。思い切り蕎麦をすすりこみ、噛み締める。
そう、山形の蕎麦は、つゆにちょんとつけてすすり、噛まずに飲むという体のものではない!
山形のそばつゆは、江戸前とは違って辛つゆではないのだ。そのまま食べて美味しい加減になっている。だから、存分につゆに浸してそばをすするのがよい。江戸前は、蕎麦を食べ進むにつれてちょうどよくなっていくくらいにチューニングされている。だから、蕎麦につゆを漬けすぎると辛くて食べられたもんじゃない(最近はそうでもないといわれているが)。噛むということについてもそうだ。山形蕎麦は、江戸前に比べると若干太めに打たれているケースをよく見かける。これは噛み締める食感を大切にしているからではないか(←思いっきり私見。)。
だから僕は、板ソバをたべるときはもう時間をかけてもぐもぐもぐもぐもぐもぐ噛んで食べるのである。だってその方が旨いんだもーん。

庄司屋は、やはり山形市周辺の蕎麦のスタンダードと言える店であった。安定した火力をいつでも発揮できる店だ。タクシーで1メーターだし、山形に立ち寄る方はぜひ寄って頂きたい。
このようにご満悦の表情で会場入りし、講演を務めたのであった。
そういえばますます僕の出張が「メシ食ってるだけじゃん」と疑う人がいるんだけど、ほんとに仕事してるんだよ!一応仕事場面をお見せしよう。
■ほら!僕の名前が書かれてるでしょ?

■お客さんも160人観に来てくれてるんだよ!

1日目はまだ終わらない。この後に続く、、、
2月11日改定:「でわかおり」→ひらがなで「でわかおり」が正解でした。
出張二日目のメインイベントは何かというと、なんと蕎麦打ち体験である!これは、この2日目に講演で僕を招聘してくれた農業改良普及員である芳賀さん、一戸さんが企画してくださったものだ。お二人とも、上京時に僕の行きつけの焼き鳥&釜飯屋にて痛飲し、意気投合したのだ。その際、蕎麦打ち名人である芳賀さんが、
「いずれやまけんさんを山形に呼びます!」
と言って下さった。その約束が果たされたのが今回なのだ!
ちなみに農業改良普及員という職業について解説すると、県の職員として農業者に様々な支援・指導をする人たちである。その細かい中身は解説すると長くなるので略すけど、おそらくその土地の旨いものについてもっともよく知ることが出来る立場の人たちである。考えてみて欲しい。一人で500人くらいの農家の担当になって、常にコミュニケートしているのだ。だから、ピンポイントで「あそこの○○さんとこの何番目の畑で獲れた枝豆が一番旨い」ということがわかる人たちなのだ。そしてなぜか、僕の仕事はこの普及員さん達にお話することが多いんである。むふふ。役得とはこういうことを言うのだ。
さて
蕎麦打ち名人の芳賀さんが言う.
「やまけんさん、山形の蕎麦関係者で知らぬものの居ない、すごい人にお引き合わせしますよ。実は、蕎麦屋さんが蕎麦うちを習いにくる方です。」
そう、山形蕎麦に欠かせない伝説の仙人がいらっしゃるのだ。この方は鈴木製粉所という、そば粉を石臼で挽いて販売をする製粉業の社長さんで、鈴木彦市さんという。地元ではむちゃくちゃ有名らしいのだが、この方が、市中の蕎麦屋さんに蕎麦粉を販売しながら、打ち方指南をしているというのだ。
そして、
「この鈴木社長の打った蕎麦は絶品で、私(芳賀さん)にとっても一つのベースとなっています。でも、社長さんは粉屋さんですから、商売として打つことは一切ありません。なぜならお客さんである蕎麦屋さんに失礼だからです。ですから鈴木社長にそば打ちを教えていただいて、かつ食べることができるというのは、すごいことなんです。」
なんとまあ、すごい話ではないか!
そして、山形駅前のホテルから車で数十分、高速を降りて山間部に入ったところに、石臼挽きの粉の工場である「石臼館」がある。石臼以外の工場も近隣にあるらしいが、この立地にも分けがある。それは、この辺が以前、蕎麦畑であったこと。いい蕎麦ができる条件である霧がけぶる冷涼な気候の土地であることなどが、蕎麦を製粉し保存する工場としての立地によいということだそうだ。
なんだかわくわくしてきた。何かを無心に追求し専心している人に会うことが出来る、しかもその蕎麦工場の立地の話だけでも素晴らしい含蓄である。
←その鈴木社長がこのお方だ。
なんと鈴木社長、昨日の僕の講演をわざわざ観に来て下さったそうだ。
「わかりやすくていい話だった。」
と仰っていただいて、恐縮至極である。そして
のっけの一言目から、とんでもない謎かけが発せられる。
「あのね、10割蕎麦が一番簡単なんだ!難しいのは5・5だ。」
5・5とは、蕎麦粉が5割、小麦粉が5割という意味だ。いったいどういうことか。鈴木師匠の言うところ、
「10割なら蕎麦粉の茹で時間だけ気にすればいいけど、小麦粉と蕎麦粉ではゆだる時間が違うんだよ。」
ということらしい。 むうー 蕎麦打ちではなく茹でにもそんな話があったか!
「じゃあ、打ちましょうか!」
おお!とうとう始まるぞ!ちなみに場所は、この石臼館の中にある蕎麦打ち道場である。同時に8人くらいが蕎麦をこね、打つことが出来るくらいの設備がある、まさに「蕎麦打ち虎の穴」である。
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「蕎麦碾處石臼館」
http://www.suzukiseifun.co.jp/ishiusukan/index.htm
〒990-0014 山形市大字滑川字谷地411
開館時間 9:00~ 17:00
休館日 原則として土、日 、祝日定休

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ちなみに今回使わせていただいたのは、山形県が育種した蕎麦に最適な品種である「でわかおり(でわかおり)」だ。これも現時点ではまだ生産量が多くないため幻と言える。昨年度は天候のせいで収量も上がらなかったそうだが、今年からは大増産態勢に入るとのことで、来年度以降、でわかおりを使った旨い蕎麦が食べられるようになるだろう。
でも、現時点では幻なんだよーん!!
さて計量した粉をこね鉢に入れ、水を加えていく。蕎麦うちはこの時点でほぼ決まると言われるくらい重要な「みずまわし」である。

ちなみに僕は蕎麦打ちを10回くらいしたことがある。そのうち4度は人から教わりながら。あとは自宅のボウルとテーブルでやったものだ。そして成功率(まともな蕎麦になった)のは3回程度というお粗末さ。なので、素人である。
しかし!なんだかこの回数だけを聞いて、普及員の芳賀さん、一戸さんは僕を「できる」と勘違いしてしまったらしい。すっげープレッシャーなのであった。でも、水回しをしながら、大師匠が
「おお、10年くらい水回ししてる手つきじゃ」と言って下さった!素直に感動である。
水が蕎麦粉に浸透していくと、だんだんと粉が粒になり、粒が塊になり、と言う風にまとまってくる。そうなったら捏ね(こね)にはいるわけである。

さて僕がこれまで失敗を重ねていたわけがここでわかるようになる。捏ねの意味を取り違えていたのだ。うどんやパンと同じように、強く揉み込んでコシを出すように刷ればいいのかと思っていた。 全然違うらしい。 蕎麦の場合は、蕎麦粉の粒子たちを「つなげる」ために捏ねるのだ。だから、手のひらで強く押し込みながら練ると、逆に粒子が離れてしまう。僕は一心不乱に練りつづけてしまった、、、

さて捏ねてまとまった生地を台にとり、「のし」の工程に入っていく。

最初は手で優しく伸ばし、それを麺棒で均等にひろげる。

伸びてきたら麺棒に巻きつけ、5・4・4・3(←長くなるので説明は略します)の割合で伸していく。

そうするとなぜかこのように真四角の美しい生地が出来上がるのである!
さて
この辺で、僕の生地はどうにもうまく伸せない! うがーーなんでだぁーーー
と悶絶する僕を尻目に、初めての蕎麦打ちにも関わらず一発で乗せてしまった一戸女子が笑っているのが下の写真である。くっそぉ~

で、結局僕の生地はダメだった。どうしてもまとまらないのである。 うーん 大師匠すみません! しかし本日メインゲストはこの僕であるため、参集した皆さん(この時点で10人くらいいらっしゃっていた(汗))の目が僕につきささる!
絶対になんとかせねば!
「まあもう一回やってみっか。小麦粉を1割入れて、トイチ(10:1)にしよう。」
トイチとは、10割の蕎麦粉に1割の小麦粉である。大師匠いわく、
「食べてみて旨いと思うのはトイチだよ」
とのことだ。もうヤマケン、必死である。芳賀師匠(鈴木大師匠→芳賀師匠→ヤマケンという序列だ)にも教わりながらなんとか生地をまとめることができた。ふううう

なんとか伸せた後はコマ板を使っての麺切りだ。実は麺切りは結構得意である。師匠、大師匠からもなんとか及第点をいただいた。

しかし、師匠の切り(↓)から比べると、肩に力が入りすぎである。うーむ 蕎麦包丁買って修行しようかなぁ

さて、完成である。あとは茹でるだけだ。うーんこんなに緊張したのは初めてです。


さて、大師匠の奥様が茹でてくださった蕎麦が運ばれてくる。まずは僕や一戸さん、芳賀師匠が打った蕎麦から試食する。
僕のような素人が打った蕎麦でもやはり、旨い!コシが効いていて、ダシの乗りが良い、美しい味だ。

しかし、、、
大師匠の蕎麦が運ばれてきた瞬間に、北海道の栗山町の岩崎農場にて味わった至福の蕎麦以来の衝撃が、僕を襲ったのだ。

大師匠の蕎麦は非常に細い。山形では太めの麺を良く見かけるのだが、師匠のは江戸前でもあまり見られないほどに細い。それを何もつけずに一口すすってみる。
「ガツン」と衝撃を受けた。
蕎麦のあの香りがする! 香がするというレベルではなく、口から鼻にかけて強く蕎麦の香りが突き抜けていく!
強いコシと、角のびしっと立った切りによる口当たりは極めてシャープだ!
「これはトイチ(10:1)だよ。」
そう、師匠はこの味を10割ではなく10:1で出したのだ!正直言って10割蕎麦より旨い。ていうか、腕前はともかく、同じ作り方をしているのになんでこんなに差が出るの??
もう、びっくりなのである。
さてこの蕎麦のおかげで、やまけん人生史上の最高記録が出た!
山形が誇るでわかおりの蕎麦を9.5枚食べました。
1枚100g前後だと思うので、950gだなぁ、、、
いやほんと、旨かったんです。だって幻だよ?これを逃すと食べられないんだよ?
でも、さすがの僕もしばらくは喉に蕎麦が滞留していました。
15時からの講演でこれを話したらみんな笑っていました。

