初登場にして食い倒れ殿堂入り! 豪快・繊細・オンリーワンのシチリア料理 北沢 「無二路(ムニロ)」は食い切れねぇ! 悶絶の章

2004年4月26日 from 首都圏

(「序章」より続く)

 さあそれでは無二路のすさまじくも美しいシチリア世界に没入しに行こう!笹塚駅からちょっと散歩程度にあるいたところに無二路はある。下北沢からだと12分くらいだろうか。どちらにせよわかりやすい場所ではないが、十分に歩いていける距離だ。

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■無二路(ムニロ)
東京都世田谷区大原1-15-12
03-3466-2242

Web: http://netpassport-wc.netpassport.or.jp/~whitsuki/index.html

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 この店では、重シェフのスピリッツを燃え上がらせるためにも、きちんと予約を取っていくことをお奨めする。オーナーの大塚さんが出たらぼくのWebを見たと言ってくれればばっちり了解してくれるだろう。

 店内は入り口窓側の明るい席と、奥の厨房横の席の二つがある。密談モードの場合は奥を選ぶといいかもしれない。なにせ、シェフがちょいちょい客席を覗いて食べ進み方をチェックしているので、コミュニケーションがとりやすい。

 コースは4種類に改訂されたが、近くまたリニューアル予定だ。1900円、2900円、3900円,4900円とあるが普通の人であれば(?)3900円でOKだろう。僕並みに食い倒れてみたい人はぜひ4900円で「チャレンジャーです」と一言付け加えて欲しい。

■前菜盛り合わせ
 さあ、まずは素晴らしく色とりどりの前菜からいだたこう!僕は前菜だけ永遠に続いてもいいと思うくらいに前菜好きなのだ!

 前菜コーナーには様々な皿が並ぶ。9種類を上限に店の人に取ってもらってもいいし、自分で選んでもよい。
 普通の女性にはこんな感じになる↓

そして僕向けにはこうなるのダ!↓

この前菜がマジで最高!旨いのなんの、、、これだけ品数があってなんで、こんなに一つ一つにきちんとした味が出るんだろう?不思議である。

○カブのマリネ。「いい漬かり具合でしょ?」とシェフが言う通り、塩と酸味がきっちり漬かった旨いマリネ!

○豆のサラダ

○イカ・魚介のマリネ

○ナスの重ね焼き ムサカのようにナスを重層に敷き詰めた、いわばナスのラザニヤだな。これだけでお腹一杯になりそうなボリュームである。

○なんていったっけ?イタリアのオムレツ。これもお袋の味的に旨い。

○これがなければ始まらない赤・黄ピーマンのマリネ。上質sのオリーブオイルがねっちょりと絡んで濃厚な味。白ワインが欲しい、、、

○レバーペースト これがまた、最高!バードコートなどのレバーペーストと違って、トマトなどと一緒に熱を通してあって、しっとり温かいのをバゲットにつけて食べる。白のイタリアワインとの相性が最高だ。

ちなみにおわかりだろうか、まだ前菜である、、、
そして怒濤のパスタ攻撃が始まる!

■ペスカトーレのリングィーネ

 絶対、ぜったいに食べて頂きたいのがコレ。魚介のパスタであるペスカトーレは、少し幅広の乾麺であるリングィーネとの相性最高である。そして重シェフのペスカはマジ旨!劇旨! あまりトマトトマトしておらず、魚介のブロード(←ダシね)をまろやかに煮詰め、麺に絡ませている。

具がまた秘密を内包しているっぽい。刻まれた海老・イカ・タコなどがふんだんに放り込まれているが、タコの絶妙な柔らかさは特筆ものである。どんな処理をしているのだろう?
 びっちりアルデンテで出てくるが、食べ進むにつれてリングィーネの歯応えが柔らかく変化していくのを楽しむのもまた乙!でもさっさと食い終わっちゃうけどね。
 そしてこれらパスタに使って嬉しいのが、シシリアンのハートを震わせるソウルフルなトッピング、炒めパン粉ダ!

このパン粉をチーズ代わりにパスタにたっぷり振りかけて食べて頂きたい!カリっとした小気味よい感触と、香ばしい香りがパスタに絡まって、まったく別物になるのだ!文句なしに旨い!

 本日は残念ながら、僕の大好きなショートパスタである「スパッカレッラ」がないらしいので、「じゃあ、プッタネスカ作って!」と所望しておいた。そしたらなんとこの時点で投入。

「お口直しにパスタです。」

お口直しって、パスタの次にパスタかよ! こういう店なのである。

■プッタネスカのスパゲティーニ

一皿目が濃厚だったためか若干あっさり風味のプッタネスカだ。ちなみにプッタネスカは僕が一番好きなソースだ。「娼婦風」という意味らしいが、小学校の頃に愛読していた「NHK今日の料理」のテキストに「娼婦のように魅力的で、少しひねくれた味、という意味でつけられた」とあったので、ドキドキしながら味を想像していたものだ。そう、オトナの味なのである。

