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2006年08月11日

3Dトンカツの雄 静岡市「蝶屋」は健在なり! やっぱりこの肉塊はヴィビッドに迫ってくる!


3Dトンカツ」というのは僕が勝手につけたネーミングだ。
通常のトンカツは、二次元である。横に広く縦に薄いから2D。しかしトンカツ店の中には、たまに極厚のカツを揚げるところがある。それはもう、二次元ではありえず、三つの方向に肉の辺がせり出し、明らかに三次元の存在をなしているのである。そうした分厚いトンカツを僕は3Dトンカツという。その3Dトンカツを出す店の中で、僕が最も大好きな店が静岡市にある。

「スクランブル交差点」といえば静岡市の住民だったらすぐにわかるだろう。駅から歩いて5分程度の呉服町という繁華街の真ん中にある交差点だ。

その交差点のふもとの、よーくみなければわからない細い立地に、トンカツ屋があるのだ。


この店が蝶屋(ちょうや)。
実は、この蝶屋についてはずーっと前の過去ログに書いてあるので、詳しくはそちらに譲りたい。
ちなみに、まずこの過去ログを読まないと、以下に出てくる用語などわからなくなるのでご注意を。

■静岡駅周辺の旨い物 巨大3Dとんかつ「蝶屋」http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2003/11/3d.html

おっと 久しぶりに自分の昔の文章を読んでしまったが、若干今の文体と違うな!ということに興奮。まだこの頃はブログなどという仕組みが世に出ていない2002年、仲間うちに勝手に送りつけるメルマガとして書いていたうちの一つなのだ。従って写真がないのが寂しい。いくら3Dトンカツといっても、ブツをみないとなぁ。

で、本日幸いなことに僕は静岡出張があったので、久しぶりに暖簾をくぐってみたのである!

11時半に店の前に行くとまだ暖簾が出ていない。しばらく立っていると、サラリーマンの2人連れ、そして僕と同じようにザックを担いだ若者が並ぶ。

「お待たせ致しましたぁ」

というおばちゃんの声で暖簾をくぐる。
相変わらず狭い店だ。うなぎの寝床のような、椅子に人が座った後ろにやっとこさ人一人通れるくらいの幅のカウンター席と、奥にテーブルが二脚。おそらく16人くらいしか入らない店だ。

しかし!
その店で立ち働くおばちゃんおじちゃんが6人もいるのだ!
トンカツを揚げるオヤジ、そのカツに添えるキャベツを管理し、ケチャップをかける(後述)オヤジ、羽釜(そう、ここのご飯は羽釜で炊いているのである)から白飯をよそったり赤出しを椀に満たすおばちゃん、そしてさらに2人のおばちゃんと一人のおっちゃんがいる。どういう布陣なんだろう。きっと親族なのだろうけれども、客数に対して異様に充実した陣容なのである。しかも仕事も客対応も丁寧、すばらしいのである。

さて
2年ぶりくらいなので、蝶屋で3Dカツを揚げるオヤジがもしかして居なかったらやだなぁと思っていたが、立派にご健在であった!しかも、僕が暖簾をくぐって目を合わせた瞬間に「オッ」という目で挨拶をしてくださる。まだ7回くらいしか来ていないのに、この人はすごい記憶力である。しかも僕が「ええとね、特大」と言おうとしたまさにその瞬間「特大ね?」と訊いてくれた。こういう些細なことが人の幸せを支えているのである。

並んでいたお客さんの、特大3つに並1つの注文がはいる。冷蔵庫から仕込みの終わった肉を取り出し、粉、卵、パン粉をつけて無造作に揚げ鍋に投入される。この時にちらっとかいま見ることができる肉塊が、まさに3Dなのである。初めて訪れる人はこの肉投入を見損なってはならない。

ちなみにこの2台の揚げ鍋は大きさが若干違い、大鍋の方に特上の肉、一回り小さい左の鍋に並肉画はいる。特上を入れた鍋は少し火力を押さえてある。これは、強火力で揚げてしまうと特上の4センチ厚の肉には、中に火が通らないうちに焦げてしまうからだろう。

