焼肉で食い倒れ! 超良心的熟成極上肉と献身的サービスの店をみた! 吉祥寺「李朝園」

2004年4月29日 from 首都圏

(前編より続く)

 さてカルビを食べ、レバーを食い、ホルモンを喰らう。次に感動したのがギアラだ。牛の第四胃袋であるギアラをおおぶりに切り分け、店特製の味噌ダレとたっぷりのネギに揉み込んである。



 この大きめカットが、ギアラのモツっぽいブリブリ感を助長し、口の中で弾けるのである!しかもしゃっきり噛み切れて、素性のいい肉であることを彷彿とさせる。こんなに旨いギアラは久しぶりだ。

 この時点でもう俺の胃袋は猛り狂っていた。ご飯大盛り1杯目を取り寄せ、キムチとナムルとチャンジャ(鱈の内臓の塩から)とコチュジャンで自家製ビビンパにして喰いまくるのであった。

 ちなみにこの店では5分に一回くらいは網を換えてくれる。せわしない感じもするが、「こうしないと肉の旨さが味わえない」という。店からすれば網の洗浄が大変なのに、本当に旨い肉を食べさせるということに誇りを持った、いわば矜持を感じさせるのである。

 次に瞠目したのがセンマイ刺し酢みそダレだ。いろんなところで食べるセンマイだが、なんと「ここのセンマイは『白センマイ』なんだよぉおお!」。
 おお!本当に白いぞこのセンマイ!

「普通センマイを茹でたらそのまま切り分けちゃうけど、ここでは煮上がった熱いうちに皮をむいてるんだよね。一手間かけるだけで、こうやって味も上品になるんだよ!」


まさに納得である。このセンマイ、たっぷり付いてくるネギの小口切りと味噌ダレとともに口に運ぶと、しゃきっとした食感と甘酸っぱい味噌ダレとのコンビネーションが、脂ギッシュな舌に爽やかなリフレッシュ感を与えるので、注文必須なのであった。

 さて そろそろクライマックスへ行こう。この店で一番高い特上リブロースだ。運ばれてきたのは、一枚の大きなリブロース焼き肉カット。モミダレは当然、うっすらとかけられているだけだ。

この表面を観て欲しい。霜降りの度合いが強すぎてもはやピンクを通り越して、桜色である。表面積中、脂の方がどうみても多いのである。しかし問題は熟成である。サシが入っていようがなんだろうが、肉の熟成がされていなければ旨くはないのである。

肉を網にのせたこの画像で、モミダレが肉に染みていかずに脂で弾かれているのがよくわかるだろう。見事と言うしかない。

「やまけん焦がしちゃダメだよすぐ食べて!」

ほいよ!!と口に運ぶと、肉が瞬間で溶けた、、、 おおぅ、脂が甘く感じる、、、コレは本当に和牛のみの特性だ。肉の脂が甘く仕上がるこの味は、和牛でしか味わったことがない。トロトロトロトロトロと口の中でとろけていくのを、ただひたすら味わうのみである。この店で一番高いこの一皿、絶対に頼まないと損をする。でもこのグレードで1890円は高くないゾ。必注(必ず注文)である。泣きながら僕は「ご飯大盛りもう一杯!」と厨房に叫んでいた。

 当然ながら同クラスの特上カルビも旨い!こちらはモミダレをまぶしてある。噛み応えもあり、熟成加減や味付けがリブロースと全く違っていて、好ましい。しかしこうやって一つ一つの部位に応じて、最適な熟成と味付けをしているところが素晴らしいではないか。まさに市井の焼き肉屋の鑑である。

「この店にきたら、肉以外も旨いんだよ。ま、定番の冷麺と、あとは辛いけどテグタンがお奨めだよ!」

 冷麺は、いわゆる韓国の本式ネンミョンよりも麺が柔らかいものだ。独自の進化を遂げた盛岡冷麺の麺と本場のネンミョンの中間くらいに位置する麺を製麺しているらしい。これは日本人にも取っつきやすく、かつきっちりと本場の風味も味わうことができるナイスなブレンド加減だ。澄んだ牛のスープも、ピンと背筋の通った味で滋味深い。肉を食いまくった胃袋に優しく吸い込まれていく。

「でねヤマケン、このテグタンが最高なんだよ!」

この深紅の世界には秘密があるんであった!