大師匠にお礼を言う。この気さくなお師匠さん、俺は大好きだ!ぜひ、腕を磨いてから、またお会いしたい。そして、今度は1日かけて、石臼で挽いた粉を蕎麦に打ち、師匠のお話を伺ってみたい、と強く思うのであった。
鈴木大師匠、ありがとうございました!
そして連れて行ってくださった山形県農業改良普及員の皆さん、ありがとうございました!
でもまだまだ山形紀行は終らないのであった、、、
和歌山から福井へ移動する。和歌山駅構内の立ち食いそば屋にて朝食をとる。関西のうどんに不味いモノ無しと思っていたのだが、薄いプラスチック製のドンブリに伸びたゆで麺、冷たいエビ天で温度は低く、絶好の不味さだった。おまけにおばはんの髪の毛が一本入っていたが、面倒で文句も言わずにおいた。

サンダーバード11号で新大阪を出て近江あたりにさしかかる。琵琶湖と山脈、そして湖畔ののどやかな風景を楽しんだ。そのまま読書を続け、ふと気づくといきなり雪国の風景へと変異していた。通過した駅をみると敦賀である。

ああ、俺は太平洋側から日本海側へと移動しているんだなぁ、、、という感慨が少しこみ上げてくる。やはり人間は視覚的な刺激を最も直接的に感じるのだろうか。意識のありようが全く代わってしまうのである。
さて和歌山から3時間少しで福井駅に着く。すでに農業改良普及員の土屋さんと前川さんがお迎えに来てくださっていた。車中、僕が食べることだけが好きな男だと言うことを話すと、
「はい、そういうことだったんで、店はいろいろ検討しました。せっかくですから、福井にもフレンチのいい店があるので、昼はそこにそこにお連れします。」
ということだった。福井でフレンチ!といえば、魚介が旨いだろうな!
でも僕には一つ攻めておきたいテーマがあった。それは「ソースカツ丼」だ。ご存知だろうか、福井県はソースカツ丼のルーツの一つなのである。ソースカツ丼といえば、群馬県桐生市や長野県駒ヶ根市が有名だ。そしてもう一つの雄と言えるのがこの福井県福井市なのである!
そもそもソースカツ丼をご存知だろうか? 揚げたての豚カツを、別鍋でグラグラ煮たソースにドボンと浸し、これをご飯に乗せたものだ。至極美味である。これにキャベツが加わったりする場合もあるが、基本形はソースまみれのカツが飯に乗っかっているものだ。通常、このようなソースカツ丼が隆盛を誇る地域では、醤油と出しで煮て卵でとじたカツ丼を「玉子かつどん」とか「煮カツ丼」というように別名で呼ぶことが多い。つまり、その地に住む人たちにとって通常のカツ丼とはソースカツ丼を指すのである。なんとも痛快だ。
ということで、なんとしてもソースカツ丼の有名店に行って見たい。昼はせっかく予約までしていただいているので、帰りの飛行機に乗るまでの時間でささっと食べる、ということで行こうと思い声をかけると、
「先生、ソースカツ丼食べたいですか? 先生さえよろしければフレンチを食べた後にご案内しますが、、、」
な、なんとぉ! 僕のことをよくわかっていらっしゃる! 後で聞けば、実はすでに僕のこのWebを観てくださっていたのだそうだ。うーむ
ということで、本日の昼飯はフレンチそののちソースカツ丼なのであった。
福井駅から車で5分程度、繁華街の片町近辺にその店がある。
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salez et poivrez (サレポア)
福井市二の宮二丁目28-21 セトラルヴィレッジ1F
0776-28-6288

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店にはいるとすぐに清潔で綺麗なオープンキッチンがある。コックコート姿の職人達が忙しく立ち働いている風景は、非常に清潔感が溢れており、いい店であることを予感させる。
実はこの店のオーナーシェフである八木氏は、農業生産に従事していた経歴がある。もともと福井出身のシェフは、フレンチの修行を積み、東京でシェフをしていたそうだ。しかし、福井に戻って農業をやりたいというたっての願いがあり、しばらく前に戻ってきたそうだ。その時相談したのが、農業改良普及員をはじめとする農業関係者で、本日ぼくを読んでくださった土屋さんも、就農の検討の席に居たそうだ。ハウスを建てるなどしてかなりきちんとした農業をしていたそうだが、やはりフレンチへの情熱は忘れがたく、店を福井に出したということだ。最近では農業生産をやる暇がとれないようだが、一度でも農業生産に従事したのであれば、農産物の特性については熟知しておられるはずである。これは楽しみだ。
前菜とメイン、デザートのコース(1800円)を頼むことにする。
■カリフラワーのムースと魚貝のサラダ仕立て

カリフラワーのムースは丹念にミキシングされており、滑らかなクリーム状になっている。この状態からカリフラワーを連想できる人はいるまい。甘くうっすらと香る独特のキャベツ香がよい。強めに火を通したカリフラワーとサワークリーム、フィメ・ド・ポワソンを加えてミキシングしているのだろう。鯛とホタテ、水タコ等の切り身が載せられているが、ベースのムースが淡い味付けのため、あまり映えてこない。これらの魚は思い切って昆布締めにしておけばコクが乗り、よかったのではないかと思う。
■ハタのフライパンソテーバターソース

目鯛のソテーや牛フィレステーキ等が並ぶメインから選んだのは、ハタのフライパンソテーバターソースである。ハタは旨い。福井のハタはもっと旨いだろう、と思って土屋さんに訊いたら「いやぁこの辺じゃあまり食べないですねぇ、、、」とのことであった、、、
しかしいい皿であった。レモンを絞り込んであると思われるバターソースの微かな酸味が、焦げ目をつけた、旨味の強いハタの身をグッと引き締めた味にしている。いや、なかなかである。

この通り誠実そうなシェフによる店であった。客席には、首都圏と同じく主婦のグループばかりがいるのと、奥にビジネスランチらしいスーツ姿の一団がいた。福井のフレンチのレベルも、なかなかのものでした。
さてそしてすぐさまソースカツ丼を目指したのであった。
「先生、3時から講演ですから、早めに行きましょう」
もちろんです。時間がなくてもすぐ食べます。そして一行、福井ソースカツ丼の有名店「ヨーロッパ軒」へと向かうのであった。
フレンチで程よいお腹になったところで、福井名物ソースカツ丼を食べに行くのであった。さて福井県のソースカツ丼を語る上で欠かせない存在があるという。その名を「ヨーロッパ軒」というらしい。正体は洋食屋で、福井県内に10店舗前後の支店を出している。普及員の前川さん曰く
「もう小さい頃から食べ慣れているカツ丼の味といえば、ここです。」
とのことだ。まさしく福井県流ソースカツ丼の正調と言えよう。
ヨーロッパ軒についてはこの店のWebに詳しい。そこにはソースカツ丼の来歴というか、出生秘話も掲載されているので、研究者には必読である。
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■ヨーロッパ軒
http://homepage2.nifty.com/yo-roppaken/
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前川さんがしきりに「本店にお連れしたい」と仰るのだが、あいにく本店は火曜日定休であった。本店以外の店もだいたいは火曜日定休、しかし県庁近くにある「城山店」一店のみが火曜日もやっていた。
「残念です。本店だとソースの量を自分で調節できるなど、県外の方に対する気配りがあるのですが」
それはソース大好き人間の僕には素晴らしい話ではあったが、でもまあ美味しければいいやと思うのであった。そして連れて行って頂いた城山店の外観がまた!実に食い倒ラーの心をくすぐるものだったのだ。
みよ!この洋食屋らしからぬ店構えを!↓まるでそば屋である。

雪よけだろうか、店の入り口は更に奥まっているのだ。のれんの自体は流行のレトロ風だが、まあこれは創業以来これなんだろう。つまりレトロどころかホンモノなのだ。何と味があることか!

店内は思った通りひなびた市井のそば屋といった佇まいである。しかし、壁のメニューをみるとチキンカツやポークチャップ等がならんでおり、間違いなく洋食屋のものであった。

「ここはほぼ全員がソースカツ丼を頼みますが、夜でも頼めるAランチ(笑)とかもメンチ・海老フライなどがのっていて壮観です。」by前川氏
席に着き、注文をとる。割烹着を着たおばちゃんにソースカツ丼大盛りを頼む。どのくらい大盛り何だかわからないので、とりあえず大盛りを頼むのである。もうこの辺は僕の習慣なのでどうしようもない。土屋さん前川さんは苦笑されながら普通盛りを頼んでいらっしゃった。
トイレに行くついでに厨房を覗いてみると、おばちゃん2人による調理場であった。通路にドカンドカンと西日本のナショナルブランドである「イカリソース」の一斗缶サイズが並んでいる(ちなみにウスターソースであった)。このイカリをベースに、いろいろと秘密の材料と配合でソースを創っているのだろう。特製ソースがなみなみとはいったステンレスのストッカーが厨房に鎮座しており、ここにざぶりとつけられるのだろうという気配が濃厚に漂っていた。
さて席にてしばし待ったのち、ソースカツ丼が運ばれてきた!お約束通り、ドンブリからはみ出ている!

これがソースカツ丼の全貌だ!

