口蹄疫はまったく収まっていないよ!大規模和牛生産をする尾崎畜産の尾崎社長自ら現状を発信する。 おそらくメディアでは採り上げられていないことも含め、インタビューを速攻でアップする。 宮崎からの客人を迎える際にどのようにインタビューの下準備・後処理をしたか。

2010年5月31日 from 口蹄疫を考える

19:28 獣医氏の松本大策先生より、間違いご指摘あり。修正しています。

実はこの土曜日、緊急に尾崎さんと会った。関係省庁や議員、週刊誌などの取材の合間を縫って、ぜひ宮崎の現状を識って欲しいということで打診があり、会うことになった。

下記を読んでいただければわかるとおり、尾崎さんが口蹄疫ウイルスを運んでくる可能性は低い。けれども、僕は他県に足を踏み入れることが多い人間であり、尾崎さんとの接触を気にするところも多くなるはずだ。そこで、獣医師の松本大策先生に「消毒をどのようにすればいいですか」と聴いたところ、下記の返答をいただいた。

やまけん様

尾崎さんならきちんと話せば理解されるはずですから、
薬局でN95マスクを購入して着用し、会談後はミツカン酢の100倍液で頭から20秒ほど身体全体をぬらしておくと口蹄疫ウイルスは不活化するはずです。

マスクをはずすときは、ビニール袋にそっと入れて焼却(マスク表面はより危険と言えるので)しましょう。

衣類は、お酢の100倍液につけてから洗濯したらOKです。
本当は、尾崎さんが上京する前に、ご自分をお酢で消毒して
新しい衣類に着替え、空港ででもお酢原液で靴底の消毒をするのが望ましいのですが。


※やまけん注:尾崎さんはインタビューにあるように、毎日複数回自分を消毒しているとのことでした。

ICレコーダーやカメラはどうすればいいかということを電話で聞いたら、さすがにお酢希釈液を全面塗布すると壊れてしまうかもしれないので、消毒用アルコールを含ませた脱脂綿でよく拭いて、その脱脂綿をすぐ焼却すること、とアドバイスいただいた。消毒用アルコールだと、エンベローブという強い外皮を持つ口蹄疫ウイルスは死滅しないそうだ。
※間違いごめんなさい!
大策先生よりご指摘。
「アルコールで不活化できるのがエンベロープという被膜を持ったウイルスで、口蹄疫ウイルス(ピコルナウイルス科のアフトウイルス属)はエンベロープを持っていないのでアルコールでは消毒できないんです。それにカプシドという強い殻を持っているから手強いのだけど、酸とアルカリには弱いんです。いろんな人が見てるから修正お願いします。」
大策先生申し訳ありませんでした、、、

でも、丁寧に拭けば脱脂綿に付着するので、それを焼却すると言う方法が有効であるという。

このアドバイスに従ってマスクを購入し、着用の上で尾崎さんに会った。もちろんマスク着用するからね、ということは仲介をしてくれた星野さん経由でお伝えしておいた。

さて、ここから尾崎さんの話を可能な限り忠実に、前後関係だけいれかえたりしながらまとめてみた。ただし、短時間のインタビューでICレコーダーで拾えなかった言葉などもあり、不正確な記述があることはあらかじめお断りしておく。ご本人の訂正も随時いれていくので、いまアップするのは「Ver.1」である。

「ブログみて訂正箇所あったらいいますから」とのことなので、以後、内容が変わる可能性があることはお含み置きください。

本記事を含め、口蹄疫関連のエントリはリンク許可不要。こんなことが進行しているということをもっと多くのかたに識って欲しいと思います。

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■尾崎さんを取り巻く現状 そしてなぜ僕が外に出ているのかということ

25年前に結婚したときに繁殖経営を始めた。子牛が生まれたらまず嫁の名前をつけて、この子がお母さん牛になったときに産まれたメスに長女、次に次女、次に三女、こうして4頭の優秀な繁殖牛を得るのに25年かかった。オスは息子の名前をつけた。その、家族の名前を付けた大切な繁殖牛を失うことになった。

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尾崎畜産には本場(1500頭)と佐土原にある分場(100頭)がある。分場には僕にとって一番重要な妊娠牛達がいる。その分場から8.5kmのところにある養豚農家さんのところで感染が出た。これで分場はワクチン対象となり殺処分となることになった。とても残念だけど、それより問題なのは本場はどうなるの?ということ。

本場は分場から遠く離れた立地だけど、農水の見解としては「違う敷地であっても、同一経営者の場合は移動の可能性があるので殺処分が望ましい」という見解だった。すぐに農水に問い合わせをして検討した結果、実際の管理者が別であれば問題ないはずということになった。その時僕は営業の仕事で本場にも分場にもいなかったので、この時点で僕自身は分場にも本場にも接触しないということにした。幸い、どちらにも営業マンなどがいるので、申し訳ないけどそのスタッフ達に飼養管理をお願いしている。

幸いなことに去年、本場の敷地内にあった自宅を会社の寮にして、自宅は敷地から離れたところにあつらえた。従って今は、毎朝自宅で着替え・消毒をしてから防疫業務と募金活動をしている。帰宅して消毒して、という毎日。これで農水から、佐土原分場でもし出たとしても活動してよしというOKをもらった。

ワクチン接種は抗体を作るので患畜にするということになる。10km以内は患畜だらけになるので、人間の出入りもダメということになる。なので、ワクチン接種の4日前後からは農場に完全に出入りしないということとしている。

