僕の短角牛たち。 さちはこんなに大きくなり、第二子「国産丸」はこんなふうに育ってます。

2009年4月30日 from 出張,日本の畜産を考える,農家との対話

岩手県二戸市にて、僕は短角和牛の母牛のオーナーになった。彼女が産んでくれた第一子はメス。「さち」と名付け、昨年の11月から肉牛農家の漆原さんに預け、肥育段階に入っている。先日会いにいったときと比べて、ぐぐぐぐっと身体が大きくなっているので、驚いてしまった!

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えええええええええええええええええええええええええ
でっかい! ガタイのいい杉澤君の体躯と比べてもこれである!

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もうすでに400kgになっているという。可憐な少女だった時代はもう過ぎて、大人の会談を上り始めたという感じだろうか。うーん なんか複雑。

この「さち」は、予定で行くと来年の7月あたりに肉牛として出荷可能な体重に達する見込みだ。「幸多かれ」と名付けた「さち」と言う名前なのに、僕はこの子を食べようとしている。できれば、と畜場にも行って立ち会い、彼女が命を失い、解体され、肉となって行く過程をきちんと見届けようと思っている。卒倒してしまうかもしれないけれどもね。さちの肉は、僕のゆかりの料理人達に料理してもらって、食べる会を開催したいと思う。その際はぜひご応募下さいね。

現代社会において大型化畜の肉を食べるということは、ある意味、とても罪作りな行為だ。黒毛和牛は、肉牛となるその生涯で4トンから5トンの穀物を食べるが、そのうちの2トン程度は米国産のデントコーンである。日本人は知らないうちに他国の穀物を凄まじい分量で消費している。それを直視しなければならない。

現代社会で動物の肉を食べることを否定するということはできない。だから、少なくとも肉が目の前に運ばれる過程くらいは識っておくべきだ。命をいただいているということを理解するのは、無言の義務だろう。

短角牛は、米国産コーンをそんなに食べずとも身体を大きくしてくれる。漆原さんの牧場では、雑穀などを与えて、味と増体をバランスさせている。

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さちはこれからさらに体重を増やしていくフェーズに入る。またできれば毎月リポートしていきたい。

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漆原さんの農場には、勝手に繁殖したのか、大量のスイセンが群生している。その中に、アサツキとふきのとうがこれまた大量に伸びていた。んー 掘って帰りたかった、、、

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さて一路、浄法寺の役場の前にある農協へ。

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僕の短角牛たちは、組合や漆原さんに預託している。発生する預託料や様々なお金を決済するためには、農協に口座を持っているほうが先方にとってやりやすい。ということで口座開設。農協に口座を作るのは、農業関連の仕事をしてきたのに初めて!ちょっと嬉しい気分だ。

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「んじゃ、新しい子を観に行きますか!」

と杉ちゃんが、短角牛のオーナー牛舎へ車を向けてくれる。既報のとおり、僕の短角牛の第二子が先日産まれたのである。今度の牛はオス。

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「名前を付けてくれる?メスはひらがなだけど、オスは漢字でね」

ということだったので、僕が付けた名前は、、、

「国産丸」である! なんでこの名前かというと、この子は母牛と牧野で草を食べて育った後、二戸で肥育するのではなく、山形町の友人の農家に預けたいと思っている。そこでは、国産100%の飼料を与えてもらうつもりだ。つまり、完全に国産の飼料しか食べていない短角牛となる予定なのである! だから、「国産丸」。

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母牛は、以前はとても神経質だったけれども、成長とともにどっしりしてきた。僕が近寄っても以前のように逃げたりせず、ゆうゆうとサイレージした草を食べている。

で、この子が国産丸! とっても可愛いのである!

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ありがたいことに、今回は育児放棄はしていなかった。乳房がまだ詰まっていないからか、ちゃんと国産丸に乳をやってくれている。

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看守さんに聴いても、成長の経過は順調とのこと。嬉しいことだ。
この母牛は、乳量が多すぎて乳房が詰まってしまう特性を持っているので、今年の冬の市場で売ってしまった方がいいと言われていたのだけど、もう少し経過を見て再度、考えることとなった。正直、ホッとした、、、

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稲庭高原はまだまだ雪の壁が溶けていない。帰り道、最高の水がわき出ている岩誦坊(がんしょうぼう)へ水くみに。

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シャッタースピードを遅くして、水の流れを綺麗に撮ってみた。腕が無くても、構図が、とても美しい絵になる湧き水なんだなぁ、、、

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さて夜はもちろん短角牛専門の焼肉屋である「短角亭」。

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まずはカルビ。

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そして僕が最も好きなモモ肉。

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これが出ると、焼かないで生の状態でバクバク食べてしまう。

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そしてこの日はとてつもなく分厚い、短角のタンを出してもらった!

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短角のタンは滅多に食べられないぞ。その辺のオージー牛のタンとは全く価値が違うのである。食感、迸る肉汁の旨さ、最高である。

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ハラミ。いたずらにサシが入っていないので、肉の旨さがきわだつ。

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この日はレバーが入らなかったのだが、その分このハツと、この後に出たミノが大きな存在感を占めた。

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もうおなじみの槻木(つきのき)専務。安定した品質の短角牛が欲しければ、まずはこの短角亭へいくのが手っ取り早い。

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岩手県の問題は、せっかく短角牛という素晴らしい資産がありながら、それを食べられる店が県内にほとんどないということだ。盛岡では、じゃじゃ麺の「白龍」の近くにある「大地」ともう数軒でしか食べられない。黒毛である前沢牛を食べる店はあるのに、短角がないというのはちょっとね。ということで、二戸駅からすぐの短角亭を目指してくるのが最も近道である。

この夜は、十文字チキンカンパニーの社長である保雄さんがご乱入。そして十文字さんが、盛岡で外食店を展開しているコラゾンカンパニーの工藤社長を電話で呼んでくれる。

「いまどこ?盛岡? じゃあ二戸までおいでよ!」

という凄まじい強引さで呼んでくれたのだが、この工藤社長がきちんと来るところがスゴイ!

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工藤さんは僕と同い年と言うことがわかり、ググググっと距離が近くなる。

「やまけんさんのブログは読んでますよ~ 今度はうちにも来てください!」

と、自分の店で製造している冷麺やじゃじゃ麺を下さる!

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これが、別途書きたいと思うけど、美味しい! 麺の硬度やタレをきっちりと作り込んでいる。今度、コラゾンの店に行ってみたいと思う。

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思いも寄らない、楽しい夕餉。

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満腹になって、定宿のパークホテルに帰ったのである。

 

■撮影データ
ボディ:ニコンD700
レンズ:AS-Sニッコール28-70mmF2.8、60mmマイクロF2.8