皆様ありがとうございました! さちの肉を食べる会 in 東京バルバリ 大盛況! 一頭の牛の、精肉から内蔵までひたすら食べた5時間!この素晴らしき料理達を観て欲しい!

2010年8月 5日 from イベント,オフ会,日本の畜産を考える

 

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もう本当に、感謝の言葉しかありません。最高の時間でした。

結果的に38人にふくれあがった「さちの肉を食べる会」。東京バルバリの小池シェフのもとには29日に肉が搬入され、念入りに下ごしらえがなされてきた。

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会場内にはスタッフ池田君のデザインによるランチョンシート&メニューが!

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わざわざ彼らが作成してくれたメニューを見ていただきたい。こんな充実した内容の短角和牛のコースが、これまであっただろうか!?

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19時、ほぼ全員集まったところで静かにトラブル発生。僕が作った名簿では37人とカウントしていたのだけど、エクセルの計算式を間違えて(超・凡ミス、、、)一人カウントから漏れており、一人分増えてしまったのである!材料はぎりぎりの線でしか用意しておらず、これはもううちの嫁さんか、うちの会社のN女史が帰るしかないか、、、という状況だったのだが、バルバリの方で配慮していただき、うちの嫁のポーションを小さくすることで対応してもらった。許せよ嫁。君が結婚したのはエクセル使っても満足に計算できない阿呆なのだ。

きたやま南山での「食べる会」では2時間みっちり、短角牛との出会い、さちとの出会い、そしてさちが肉になるまでの話をスライドつきでお話しした。今回は会場がそんなことできる状況じゃなかったので、口頭で15分ほどお話し。二戸・盛岡から来てくれた現地の杉澤君や高橋さんを紹介する。

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そして乾杯!

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まずはアミューズからスタートだ!
※8月5日現在、小池君がくれた料理解説メモを家に置き忘れてきたので、明日あたりそのコメントを加えてアップデートしますね。

■アミューズ 肩肉グーラッシュ・ウデのサラミ・さちパテ

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サラミは塩水に3日間漬けて一日抜いて仕上げたもの。さちパテはいろんな部位が入ったパテ、グーラッシュはイタリア北部の料理でパプリカ煮込み。先日の仲田睦シェフが作ってくれたものだ!

「え?これってアミューズ?前菜だよね(笑)」

 

とみながひそひそ言う中、コース開始。サラミはウデ肉の繊維質、筋がとおったところが逆に噛み応えになって、噛めば噛むほど肉汁が、の美味しさ。熟成されているのでうま味たっぷりだ。パテはフォアグラが混ざっていることもあって、見た目より濃厚。プチシューでハンバーガー状態になっているやつね。

そして、グーラッシュが、、、旨いっ!肩肉をよく煮込むことでブリンブロン!というブリブリした弾力のある食感が楽しめた。あとで専門料理の柴田いずみ編集長が「グーラッシュが美味しかった!」と評してくれたが、ホント、これ素晴らしい。

■冷前菜 ~山のさちのオードブルから
うでカルパッチョ・ランイチのタルタル、モモタタキ、心臓ハム

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みてくださいウデ肉のカルパッチョのつややかさ。

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今回ずーっと観てきて、さちの特性としてあるのが「ジューシー」ということで、水分をたっぷり含んでいるのだ。逆に言えばそれは調理しにくいということでもあるのだけど、小池君頑張って水分を旨く抜きながら、焼き目のうまさなども追ってくれたという感じだ。

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ランイチのタルタルは、ケイパーなどいろんなアクセントのついた素材と一緒に和えている。肉の深いうま味と酸味がいい。

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モモタタキは「いちばんかみ応えがある部位」ということだが、実はさちの肉、モモが死ぬほど美味しいんだよ~ 筋が気にならないほどのうま味がジュワジュワとしみ出てくるのである。

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この見慣れない長細い部位が実はハツ(心臓)!ハツを塩水につけ込んだ後、67度くらい(たしか)の湯で数時間火入れをして仕上げたものだ。ここで、来場者のみんなが口々に言う。

「こんなふうに、一頭の牛の内臓も一緒に食べられるなんて、ありえない!」

そう、今回のイベントで最も大きな意義はそこにある。通常、肉三昧をやるといったって、それはいろんな肉を集めてきてやるというのが普通だ。しかしここでは徹頭徹尾さちの肉!

