島根県の元気な農業者の極めつけは、かつべ種畜牧場の勝部さんに決定である! 久しぶりに黒毛和牛を美味しいと思った一夜だったのだ!

2009年6月 1日 from 出張,日本の畜産を考える,農家との対話

DSC_7717

島根県は実に凄みのある農業県だと実感したのは、旅程の最終地点であるかつべ種畜牧場に踏み込んだときだ。

DSC_7607

DSC_7647

「種畜」とは、要するに種を提供するオス牛だ。肉質の善し悪しのほとんどは、血統によって決定されるといっても過言ではない。そして、オス牛の血とメス牛の血のどちらが重要視されるかというと、オス牛だったりする。メス牛はどうでもいいというわけでは勿論ないけれども、オスの特質のほうがより重要視される。

黒毛和牛の評価軸において最高とされるA5というランクを目指し、各都道府県レベルで種雄牛を所有している。農業新聞をみていると、どこそこの県の牛がものすごい数値をたたき出したというニュースが載るように、種畜の評価は一大事なのだ。

ではその種畜というのはどこで産み出されるのかといえば、試験研究機関であったり、民間のブリーダーであったり。そう、勝部さんの牧場は種畜を送り出すエリート養成牧場なのである。

DSC_7627

この方が代表の勝部信二さんだ。そしてこちらが息子さん。どちらも牛のエキスパートである。

DSC_7624

とにかく種畜を造るなんて、言葉は簡単だけど、すさまじく大変な仕事だ。佳い血統と佳い血統を掛け合わせればいい種畜が出来るというものでもない。動物には、遺伝的に病気に罹りやすい特質をもっていたり、母方の系統によっては全然、父方の特質が出なかったりもするからだ。

しかし、勝部さんのところはすでに多数の都道府県に種畜を届けている。すごい技術と経験の蓄積である、、、

DSC_7658

DSC_7672

その勝部さんの言葉で僕が驚いたのは、こういうくだりだ。

「いやぁ、しかし黒毛和牛ってのは、4トンも穀物を喰ってようやく育ちます。穀物の需給が今後どうなるかわからないこんな時代に、もしかしたらばちあたりな家畜を育ててるんじゃないか。10何年後には、黒毛を育てることが罪みたいなことになっているんじゃないかと、思うですよ」

いやー
黒毛和牛の種畜を造っているところでこんな風にしみじみ言われるとは思わなかったので、感動してしまった!

まったく、黒毛和牛というのは日本が世界に誇る特別な牛であると同時に、最も罪な家畜でもあると思う。個人的には、黒毛和牛ばかりがもてはやされる現状が問題だと思うのだが。マスコミが、食べてもいないのにA5のサシがバンバン入ったやつを繰り返し「最高!」とほめあげ、映像・画像で消費者の欲望を刺激しまくることがオカシイと思う。

DSC_7678

「ま、それはともかく、うちの肉を食べて欲しいから、いまからうちが昵懇にしている店にいきましょう!」

と言うことにあいなったのである。

DSC_7680

■えんまん亭
島根県出雲市天神町74-2 
0853-30-7713

DSC_7683

この店は、開店当初から勝部さんとがっちり組んで、直接取引に近い形でかつべさんの牛の肉を使ってきた店だという。ここで、勝部さん自ら肉を焼いてくれるという、豪華な夕べである!

DSC_7703

本当の、黒毛和牛の牛タン。

DSC_7699

黒毛の牛タンなんて、そうそう食べられるもんじゃない。みよ、この凄まじきテクスチャーを!

DSC_7700

DSC_7705

「はい、タレじゃなくて塩で食べて下さいね!」

いやもうそりゃ 当たり前ですよ!

DSC_7710

結論から言ってこのタンが一番うみゃ~い!
シクッという歯ごたえ、サシが乗りすぎているようで実はそうでもない絶妙な加減。いやこいつぁ旨いです。

DSC_7698

レバー。焼いても佳かったのだけど、あえて自己責任で生でいただく。ていうかもちろん全く問題なし、とろける甘み。実はレバーは、身元がはっきりしていない場合はそんなに積極的に食べないことにしている。だって、肝臓って毒をせっせと無毒化する内臓ですよ。黒毛和牛はそうとうにストレスフルな飼い方をしているわけで、肝臓のダメージはでかい。だから、黒毛の内臓とくにレバーの廃棄率は高いときいている。ダメージを被っていて、と畜場の段階で「こりゃ食用にはならん」とされるのだ。

でも、勝部さんとこのは文句なし。綺麗な血色、クリアな香りである。

DSC_7713

えーと、部位どこだっけ、、、すみませんよくわかりませんが、適度な歯ごたえのある部位でした。

DSC_7714

DSC_7718 

DSC_7719

そして満を持して出ましたロース!

DSC_7721

DSC_7724

DSC_7725

ヒレ肉。

DSC_7733

うん、美味しい。いわゆる小ザシビッシリ状態ではないので、この程度のサシの肉であれば黒毛もいける。そしてなにより、脂の質がいい。口溶けがよく、ギトリとした感じがあまり残らない。勝部さんとこは、種畜を造るだけじゃなくて、肥育の技術も高いのだと思う。ご本人は「いやいや、肥育は普通に育てるだけだよ」というが、同行していただいた普及員のかた曰く「勝部さんのところは種もメス牛も佳いものを揃えていて、産まれてくる子牛のレベルが高いので、そんなことが言えるんです。まずその前提条件を整えられる牧場自体が少ないんですから、、、」とのことだった。

さてホルモン大会。

DSC_7726

DSC_7728

ウルテのバリバリ感がすごかった、、、

ご飯ものは、牛そぼろがたっぷりのったビビンパ。こういう、不人気な部位を美味しく使っているサイドメニューを見かけたら、ぜひ食べてあげましょう。そうじゃないと、人気のある部位しか売れず、農家が生きていけません。

DSC_7737

DSC_7739

そして、牛ラーメン。ラーメン好きじゃないから小さな器でいただいたけれども、うん、〆になかなか佳し。

DSC_7740

勝部さんが来月上京するらしいので、是非会おうということになった。いろいろ話をしたいことがあるのだ。

そしてこの勝部さんの牧場で最大のサプライズが、「経産牛は旨い!」ということである。これについては次回に書きたい。

明日から北海道。足寄に行ってきます。更新できるかどうか不明、、、