大盛りだとご飯の上にカツが4枚。もう完全にご飯は見えない。ちなみに普通盛りだとカツは2枚である。
さてここで前川さんが仰る。
「やまけんさん、福井ではソースカツ丼を食べる時、ドンブリのふたにカツをよけて、一枚だけご飯の上にに残るようにして食べるのが標準です。カツが全部のったままだとご飯に辿り着けません。」
ほれこの通り↓

おおお なんと! すばらしい智恵ではないか!
数十年に渡るソースカツ丼食いの歴史の中で、数知れぬ先人達が試行錯誤したに違いない。カツをのせたまま飯をすくおうとするとカツが転げ落ちてしまったり、逆に飯がぽろりと落ちてしまったり、、、そのたびに先人達は「何かいい方法はないものか」と様々な方法を試したのだ。そう、ソースカツ丼方法論序説である。そしてソースカツ丼食い中興の祖たる御仁が、この「ドンブリ蓋にまだ食べないカツを待避させるの法」を編み出したのだ!そうだそうに違いないっ!
、、、というのはちと大袈裟だが、このような地元の人が知らず知らずのうちにしてしまっているTipsを知ると、初めてきたのになんだか無性に嬉しいのである。
さてカツをいただく。

カツはそれほど分厚くない。8ミリくらいの厚さだろうか。それが10センチ大の大きさにカットされ、中挽きのパン粉にとじられ揚がっている。がぶりつくと、とってもジューシー!ロースである。肉の断面から中を観ると、タテに数本、包丁の切り込みが入っているのが認められる。箸を使わずとも柔らかく噛み切れるための工夫であろう。筋も完璧に切られており、口に不快が残ることは皆無である。ソースに浸されているにもかかわらずパン粉のカリっ感は完璧に残っており秀逸だ。もう一つの主役であるソースの風味は、どちらかといえば辛口のウスターを、独自配合だろう野菜等の甘みで柔らかくしているように感ずる。このカツと共に、ソースがいい塩梅にまぶされた飯を一口掻き込む。
「うーむ これは旨い!」
もう絶品の取り合わせである。特にソースご飯が佳い。その昔、我が家でご飯に醤油やソースをかけて食べようとすると、母に怒られたものである。「塩分がつよいんだから毒なのよ!」と言っていたように思う。そう言われるともっと食べたくなるのが子供というものだ。以来、醤油かけご飯とソースかけご飯は、背徳の美味を味わせてくれる究極の一皿になっている。
でも!
この福井では、このソースかけご飯が一つの紛れもない正統なのである!何と素晴らしいことか。ソースとカツの揚げ油がほどよくまとわりついた飯はキラキラネタネタと輝いている。旨いカツと飯とソース。この蜜月といえるトリプル関係性の中に、卵や醤油、ダシが介在してくる余地は全くないと言えよう。
4枚のカツと大盛り飯を食べると、さすがに腹が苦しくなった。これから講演なのに、、、
前にいらっしゃる土屋さん前川さんも苦しそうだ。でも、カツを食べるというのは、ある種ジビエ喰いにも似た興奮がある。内なる野生をたたき起こすような感覚。それはしかしタフでハードなソース味でなければ生まれてこないものだ。
ふと壁を観ると、五木ひろしの色紙が飾ってある。しかも二枚!一枚目の下には、福井公演の際に2日連続で来店したとのこと、2枚目は再度の公演のさいにまた来たとのことであった。その気持ち、わかるよ。
大変に美味しいものをいただいた。
福井でグルメといえば反応的に越前ガニばかりがとり上げられることが多い。そりゃぁ旨いに決まっていよう。でも庶民は毎日蟹食ってるわけじゃぁないのだ。そう言う意味では福井の味の正統を貫いている一つがソースカツ丼であるといっても過言ではないはずだ。
心に念じていただきたい。福井県に行ったら、ヨーロッパ軒にてソースカツ丼を食べること!これなくして福井の文化は語れない。
山形出張の際に、農家グループによる加工食品の直売イベントが面白いと、山形が誇る美人農業改良普及員である高橋さんと一戸さんに連れて行ってもらった。これが本当に面白かった!観たことも聴いたことも無いような名前の山菜の乾物などが、ところ狭しと並んでいる。そしてそれを売るおばちゃんたちが、またパワフルでよい!

こんなおばちゃん達が、いろんなものを売っているのだ。「イワダラ」とか「ギボシ」だとか、スベリヒユの干したものとか、おそらく首都圏の人間には奇怪なものが並んでいる。うーむ全部買って帰りたい。

この写真↓は、山形名物「雪菜」だ。雪の下で育つので遮光され、うどやもやしのように軟白され、辛味がでてくる。風雅な味わいの菜っ葉なのだ。

さてそんな中で、いくつか買い物をした際に、おばちゃんにこの「なんばんの粕漬け」を薦められたのだ。「なんばん」とは唐辛子のことだ。青唐辛子を粕漬けにしたものらしいが、見た目は味噌である。

「これを一口食べると、口の中が退屈しないよぉ」
という意のことを山形弁でいわれ、菜ばしにちょこっと味噌をつけて差し出してくれる。人差し指ですくって舐めてみると、、、
「おおおおおおおおおお 辛~~~い! むちゃくちゃ 辛いぃ!」
もう、爆発的な辛さである。日本の唐辛子もこんなに瞬間的爆発力があったか!しかし辛味の嵐の後には、粕の甘い香りが残り、非常に旨い!
「買った!」
ということで買ってしまったのだ。
帰宅後、改めて食べてみる。
これだけ入っているから、食べ尽くすに時間がかかるだろうなぁ。

炊き立てご飯に乗せてたべてみる。

涙が出るほど辛い!
けど旨い! もう一口
けど辛い!
けど旨い! もう一口
けど (以下略)
絶品に旨いのであった!
辛みそは結構あるけど、粕との組み合わせはあまりみたことがない。粕の麹香と甘味、塩の旨味、そしてなんばんの辛さが絶妙の塩梅なのだ。
これはまた買おう!と決意。
シールを見ると、生産者は「まあどんな会」 、、、人を食った名前である。

宅配代金がもったいないので10瓶くらい取り寄せようと思うが、欲しい人はいるだろうか?
和歌山ラーメン(地元の人はラーメンといわず「中華」と言うが)で、今のところ一番好きなのは「丸三」である。以前にもこの日記で記事化したが、出張の際にしばらくぶりに連れて行って貰ったら、いつのまにか改築されていてビックリ。

店の人には悪いが、はっきり言って不味そうなドライブインという風情である。でもまあ、もうすでに超有名店だし、店構えのセンスなんぞ、どうでもいいのだろう。
店内は明るく広くなっている。

前の店と大きく変わったのは、厨房が広くなったことだろう。みなさん働きやすそうなのであった。

さて 和歌山のラーメン屋には必ずといっていいほど置いてある早寿司だが、僕はこれが大好きなのであった。今回も待っている間に1本食べた。

食べ終わったけどまだラーメンが出てこない。なので、巻きずしも食った。

正直、巻きずしは大したこと無い。やっぱり早寿司ナンバーワンである。
さてラーメンが出てくる。相変わらず見事な小宇宙を、丼内に構成している。完成度の高いラーメンもとい中華であると思う。

ラーメンを黙々と啜るのもいいのだが、、、僕はいつもこうしてしまう。早寿司をラーメンスープに浸けて食べるのダ! これが劇旨! 早寿司の酸味とスープのコクと脂のマッチングが実に佳いのだ。

新しい店になっても、丸三は最高に旨いので安心したのであった。
さてこの後日また丸三に行ったのだが、「店主急病のためお休み」となっていた。僕ら以外にも数台の車が駐車場をうろうろしていて、中には店をのぞき込む親父まで居た。
はやく病気直して再開できるようになることを、切に祈っています。
岐阜出張である。11時過ぎに新幹線で出たため、昼飯の時間を車中で過ごし、1時過ぎに名古屋駅に着く。乗り換え時間が10分しかないので、矢場とんのみそカツを食べに行くわけにも行かない。喫茶コンパルの海老フライサンドも時間がかかるので無理だなぁ 断腸の思いである。
仕方なく駅弁売り場をみる。みそカツ弁当などがある中で、ひつまぶし弁当に目がいった。ちょうど昨日、友人が名古屋にいるので旨いひつまぶし屋を教えてくれと言われたので、栄の松坂屋に入っている熱田蓬莱軒の支店を教えておいた。そのせいか、鰻が食いたいと僕の胃袋が言っているのだ。
僕は鰻は、関西風のものが断然好きだ。東京にいてあまり鰻を食いに行かないのは、江戸前の鰻に飽き足らないからだ。釈迦に説法かもしれないが、関東風は白焼きにした後に蒸して、脂を落としてトロトロにする。この柔らかく脂の落ちた上品なのを好きな人もいるわけだが、僕には物足りない。ひるがえって関西では蒸さずに皮目をバリッと焼くため、脂ののりが極めてしつこく(笑)、これが俺様好みなのである。それに、タレも心持ち関西の方が濃く感じられる。ギトギトしている。その中でも一番好きなのは、宮崎県にある名店「入船」だ。知ってる人は知ってるだろうが、国内のウナギの養殖の多くは、宮崎や鹿児島の河川で行われている。だから南方のウナギもおかしい話ではない。事実、鹿児島の寿司屋ではウナギをネタに使うのをよくみかける。
と、弁当をみながらそこまで考えたところで時間が来たので、とりあえず買うことにする。ひつまぶし弁当1100円也。メーカーは「だるま屋」というところだ。パッケージには「日本一弁当」と書かれている。よくよくみると、パッケージが面白い。

「日本一のうなぎ生産地三河一式の蒲焼、、、日本一の抹茶生産地、西尾のてん茶、、、日本一長い守口大根を添えた、、、日本一、名古屋の抹茶ひつまぶし」
巧妙に「日本一」が誇大表示にならないような手を使っているわけだ(笑)
何が何でも日本一って言葉を使ったるぞぉ!という気概に満ちたネーミングなのだ。ていうか、上記説明が箱の上部に書いてあるのだよ。この箱もなんだかいい紙使ってるし、意味もなく中身が2重になってるし、豪華すぎる。
箱を開けてみると、膨大なつき物群が。お手ふきに箸、うなぎのタレと山椒、そしてワサビの小袋ともみ海苔。そう、ひつまぶしにはワサビだもんね。これらのギミック類を除いた後をみると、結構にウナギの分量が多く、豪勢な見た目である。
ひつまぶしのご飯にはあらかじめタレが絡められているので、すでに味が付いているのだけど、そこから更にタレをかけるというところが名古屋だな。