だが、内臓肉は熟成が必要な正肉とは違ってフレッシュさが命。だから今回、オーダーが入っていない内臓部位はすべて冷凍し、この会に合わせ発送した。こんなこと、普通はできないよ!

このハツハム、柔らかくしっとりと塩分を抱いていて、味わい深かった。味よりも食感の魅惑的なことが印象に残った。これは絶妙な火入れによるものだと思う。

ちなみに、小池シェフはずーっと小さな厨房に閉じこもって格闘中のため、代わりに僕が「カンペ」をもらって、料理の説明を各テーブルでおこなった。

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ところで、生の状態のさちのリブロースをみんなに観てもらおうと回したのだけども、みてくださいこの切り口。

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えーとですね、、、なんでこれで評価がA2なの?って感じ。

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うーん A3じゃないのかねぇ、このマーブリング。まあ、いいけどさ。

今回のさちでびっくりなのは、「赤身肉の時代だ!」と叫んでいる僕のところにきた牛たちがみな、サシがよく入る血統であったということだ(笑) それにしてもこれはすごい。岩手からきた杉澤君、高橋さんも「うーん」と唸っていたのである。

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例によってみな、カメラで撮る撮る、、、中にはソニーのNEXを持ち込んできていた人も居て、少し触らせてもらった。思ったより小さい!でも、ミラーレス一眼は、残念ながらまだ本気モードの食い倒れ写真には使えないのである。

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■温前菜 ~タンパク質が固まるぎりぎりの温度で~
リブロース・肩ロース・シンタマ・レバー

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シェリー酒のソースで、4種類の部位をいただく。このそれぞれの肉を、カタマリのママで真空調理をして、内部に火がぎりぎりで通るラインの火入れをする。その後に取り出して表面のみ強火で焼いて美味しそうな焼き目をつける。メイラード反応を起こすことで、ブドウ糖とアミノ酸由来の美味しさが出てくるからだ。ただ、よくある真空調理ではさきにリソレかソテーをすることで焼き目をつけてから真空にかけるが、それをしない。そこが小池スタイルで、「専門料理」のサイトー君があとで小池シェフに「これってどういう手法なんですか?」と聞きまくっているところが目撃されている(笑)

それにしてもそこまでやってくれた部位ごとの肉質、かみ応えが全く違うことに驚く!

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一番手前のリブロースには、サシが噛んでいるのがこの写真でもわかる。リブ、肩ロース、そしてシンタマと進むにつれてぎゅっと締まった肉質になっていくが、「シンタマ、美味しい!」という声がそこここで上がる。

そしてレバー。

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なんとも健全な色、、、さちの一生が健やかだったことが分かる。黒毛和種を育てる際には、多くの農家が「ビタコン」をおこなう。ビタミンコントロールのことだ。黒毛和種はもともとサシが入りやすい性質を持つが、元来、筋繊維のなかに脂肪がはいることは不自然だ。しかし、ある時期にビタミンAをまったく与えないで、かつ濃厚飼料を与え続けると、代謝の異常を引き起こすのか筋繊維にサシが入るようになる。この事実がわかると、全国的に肥育農家がビタコンを行うようになった。

でもそんなことをしたら当然、牛の身体にダメージがくる。肝臓をはじめとする内臓に病気が入り、検査で「廃棄!」とされることが多くなるのだ。だから、その辺で「これは○○和牛のレバーだよ!」とされて出回るものは、僕はあんまり諸手を挙げて食べたいとは思わない。怖いもんね。

その反対に、短角和牛の多くは健全に、無理なく育てられるため、内臓廃棄率が非常に低いのだ。このレバーの色を観ていただければわかるはず。口に入れても、変な臭み、苦味、濁り等は一切なし! 健康に飼ってくれた肥育農家・漆原さんに感謝である。

さてお次はその内臓肉がドカンと入った、さながら「オデン」な逸品!

