蒲田探訪 鰻をチョイとやってからなぜかインドカレー 鰻「寿々喜」とインド料理「シャンティ」

2004年8月20日 from

 僕が髪を切る時は、住んでいる木場から1時間以上かけて池上の美容室に通っている。美容師の兄ちゃんと仲がいいので、腐れ縁である。しかし、彼が異動するたびに、通常なら行くこともないような街に出会えるので、それはそれで嬉しい。今通っている池上に行くには、蒲田を通る。従って蒲田探検に夢中なわけだが、これが以外に奥が深いのである。

 蒲田周辺といえば「インディアン」のカレー&ラーメンが大好きなのはこれまでも書いてきた通りだが、蒲田駅北口にあるインディアンの支店周辺には、非常に興味深い店が多い。中でも、蒲田駅からの商店街を抜けてインディアンにいく数店舗手前にある鰻(うなぎ)屋は、常に蒲焼きの香り成分微粒子が混入された煙を通行人に噴霧しまくっており、その都度理性を失い暴力的衝動にかられるのであった。

 で、今回は出張帰り、羽田からの帰り道を少しだけ脇道に入って蒲田に行き、インディアンに行きたい気持ちをググッと押さえて、昼下がりの鰻を楽しみにいこうっかなぁと思ったわけである。

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■寿々喜
東京都大田区西蒲田7-63-2 
03-37315239

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通りに面して焼き台が設置されているらしく、鰻の蒲焼きダレの、狂おしく香ばしい匂いが辺り一帯を支配している。それに惑わされながら引き戸を開けると、これはもう本当にトラディショナルな空間。ぜんっぜん綺麗じゃないしチープなテーブルと座敷だが、それがまた小粋だ。

品書きを観る。鰻丼1180円、鰻重1480円、鰻重の上1780円という刻みである。

「いちばんおっきいのはどれ?」

と訊くと、

「蒲焼きご飯っていうのが、2380円なんですけど、鰻を一匹半くらい使ってます。」という。

でも2380円はちとランチには高いか!と思い、1480円の鰻重にする。しかしこの品書きをみるとソソルものが多い。

「うーん どぜう汁ももらおうかなぁ。 あ、それと焼き鳥一本も付けて!」

という布陣になる。鰻屋でどじょう、よいではないか。きっと丸(骨を抜いたりしない丸のままのどじょう)の汁が出てくるに違いない。そして焼き鳥。鰻屋の焼き鳥なんだから、タレは絶品だろう。頼まない手はない。

 ちなみに鰻には東西があるのは常識だ。東日本は蒸してから焼くので、ふっくらと仕上がり、脂が落ちてあっさり目に仕上がる。西日本は蒸さずに焼くので、脂が残り、皮もバリっと噛みごたえがある仕上がりになる。さて、僕はどちらが好きか、、、  僕の一般的食の好みを知っている人ならすぐにおわかりだろう、断然 西の鰻が好きだ! 正直、関東の鰻を食べて満足することが滅多にないのだ。蒸して柔らかくなった鰻は、去勢されたかのような頼りなさで、物足りない。無論、好きは好きなのだが、、、今回の寿々喜ももちろん東の鰻。ま、それはそれで好きだからいいのだ。

「はい、鰻重!」

と運ばれてきたのがこの様式美に満ちたセットだ。

塗りの重箱とは、実に美しい。かつ重も天重もあるが、やはり重箱が最も映えるのは鰻重だ。

この鰻重、鰻の上半身と下半身、そして画面右側にあるように、小さな切れ端を合わせた3ピースがドカンと載っている。溜まらず箸を割り、上半身の三分の一くらいをワシッとかき込む。甘辛く焼き付き、燻煙のようにいぶされた鰻の実がほろりと崩れる。あっさりめのタレが控えめながら味を利かせていて、ほっこりと旨い。江戸前の鰻のお手本のような感じである。

ただ、やはり画像をみても分かるように、蒸したことによる柔らかさとあっさり加減が、僕には少し物足りない。関西風のあの、皮がネチっと粘りつくような、脂ぎった感じが最高なのだ。まあ、これはこれで旨いのだが。

と、鰻を掻き込んでいる間に、どぜう汁が運ばれてくる。

期待に違わず、容赦ない丸のどじょうが放り込まれている。やはりこれがいい。口に運ぶと、肝の苦みと、骨のほのかなジャリ感が絶妙だ。うん、これで鰻のあっさり加減が充足した。

これに加え、焼き鳥が運ばれてくる。

これも期待に違わぬ、甘辛く旨いタレである。鰻屋としての所産であろうか。しかし鰻とは若干味わいが違うようだ。この焼き鳥を10本頼んで、重箱のご飯に載せて食べたいと思うのである。

 いや、旨かった。昼飯から2000円近い食い方をしてしまった、、、店の入り口で勘定をする。どうやら跡取りらしい、若い女性がはきはきと金額を伝えてくれる。髪を後ろに結っていて、小粋の極みである。いい気分になり、汗をダラダラと流しながら外に出て、帰ろうとするのであった。

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しかし、今回はすぐには帰れないのであった。
この鰻屋の隣に、店構えはどうみても和風・和式の小料理店なのに、真っ赤な暖簾で「インド料理」と銘打つヘンテコな店があるのだ。

しかもチキンカレー490円(→くらいだったと思う)という感じの、安め設定の価格であった。とたんに、俺の胃袋内環境が次ぎのターゲット発見の蠕動を始めた。

「うなぎの後は、やっぱカレーだよナ、、、」

訳の分からないつぶやきをしながら引き戸を開けると、まだ若そうなインド人コックさんが「いらっしゃいませぇ」と迎えてくれる。

店内は、、、ふふふ、居抜きで借りたという事情がよくみえる、どう見てもインド料理屋とは思えないカウンターである。元はラーメン屋かなにかだろうか。

「ランチメニューです。」

といってメニューを渡された。見る限りでは非常に本式インド料理である。

700円のランチで、カレーが2種類にナンもしくはライスがチョイスできる。かなりお得値段だ!

「Aセットで、チキンカレーと豆カレーを、ご飯で!」

と頼む。 僕はカレーはインドであろうとなんであろうと米で食うのがベストだ。ナンもチャパティもゴダンバも好きだが、食った気にならん。米至上主義者なのであった。

厨房でインド人コックさんがクツクツとカレーを温めているところに、共同経営者というかオーナーらしき眼鏡の日本人が二階から降りてきた。二人で店を切り盛りしているのだろうか、日本語でやりとりをしている。僕の入った後にきた数人を対応している。

そして出てきたのがこれだ。きっちりインド家庭料理という感じである。豆のダールがなんとも優しそうでよい。

これに、ラッシーなどのドリンクが付いて700円なので、かなりお得感がある。

食ってみる。当たり前だがインドの味である、、、日本における醤油のようなキメはないものの、驚くほどにマイルドな口当たりと、尖りすぎていないスパイス類のまとめ方を感じた。

ご飯の盛りもかなりよい。ランチ時はかなりなものだろうとおもったが、やはり僕が入店してから客がどんどんと入り始めた。あ、そうそう 勝手な思いこみだが、僕が入ってから店が混むことが異様に多いのだが、気のせいだろうか?

鰻で散財した直後にインドカレー。ムチャクチャな取り合わせであるが、満足度が高い!今回はあっさり目にしたが、次回はこのインド料理シャンティで爆沈する覚悟で、いろいろと頼んでみようと思い、店を後にした。

いや、結構満腹である。 帰り際、蒲田のカレーの名店:タージマハールを通ると、店の外まで行列ができていた。蒲田の飲食店はやはり激戦区なのであった。