山椒、タレ、ワサビ、もみ海苔を載せて、いただきます。これが、予想外に旨い!ウナギの皮は期待を裏切らずにストロングもっちんもっちんで噛み切れないくらいだ。やっぱり味も濃い!量的にも、おやつにはちょうどよい(笑)というのは冗談だが、まずまずの満足度なのだ。
食べていてはっと気づいた。包装の豪華さ、日本一にこだわるネーミング、そして中身のギミックの多さは、すべて名古屋人気質といえば説明が付く。嫁入りの豪華さのみならず、名古屋を通過する全国の旅人に対して、
「日本一やゾぉ」
とにたりとしながら微笑む名古屋人。そう思えば、1100円という価格帯でここまで豪華にするのも気質から無理を通した結果と思える。うーむ 素晴らしいではないか!
と堪能しているうちに、大垣に着いたのであった。望外の満足度なのであった。
朝九時の山形新幹線で、宇都宮に向かう。と言っても、東京から40分くらいで着いてしまうので、居眠りをする間もない。このように首都圏に近いところに出張というのは、本来的には避けるところなのだが、実は僕は宇都宮には降り立ったことがないのだ。今回は、栃木県の生産者団体さんが僕を講演で呼んでくださったので、初の宇都宮詣でとなる。
宇都宮といえば餃子である。僕の敬愛するライターというより作家さんであるイタバシ師匠が昔、雑誌の取材で宇都宮餃子を10店以上回ることになり、餃子を100個以上食べることになって、その時初めて
「満腹によって失神する」
という事態を経験したそうだ。あまりに満腹になりフラフラと歩いているうちに意識を失い、気づいた時は全く知らない道をとぼとぼと歩く自分がいたそうである。それほどに宇都宮餃子はオソロシイものなのであった。
冗談はともかく、最近では首都圏でも「眠眠」など、宇都宮に本店をもつ餃子屋が店を出している。しかし、そういうのはあまり好きでないのだ。やはりその土地で食べてこそ意味があるのではないか。ということで、講演終了後に出荷団体の方に、地元の人が旨いと思う店と訊いたのである。
野口さんは瞬間的に目をぎらっとさせた!
「先生、そんなことでしたら先に言って頂ければご案内したものを、、、そうですね、有名なのは眠眠ですが、「まさし」という店も同じくらい有名で、私はそちらの方によく行きますね」
と言うわけでその近くまで連れて行って頂いた。ちなみに午後1時半。昼食はもう弁当を食っているのだが、それに上乗せして食べるのであった。泉町という繁華街に入ると、すでに行列ができている店がある。
「あれが眠眠です。その先の小路を曲がると、小さい店が、、、あ、あそこです。まだ店が開いてないのに並んでますね」

本当だ。まだ店は準備中なのにならんでいるのだ。急いで野口氏に別れを告げ、店に走る。ラッキーなことに、すぐに店が開いて、最初から3番目の客として入店できた。
ちなみに「まさし」というのは写真にあるとおり「正嗣」という難しい漢字で書くのであった。
これが店内である。

びっくりしたことがある。何かというと、、、この店には「餃子」以外のメニューがないのだ! 「焼き餃子」と「水餃子」があるのだが、それだけだ。ビールもない。ご飯もない。ラーメンもないのである!そして価格がまた笑ってしまう。焼き餃子も水餃子も、一人前がなんと170円である!今どきファミレスでもこれはないだろう。

とりあえず「焼き2人前と水餃子1人前」と頼む。親父さんと奥さんの2名体制である。親父さんは、ほとんど愛想のない無表情さでもくもくと仕事をする。「何人前?」としか訊かないでいいメニュー体系だからだ。無造作に餃子を鉄鍋に放り込み、焼けた端から皿に盛って出してくれる。

薬味は醤油と酢、そして自家製のラー油だ。このラー油が実に辛くて旨かった。自家製ラー油はかなりのポイントだが、ここのは陳皮などの香り素材よりも、ストレートに唐辛子を多量につかって辛みをだしているようだ。適度に調整をして待つこと4分、焼き餃子が運ばれてくる。

思ったより一つ一つが大きい。3人前頼んで大丈夫だったろうかと、俺らしくない不安。一口、タレにつけてほおばる。熱い! そして味だが、以外にもさっぱりあっさり、淡泊な味わいだ。ここを紹介してくださった野口さんも、
「眠眠はギットリしていて、私なんかはまさしの淡泊さが好きです。」
と仰っていた。しかし、2つ、3つと食べ進めるうちに物足りなさが消えていった。なぜか、旨さ、味が積算されていく感じなのだ。野菜がタップリ入った餡(キャベツが多い)はまったくくどくない。皮は薄くもなく厚くもない、食べやすく上品な厚みだ。そして底面の見事なパリッと焼きの入り方。素晴らしいではないか。

黙々食べていると、水餃子が丼に入ってやってきた。ここの水餃子は、焼きと同じ餃子を鍋で茹でたものだ。

おやじさんが無造作に生餃子をつかんで、沸き立つ鍋に投入、その後茹でをしていたものだ。タイミングをみはからって丼に湯を少量入れて暖め、茹であがった餃子と湯をいれて出してくれた。最初これを、焼き餃子と同じ、ラー油と醤油と酢のタレにつけて食べてみる。水餃子はこれはこれでホックリとした味わいとなり、よい。と思ったらなんと!おやじさんがボソッと声をかけてくれたのだ。
「水餃子はね、丼の中に醤油と酢とラー油をいれちゃって、スープごと飲んじゃうといいよ。身体があったまるよ。醤油は入れすぎると塩辛いからね。」
これを、とにかく無表情でぼそっと仰るのだ。僕はちょっと感動してしまった。大阪インデアンカレー梅田店の山田チーフのような、にっこり愛想笑いも無駄な世間話もしない、しかし客に対して最高のものを提供しようとしている崇高なプライドが、そこに見えたのだ!
おやじさんの言うとおり、丼に直接、醤油と酢、ラー油を投入してみた。

汁ごと餃子を食べてみると、実に最高! 湯から引き上げて小皿のタレにつけるよりはるかに味わい深い!湯は本当にただの湯のはずで、餃子から少々旨味が染み出ているのかもしれないが、それでも白湯に近い。なのに、醤油と酢とラー油のみで、とても深みのある味が出ているのだ。いったいどういうことなんだろう?
とにかく偉大なおやじだ。この店、メニュー構成をみても(焼き餃子と水餃子しかないんだぞ!)、価格を見ても(1人前170円だぞ!)わかるとおり、とにかく質実剛健、実直な仕事しかしないと宣言しているような店だ。ビールもない。ご飯もない。あるのはただただ餃子だけだ。客は黙々と餃子を平らげて出て行くのみなのだ。ある種の感動を覚えてしまった。
ちなみに店内の壁に、計算表が貼ってある。何人前だと幾ら、という価格表だ。これをみると、なんと25人前でもたったの4250円だ。しかし過去、この25人前を頼んだ人が居るのだろうか?できれば僕が頼んでみたい、、、

いや、本物のプロを見た。素晴らしい。今後、栃木とは関係ができそうなので、またこの素晴らしき郷土色「宇都宮餃子」を攻めてみたい。きっと、もっとディープな世界が広がっているはずだ。わくわくしながら、帰途に着いたのであった。
和歌山は山海の幸すべてが旨いのだが、やはり魚とくに白身の魚は絶品の旨さである。味が全体的に上品でほの甘く、風味が濃い。香を楽しめる魚なんてそうないだろう。その代表格として思うのは実は太刀魚だ。僕のお袋は愛媛出身なので、よく埼玉の実家では太刀魚の塩焼きが食卓に上がったが、実は関東では最近まではマイナーな魚であった。だから、太刀魚を刺身で食べるなんていうと、びっくりされていたものだ。しかし関西では、太刀魚の刺身なんてけっこう当たり前。だって旨いもんね!
その心の味に久しぶりに会えたのであった。和歌山にきて魚が食べたければぜひここに足を運んで欲しい。
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■活魚料理「たか屋」
和歌山市東長町5-75
073-433-6388
※和歌山県庁のそばです

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ここは漁船から直接仕入れているような店で、店主のたかやさんがお若いのに非常に研究熱心で、むちゃくちゃ質の良い魚介を食べさせる店だ。実は僕の和歌山案内人であるT氏の高校での同級生でもあるらしい。

まず何は無くとも刺身だ。

この中にくだんの太刀魚の刺身があるのだ。どうだこの美しさ!↓

薄ピンクの柔らかな身は、繊細に迅速に包丁で引かないと、崩れてしまう。これを角を立てて引き、銀色の皮であしらいをつける。実に芸術的ではないか! これを若干甘めの仕事をした醤油に浸しいただく。限りなく甘くトロリととろけるのが、太刀魚の身上だ。素晴らしい。この太刀魚の刺身で丼をつくってくれないだろうか、、、
太刀魚だけではない、イカも旨かった。北海道のウニとイカのお造りは、独り占めしたいのが叶わぬのがまたよいのであった。

さてこの店、一品料理も非常に気が利いている。たか屋の品書きも、あの煌く(きらめく)品書きである。つまりどれも旨そうなのだ。

一品料理で際立って面白かったのが「お好み揚げ」。どういうもんかと思ってたら、本当にお好み焼き風の天ぷら料理だった!

海老などをフンワリカリっと揚げたものにソースとマヨネーズ、青海苔で食べるのだが、これがサクサクと楽しい食感にマヨソースがからまり、旨いのだ。こういう遊び心は、好い。
いろいろ食いながら、やはり冬ということで鍋が出てくるのである。はじめて行った時にはフグ鍋、二回目には真鱈の白子、真たこ、穴子のしゃぶしゃぶ であった。もう死んでもいいというラインナップである。

この豪華狂乱鍋のあとにウドンをぶちこんでもいいのだが、、、実はこの店の最大の旨い飯がある。それは、、、季節の魚を土鍋で炊き込んだ魚飯だ。これが絶品なのである。

若干柔らかくなりすぎのきらいがあるのだが、もう本当に滋味あふれる一品だ。

どのくらい旨いかというと、土鍋にこびりついたご飯粒を一粒たりとも残さないようにむしゃぶる俺が居るほどに旨いのである!

これでも足りないと言うと、なんと真鱈の白子寿司を作ってくれた!この冬何度目かわからないが、この壮観な軍艦たちを見よ!

