超ド迫力の建築食空間! 草門去来荘の一時、、、と、魚介系スープのラーメン 「せたが屋」の全部入り+つけ麺

2006年9月 6日 from 首都圏

で、またもや東京バルバリつながりの話だ。
「日本橋ぼんぼり」、「東京バルバリ」のオーナーである小林さんは、これまでの本職は建築デザイナーだ。実は彼は、かの際(きわ)グループの黎明期から店舗デザインを手がけてきた人なのだ。彼が手がけてきた店を観るとけっこうビックリする。ZSTなどのおしゃれでレトロ民芸モダン調の建造物は、彼がデザインした店達だったのだ。そのアートワークは下記Webに納められているので関心のある人はどーぞ。

■tokiz intension
http://www.tokizintension.com/

その彼が、「コレはね、際にいる時代の最後の超大作です。」と写真をみせてくれた店がある。それは、いったい何坪の敷地なんだからわからないくらいに巨大な空間を、見事なまでにモダン民芸調に仕立て上げた総合空間芸術的な店だった。

「草門去来荘(そうもんきょらいそう)っていうんですよ。東村山の、八坂っていう駅のそばにある、ちょっと都心からは行きにくい店なんですが、こんなの他には中々無いと思うんで今度行きましょう!」

と言われていたのだ。
なんだかんだで全然暇がなかったので行けてなかったのだけど、週末にようやく時間をひねり出せたので、小林さんカーで出陣したのである。

もちろん、お料理ジャイアン小池シェフも同道である(笑)
車中、小林さんの昔ばなしや、際グループの破竹の快進撃のエピソードなどを聞きながら、青梅街道をぐんぐん西へと向かう。日本橋から1時間40分ほどで、東村山の目的地へと着いた。

細い道の踏切を渡ったすぐのところに、いきなり大仰な門がそびえている!

「ここなんですよぉ、、、600坪くらいの広さの敷地なんで、この中がどうなってるのか見えないけどちょっとすごいんですよ。」


たしかに門をくぐり駐車場までが60メートルくらいある。その駐車場からは瀟洒な洋館の三角屋根が見える。

「あれが洋館なんですが、その奥にでかい日本家屋のようなのを建ててるんですよ。洋館はお茶を飲めたり、陶器や着物を販売しているスペースです」

なんと!この建物は単なる喫茶スペースなのかよ!

駐車場を抜けて先の門の前の入り口から敷地に入る。

敷地内には茶室がなんと二軒も建っている。なんちゅう豪華な、、、

そして、、、これがメインの建物なのだ!超・度迫力である!

あまりに大胆な意匠に、しばし呆然。
いつの時代の建築様式なんだか全然わからないけど、使っている木材は古民家の材だったりして、なぜか懐かしく感じてしまう要素が多々入っている。

手前の囲炉裏(いろり)は実際に使えるそうだ。粉雪がしんしんと降る中、この囲炉裏で猪鍋なんか出来たら最高だろうな。

ちなみにこの奥の建物から先の洋館を観るとこんな感じだ。

こちらの洋館内も中にはいると日本の古民家風の建築になっていて、ムチャクチャ居心地がいい。しばしこのスペースでくつろいでから、いよいよ食事をとる間に移る。

僕は建築のことはよくわからないからコメントは控えたいと思うが、、、
とにかくこんな空間は初めてだ!



上の3点の写真は、あくまで建物の半分のスペースの1Fに過ぎないことにご注意。
L字型になっているので、逆の方にも大きなテーブル中心の客間がある。こちら側の1Fは畳の座敷。外のエントランスと繋がっている開放的なスペースだ。


我々の席は二階。背の低めのテーブルに、あぐらをかいても余るくらいの広い、重心の安定した椅子。これがなかなか心地よい。

「話をしたいときはここがいいんですよ」

という小林さん。しかしそれにしてもすげぇ建物だ。

さてこの店、こんな大仰な建物で何を食べさせるのか。際グループだし、中華か?と思いきや、正統派和食を食べさせる店なのであった。

5800円から小刻みに15000円までのコースがある。この日の僕たちは8000円のコースを選ぶが、けっこうボリュームがありそうだ。

まずは椀から。結果的には、この椀が一番印象に残る物だった。

黄色い満月のようなお団子は、カボチャの裏ごしで鴨肉の丸を包んだ物だった。

団子を崩し汁と一緒にすする。
強めにとられた一番出汁とカボチャのでん粉質、そして鴨の丸のうま味が重なって、見た目の美しさだけではなくかなりカチッとパンチの効いた椀だ。

