岡山県高梁市には、山国ならではの郷土料理のスバラシキ世界が拡がっていたのだ!

2007年1月23日 from 出張

まったくもって神々しい風景を観てしまった。ちょっと他ではみられない、箱庭のような山の上に建つ家、そして見事なまでにヴィヴィッドな赤土の畑だ。

岡山から特急やくもで小一時間で備中高梁(たかはし)という駅がある。ここが山に囲まれた町、高梁。この高梁市役所の仕事で、郷土料理のお弁当を創るアドバイザーになることになった。この依頼をしてくれたのが、昨年の冬に築地の「うまいもん屋」で衝撃的な出会いをし、その後、猪肉を送ってくれる徳田君である。

市役所で会合をして、毎週月曜日に生放送をしているNHK第一ラジオの放送に電話で参加。その後、課長補佐の近藤さんに、高梁市の郷土食材を巡るドライブに連れて行って貰うことになったのだ。

車中でデジタル一眼レフカメラを取り出してセッティングをしようとして驚いた。なんと、2GBのコンパクトフラッシュカードを入れてくるのを忘れてしまったのである!ぐわー こんなこと、初めてだ。地元の電気屋に寄って貰ったが、512MBで1万円以上の値付けだったので買う気にならず。仕方がない、今回は写真無しだと落胆しながら山をぐんぐんと登っていったのだ。

近藤さんの家があるという集落は標高500m前後らしいが、周りに人工建造物が少ないためか非常にひそやかで静かだ。そして森崎さんという一軒の農家さんにお邪魔した。

古くからの農家である森崎さんが「せんせぃな、うちの畑はの、あまり自慢できるもんじゃないけど、風景だけは自慢できるんですわ」と、曲がりくねった小径を案内してくれた先にあったのは、暮れていく太陽が
あまりに美しく神々しく我々を照らす風景と、その強いオレンジ色の陽光にあてられることで、もっとヴィヴィッドに煌めく赤土の畑だった。

「この畑はのぉ、みてのとおり真っ赤な赤土ですが、ここでつくるゴボウは本当に商品価値が高くて、市場に出荷すると高値がついたもんですわぁ。」

しばらく僕は声を失いながらその赤土のゴボウ畑に見せられていた。こんなにすごい赤は初めてだ。デジタルカメラのメモリを忘れたことを忌々しく思いながらも、こんな風景を撮すレベルにはまだ達していないのだな、と納得することにした。

この土地でできるゴボウは食感はきっちりしているのにとても軟らかく、繊維質が感じられない特別なものだ。いまでは十数軒しか栽培していない貴重な「神原(こうばら)ゴボウ」を2Kgも分けていただいて返ってきた。

それがこのゴボウである!

家に持って帰らせていただいてから撮影したのと、むろにいけていた畑が、赤土ではないほうの土だったので、この写真だと表面が赤っぽくない。先に書いた畑の箇所は本当にすさまじい赤!だったのである。

それにしても美しいゴボウだ、、、

時期的に収穫後時間が経っているため、中央部分にスが入ってしまっているモノの、それは誤差範囲だ。極めて美麗なゴボウ断面。まったく筋張っていないのがなぜなのか、本当に不思議だけれども、赤土の特性なのかなんなのか。

このゴボウを最も美味しく食べる方法は間違いなくきんぴらゴボウだと思う。

市販されているゴボウとは全く違う。シクッという心地よい歯触りはするのに、歯の間に残る繊維がまったく感じられないのだ。いや、本当にすごい。

しかし2Kgは食いでがある。すべてきんぴらにするわけにもいかないのでいろいろ試しているところだ。
かなり気に入ったのが、ゴボウのポタージュ。

たまねぎとリーキ(ポロ葱)、ニンジンをバターで1時間弱炒めたものに、少しだけアクを抜いたゴボウを入れて水で満たし、イタリアで買ってきた野菜ベースのブイヨンキューブを半かけ投入してゴボウが柔らかくなるまで炊く。

これを冷ましてミキサーにかけ、どろどろにする。

これを牛乳で適度に伸ばして鍋を火にかけ、味を調えるだけだ。簡単、簡単。

結果、、、

むちゃくちゃ旨い!
家人にも喜ばれる逸品となったのである。ゴボウのアクはやはり抜きすぎてはいけない。すばらしい味に変化した。溶けるチーズを混ぜると、一層飲みでのあるポタージュになる。

神原ごぼうを美味しく食べる方法、もっとあるはずだ。もっともっと探求してみたいと思う。