ちなみにこの店では時々忙しいときに手伝いに現れるママ(たかやさんの実母)の存在もまた嬉しい。飲みだすともうブレーキが利かない最高なおかあちゃんなのである。

ああ、魚が旨い。残念ながらこの店でまだ会計を持たせていただいたことが無いので、いったいご予算いくらかはわからん!のだけど、ぜひ県外の方で和歌山の魚を堪能したい方は、電話を入れて足を運んで欲しい。土鍋ご飯はぜったいにリクエストするように、、、
広島からぐぐっと岡山寄りに戻った海辺に、「小京都」と呼ばれる竹原市がある。僕と同じ世代かそれ以上であれば懐かしく思い出せる映画「転校生」にて、主人公が石段を転げ落ちるシーンが撮影されたのはその竹原の小京都と呼ばれる、文化財指定された町並みである。
その文化財指定の一帯に名門酒造が在る。その名を「竹鶴酒造」という。

竹鶴といえば、ニッカウヰスキーの社長さんが竹鶴という名字だったり、同名を冠したウイスキーがあったりとして知られているが、実はこの竹原の竹鶴酒蔵こそが本家筋である。
そして最近のdancyuなどの料理誌・グルメ誌の日本酒特集を見れば確実に出てくる「小笹屋竹鶴」という名酒を送り出しているのはこの酒造である。

「端麗辛口」などという野暮天な言葉を蹴散らかすように野太い、骨格のがっしりとした味。純米酒にこだわり、さらに吟醸香中心の食前酒っぽい酒ではなく、魚・肉などどんな料理にも比肩しうる強さを持った究極の食中酒を世に問うているのが、この酒造なのである。
まずはこの竹鶴と僕との出会いから少し書かねばならないだろう。簡単に言ってしまうと、この竹鶴の次女が、僕の大学時代の同期であり親友なのだ。
学生時代の僕はキャンパスの中に畑を創っていたのだが、その同輩後輩を夏合宿と称し、熊本は阿蘇の農園に通っていた。金はないが時間はたっぷりある貧乏学生達である。青春18切符を使って鈍行で熊本に行くのだが、1日ではどうやっても着かない。そこで広島の竹鶴酒蔵に一泊させていただくという、とんでもない暴挙に出たわけである。今から思うと額に汗がにじむが、10人からの学生どもがずかずかと文化財指定の屋敷に上がりこみ、文化財がずらりと並ぶ座敷にてごろ寝をしていたのだ。しかし、現在 広島県議でもある社長の竹鶴寿夫氏は、豪快にがはははと笑いながら僕らを暖かく迎えてくださったのである。この方が竹鶴寿夫社長であられる。

稀代の食通として知られる同氏により歓待攻めを受け、この僕も超満腹絶品攻めに陥落したのを、昨日のことのように思い出す。
そして当時(12、3年前だ)、早稲田大学を卒業していきなり酒造に入門したという若手の蔵人、石川さんを紹介されたのだ。でかくて顔がゴツゴツしたその人が、なにを隠そう現在の竹鶴酒蔵を背負って立つ若き名杜氏、石川達也氏だ。すでに僕のblogでも数度お目見えしているので、この顔をご存知の方も多いだろう。

学生軍団の竹鶴巡礼は数回を重ね、僕や親友の卒業とともに終わった。その後は時候の挨拶にとどまってはいたが、僕にとって長く、酒造といえば竹鶴酒造であったのだ。
その竹鶴酒蔵に再会したのは、実に卒業後10年経ってのことだ。この再会を仕組んでくれたのは、当時、飛ぶ鳥を落とす勢いで日本酒業界に登場した、居酒屋「五穀家 日本橋店」の店長をしていた工藤卓也氏だ(現在彼は、同店を辞して別のところにいる)。かの店が主催する日本酒の会に、僕の親友である竹鶴の次女が「やまけんもおいで」と呼んでくれたわけである。その五穀家 日本橋店は、すさまじいばかりの純米酒の品揃えを誇り、かつそれらを燗にして飲ませてくれた。それもそのはずで、日本酒業界とくに純米酒の世界の方ならよくご存じの
「酒は純米、燗ならなおよし」
の名言で知られる、酒の鑑定士 上原先生(あの名作「夏子の酒」にも登場しておられる)を顧問に据えていたのだ。だから、専用の燗付け機があり、すべての酒をを湯煎で最適温度に燗することができたのである。
あまりの旨さとサービスのきめ細やかさに感動した僕は工藤氏に、自信を持てる商品であるフルーツトマトを10箱送った。彼はそれを様々な料理に試してくれて、感想をきちんと述べてくれた。以来、僕と彼は兄弟分としての契りを交わすようになり、今に至るのである。このblogでもハム創りを一緒に習いに行ったりしている画像があるので、お分かりと思う。下の画像で僕の横で舌を出しているのが工藤ちゃんである。

この工藤ちゃん、日本酒蔵元からも愛されている。僕も彼に誘われ多数の酒造見学に活かせて頂いた。そして今回は2度目の竹鶴酒造訪問なのだ! まあ、僕にとっては竹鶴を10数年前から知っていたので6回目位なのだが、、、酒造りの工程をきっちりと見学させて頂くのは今回が初めてと言ってよい。昨年7月にお邪魔した時はすでに酒造りは終了していたので、仕込みの最中である今回は実にラッキーなタイミングだったのだ。
おそらくどんなグルメ雑誌でも、寒仕込み最中の竹鶴酒造の造りをこのように速報紹介できるものはないだろう。これがblogの最大の強みである。今日から数回にわたり竹鶴酒造をきっちりと紹介させて頂きたくので、ぜひぜひ刮目してご覧あれ。
さて竹鶴酒造の第一日目だ。
ANAの超割で広島行きチケットをゲットしていた我々一行、朝9時55分の便で広島に向かう。一行とは、僕と工藤ちゃん、工藤ちゃんが五穀家店長をしていたときからずっと一緒に仕事をしている浅見君と大場るみちゃん、そしてこのblogで数回書かせていただいているイタバシ師匠(少年マガジンに長期連載されていたBoys be... の原作者だ!)と、その妻君である神澤ゆみこさん夫妻である。神澤さんは居酒屋ライターとして成功している(最近danchyuにも書いていらっしゃった!)方なので、本屋で手に取られた方もいるだろう。
このような豪華布陣(?)で、基本的には神澤夫妻による竹鶴酒造取材というのがメインで、俺たちはそれを口実に遊びに行くという感じなのであった。
広島空港に着くと、なんと竹鶴の社長と専務が車でお迎えに来てくださっていた!社長はがはははと笑いながら、板橋夫妻を乗せてすっ飛ばしていった。僕らは敏夫専務に乗せてもらい、竹原へと向かう。
敏夫専務、といっても僕にとってはなんとなく弟的な人である(むこうはそう思ってないだろうが)。なんと言っても、僕が大学時代に遊びに行ったときにはまだ高校生だったのだから、そのころの印象をずっと引きずってしまうのは致し方ない。しかし、彼はいまや立派な専務であり、竹鶴酒造の次代を担う顔として精進をしているのであった。 でも飲み過ぎには気をつけろよな敏夫君。
竹鶴酒造は変わりなくその文化財としての落ち着いた姿でどっしり構えていた。

なんといっても250年以上続く家である。もうその存在自体が説得力のカタマリなのだ。


無茶ウマのバターケーキを濃いめの紅茶でいただき、まずはぶらぶらと竹原散策をする。これが有名な、映画「転校生」で転げ落ちるシーンの石段である。

そうこういいながら実はまだ昼飯を食っていなかったのであった。この竹原の小京都一帯では知られるお好み焼き「ほり川」になんとも10年ぶりくらいに入るのであった。そう、当時このほり川で現専務の敏夫君をお好み焼きを食べたのであった。とつとつと、いろんなコトを話してくれた敏夫君だったが、実は俺はお好み焼きを焼いてくれている店のおねーちゃんに視線釘付けであったのだ! わははは知らなかっただろう敏夫君! ということで密かにそのおねーちゃんに再会したかったのだが、、、
久しぶりにくぐった「ほり川」は、やたら流行っているらしく店舗が増築されており、厨房には5人のおねーちゃんズが立ち働いているのであった。ちょっとびっくりしたが、やはり!おねーちゃんズは美女揃いなのであった。ここの店主は絶対に顔で選んでるぞ。ちょっぴりウラヤマシイのであった。

ちなみに広島のお好み焼きなので、クレープ上に薄く鉄板に敷いた生地の上にキャベツをたっぷり乗せ、それをギュウギュウと押しつぶして水分を抜いていくスタイルだ。関東では広島焼きというが、ここは広島なのでそんな呼び方はしない。これを「お好み焼き」というのである。

まあとりあえず10年ぶりだし、おねーちゃんはみなキレイだったので、加速度がついて俺はお好み焼きを2枚(イカ豚そば玉と、ホタテチーズうどん玉)食べたのであった。

腹もくちくなったし、散歩もしたということで戻ってきたら、早速竹鶴フルコースが始まろうとしていた。
「石川杜氏がお待ちですよ。」
履き物を変えて蔵の敷居をくぐると、ひんやり冷えた酒蔵独特の空気に包まれる。先回来たときは造りが終わっていたが、今回はまっただなかである。

と、蔵の中に突如、12本の酒瓶が現れる!そう、現在仕込み中の桶から汲み取ったばかりの、正真正銘の新酒たちである。この竹鶴酒造の門をくぐる日本酒関係者は、このように利き酒をするならわしとなっているのである。それも、それぞれの酒についてコメントや評点をきちんとつける紙を渡され、コピーをとられてしまうという徹底ぶりなのであった。この時点で日本酒関係者には緊張が走る。「下手なことはかけない、、、」という感じだろうな。でも俺はまったく日本酒業界人じゃないから気楽なのであった。

「あ~ 、 どうも、石川です。 え~ いやいや、 まずは飲んでいただこうと思いまして」
と、石川達也杜氏が登場する。相変わらずでかい。180数センチ、学生時代はボクシングをしていたという猛者である。しかも顔は、NYでメジャーリーグの選手としてがんばっている背番号55番に雰囲気そっくり(年齢からいえば石川さんの方が早いのだが)の強面なのである。
しかしながら性格気質は温和でありすばらしき思慮深さを持つ御仁である。理論肌の読書家であり、酒についての古書は膨大なコレクションを蔵しており、研究を怠らないのである。でも彼のすごいところは、理論肌でありながら、そのすさまじい体力でバリバリと働きまくることであろう。

さて石川さんに薦められ、みな利き酒を始める。利き酒とは言っても何かを当てるというのではなく、酒質をみせていただくという趣向である。
竹鶴酒造の酒の特徴は、協会6号や7号といった、香りよりも味がよくでる酵母を使っているということだろう。石川杜氏いわく
「竹鶴の人間は、数字は9までしか数えられないんですよ(笑)」
とのことだ。原料米は山田錦も使うし八反錦も使うが、力を入れているのは雄町(おまち)である。近在の農家さん数軒にお願いして、合鴨農法で栽培した雄町米を契約栽培している。昨年に竹鶴に訪れた際、そのうちの一名の田をみせていただいたが立派なものであった。何より、生産者ご夫婦と竹鶴酒造の関係者との距離感がすばらしい。顔が見える関係性の中で酒を醸すという、もっとも重要なことをさらりとやってのけているのだ。
当然といえば当然だが、生産者が違えば酒の味も違う。竹鶴ではできるだけ米を混ぜないようにして生産者別に仕込んでいるので、もし購入の機会があるならばラベルをじっくりみていただきたい。

