やっぱり飛騨高山の人たちは篤い!

2008年3月21日 from 出張


やっぱり飛騨高山という地は、ただの観光地ではない。観光客が喜んで集まるような要素に満ちている。だから観光地になったのだ、と強く感心する出張だった。

高山市には地方市場があり、そこに卸売会社が二社入っている。そのうちの一方である高山水産青果のお招きをいただき、生産部会の総会の後に講演をしてきた。

その夜。当地のメインホテルであるグリーンホテルで宴席。

さて乾杯の音頭の後、粛々と席で食事をとる。僕の方は、部会の皆さんにお酌でもして回った方がいいのかな、と席を立つタイミングを探る。そうしていると、隣に座った高山水産青果の社長さんから「”めでた”が終わるまでは着座していてくださいね」と言われる。

”めでた”ってなんだ?

と思っていたら、「では”めでた”を専務にしていただきましょう!」と、ステージ上に専務さんが上がる。後ろに控えているのは先ほどまで日舞(実に見事だった!)を踊っていた芸妓さんである。

「えーそれではめでたをやりますので、ご唱和願います」

と専務がやおら、三味線の調べに乗せてめーでーたぁーと唄い始めるではないか!
しかも、専務の後に続き、皆さんがめーでーたぁーと追従している!
えええ?なんだこれ?この唄、みんな知ってるの?

2分ほどの唄が終わり、大拍手。ぼくはぽかーんとしているだけだ。

ふふふとお笑いになった社長さんが、

「びっくりされたでしょう?高山ではこの「めでた」を唄うまでは必ず自分の席に着座していないといけないんです。いきなりお酒を飲んだら身体に悪いですから、この間に刺身や吸い物を食べてしまってくださいね、という心遣いなんです。そして、めでたの後は無礼講になるんですよ。」

なーるほど!
これも飛騨の心遣いか!
たしかに一気に皆さんが席を移動し、お酌タイムの時間になっている!

前に、週アスの取材で来たときに、この地方の名産である飛騨ナスを美味しくいただいたのだけど、その飛騨ナスの代表的な生産者さん(写真右)など、実にすばらしき達人がいらっしゃった。

芸妓さんも達者な方たちばかりだ。

さっき日舞と三味線をやっていたこの”まみ”さんは、実は地元の有名人。レコードも出しておられる歌手でもあるが、その正体は美容師?なんとも多彩でパワフルな方。実は似顔絵が得意で、こういう席でかならず何人かが描いてもらえるのだそうだ。

これが僕だそうだ。
似てるかなぁ、、、実物のほうがもう少し下だな。

さて
一次会・二次会後、専務と今回招聘してくれた古里さん、東さんと街に出る。

飛騨高山の繁華街といえば「一番街」だ。
ここには実に風情豊かな「半弓道場」があって、300円で10本くらいの矢を的に向かって射ることができる。これが実に楽しいのだけど、この日は早々に閉まっちゃったらしく、行けなかった。残念!

で、向かうはまだこれで3回目なのにも関わらず、僕の高山でのホームグラウンドとなってしまったお茶漬け「一茶」。

一緒にきてくれた市場の面々も、「お茶漬け食べには来てたけど、ほかの料理って食べたことなかったなぁ!?」と当惑顔。

しかし、この店は実に美味しい料理を出すのだ。

一家でやっているこの店の若旦那の吉川さん。実は大阪で洋食の修行をしていた人で、技術をしっかりともっているのだ!

赤カブをつまみながらビールをやっていると、まずはこれでしょう!
おそらくこんな料理はここ飛騨にしかない、漬け物ステーキ!

古漬けの酸っぱくなったやつを多種刻み、油で炒めたものに醤油ベースのタレで味をつけ、鉄板に置いて溶き卵をジュワワワァっと流し込む。

これをぐちゃぐちゃにして鰹節をまぜこんでいただく。漬け物の酸味と半熟卵のまろやかさ、そして鰹節のストロングな旨味と醤油の香りが渾然一体となって、酒よりも白飯が食いたい!という逸品なのだ。

しかしこの店は実は洋食系メニューが実にお奨めなのである。
まずは、飛騨牛のミンチが入ったコロッケ。もちろん吉川さんの手作りだ。


横についているキャベツなどの野菜ピクルスがまた秀逸!

揚げ置きはしないから、かりっと強めに上がった外側と、熱々の内部芋でホフホフと犬状態になってしまう(笑)

お次はオムレツのミートソース添え。

ただしくトロトロ、しかし流れ出ることはない、正しく半熟の加減だ!

オムレツにミートソースってのはなんともキラーな見た目ではないか!

そして、鶏の唐揚げなのだが、、、

以前も書いたと思うけれども、ここの鶏唐揚げはちょっとよそと違うのだ。肉に複雑に走る筋をすべて取り去り、食感を均一にしたうえで火がホックリと入る厚みに切りそろえる。そして、下味は柔らかくつけるにとどめ、別皿にてツケダレを供すのだ。

これが、びっくりするほどに美味しいのだ!普通の唐揚げだと思ったら大間違い。
胸肉のように柔らかく千切れるが、弾力と旨味はもも肉のそれ。実に不思議な食感なのだ。隣で食べていた古里さんも「これは知らなかった!すごいよ!」と興奮している。
一茶に訪れたらぜひ食べて欲しい逸品だ。

あくまでおにぎり・お茶漬け屋さんの看板なので、この辺の飲み屋の人たちがささっとご飯をたべにきたり、ほかの店で呑んでいた客が最後に茶漬けをさらさら食べて帰るというのがこの店のよくあるパターンなのだけど、それだけではもったいない。是非料理を食べていただきたい店である。しかも、お父ちゃんお母ちゃんの存在も実に味わい深いのだ。

イカフライにも隠れた技が。

リングにはせず大きめの短冊になった肉には皮が取り去らずに残っている。
これが、旨さと絶妙な歯ごたえを感じさせるのだ。

「揚げ物はすべて油と鍋を変えて作ってます。コロッケの鍋でイカを挙げたら、肉の香りがしちゃうから」

というが、こんなカウンター12席程度の店でそれをやるなんて、ちょっとびっくりだ。

サワラの西京焼き。美味しゅうございました。

ホウレンソウ胡麻和え。すりごまと粒ごまを両方合わせるのがニクイ。

そして〆はお茶漬け、具はぜんぶ入り。

出張先に、迎えてくれる店があるというのは本当に嬉しいことだ。
飛騨高山は本当にホスピタリティに満ちあふれた地だと思う。
これからもっと通いたい場所だ。