、、、と思っていたんだが、、、注文が入ってくると右側の鍋にも特上の肉がはいるのを目撃!
うーむ 年期がはいるとさじ加減はどうにでもなるんだろうか。よくわかりませんがとにかくオヤジは揚げ分けています。

さてここからはひたすら「待ち」である。
特上の分厚さだと、揚げるのにたっぷり20分近くがかかるのだ。この間、客はひたすら待つしかない。カウンターのすべての視線が揚げ鍋にいくが、それを知っているのだろうか、おっちゃんは鍋に相対して客に背を向けるのではなく、横にずれた位置で揚げる。じんわりと通していく熱。そして時折カツを長い菜箸でひっくり返す。
無限にも思える時間の後、最後に入店した若者のカツが最初に揚がる。彼は並のカツを注文したからだ。ちなみにカツの並・上・特上の違いは、純粋に肉の厚さだけである。 並カツは1700円。特上は2000円。たった300円の差で並カツに下げるのは全く得策ではない(いやまあ好みだけどね)。ここは必ず特上といこう。

カツが揚がるとおっちゃんは油切りもそこそこにまな板でバスンバスンと包丁をいれ、カツに切り込みをいれる。トンカツを包丁切りする時には、カツの衣がはがれないように上から叩ききるように包丁を入れるわけだ。このカツ片がキャベツの盛られた皿にはいると、隣のおっちゃんがその皿を持つ。ここからが蝶屋の真骨頂だ。なぜかキリンラガーの瓶にはいったトマトケチャップを、カツ全体にブシュッブシュッとかけるのである!このケチャップがなんとなく市販のものより少しドライな風味。しかもなんでラガーの瓶?て感じなのである。以前来たときにはラベルの貼っていない瓶でかけていたけど、本日はラガー。このケチャップには謎が多いのだ。

とみているうちにようやく僕の特上カツが揚がってきた!
「はいカウンター一番さんね」
カツがバスッバスっと切られて皿に盛られ、ケチャップをかけられて僕の目の前に出てきた!

これが3Dトンカツである!

分厚い肉にはきっちり火が通り、なおかつ余分な水分が脱水されている。

通常、厚い肉を揚げる際には、かなりの弱火で熱を通し、中が若干ピンク色になるような感じで仕上げることが多い。そういうタイプのカツも肉の旨味とジューシーさを味わえていいのだけど、僕はしっかりと火を通し、肉の繊維がギシッと整列し、水分が程よく脱水されたカツが好きだ。例えばそれは神田の勝漫に代表される揚げ具合なのだけど、この蝶屋のトンカツもこの厚みの肉をよくここまで脱水しきるものだ、と驚くくらいに揚げてくる。

僕はこの店のケチャップも好きだけど、そこへソースをかけて食べるのが好きだ。ケチャップはあっさり目のさっぱりめなので、ソースの濃厚な味が加わるとまた最高なのだ。

そうそうこの店では赤出しが別になっている。

これがまたうまい豚汁になっているので頼んだ方がいいだろう。

3次元のカツをひたすら喰らう。
不思議と油っぽさは全く感じない。衣の部分よりも圧倒的に肉の体積の方が多いため、衣にすわれた油を感じないのだ。だからなぜか、ここで特上を食べてもまったく腹に凭れない。

「うまいなぁ」

と漏らすと、おっちゃんが「久しぶりだもんね」と笑ってくれる。
僕のデジカメ(この日はGR−D)をみて、「こんな小さいので撮れるんだ?」と不思議そうな顔をする。

揚げるのに20分かかっても、食べるのは15分だ。

「ごちそうさまでした!」

「また静岡に来たときはね」

とおっちゃんの言葉をいただきながら店を出る。
ああ、肉を食べたぁ、、、という実感に包まれるこの瞬間が最高だ。 ちかくの神社でおみくじを引く。末吉。 境内には、ここに居着いてしまった野良猫たちがごろごろとしている。


前日に講演を終えていたのでこの日は原稿を書くだけだ。東京にもどってもよかったのだけど、なんとなく静岡を去りがたい。喫茶店で原稿を書き、上ちりめんと黒はんぺんを買い求め、ぶらぶらした午後だったのだ。

Posted by yamaken at 2006年08月11日 19:36 | TrackBack