今回の12種類の中では、藤浪さんという生産者さんの合鴨農法雄町米を使った純米が気に入った。力強さと味のバランスがいい。飲んだことがない人にはわからないだろうが、竹鶴の酒というのは、有無を言わせず相手をねじ伏せるような、アタリの強さが持ち味だ。だから、ほかのメーカの酒を持ってきて一緒に飲むと「なんだこりゃ」と声を出してしまうような違いがある。けど、この日は竹鶴ばかり12本飲んだので、その中では「これは比較的落ち着いている、こちらはマイルド」などという評価になった。
しかし一番びっくりしたのはここでは明かせない秘密の酵母を使った酒である。なんと酸度が3.9度もあるのだ!通常こんなに高い酸度はあり得ない(らしい)。飲み口は強烈の一言だが、一口びっくりして慣れると、口中の感度が上がり、ほかの酒が物足りなくなる。これはしばらくの熟成期間をおいた後、家畜ではない獣肉のローストとともにいただくのがよいのではないか、と今から楽しみ千万なのであった。
一通り飲んで、顔だけ酔っぱらい気味になったところでいったんお開き。近くのビジネスホテルにチェックインする。
そして、、、すでに伝説となっている夜の部 「居酒屋 竹鶴」 の時間がやってくるのである。
(つづく)
広島の農業団体に招かれて講演をすることになった。3月9日にお世話になった竹鶴酒造にそう伝えると、、、
「おおぉ そうか、それなら観にいくぞ!」
と、社長の竹鶴寿夫氏がおっしゃる。まさか冗談だろうと思っていたら、蔵の仕事を蔵人に任せて、社長に専務、そして杜氏までもが観に来るという異例の事態になってしまった!うーん おもしろいではないか!
それはともかく、以前から社長や石川杜氏からきいていた激烈旨いもの情報があったのだ。それは、最近広島の名物料理として知られてきた「広島つけ麺」だ。しかし、それを言うと社長も杜氏もこういうのだ。
「広島つけ麺ってのは新しくできた店がつけた名前でねぇ、本当の元祖の店では『冷麺』いうんよ。」
その元祖の店がものすごいらしい。何がすごいかというと、竹鶴敏夫専務いわく、
・暴力的に辛いタレで食べるつけ麺なのだが、ムチャクチャ旨い!
・味付けも暴力的だが、店の大将が輪をかけて暴力的!店のルールに従わないものならば途端に罵声が飛んできます。
ルールとは例えば、
★親父に無断で着席する
★雑誌など見ながら食べる
★席をつめずに座る
★麺を残す 等々、、、
そして当然ながら取材は絶対拒否!広島つけ麺(本当は冷麺)発祥の店でありながら、この店の取材に成功したマスコミはないのだそうだ。 うーむ おもしろすぎる!
この店には、竹鶴寿夫社長も石川杜氏も20年以上前から通っているのだそうだが、それぞれが出会うまえから別々に行っていたというのだ(それはそうだ、石川杜氏は高校生だったという)。ご両名、どちらも美食家である。同じ店に20年以上前から通っていたわけだ。
さてこの店に連れて行ってもらうことをお願いしたところご快諾をいただいた。講演は1時から。新華園が店を開くのが11時なので、広島駅に10時半につくように新幹線に乗るのであった。
広島駅に着き、車で迎えに来てくれた専務と石川杜氏と落ち合う。社長は用事を済ませてから来るので、もしかすると冷麺は一緒に食べられないかもしれないということであった。
今回問題になるのはなんといっても取材拒否の店だから、デジカメ写真をとらせていただけないのではないかということだった。
「まず無理でしょうねぇ、、、とりあえず正攻法でお願いしてみましょう。隠し撮りなんかしてバレたら間違いなく殺されます。」
それはイカン、、、テロより怖い。ということで一応最初に聴いてみるということになった。この時点で店の作法についてレクチャーを受ける。
「まず、店に入っても勝手に席に座ってはイケマセン。最初に注文をします。
注文の仕方ですが、麺の盛りを「普通・中・大」で表し、具の盛りを多くしたい場合は「特(とく)」と言います。ヤマケンの場合はとりあえず「大特(だいとく)」でいいでしょう。ちなみに「特」にすると野菜の盛りだけではなく、チャーシューの大きさや部位もよくなります。結構細かいんですよ。
そして店を入ったところにあるベンチに座って、店の人から「どうぞ」と言われるまではそこで待ちます。あとはひたすら食べないとイケマセン。麺を残したりしたら本当に怒られますから気をつけてください。ま、ヤマケンなら心配はいらないでしょうが、、、、」
う~む 実におもしろい! この手のウルサイ店は僕は好きではないのだが、なんといっても竹鶴社長と石川杜氏がこよなく愛している店なのだから、絶対に旨いはずなのだ。旨さと待遇のどちらをとるかという究極の選択になるわけだ。ま、食ってから決めよう。
広島駅から車を18分ほど走らせ、小さな通りにはいったところに赤い張り出しテント屋根の店を発見する。店の前に車を停めて、もしかしたらこれが最初で最後の一枚になるかもしれない写真を撮影する。

ニヤっと笑って立っているのが石川杜氏である。仕込みもだいたい終了し、今は絞った酒を瓶詰めしたり濾過したりという後処理に入っているため、表情にも余裕が観られるようになってきたのであった。
店ののれんが裏返しになっていることに注目。理由はわからんが、「これが特徴」ということだ。ワケワカラン、、、
さて店に入る。計ったように11時に着いたので、僕らが最初の客だ。
「おおぉ 竹鶴さんご一行。社長はおらんの?」
と大将からお声がかかる。60歳くらいだろうか、タオルを頭に巻いた、いかにもやんちゃそうな親爺である。その妻君であろう人の良さそうなおばちゃんと、30前後だろうかの精悍な女性がいる。竹鶴一族は常連なので、最初からの人当たりがよい。それでも3人、入り口のベンチに座る。ちなみに注文は「大特2つに普通1つ」である。
店内はわりと広く、カウンターが20席程度。6人座れるテーブルもあるが、これが席として使用されるのかどうかは未明だ。
しばらく世間話をしているうちに「どうぞ」とお声がかかり、カウンターの席に通される。大将が、冷麺用のタレを調合している。ガラスの小鉢にまずは唐辛子ベースの辛いタレを注ぐ。この量は常連客それぞれの好みを判断しながら調整されているそうだが、辛さを足してもらうこともできる。そこに透明の酢のような液体と、ホーロー製の容器に入ったスープストックを合わせ、ゴマをたっぷり入れてスープのできあがりである。
石川杜氏は相当に気に入られているらしく、兄弟のこととかが話題にあがっている。折を見て僕のことを東京からきた農業関連のセンセイであると紹介してくれた。
「農業かい、農業はこんなに生産者をいじめてると、何も食べられなくなるよ!って、政府にいっといて!」
僕が政府に言えるかどうかはわからんが、その後、非常に筋の通った農業保護論をここのおばはんと娘さんが、とてつもなくドメスティックな広島弁で展開していた。方言がすごいので少しわからないのだが、痛快かつムチャクチャにおもしろい話である。親子掛け合い漫才なのだ。広島弁に造詣がないため、ここに再現できないのが本当に惜しい!
同時進行で麺が茹でられている。なんと麺は羽釜で炊かれている!そのせいか割と早くに茹であがるようで、ほとんど待たない。この麺を水でゆすいで、ざるにあけてどんどんと水切りをする。この麺の洗いと水切りの担当は娘さんである。麺がざるにあがると、どんぶりに無造作かつ丁寧にとりわけられ、そこに具を盛りつけていく。この具がスゴイ!茹でキャベツ山盛り、ネギの小口切りたっぷり、キュウリとネギの細切り、そしてなんと紅タデ(刺身のツマについてくる、赤紫のやつ)が乗る。これにチャーシューをのせるのだが、本当に山盛りである。
「さあ どうぞ」
とカウンターにドンドンとのせられたそのどんぶりは、超弩級の迫力でせまってくる。この時点ですでに激烈に旨そうなんである。
さてここで大将に正面切ってお願いをしてみる。
「大将! 写真とっていいですか?」
「写真?だめだよぉ。」
怒っているいる口調ではないが、断固とした拒否の姿勢が垣間見えた。ので、即座にあきらめました。残念ながら読者の皆さんは、この最高な冷麺の盛り付けをみることができない!
食べよう!と思うが、まず丼の上部全面を茹でキャベツが覆っている。入り口に無造作に積まれたキャベツのダンボールをみると、愛知県JAとよはしのものである。この時期からして春玉ではないかと推測。春玉(ハルダマ)とは、読んで字のごとく春キャベツである。これに対応するのが冬の品種で寒玉(カンダマ)という。通常、寒玉のほうが主流。春先から夏にかけての暖かい陽気でできるのは春玉が多いのだが、味はかなり違う。春玉は柔らかくトロミが強い。その代わり糖度はそれほど載らない。寒玉はパリパリした食感と、寒さにより軸に蓄えられる甘味が特徴だ。僕は圧倒的に寒玉が好き。でも、時期的にそろそろ春ものが出回っているだろうと思ったのだ。
しかし!口に運ぶと、パリンパリンと心地よい歯ざわりと、軸からにじみ出てくる甘味が!
「おお!このキャベツ、冬モノだ!」
大将が
「ああ、来週までくらいは冬キャベツだねぇ。春ものだと、柔らかすぎたり、茹ですぎると味がボケるから手がかかるんだけど、、、いいタイミングできたね。」
と仰る。なんか別に暴力的でないのは、竹鶴ファミリーと来たからだろうか。と思いつつキャベツの層の下から麺を引っ張り出す。麺は実にストレートな中太麺で、色は白い。これを辛味タレに付けて食べようとすると、、、
「あ、ヤマケンさん、タレの辛味の部分はよく混ぜてください。辛味の部分はタレと分離しやすくて浮いてしまうので、端で混ぜてから食べるのがお薦めです。」
という専務からの鋭いアドバイスが。そのとおりにして麺をまんべんなく混ざったタレに浸し、すする。辛さよりも先に、あまりにも爽やかな柑橘系の酸味が鼻腔に抜ける。そしてジワっジワっと辛味が上ってくるのだが、刺すような刺激的な辛味ではない。どちらかというと、鈍い辛味が粘膜にじんわり染み込んでいって抜けない、という辛さだ。そして、サッパリとしているが味わい深い旨味、これは鶏がらベースのスープだろうけど、油分が少しも浮いていないのはどういうことだろう?山形県の、冷たい鶏スープを使った「肉蕎麦」のようである。で、とにかく間違いなく旨~い!
「旨い! ウマいっすよこれ!」
あとは怒涛のようにすするだけである。チャーシューもかなりオリジナルで、脂身がほとんど無い。これを薄切りにしたものが載ってくるのだが、全体にギトギトせずに食べられるようになっているのだ。しかし、辛味タレがじんわり効くので、だんだん身体が熱くなってくる。ふと左となりの石川タツヤンをみると、顔全体からブワワっと汗が噴出している。それをティッシュとかではなく、タオルで拭いている。
「これはね、マイタオル。これじゃないとおっつかないの。」
「そうそう、石川君はいっつもそれやねぇ~」
そう、この親父さんは、相手の力量をみながら辛味を加減しているのだ。もしはじめていった人で物足りなかったら、申し出れば辛味タレを足してくれる。すかさず僕もお願いしたが、実にいい感じ!激辛料理というようなイロモノではない、渋い必然的な旨さがあるのダ!
それにしても野菜の量は半端でない。きゅうりやネギなどの細切りがヤマと載っている。これらは「すべて機械を使わず手で切っている」(石川タツヤン談)ので、とにかく仕込みにはものすごい時間がかかっているんだそうだ。そのせいもあってか、なんとこの店、回転時間がすごい。
「朝の11時から午後2時までで閉まってしまう」
えええええええええええ
気が狂っているとしか思えない。夜の営業なしでなんでやってけるのお?
でも観ていると納得。店に入ってくるのはほぼ常連客。店の親父さんとの会話を聴いていると
「皆勤賞やね、4連続か」
などと言っている、、、そう、この味、すごくサッパリしているので毎日たべてももたれないのだ。これはラーメンという範疇には入らないな。親父さんがいうように「冷麺」なのだ。
甘いキャベツ、きゅうりとネギ、紅たで、そしてストレート麺を辛タレで食し、「大特」を平らげた。
「ご馳走さまでした!いやぁ旨かった、、、」
「日本の農業をよくしろっていっといて!」(←お母ちゃん)
そうですはい頑張ります。と思いながら店を出る。車に乗ると、敏男専務がいぶかしげに
「あれ?あの後ろからくる車、、、社長がきましたよ!」
おおなんということだ、我々先発隊が食べ終わったタイミングで竹鶴寿夫社長の到着である。
「おお、なんだなんだもう食べちゃったのか!ヤマケンもう一杯付き合え!」
やった!!!!!
実はもう一杯食えると思っていたところだったのだ!
店の中からも親父さんとお母ちゃんがこちらを笑いながら見ている。社長とともに入店。今度は即座にカウンターに腰掛ける。これは社長のおかげだろう。
「普通2つ!」
「あんたもう一杯食べられるの?」
「もちろん!」
こうして僕は、初めての新華園にて「大特」と食べた後「普通」を連続して食べたのであった。
しかし残念なことに、、、
「残念!歴史に残る人かと思ったけど、去年はじめてきて大特と普通を食べた人がおるんよぉ、、、」
むちゃくちゃ残念である、、、歴史に名を残せなかった。
今度は絶対に大特と中特を喰うぞときもに命じ、名店を後にし、講演に向かったのであった、、、
冷麺を腹一杯食べて、講演の最中は寝てしまいそうになったが、なんとか1時間40分くらい話しまくった。竹鶴社長&専務&杜氏ご一行に 「おおお 山本センセイセンセイ!」 ともてはやされ、気恥ずかしい。
さてこの日夜は、なんと石川達也杜氏のご自宅に泊めて頂くことになっている。今をときめく地酒界の超注目杜氏であるタツヤンと、こんなに仲良くさせて頂いていいのだろうか?いいんだな、きっと。だってオイラは日本酒業界の人間ではないから。きっと、業界関係者だったら色々と商売上の思惑や遠慮も出てくるから、こんなに仲良くさせて頂いてないと思うのだ。もちろん日本酒は米からできる、農産加工品といってもよいものだ。だから農産物の世界にいる僕とは、周辺領域で繋がっている。そのつながり方がよいのだろうな。
さて石川家は広島県西条にある。西条といえば、広島の名門酒蔵が集まる酒蔵の町である。賀茂鶴、賀茂泉など、有名な酒蔵にことかかない。石川杜氏も、実はこの酒蔵の血筋を引いているのだ。というのも、親父さんは賀茂鶴酒蔵に勤めておられ、石川杜氏の幼少の頃は賀茂鶴の蔵内にある社宅に起居していたということなのだ。子供の頃から蔵人の働く背を見て育ってきた。だから、彼が酒造りの道に進んだのは極く自然の成り行きであると言っていい。
この日は、もう一人ゲストがいたのだ。僕が連載を持っている「やさい畑」の編集者である神吉さんも、なんとお爺さまが賀茂鶴酒造にお勤めだったのだ!石川杜氏のお父さんとは、無二の盟友であったときく。ということで神吉さんも急遽参加しての、にぎやかな会となったのだ。人の縁って不思議だ。