「この店では調味料をほとんど自前つくっているってことはさっき言ったけど、テグタンには『焼きジャン』てのが使われているんだよ!コチュジャンに大量の唐辛子粉と、自家製ラー油をつくった際にでる滓の部分とかをぶち込んで、これを徹底的に煎りながら練るんだ。そうしてできた焼きジャンを使ってるから、辛みに深さがあるわけ。」

スープをすすると確かに深い!このテグタンは鉄砲のような辛さではなく、脳内にじんわり浸透していくような深みのある辛さである。

「じゃあ、おやっさんに頼んで焼きジャンもらってくるから!」

え、いいのそんなこと、、、と停める嫁さんを尻目に、kissh氏は厨房のおなじみさんから、いとも簡単に秘密の調味料をゲットしてきてくれた。
 おそらく本邦初公開の李朝園「焼きジャン」である。

 舐めてみると、本当に深い味だ。粒子の粗い唐辛子とラー油滓がざらつき感とコクを与えている。これは一朝一夕では出ない味である。なんとこの秘密の調味料、おみやげパックに入れてもらい、いま僕の家にある。タケノコとナスの中華風炒めにこいつをちょびっと入れると実にコクが入り、旨い!こんな内部者的な楽しみをしてしまっていいのだろうか。頼むからこのWebをみたからっって「焼きジャンおみやげ!」ちゅうのは言わないで欲しい。

「この店の屋台骨の親父さんを紹介するよ!」

とKissh氏が連れて行ってくれたのは、店の奥にある小さなスペースだった。親父さんが、マスク越しに「よう、よく来たね!」とにこやかに笑いかけてくださる。これがまた、驚倒すべきスペースだったのだ!

 大きな窯が据え付けられており、そこでは練炭が真っ赤に炎をあげている。
「ここで炭火がつくられているんだよ。凄まじい温度になるから、夏場は大変だよぉ、、、それと、ここで一日1000枚くらい入れ替わる焼き網を洗浄するんだ。机に置かれている麦茶もここで煮出している。この焼き場が店の中枢とも言えるんだヨ!」

 俺はまさしく焼き肉屋の誇りを観た!感動的である。このオヤジ、黙々と炭を熾している。何十年この基幹業務をしているのだろうか。これぞプロ、これぞ職人魂である。
 しかし、雑居ビルとはいえ、こんな超火力の設備をつけて何ともないんだろうか。すんげぇところである。

 と、店の入り口にいたおねーさんがでてきて話をしてくれた。この方が副社長さんらしい。

「どうだった?ウチの肉、熟成が難しいのよぉ。リブロースは今日は自信作だけど、カルビは難しいのよねぇ。うん、やっぱり肉は奥が深いわよ!」

この「難しさ」は、とにかくリーズナブルでいい牛肉を買い付けるため、産地や品種特性がバラバラで、肉質を見極めてそれに合った熟成を仕掛けなければならないからであろう。しかしあえてそれをヤルのは、この店のポリシーである、旨い肉をリーズナブルに食べさせたいという心意気そのものだからだろう。
 腹も心も満腹だ!今回食べたのはKissh氏によると、下記だ。

「3人で肉14人前に、センマイ、冷麺、テグタン、ナムル、キムチにカクテキと食いまくった。ヤマケンは大盛りご飯2杯食った上に、テグタンも冷麺も2/3は食ってたぞ!」

 これで一人6000円程度だった。当然Kissh氏の馴染み割引もあろうが、極めて安い!吉祥寺在住者がうらやましくなった!Kisshさん夫妻、どうもありがとう!