福島の郷土料理は立体的味覚だった

2003年9月 3日 from 出張

福島の会津若松にきた。実は会津若松は初めてと言っていいくらいだ。ただ、かなり昔に会津田島でラーメンを食べて感動したことがある。そこは、ごくふつうの食堂なのだが、厨房にはいとも当然のようにかまどがあり、よれよれのお婆ちゃんがそれで麺をゆでていた。透き通った醤油スープにちぢれ太麺。シンプルきわまりないそのラーメンは、オーソドックスにして感動を呼ぶ味だった。今日は絶対にどこかで食べていこう。

講演前夜に歓迎会を開いていただく。割烹「てんぐ屋」では、素晴らしい郷土料理が並んだ。中でもとりわけ舌の記憶に残ったのが下記。

・身欠きニシンの山椒漬け ニシンと山椒の葉を重ねて酢醤油に漬け込んだもの。これが滋味溢れて旨い!カチカチに干したニシンを戻した特有の苦みとえぐみ、薄い酢醤油のじんわりした味、それに山椒の葉の高貴な香りが絡んで、深くて立体的、重層的な味だ。地元の人から見たら 「そんなの特別なもんじゃないよ」 という感じだろうが、感動した。 tenguya.jpg

話は飛ぶが、この福島出張の帰りの電車で駅弁を買ったら、そこにも同じモノが入っていた。それを食べ、そのすぐ後に隣に並んでいた海鮮サラダのようなものを食べたのだが、その味の次元の違いに驚いた。マヨネーズと油脂、アミノ酸によって着味されたサラダは、1次元的に平坦な、のぺっとした味世界だった。これだけ食べていれば、全く問題はない。とてもわかりやすい味だ。しかし、ニシンの山椒漬けを口にすると、その味わいを認識するのに少々時間がかかる。香りと味があまりに複雑な組成だからだ。この旨さを、ファーストフードに慣れた人がどう捉えるだろうか。あまり美味しいと思わないかもしれないな、、、と思った。

・厚揚げの田楽 これは本当に絶品。この田楽は味噌がミソだとのことだったが、台となっている厚揚げに感動したのだ。見事な脱水加減の豆腐を、供する直前に菜種油か大豆油で揚げ、軽く表面を炙った後に味噌を塗って出している。それがわかるのは、厚揚げの揚げ部分と中の豆腐の境界がぶよぶよと厚くなく、カリッとした歯触りが伝わるからだ。甘めの味噌との相性は最高で、文句なしに旨い。

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そして、クライマックスは、ここの女将が手打ちしてくれる蕎麦だった。小さな椀につゆと一緒に盛られてきた蕎麦は、繊細な細打ちで、訊けば10割だという。期待せずに口にしたら、あまりに清々とした、背筋の伸びた味に、してやられた。

大満足なのであった。

とは言ってもこの後、スナックでしこたま飲んだ後、会津のラーメンを食べにいたのだった。ネギラーメン。あの懐かしい味が、そこにあった。 la-men.jpg

この講演をお膳立てしてくれたのが、日本のカスミ草の生産関係者では知らぬ者のいない管家(かんけ)さん。以前、太田市場の卸売会社での僕の講演を聴いて、福島に呼んでくれるために奔走してくださった。静かな語り口、でも日本の花の生産・流通に人生をかける凄みのある人だ。こういう人に会えると本当に嬉しい。多謝である。 kanke.jpg