石川家にあがらせて頂いてまず最初に目に飛び込んできたのは、、、食卓わきにドデンと据えられた、業務用の”酒専用”冷蔵庫だ!こんなのが普通の一般家庭にあっていいんだろうか?
「あ~ いや、 学生時代もこれよりは小さかったけど、下宿に冷蔵庫持っとったよ。」
そんなのは日本中探してもアンタだけなのである。この冷蔵庫の中には、彼が全国の名酒造から収集した、とてつもなく貴重な酒が、新聞紙で密封されて熟成されている。宝の山なのである。もし石川家に泥棒が入ったら、それはきっと日本酒関係者であろう。

そうそう、この日はタツヤンがこういうのだ。
「ヤマケン、今日はね、君を驚かす食材を用意しているんだよ、、、(ニヤニヤ)」
一体なんだろう?ずっとわからなくて楽しみだったんだが、ひょんなことからそれがわかってしまった!僕が今最も好きな地鶏である「駿河若シャモ」の生産農家である鈴木恵美子さんから、僕の携帯に電話が。
「広島に送っといたけど、どうぉ??」
「え?俺、頼んでないよ??」
ここでぴんと来た!サプライズ食材は若シャモだったのだ!そう、石川タツヤンはこの若シャモを食べているのだ!それは、僕の静岡の導師である岩澤さんからのプレゼントで、タツヤンもこの若シャモの旨さに参ってくれたのだ。ああ、そういうことかぁ!!隣でタツヤンが「しまったぁ、、、」という顔をしている。
でも、若シャモを何に使うのだろう?これが、この日いただいた、スバラシイ郷土料理に変化するのである!その料理を「びしゅ鍋」という。鶏肉と野菜を、鉄板の上で酒をふりかけて炒りつけ、塩・こしょうのみのシンプルな味付けでいただくという料理だ。これは元々はこの辺の酒蔵で生まれたらしく、その際には「びしょ鍋」といっていたようだ。びしょとは、蔵人が汗だくになって「びしょびしょ」な状態のこと。蔵人が精をつけるために食べたから、この名前がついたのだという。それが今は「美酒鍋」ともいうように変化したそうだ。
鈴木さんから届いた若シャモは実にすばらしい仕上がりだった。これをさばくタツヤン。彼は、銀座では知らぬ人のいない鶏料理の名店「バードランド」が阿佐ヶ谷にあった、いわば無名時代にアルバイトしていたこともあり、鶏をさばくのもお手の物なのだ。

静岡が誇る駿河若シャモの最高峰の生産農家、鈴木恵美子さんが育てた若シャモの、輝やかんばかりの色を観て欲しい。肝(レバー)がオレンジ色なのだ!鈴木さんはほぼ無投薬で鶏を育てている。通常のブロイラーには薬を大量に投与している。本物はこんな色になるのだ。これが正常、健康な鶏なんですぞ。こんなに健全な鶏は免疫が強いため、鳥インフルエンザなんぞとは一切無縁である。まあそんなことよりもバツグンに旨いというのが駿河若シャモなんだが。

このスバラシイ鶏肉を、熱した浅い鉄板に投入し、ニンニク片を少々入れる。長ネギ、タマネギ、もやし、こんにゃく、厚揚げなども追加し、日本酒をザバリとかける!しかし「煮る」ではなく「炒りつける」なので、日本酒は材料が湿る程度に留める。これに塩と胡椒を振って、あとは食べるだけである。

これがしみじみ旨い!日本酒のアルコール分は飛んで、その風味と野菜の甘み、そして鶏肉からにじむ旨みでイイ味がでている。鶏肉がメインだけど、この旨みを存分に吸った野菜が実に最高!最初に少しだけ投入するにんにくが実に味のキーになっていて、スバラシイ。これぞ、酒造りの蔵人たちが愛した鍋か!

このびしゅ鍋に合わせるのは、もちろん竹鶴の酒だ。にごり酒のお燗は実に最高!そして写真は、たしか14BYの山田錦の大吟醸である。よくあるフルーティーなだけの大吟ではなく、料理と一緒に飲める大吟醸だ。

飲みながら、神吉さんと石川さんのお母さんの間で、昔話が繰り広げられる。神吉さんもお母さんも
「おじいちゃんが呼んでくれたんだ!」
と大喜びで、スバラシイ会になったのだった。
びしゅ鍋はいよいよクライマックスに。若シャモのモツである。鮮やかなオレンジ色はキンカン卵。つまり腹の中にある黄身ですな。そして腸管、砂肝、、、そしてレバーが半生のうちに口に運ぶ。瞬間、全員がのけぞる!
「ふぉ、フォアグラより旨い~!!!」
これはマジである。いっぺんの臭み・嫌みもなく、ただ濃厚かつ芳醇な旨みだけが溶け染み入る。一瞬で舌の上を去っていくのが残念だ。こればかりは食べてみないとわからないだろうなぁ

ちなみに、一部の日本酒業界では有名なんだが、タツヤンの奥さんは超美人である。奥方の良枝さんも酒造で蔵人修行をしていたことのある熱い人なのだが、タツヤンに惚れ込み一緒になったと言うことだ。いつもは強面で硬派なイメージのタツヤンなのだが、、、家ではなんとこの良枝さんとデレデレである。いいなあ夫婦って。おそらく日本酒業界の人が見たら卒倒しそうなカットを下記に公開しよう↓