「そうですね、やっぱり際なんで、味付けや盛りつけはパンチが効いているはずなんですよ」

と小林さんが言うとおりだ。

お作りは戻りガツオと鯛。

やはり盛りつけにパンチあり。

そして、いろんな物が盛り込まれた八寸がまた気に入った。

壬生菜(みぶな)寿司、秋刀魚の湯葉巻き揚げ、ごぼうと椎茸の天ぷら、レンコン素揚げ、茄子煮浸し、イクラ、銀杏などがちりぢりに置かれていて綺麗。薄紫の実はアケビだ。ネットリした果肉をほおばると種の部分にほろ苦さとえぐみがあり、これが舌の奥と胃袋を刺激してくれる。

牛ほほ肉と栗のワイン煮か、と思いきや、大和煮。

ほほ肉にはあまりパンチがないけど、ご高齢のお客さんにはいいのだろう。
事実、お客さんのほぼ7割が中高年以上の集団だ。たしかにこの店の個性としてはそっちを狙った方がいいだろう。しかし、この空間で飯を食えるというので、ムチャクチャにデート向けスポットだと思うのだが!

秋鮭の西京焼き。もうちょっと味噌風味を浸透させているほうが旨いと思う。

これは面白い一皿だった、梨の白和え。

梨には火が通っていて透明感がでているのだが、歯触りはシャキシャキ。そこに、ごま風味の白和え衣を乗せていて、これを一緒に食べると実に旨い。煮た梨は甘みがいい具合に抜けていて、ドライな食感と果汁が白和え衣にマッチする。

「あ、これは旨いな」

と小池シェフがつぶやく。お料理ジャイアンのことだ、何かこの系統の料理をいつか繰り出してくるに違いない。

〆は松茸ご飯と西京味噌の味噌汁。


松茸ご飯はもちろん美味しいが、味噌汁がふくよかに美味しいものだったので気に入った。

そしてデザートは何とぼた餅。

ぼた餅なんて何年ぶりだろうか。昔はおばあちゃんがよく作ってくれたものだけど、、、こういうのを正々堂々と出してくるのは好感がもてる。餡はあまり甘くない、小豆感たっぷりのものだった。中のご飯餅も潰しすぎておらず、いいあんばいだった。

総じて、突出して旨い!というようなものではなく、純和風のセンスのよい食卓。しかしそれをこの空間内でゆったり食べているということが全てかもしれない。満足度は100%である。サービスも悪くなかった。

これはやっぱり、デートの回数を重ねた恋人同士が行くべき店かもしれない。落ち着いた店だから、両家の親対面の席としてもいいかもね!料理もしっかりしているし、場所の静かに圧倒されるパワーは凄まじい。一日ぼんやりしていたいと思う建築だったのである。

食後、さきの洋館の喫茶スペースで和菓子とお茶をいただく。


これ↓フォンダンショコラではなくわらび餅だ。カカオの風味がしたように思うので、きっと餡に仕込まれていると思う。

「いやー 建築、すごいですよ!」

と小池シェフも感動している模様。この空間が日本橋周辺に欲しいね、と言うと、「とてもじゃないけどこんな敷地、絶対にペイしない」とのこと。ま、そりゃそうだろうな。

いやー
建築をこんなに心からムチャクチャ堪能したのは久しぶりだ。
食事をとるとき、その環境は人の意識に大きく影響を与える。それはわかっているつもりだけど、なかなかここまで圧倒されることはないというくらいにいいものを見せてもらった。

俺も家を建てるときは小林さんにこんな家を設計してもらおう、、、(笑)


