岩手県北部を廻る旅に出た! 雑穀王国・二戸にて素晴らしき駅前雑穀料理店を堪能した!

2007年2月 9日 from 出張

岩手県の二戸に来ている。月曜日まで、岩手県内を数カ所廻ることになっているのだが、実に懐かしい。高校卒業後、民俗芸能が大好きだったので、自転車で東北の芸能を見て回る旅、というのをやったのだ。岩手県は民俗芸能の宝庫なので、祭が開催されるのを行ったり来たりした。北上みちのく芸能祭り、黒川さんさ踊り、早池峰神楽の例大祭など、芸能好きにはたまらない場所なのだ。

二戸はたしか国道4号線を通り過ぎただけだとおもうが、確かに通った。けどきっと懐かしい風景は残ってないだろうなぁ、と思ったのは、新幹線の二戸駅がとても綺麗だったからだ。

「いやぁ、駅だけですよ、駅だけ。一歩出たらほら、けっこうさびれてるっしょ。」

と言って出迎えてくれたのは、岩手県の農林系職員のS藤さんだ。彼とは、毎年開催される農業情報分野の大会で顔を合わす関係で、7年前の福井大会から意気投合し、いつか岩手に講演で呼んでくれるといっていたのが実現したのだ。

「やっときたかぁ、やまけんちゃん!」

いや、こちらもむちゃくちゃ嬉しい。岩手ではなかなか仕事をする機会に恵まれなかったのだ。

「まんず最初は、この駅前に素晴らしい店があるんだわ。ほら、あそこ」


む?
駅のロータリーの向こうに、バスの発券所&待合い施設がある。そこに飲食店が入っているのか?

「じつはこの待合い施設がしばらく前まで荒れててさ。中高生がたむろして悪さしてたんだわ。それを憂えた農家のお母さんが、いい食事を出す店出そうって決意して始めたっていうところなんだけどね」

といいながら入っていくと、ご老人方がバスを待つ中、奥の方に立派な飲食店スペースが展開されていたのであった。

■雑穀茶屋つぶっこまんま
二戸市石切所字栃の木63-66(JR二戸駅の真ん前)
01195-23-9039

「つぶっこまんま」という店名でピンと来る方も多いだろう。ここは雑穀料理の専門店だ。最近、ひえ、あわ、きび、たかきびなどの雑穀を使ったレストランなどが都内にも展開しているが、実は雑穀生産に関して岩手県は日本一を誇っている。特にこの二戸地方は、夏の季節風「やませ」があることにより、稲作が困難だったことから、作りやすい雑穀を食べてきた食文化がある。いわば、雑穀の本場なのである。

ただし、雑穀料理関連のレストランときいて、ちょっとためらいがあった。正直なところ、旨い雑穀料理に出会ったことがあまりなかったのだ。雑穀の健康的側面はよくわかっているし、うちでもきびやたかきびをご飯に混ぜて炊いてよく食べる。しかし、雑穀を主体とした創作料理に感動したことがほとんど無かったということだ。

ところが、、、
結論からいうと、この「つぶっこまんま」のご飯はとぉ~っても美味しかった。とても「佳い食事」だったのだ。

「いちおう今日はスペシャルお膳をつくってくれとお願いしてます。足りなければ雑穀ラーメンでも食べてください」

というとおり、すでにお膳がならんでいる。

献立は、

雑穀入りおにぎり(ひえ、あわ、きび)
古代米入りおにぎり
1年もののなんばん味噌添え

蕎麦の実ぞうすい

ヒエッシュフライ アマランサスソース添え
ビーフン ターメリックソース添え
五穀餃子
そばっこロール(豆腐・蕎麦の実・鶏挽肉)

きんちゃく袋(もちきび、凍み豆腐)
コリンキーの酢の物
大根、赤カブ甘酢漬け

雑穀レアチーズケーキ(ひえ・たかきび入り)
干し柿の赤ワイン漬け
豆しとぎ

へっちょこだんご

なんともすごいお膳ではないか!

ヒエのフライとビーフン、そばっこロール。そしてアスパラを巻いているのはお肉ではなく、板状の麩(だったと思う)だ。ヒエにはアマランサス入りのマヨネーズソースをつけて食べるが、、、  実に旨い! ストイックで原理主義的な自然食主義のお膳ではないからだろう。これは普通に通常に美味しい料理です。

■蕎麦の実雑炊

■姫たけ、ふき、アスパラ、エゴマソース添え

余分な化学調味料、一切無し。炒ったエゴマを摺ったものをベースに塩で味をつけただけ。これも原理主義的な色彩とは違う、郷土の味がする。

おにぎりがまた美味しい。古代米ベースのものと通常の米に雑穀を混ぜたものの二つだが、中に入っている具が大根味噌漬けだったりと、いちいち手間のかかったものだ。しかもこれに添えられたなんばん味噌、いわゆる一升漬けが実に旨い。このおにぎりが玄米だったらバランスがいまいちだったと思うが、適度な精米した米をつかっているので食べやすい。この辺も玄米食原理主義的でなくて佳い。

お肉も出てくる。地元のサスケ豚の冷やしゃぶ。これにかかっているソースが、この店オリジナルの絶品なのだ!
IMG_6319.jpg
このたれは店で売っているらしいのに、買わずに来てしまった。失敗!肉も端麗で美味しいが、タレが本当に絶品。余分な調味料が入っていない味だったが、芳醇。

いやぁ
素晴らしく美味しいお膳です!

「あらそれはどうもありがとうございます!」

と、店主の安藤直美さんさんに来ていただいた。
岡山在住の川北さん、名前を教えてくださってありがとうございました!

「ほんとうにねぇ、雑穀料理って美味しくないのが多いんです。私たちは昔から食べてましたから、『もっと美味しいものなのに、、、』って思っていたんですよ。私も農家の嫁ですから、うちでも野菜は作っていますけれども、この店で使わせていただいている雑穀は本当に素晴らしいものばかりです。一部は有機認定をとっているものもあります。」

上品なお顔立ちで、穏やかに真っ直ぐにお話しをされる。魅力的な方である!

きちんとデザートも出てくる。
IMG_6332.JPG
手前にあるのは干し柿の赤ワイン漬け。これが、ネットリした干し柿の食感とワインの香りの相乗効果で、素晴らしいデザートになっている。

「私たちが子供の頃は、渋柿ばかりだったんですよ。岩手県の気温ではタンニンが抜けないんですね。だから、テレビや漫画で人の家の柿を盗む子供をみると、『うそだぁ~』って思ってましたよ」

そうなのか! 柿の渋は気温で左右されるのか、しらんかった、、、

さて足りないので雑穀ラーメン。

麺に5種の雑穀を練り込んだラーメン。しかしスープも美味しい!

駅前の待合室の中という立地で雑穀料理を銘打っていると、なんだか旨そうな感じがしないが、とんでもない! この店、とてつもなく秀逸である。東北新幹線に乗るなら、途中下車してランチをとる価値があるといっていい。そんな風に実感した。しばらく前のJRのポスターに雑穀の本場としての二戸のアピールをしたらしいのだが、この写真の料理をあつらえたのもこの「つぶっこまん ま」の安藤さんなのだ。

雑穀料理ファンも、そうでないひとも、ぜひこの志高い店を訪れるといいだろう。純粋に料理が旨いのだ。

この地方の名物である、小麦を使った団子をいただきながら出発。さて、岩手県北部の素晴らしき味に出会えるだろうか。