■スープ ~スネを67度で24時間火入れ~
前スネとホルモンコンソメスープ

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まずさちの肉のスネでコンソメをとったのち、新たにそのコンソメで一番上に載っているすね肉を茹でているという。つまり「Wコンソメ」。

そして大腸・小腸は下ゆでしただけでさっくり加えてあり、ギアラは2時間、ハチノスは4時間フォンブランで煮たものが加えられている。それぞれの内臓肉の写真を撮ればヨカッタ!このとき、参加してくれたプロ達(料理雑誌の編集者や料理人)達が皆、「うっ この内臓、すごいっ」と声を漏らしてくれたので、もう僕的には大満足。どの部位もムッチリ・しゃっきりとしたかみ応えで、変な臭みなし。素晴らしいコンソメの海の中、モツが遊んでいるのである!

短角牛は本当に内臓肉が美味しいのだ。

けれども多くの場合、短角を出荷した農家や業者が内臓肉を引き取ることができるケースは少ない。それは、岩手県内の食肉処理場では、なぜか内臓肉を出荷したものに引き渡してくれないというケースがあるからである。

いや、不可能ではない。例えば「3頭持ち込めば1頭分だけは戻すよ」とか、、、なんだそりゃ。このケースでは、と畜や食肉処理を委託するということはできず、すべていったんは処理業者が買い取ることになる。それをまた出荷した人が売ってもらうというやりとりになる。その中で、内臓肉には例えば5~6万円の価格がついてしまったりするらしい!

念のためいっておくと、さちのと畜処理をしてもらった青森県のスターゼンでは、1万円程度で内臓を全て引き取ることができる。良心的というか、それが当たり前というか、、、

気の利いた店では、精肉よりも内臓のほうに魅力を感じる料理人も多いはずだ。さちの内臓肉を食べてもらった人たちにはその素晴らしさは分かってもらえると思う。それがちゃんととることができないような状況は非常によろしくないと感じているのであった。

■煮込み 内バラ
バラ肉のブルゴーニュ風煮込み モロヘイヤのフェットチーネと山芋のフラン

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「柔らかくさせすぎないように煮込んだバラ肉です」と小池君がカンペにかいてくれたように、絶妙なトロリホロリ感!

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グァパァ!と割り広げるとテラテラと輝く脂の層。しかしこの脂がすさまじく質がよくて、くどさが全くないのである。この澄み切った脂の味は、漆原さんがさちに与えてくれた雑穀のヌカの効能ではないか、と僕は思う。

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この山芋のフランもおいしくて、プリン型からぽんと出た感じのをナイフで割ると、山芋のクレマがトロリと溶け出してきたのである。

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今日のゲスト、北海道の足寄(あしょろ)にて短角牛を550頭飼っている北十勝ファームの長、上田金穂さんだ。金の穂とかいて「かねほ」と読む、農業やるために生まれてきたようなお名前。

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岩手県で何産も子牛をうんだ母牛が、「お疲れさん」と市場へ出荷されるのを飼い、北海道で第二の人生(牛生)を送らせてあげるのだ。でも北海道はやはり広い農地面積があり、十勝の食料自給率は1000%以上!

そんなところで短角生産をする苦労などを離してくださった。

さて、いよいよ主菜だ!

■主菜 フィレステーキ さちの血とレバーのソース

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フィレ肉の焼き方、どうだったっけ~ うーんワスレタので明日、ちゃんと小池君のカンペをみて補記します。ソースには「さちの血」。これは、真空パックに残っていたり、切り分けるときにしみ出てきた汁をすべて捨てずにとっておいて、さちのレバーやフォンと共に煮込んで作ったもの。フレンチの「ソースサルミ」のようなとろりと濃い味と香り。血の一滴まで無駄にしないという決意で作ってくれたものだ。感謝。

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こんな理想的な断面!

この日集まった38人に、切り分けた肉をステーキに焼いて同じタイミングで出すことは不可能だ。そこで彼は先述のとおり真空調理をしてから表面に焼き目をつけるという手法をしてくれている。だから、肉が運ばれてきた時に必ずしも熱々の状態ではないのだけれども、そういう理由からだ。みんなに伝わっただろうか。

そして主菜の二皿目!