外に出ると、日がすっかり暮れて、庭が幽玄の世界になっていた、、、

と、いつもならこの辺で終了するところなのだが、、、
食後一時間。通常の料亭などよりはパンチの効いた味と量の和食だったのだけど、それでもハラがこなれてきた。

「ちょっと小腹が減りましたね」

「あ、やまけんさん俺もですよ!」(by小池)

実はくる時の車中で、小林さんがラーメン好きだということで一時盛り上がっていた。
彼がいま気に入っている店の中でかなり上位にあるのが、環七にある「せたが屋」だという。

「魚系のスープが効いてて、旨いんですよ」

おお!魚系は大好きだ。
そのイメージがなぜか心と胃袋に去来し、たまらなく食べたくなる。

「せたが屋行きましょう!」

「マジ?今から行きますか?」

ということで一路店へと向かう。

「回転はいいんだけど並びますよ」

というだけあって確かにすでに店には15人くらいが並んでいた!

しかも、並び初めて後ろを見ると、短時間のうちに一気に20人以上が並んでいる!
交差点の対角にもラーメン店が林立しているというのに、なんとも超人気店ではないか!
15分ほどで店内に通される。

「ラーメンだったら『せたが屋ラーメン』てのが、トッピング全部盛りです。」

よしゃ、じゃあまずはそれ。でも、その横に「つけ麺」ボタンがあるのもチェックしてしまった。

「あー つけ麺も人気ありますね。麺が二種類あって、平打ち麺も選べるんですよ」

というので、平打ちつけ麺も食べることにした!

ラーメンができあがるまで、店主の口上を書いた紙を眺める。材料の説明が書かれているのだが、感心したのは、とある銘柄鶏のことを「○○銘柄鶏」ときちんと表示していたことだ。この鶏、けっこう「地鶏」として認知されているのだけど、地鶏という表示をするためのJAS規格をとっていないものだったと記憶している。それを地鶏として書いている店がしばらく前まで結構あったのだが、せたが屋ではきちんと「銘柄鶏」と称してあった。それだけのことなのだけど、店主さんのきちんとした性格がかいま見えるようだ。

「今日はおやじさんはいませんね。これがまた、肝の据わった人なんですよ」(by小林)

さてせたが屋ラーメンが運ばれてきた!

もちろん魚介系スープにはタマネギみじん切り山盛り投入でしょう!

ラーメンについては僕は造詣が深くないのでコメントは差し控えるが、中太麺によく絡み、十分な強さを感じるスープだ。僕が大好きな門前仲町「こうかいぼう」のスープをもっとガツン系にしたような感じだろうか。煮干しの味と香りが前面に出ていて、鶏や豚のスープは背後に回ってうま味成分として働いているという感じだ。トッピングに載っているアオサ海苔も磯臭さが無く、美味しい。豚トロの煮たのが結構入ってくるが、全部入りにするとちょっと多すぎてしまうが、それ以外は非常に美味しいラーメンだと思った。
しかも面白いのは、これに投入する独自配合のカレー粉があるということだ!

名付けてガツンカレー粉。これ、配合がまったく読めないのだけど、スープのコクが一瞬にして上がり、その刺激でさらに麺をすすり込むパワーを供与してくれる、なかなか面白いカレー粉である。

そしてつけ麺が運ばれてくる。

結論からいうと、つけ麺の方が好きだ!
麺は平打ちにしたが、ノーマルの中太麺でも旨いんじゃないだろうか。このつけ麺にも終盤、カレー粉を投入。ラーメンスープより酸味が際だつこのスープに特製カレー粉の組み合わせは実に最強。ますます麺をすするスピードが上昇する!

ズバババババッ
ズルルルルルルッ

と食っていたら、ラーメン大盛りを頼んだ小林さんや小池君よりも早く食べ終わってしまった(笑)
店を出るとき、小池君は店の女の子に「あの人の食べ方すごいね~、いったい何者?」と訊かれたらしい、、、(実話)

満足!
いやー 大規模建造物の下でゆったり愉しむ純和食と、瞬間的に爆発猛撃スピードですすり込む魚介系濃厚スープのラーメン。堪能した!

東東京に住んでいる身としては、月に数度は出向きたいと思ってしまう地域である。西東京を最高に愉しんだ一日だった!小林さん、小池シェフ、どうもありがとう!