ニュースで報じられている通り、米国産牛肉の禁輸が限定的に解除される。生後20ヶ月齢以下の牛に限り、かつ日本側が示す諸条件を満たすものだけということになっているがどうなるだろうか。農水副大臣は、科学的知見に基づいた結果だと述べているらしいが、食品安全委員会はきちんとした分析を行うにはデータ不足であると条件づけたうえで「約束事が守られるのであれば危険性は低い」と言っているのであるから、きちんと意識のフィルターをかけて読まなければならないだろう。
こうした話がここ数ヶ月は話題になるだろうが、重要なのは今のタイミングではない。禁輸解除当初は、米国側のメンツにかけてもチェックを厳しくして確かな品質のものを送り込んでくるだろう。また、輸入量自体が非常に少ないため、市場に出回る量も一部に限られる。また、当初は様々なオーバーヘッドコストが乗るので、外食・加工食品業者が取り扱うにはそれほどうま味のある価格にはならないだろう。
問題は、この議論が忘れられる頃だ。国内BSE問題が勃発した2001年9月以降、牛肉の消費は一時的に減ったものの、1年半後にはほぼ市場価格は発生前のレベルに復活している。米国の牛肉業界も輸入業者も、国内の実需者も「とりあえず1年後には回復させよう」と思っているはずだ。
だって、消費者という存在はうつろいやすいのだもの。
だからきっちりと今後の流れを観ていかなければならない。忘れた頃が一番重要なのだから。
一方、国内の和牛子牛の価格が異常なまでに高くなっている。一頭200万円という高値を付ける市場がいくつもでてきている状態だ。数年前には50万円で高値だったことを考えると以上だ。子牛価格が高いということは、それを買って肥育して成牛に育る肥育農家にとっては、売価が倍以上にならないとつらいということだ。しかし小売段階で牛肉価格が4倍になっているかと言えばそうはなっていない。おそらく米国産牛のBSE問題以降、消費者は「牛肉が高くなった!」と思っているかも知れないが、それで全ての農家が儲けているわけでもない。それどころか子牛価格の上昇と、一方で販売価格の据え置きで経営が続かない肉牛肥育農家も多いのだ。
これから考えていかなければならないことは何だろう?
「危ない牛をきちんと発見して排除すること」
も重要だけども、それよりもっと重要なことがあるはずだ。
それは、
「BSE等のコントロールの難しい疾病が発生しないような、安全な畜産手段を推進すること」
であるはずだ。
現在の畜産のメインストリームは輸入穀物飼料に依存している。だからアメリカ産牛肉を食べなくても、実はアメリカ等、外国の影響を僕らは受けているのだ。何でそんなことになっているかといえば、輸入穀物の方がコスト的に安いからである。そして、日本人が好むサシの入りまくった牛肉は、濃厚資料と言われるトウモロコシなどの多投入が欠かせない。
けれども、サシの入っていない赤身中心の牛肉をみんな本気で食べたことがあるのだろうか?岩手県を中心に生産されている短角牛は、草を食べて放し飼いである程度まで育つ牛だ。いまは生産頭数が少ないので出回り量が少ないが、実は一部シェフから引き合いが凄い。生産・出荷量が安定すれば、じつは数年後の目玉食材になりえるインパクトのある牛である。実は秋にこの取材にいってきたんだけれども、ゆっくり書いている余裕がない。短角牛についてはいずれビシッと長く書くつもりだ。
これからの日本に必要なのは、もう一度 「われわれが欲しい畜産」 を定義し直すことではないだろうか。その前に、いまの畜産がどのような歴史的背景でどのような現状を迎えているのかを認識しなければならないだろう。早くその辺の話を書きたいものだ、と思いつつ東京版食い倒れ日記の執筆に戻ります。ここ数日がヤマ場です。
Posted by yamaken at 2005年12月13日 11:14 | TrackBack何が危険で何が安全かは、政府に頼らず自分で判断するべきはないでしょうか?
政府が米国産牛肉は危険だとか安全だとかいったから食べるのではなく、自分で安全と思ったものを選んで食べればいいわけで、輸入再開されたからと言って食べることを強制されているわけではありませんよね。
結局は政治的理由だけで輸入禁止したり再開したりしているだけで、本当に国民の健康や安全を考えるなら、タバコを禁止するとか、添加物の規制を厳しくするとか、ずっと前にやっているべきことが沢山あるように思います。
Posted by: Goro at 2005年12月13日 16:13私は、個人で判別できる状況で提供されるのかを懸念します。
トレーサビリティを誤魔化したり、ラベルを偽る輩は必ずと言ってよいほど出てくるはず。また、加工品に含まれる牛肉エキス等が米国産であると謳われるかも、大いに不安である。
日本政府が国民の健康や安全に対して、如何に意識が低いかが良く判る対応と感じる。
ポストハーベストの問題もそうだが、日本の自給率の低さに対しての意識も低すぎる!