 ちなみにこれが、プッタネスカに限らずシチリア料理に欠かせないケッパーの塩漬けだ。

粒がでかく、これを刻んで料理に使うのだそうだ。


 さてそして通常のコースだとメインになる料理だ。

■牛タンの煮込みサフランリゾット添え

 美しい、、、牛タン塊は濃厚かつ濃紅そしてホロホロに煮込まれており、ナイフを入れると柔らかく切れていく。赤ワインの風味が濃厚に漂うのだが、この濃い味付けはどんな組成なのか見当もつかない。重シェフ、まじでマジカルなシェフなのである。

 ちなみにこの牛タンの下に敷いてあるサフランリゾットがまた最高!大粒のイタリア米にブロードを吸わせているが、ばっちりアルデンテのタイミングである。少し芯が残った火の通し具合がマジでヤバイ。このリゾと肉を一緒に食べると、忘我の極地なのである。

 さて、この一通りですでに同行者は「ふぅうううう」という顔をしているのだが、、、チャレンジャーコースはここから二周目に入るのだ!
なんとこのタイミングでまたパスタが出てきたぁ!

「今日は手打ちを用意しておきましたので、、、」

■フェトチーネ野菜のソースと、リコッタチーズのラビオリ

 皿の大きさわかるだろうか?十分に一週目のセコンドになりそうな分量である。ラビオリなんざ、でかいのが4枚乗っている、、、しかしこのフェットチーネが絶品だ。野菜(ピーマン、シメジ、ブラウンマッシュルーム、ドライトマト等)がネットリとオイルでまとめられているが、濃厚な野菜の甘さが十二分に引き出されて、振りかけられたチーズの塩味がこれを鋭角的に締めている。
 チーズの入ったラビオリもボリューム満点だ。フェトチーネと違ってプリンプリンした食感。薄さと切り方で全く別物になるのが面白い!


そして、、、 物語は最終章へと進む。真の大物メイン、重シェフの真骨頂が出てくるのだ。

■ラムのローストとふんだんな野菜添え(シェフは「野菜のラム添え」と言っていた」

どどどどーん! もうお腹一杯になってる人たちにこんなのを出されたら、それは暴力! でもオイラはたべちゃうのであった。
ラムは全く臭みのない上質な肉を用意してくれている。塊で焼いて、中がとろとろの状態で出してくれる。

「イタリアではもっと肉に火を入れるんですよ。でも、日本では中がミディアムレアになるくらいが好まれるし、バサバサな食感にしたくないので」

と重さんが言う。いや実に魅惑的な食感ですよ!噛みしめると肉汁がジュルっと溢れ、きめの細かい脂身は臭みの一片もない。唐突に札幌の「だるま家」で食べた生ラムが思い起こされた。

 しかしのこの料理の真の主役は野菜だ。ポテト、塊のままのニンニク、たけのこ、カボチャ、ズッキーニ、ナスが、なんと羊の脂でじっくりとローストされている。あまりにも絶品だったのはジャガイモだ。小型コロッケ型に切られたポテトは、外側はカリリっ、中はネトッと火が通ってる。ラムの脂が魅惑的なコクを出している。
 そして、タイムとローズマリーの香りが移ったタケノコは絶品中の絶品であった。ポリッとした繊維感の強い歯触りと鮮烈な香り。肉や魚介のみならず野菜にも精通したシェフの腕前である。

 ああああああ  もっと食べたいのに腹がいっぱいだよぉおおおお

でもご安心。食べきれない分はおみやにしてくれます。

 さすがに俺ももうダメだ!椅子からずり落ちそうになりながら、うわごとのように「腹一杯、もうダメ」と喘いでしまう。
しかしそこはイタリアン、いやシチリアン。どどどっとドルチェが出てくるのである。

 もう種類が多すぎて何が何だか忘れた!けど、この店、ドルチェだけ食べに来ても満足するくらいに旨い!これは本当だ。
 特に僕が今回気に入ったのは、シチリア風のロールケーキ。こないだからペリニィヨン、オーグードジュールとロールが続くが、ここのロールもイケル!

 「シチリアの本場でもこういう、甘くてクリームたっぷりで、中のスポンジがしっとりするくらいのが普通なんですよ。これ、本当にシチリアの味です」
とはオーナーの大塚さん。
おっしゃるとおり、しっとりとしたロールは、腹一杯なのに完食してしまう。これに定番のティラミスとパッションフルーツのシャーベットをいただき、もうさすがに食えん!


 店内には、イタリアの料理協会みたいなのから重シェフに送られたエンブレムなどが並んでいる。

 重シェフの師匠は、シチリアでも有名なレストランのオーナーシェフ。この店に来日したこともあるそうだ。この師匠がまたカッコイイ。しかもほとんどアーティストで、絵はがきなどにもいろんなコラージュや書き込みがされている。かっこいいオヤジなのだ!

「料理は、重シェフが作るのとやはり同じ。というか、重さんがきっちりと受け継いで居るんですね。」

 ううむこの師匠の料理も食ってみたいもんである。

あああああ
しかしお腹一杯だぁあああ
僕が一軒で轟沈してしまうなんてあるだろうか。
しかし、この店は量が問題なのではない。その一皿一皿がマジで完成度高いのである。

 初登場で殿堂入りがあっていいものかどうかはわからないが、シチリア料理「無二路」を、食い倒れの殿堂入りとしたい。

 ちなみに次のオフ会、ここでやろうかと考えている。