■主菜 サーロインのおき火焼き タマネギとニンニクのピュレ

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みな、どーんとサーロインが焼かれたものが載っているのを予想していたら、こんなにファンシーに美しい一皿が!そう、小池君って芸術的なセンス満載なのだ。店内にかけられた小さな絵は全て彼の手によるもの。絵心あるシェフなのである。

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この肉を焼くために、楢(なら)の木のまきを燃やして、熾火状態になるまで放置し、遠赤外線が出てくる状態になったところでサーロインを炙ってくれているのだ。

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ご覧の通りサーロインの繊維にそってサシが入っているのが分かる。しかしこの脂もまた脂として関知されることなくすっと溶けて消えていってくれる。いうことありません。

さあ ここで終わりか!?もうこの時点で予定を1時間オーバーして11時!終電が気になる人もいる。おなかもいっぱいになってちょっとだれた感じに、、、

というところにいきなり鮮烈な香りが!

おおおっ カレーだ!カレーのかぐわしいスパイスの香りだ!

とその瞬間、会場内の空気がリフレッシュ! dancyu誌の編集長である町田さん、ここまでで「もうだめだ」とおなかをさすっていたのに、いきなり「食べるよ!」とシャキーンと立ち直った(笑)!

■〆のお食事
有機スパイスのビーフカレー または 塩コンソメ手打ちラーメン

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そりゃあ両方いくでしょう、、、

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さちのコンソメ、さちの肉を煮込んだカレー。スパイスはネパールのフェアトレード有機スパイス。そしてご飯は雑穀ご飯!いや、もう、素晴らしい味としかいいようがないです。

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シークァーサー果汁を搾ってさっぱりさせた、塩コンソメベースの冷やしラーメン。チャーシューはもちろんさちのすね肉、ご丁寧に幅広の麺も自家製麺だ。この冷やし塩ラーメンが予想以上のうまさ!俺、これをどんぶりで食いたいよ、、、

コース、完了!

小池君が万雷の拍手で迎えられる!!!!!

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Photo by N女史

いやもう素晴らしいものでしたよ、小池君。

彼と出会って5年になるけれども(まだこの店が「ぼんぼり」と名乗っていた頃だ)、初めて彼の料理を食べたときに、どん欲な創作意欲とエスプリを同時に感じた。創作料理居酒屋という業態ゆえに高級な出し方はしないけれども、どんな料理専門誌の編集者を連れてきても「ん??? ここってすごくない?」と驚かれてきた。店の構えは佳くある創作料理だけれども料理の内容はちょっと違う。グランメゾンに匹敵する店を彼がいつ出すのか、僕は楽しみだ。一生ついていくよ!

終電が近づく中、〆にdancyuの町田編集長にお話しをしていただく。

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町田さんが「すごい!」というのを三回聞いた、と誰かが言っていた。それはおそらくすごいことだったんだろう、と本当に思い、ニンマリする。小池シェフとさちの肉双方に驚いてくれたのだろう。

そして「専門料理」編集長の柴田いずみちゃん。

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いやもう あのいつも冷静で、若いのにものすごい格のシェフたちと真っ向勝負しているいずみちゃんが、かなーりうわずった感じで「美味しかったです!こんな風に、一頭の牛の全部位を食べていくなんて、できないんですぅ!」と話してくれるのを観て、なんか俺はジーンと来ちゃった。嬉しかったよ、いずみちゃん。ありがとう!

この時点で11時半。7時から開始だけど、6時半から居てくれた人もいるので、ほぼ5時間ぶっ続けの会となった!終電に間に合わなかった人も居るだろう。ごめんなさい!

そして、、、実はこの会、以前に公約したとおり、小池君の「お土産弁当」がついてくるのだ!

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実は、スタッフが気づかないうちに密やかに帰って行かれる人が何人かいて、その場合、お渡しすることができなかった!お弁当を持って帰れなかった皆さん、本当にごめんなさい!

この「さち弁当」の中身は、、、

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こんな、いろんな部位が甘辛く煮込まれた肉片が、味付けご飯にどどーんと載った牛丼弁当でした!

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ということで

さちを巡る物語の重要なパートが一段落した。でも、まだ今週・来週にかけて、さちの肉を出してくれている店が多々ある。それを巡って、さちの物語を総括したいと思っている。もう少しおつきあいください。

今回、さちの肉を食べる会に集まってくださった皆さん、本当にありがとうございました。収益の一割は宮崎への義援金としてしっかり使わせていただきます。

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そして、、、結局朝まで店で打ち上げをして泊まったというバルバリのスタッフのみなさん、本当にありがとうございました! さちも間違いなく喜んでくれたと思います。