世界人口が100億人になれば、一日一食を強いられる可能性だって大いにあるはずである。
Posted by: tnk at 2005年12月13日 17:24アメリカからの牛肉禁輸後、メキシコからの迂回輸入が起こっている様ですね。
もうこうなると何を信用したらいいのかまったく分からないです。
ここまで来ると国産表示された牛肉がホントに国産なのかも疑いたくなってきますし(実際そういう事件ありましたよね)、外食などはとりつくしまもない?
やまけんさんも書いていらっしゃいましたが、安全でおいしいものを口にするためには、安全を確保するためのコストを消費者もきちんと負担する必要がある、というのは分かりますね。
そして、僕らが安全な食物を口にできる選択肢を残しておくためには、値段・効率性という価値観が最重要視されて動いているマーケットの中で、安全を最重要視する価値観を持つ生産者の方々の事業の継続を支援していく必要があると思います。
とはいえ、とりあえず自分がいまできることは、生産者の方々に日々感謝するくらいですけど。
ひとりごとですが、BSEなどにしろ、食物の生産について、安全性と生産効率は同時に実現できないイメージですが、どうしてなんでしょうね。
Posted by: せお at 2005年12月13日 18:19すべての食品に○○産、と書くこと自身がブランド化しているように感じる今日この頃です。しかもその定義もかなり曖昧。
信頼できる情報であるかどうか、から疑わないと購入できないのは悲しいことだと感じています。
地産地消が良いとわかっていても、現実は難しい。
私が仕事柄できることは、農業、畜産業の現実を、できるだけ正確な情報としてきちんと伝えることしかできないな〜と感じています。
でも、それが一番大事なのかもしれませんね。
やまけんさん、執筆の山を乗り越え、発売を楽しみにしていますね!!
Posted by: ゆかげん at 2005年12月14日 01:44先日、阿蘇の産山村で赤牛の放牧牛をされている方を、「ふるさと食農ほんわかネットワーク」の会員数名と訪問し、農業談義を行いました。
畜産や農業の現状を伺い、やまけんが言うようにさし入りを作るために濃厚飼料を食べさせているそうです。脂肪がまわって意識が朦朧とするくらいの死ぬ直前まで育て、言わば病死するような牛を美味しいといって食していることを知りました。
私もこれから食を見直そうと思っています。
是非、やまけんに阿蘇の大自然でゆうゆうと育つ放牧赤牛を見て味わってもらいたいと思います。
そして、農について語りたいと思います。
産山村では、就農塾の実践編(6ヶ月間)のようなものが行われていて、現在4期生を募集中とのことでした。
皆さん、農業に興味がある方は、是非、ご連絡ください。
初めまして、北海道で稲作を主体とした農業をしているものです。
直接的には、アメリカ産牛肉とは関わりがないのですが、報道を見ていて疑問に思うところがあります。
今回はアメリカ産だけではなくカナダ産も解禁になると聞きました。アメリカについては自国で発生したBSEはカナダ産と言ってきました。
ということは、イギリス産・EU産の牛肉もいずれ輸入解禁となるのですかね。
食の安全については消費者の責任と言うところでしょうか。
アメリカに住む日本人は,ふつうーに,アメリカ産牛肉を食べていますよ。今日,アメリカに住む日本人もすごい数です。こちらではみんな,日本の高級肉の霜降りではない,だけど,柔らかくて噛むと味の豊かなアメリカ産牛肉を食べてますよ。
Posted by: pete nicholas at 2005年12月16日 14:39石油メジャーと同じです。
既得権益を確保するために戦略的に行なってきているのが現在の食糧生産の実状でしょう。
BSEがどうというよりもこの辺りのことが理解できないと流されるだけです。それでも今回はアメリカに対して突っぱねてもらいたかったですね。いろんな意味で。
食の安全と生産効率は両立させることができると信じております。特に肉牛生産については。生産管理コストができるだけかからない方法があるならばそういう生産方法を推進していくのが政府の役割のはずですが、誰かに言われて大量の濃厚飼料で生産したものしか価格に反映させることができないようにでもしているのでしょうか。(コストには環境コストも含めて)
“今”は「天に向かって唾を吐く」ようなものです。
【食の安全】ということで議論することも大事ですがそれ以前に食事ができることに感謝していくことのほうが先の様な気もします。日本人の寿命が長いのは飢え死にする人が殆どいないからではないでしょうか。
「いただきます」=「お生命(食べ物)頂戴します。」
狂牛病の最新情報に関してはここが詳しいです。
BSE&食と感染症 つぶやきブログ
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