デレデレ加減がわかるだろう!そして私もありがたく記念撮影させていだきました。

この後、鶏を手配してくれた静岡の岩澤さんからこういわれた。
「山ちゃん、幸せもんだな! 石川さんが電話をくれて、山ちゃんを喜ばせたいから鶏を送ってくれというんだよ!愛されてるねぇ、、、」
幸せもんです!でもおいらもタツヤンと竹鶴酒造を愛してるもん。
石川家の皆様、本当にご馳走さまでした。大変に楽しく暖かいひとときを過ごしました。また遊んでくださいね、、、
というスバラシイひとときとともに、延び延びになっている竹鶴酒造の仕込み風景を次のエントリで公開する決意を固めるのであった!
瀬戸内の生まれ(生まれただけなんだけどね)の僕としては、魚の味は瀬戸内ものが最高!とチューニングされてしまっている。広島から高松に飛び、明日は讃岐うどんめぐりであるが、前夜祭ということで魚を食べたくなったわけだ。しかし今日は日曜日。ご存知のとおり魚河岸は日曜日は休みだ。なのでいいすし屋や和食店は大概日曜日が休みである。ガイドブックをみても日曜休ばかりでちょっとげんなりした。
もうどうでもよくなって、安ホテルのフロントに「いい店ないですか?」と訊くと教えてくれたのがこの「天勝」だ。ホテルから3分のところにあるという。これに少し引っかかった。
「ホテルから3分? うーん 客を紹介したらフィーが入ってくるようにでもなってるんかいな?」
と、ちょっと疑心暗鬼。でも、繁華街までは歩いて15分ほどかかる。こういうときにタクシーをつかう僕ではない。今日はもう疲れたし、いいか、だまされても、、、と思って天勝に足を運ぶ。
これが、嬉しい誤算だった。
天勝は自社ビルの豪華な店構えで、ちょっと入るのをためらう造りだった。
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■活魚料理 天勝
住所 : 香川県高松市兵庫町7-5
電話 : 087-821-5380

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店内に入ると、活け魚を売り物にする店らしく、大きな生け簀を囲んでカウンターとなっている店のつくりだ。その周縁に座敷が配されている。どうやら2階に60人くらいの予約客が来ているとのことで、1Fのサービスまで手が回らないようだったが、仲居さんにいろいろ訊きながら飲み食いの算段を決める。
品書きを見ると、魚の一品料理が予想外に安い。つまみをとりながら地酒のあつ燗をいただき、軽く飯を食うことにする。品書きをみてすぐに目に入ったのが「いいだこの甘辛煮」だ。いいだこってご存知だろうか?小ぶりのたこなんだが、頭の部分に米みたいなのが詰まっていて、そこが旨い。ご飯のことを昔言葉で「いい=飯」と読んだので、いいだこというのだ。これも瀬戸内の味である。まずこれだ。
それと「べいかの酢味噌和え」。べいかってなんだ?仲居さんが「この辺でとれる小さいイカです。」という。小さいってのはいいことだ。瀬戸内の魚は小さくてこまやかで旨い。すかさずそれも頼む。
あと刺身も食べないといかんだろう。仲居さんと相談し、地物ばかり盛り込んでもらうことにする。酒はなにがおすすめかと訊けば金稜だという。その本醸造を熱燗にしてもらう。
さて金稜の熱燗は移動疲れの身体に沁みた!そして運ばれてきた魚介の美味で、即座に天国に飛んでしまった。
■いいだこ

この「いい」の部分が本当にこっくりとしていて、最高なのだ!味付けは瀬戸内風で若干甘いが、もちろんのこと旨い甘さである。いいの部分だけではなく足先の程よい弾力感を味わいながら、やっぱりこれだよなぁ、瀬戸内は、と実感する。たしかこれで480円くらいだったと思うが、、、安いよなぁ、東京に暮らす人間からすると。
■べいかの酢味噌和え

べいかとは今まで観たことが無いイカであったが、酢味噌との相性は抜群だった。これで500円程度とは、安い肴だ。
■刺身盛り

地魚だけにしてくれと頼んだ刺身がまたすばらしかった! 鯛(瀬戸内の鯛は旨いのダ)、平目、マグロ(これは瀬戸内モノではないけどね)、そしてウニ。圧巻だったのは平目だ。本当に官能的なムッチンむちむちの歯ざわりと、ねっとりとまとわりついてくる旨味。この旨味は捌きたてだと出ないはずだ。おそらく2Fの予約客のために〆てから若干のベンチタイムを置いているのではないかな。それは大歓迎である!〆たての魚は味が乗り難いからね、、、
あと、地物かどうかはわからないがウニがまた旨かった。寿司処 匠で鍛えられているからウニにはうるさくなったと思うけど、甘くて旨くて香のよい、佳いうにであった。
さてこうなると煮魚が喰いたくなる。めばるの煮付けを頼んだ。

煮付けの味付けはそれほど甘くない。ご飯としてではなく一品料理として出しているからだろう。程よい醤油の塩梅がしみじみと旨い。ぼくはこの瀬戸内の食文化をおふくろからいただいているので、小骨までしゃぶって身は絶対に残さない。かくしてこのめばるも5分後には残骸と化した。
最後に寿司で〆た。ただし、この頃にはほとんどのネタが品切れと言うことで、あまっているもので3つ握ってもらった。
■鯛、穴子、鯵

最初に断っておくが、寿司の技術で考えると、僕にとっては門前仲町の寿司処 匠がナンバーワンだ。しかし、地物の魚を、東京への出荷とかそういうことを抜きで食べさせる店があれば、ネタに関して言えばそれを上回ることはある。金沢の宝生寿司もそうだった。そしてこの店でもねたの旨さを存分に味わうことになったのダ。
穴子は当然「焼き」である。瀬戸内ではあまり煮穴子をやらない。瀬戸内モノの穴子は焼きにしたときに真価を発揮する。それは香りだ。美しい香りが立つのだ。これを握りにするなんて最高ではないか。ありがたく押し頂くと、やはりあの優しく綺麗な香りに包まれた。

びっくりしたのは鯵ダ。アジですよ、たかが鯵。でも、今まで鯵ですごいのを食べたことが2回。一回は鹿児島の「うおしょう魚ちゃん」で、これも活け魚料理でした。もうひとつは寿司処 匠で出してくれる兵庫県淡路島沖で獲れた「釣りアジ」だ。網で獲ると身がぐしゃぐしゃになるので、一本釣りした鯵が最高なのだ。その分高いけどネ。
で、今回めでたく3回目の感動的鯵に出会ってしまった。みよこの遠慮なく分厚い身を。

第一、鯵っぽくない見た目である。間髪いれずに口に放り込むと、そこには至福しかなかった。これはどう考えても捌き立てだ。だからこそ、鯵とは思えない上品な旨味と香りがある。いや、これが鯵なんだな、、、今まで私の目が節穴でした。ゴメンナサイ。
これだけ喰ってお銚子を2本とり、7000円程度だったと思う。高級割烹で飯をくってこれなら安い部類だろう。と思って翌日会った友人に報告すると、「あそこは高松じゃ高いほうだよ」と言われた。 でも、うまかったんだもーん!!
高松駅から歩いて5分の好立地なので、うどんに食い飽きたら(そんなことはないだろうが)足を運んでみて欲しい。
高松二日目は友人に車を出してもらってうどん詣でである。しかしさぬきうどんも本当にメジャーになってしまったものだ、、、
僕のさぬきうどん歴はそれほど長いものではない。しかし自分の歴史に燦然と残る大記録がある。それは、「うどんを1時間半で13玉食べた」というものだ。大学院を卒業する前に、僕の農業関連の盟友である「のざけん」(現・愛媛大学講師)が興奮して一冊の本を貸してくれた。それが、さぬきうどんブームの火付け役となった「恐るべきさぬきうどん」だ。当時隆盛を誇っていたタウン誌かがわに連載されていた麺通団の連載を単行本にしたもので、すでに文庫版が出ているので、目にした方も多いだろう。
「やまけん、今、うどんが熱いで!」
「よし、俺たちも行くぞ!」
ということで、高知に実家があるのざけんが車を出し、名店を回ったのである。そのとき回ったのは、「山内」、「長田」、「緒形」(←漢字がでない)である。それぞれの店で大体あったかいの大盛りと、つめたいの大盛りを食べた。通常、大盛りは2玉である。そして長田ではあまりに旨かったんでもう一杯追加した。ということで全部数えると13玉になったのである。
ちなみにこの時一緒に食べたのざけんは、11玉。彼は元・京大アメフト部のレギュラーである。この時はさすがに、醤油うどんで有名な緒形の駐車場で二人でぶっ倒れ、40分くらいウンウン唸っていたのであった、、、
あんなコトはもう出来ないだろう。僕も年をとった。先日山形で9.5枚の蕎麦を食べたが、10枚に届かなかったところが限界を示している。悩ましいことである。
その後もちょくちょく足を運んでいたのだけれども、一昨年は農業改良普及所関係で講演に呼んでもらった。その時、地元香川県の威信をかけて育種・生産されている「さぬき夢2000」という小麦の粉をいただいてしまったのが印象に残っている。これは当時プレミア粉で、製粉会社勤務の友人から「マジで分けて」と頼まれたほどだ。ご存じの方も多いと思うが、さぬきうどんの原料である小麦は、ほぼ全てがオーストラリア産である。ASWという規格にのっとった、うどんに最適チューニングされた粉が大量に安価に輸入されてくるのだ。それに対抗すべく育種されたさぬき夢2000である。これで自分でもうどんを打ってみたが、あまりに僕の技術が稚拙なので、差異までわかるもんじゃなかった。スミマセン、、、
さてそんな感じで、行くごとに名店巡りをしていたのだが、実は一番有名店といえる店にまだ足を運んでないのだった。それが「がもう」だ。でも、がもうについてはもうここでくどくど述べるのはやめておこう。今や大ブームで、ちまたに溢れているうどん本にがもうが載らないことはないからだ。
当日案内してくれた友人曰く「最近は観光客の方が多くて、もう地元の人がびっくりしよるわ」とのことである。そうだろうなぁ、、、
実際、うどん屋が流す排水に含まれている小麦粉が、河川の富栄養化に繋がり、汚染問題になったりと結構大変らしい。報道されない裏事情がかなりあるようだ。
まあしかしともかくその友人も「がもうが一番美味しいよ」と言う。がもうは、完全に足踏み、手打ちの店である。最近はローラーを使ってコシをビシッと出し、機械で均一に打つ店も多い。僕はどちらでも旨ければイイと思うが、なんとなく屋号の「がもう」を耳にした時、ふんわり柔らかい手打ちイメージがあるなぁ。
高松市内から30分ほど走り、がもうの駐車場に着く。、、、10時30分なのにすでに駐車場満杯である。店の外まで人が溢れ、ベンチなどでうどんをすする人が多い。

「でも、回転がムチャクチャ速いから大丈夫。」
と友人が言うように、スイスイと列が進む。店内にはいるとおっちゃんが大きな羽釜でうどんを茹で上げている。このおっちゃんの生き生きとした顔を見よ!とてもいい顔、陽のパワーに満ちた勢いを感じる。この気がうどんにのりうつるのであろー。

おっちゃんに「あったかいの大!」とどなり、うどん玉を入れた丼を受け取る。
次に