僕が東京に来たりいろいろ来ていることに対して心配している人もいるだろうけど、そういうことです。
10km圏内の人たちの気持ち、20km圏内の搬出制限内の人の気持ち、それを農水の人や政治家さんや、一般の人にわかってもらわないといけない。
圏内の農家で、自分の家畜を埋めてる人間は出てこられない。自分が感染源になると周りに迷惑がかかるから、とスーパーに買い物にも行けず、毎日おびえながら家の中で暮らしている。そんな状況から早く脱するために、迅速に対策を打たなければならない状況だということをもっと伝えたい。
おそらく俺しか当事者として動ける人間はいないと思うから、こうやって出てきているんです。

■「ワクチン接種&殺処分は可愛そう」と言っている場合じゃないんだ。

僕は全国に4000頭仔牛を飼っている。妊娠牛も1000頭送っている。宮崎牛の価値を一番知っているのは僕だと思うよ。但馬牛の血が二代入っているから小ザシがはいる。それなのに、一番大事な妊娠牛をワクチン接種&殺処分しなければならないし、本場にいる牛も早期出荷しろという。早期出荷といっても、おそらく値段はつかないだろうし、妊娠牛や仔牛などこれからの牛もすべて出荷しろと言われるから、結局全滅ということになるわけ。

けれども、口蹄疫を食い止めるためにはこれは仕方がないこと。僕は自分の大切な牛たちにワクチン接種をして、少しでも早くこの事態を終息させないといけないとおもっています。
ワクチンをうった牛は殺処分しないといけない。いままでうたなかったのは、使用すると汚染国になるから。中国・韓国はすでに汚染国。国際的な協定で、清浄国は汚染国からの輸入を断ることができた。けど汚染国になったら、他の汚染国から輸入牛豚肉が来ることになる。断る根拠が無くなる。
だからワクチネーションはすべきだ。

なぜかというと、日本の畜産は世界のルールをで戦わないといけないのに、ルールを破ったらいかんからよ。
本当に口蹄疫の怖さをわかってるなら、最初に都濃町で発生したときになんで種牛を動かさなかったのかっちゅうこと。たかはるの試験場にも同じ施設があるんだから、そちらに半分でも避難させればよかったと思う。その点では宮崎県にも責任がある。

■国にも責任があるけど、宮崎県の初動にも問題がある。

宮崎県の初期動作はよくなかった。口蹄疫が昔出たときにはまだよかった。ウイルスが違うと言われている。今回のが本当の口蹄疫と言われている。前回はうちは5km圏内。その時は議員さんが畜産のことをよく知っている人だったから、4000億の予算をとった。社団法人にプールしていた4000億があったから。それを背景に県に対して「どーんと対策をやれ」と言って後押ししてくれた。
そこで県としては、家伝法では20km圏内となっている範囲をを50km圏内に拡大して、徹底的な消毒をした。前回は通行する全車両の消毒をやった。県民もおおごとと思ってくれて協力した。結果、最終的には30億の支出で済んだ。この辺の判断は当時の県が英断をしたと考えている。

今回は全然、前回の学習が機能していなかった。
10年前は宮崎の養豚も和牛繁殖・肥育もぽつんぽつんと少なかった。本当は速攻で10km県内の通行封鎖して、殺処分すべきだった。今回の県の初動はやはり認識の甘さがあったと思う。

消毒についても国道10号線で徹底的にやるべきだった。僕はここまでおおごとになる前に早い段階で提案をしていた。それは、10号線そのものに消毒ポイントを設けるのではなくて、そこから伸びる幹線の入り口のアスファルトの表面をはがし、そこに消毒液を流し込む。そこを速度を落として通過してくれれば、とりあえずタイヤの消毒はできるわけ。それを提案したところ、国土庁はOKしてくれたのに、なんと宮崎県警が「GW中だから大渋滞する」といって停めた。
それにあの頃風は北に向かっていたので、宮崎方面に来るはずがない。けれども人の流れはでっかいイオンがある宮崎市内に来るのは当然。僕は人の動きがウイルスを運んでいると思っている。

 

■本当にやらねばならない超法規的措置は埋却地の確保! 現場の農家は罪もな  いのに苦しんでいる。

県内の農家はみな自分の圃場周りを消毒している。でも、目の前の道路には消毒していない車がどんどん通る。これはおかしな話よ。

県が消毒しろというからやる。ふとみたらエサを食わん豚がいる。家畜保健衛生所に報告にいく。獣医が来て診察し、検体を国に送る。陽性になる。
そうするとFAXが来る。「殺処分対象なので準備しなさい」と。ここからが問題。家伝法では、埋却に必要な土地は農家が準備しなければならないとなっている。
けれども、それができない農家はどうすればいいのか?

最初は牛ばかりに口蹄疫が出た。牛をやる場合は、自家粗飼料(牧草など)の畑を農場周辺に持っているのがふつうなので、そこらに埋めなさいとなる。頭数規模も牛の場合はそれほどでかくはないから、なんとかなる。

けれども、豚は頭数規模がでかい。それにほとんどの農家は粗飼料生産はせず、配合飼料中心で生産をするのがふつう。養豚農家は養豚場だけしかもっていないから埋却する場所がない。それなのにいきなり「殺処分の場所の準備をしろ」といわれてもなんともいえない。

農家の仕事は生きている豚の管理と消毒。家伝法では自分で農地を確保しろといわれる。すでに初期投資の借金を抱えているけど、必死で借金して買おうとする。
しかし、追い打ちをかけるように「埋却地の周りの同意をとってくれ」とFAXが来る。そんなの、同意なんかとれるはずがないでしょ?牛でも同意がとれないのにどうやって同意をとるのか。そうして、同意がとれないままに殺処分が遅れている。

豚はウイルスを牛の1000倍放出する。だから豚に感染があると最悪なの。殺処分をスムースに進めないと大変なことになってしまう。

台湾はたったの2週間で蔓延した。それを宮崎では4週間、他地域への発生くいとめている。どれだけみんな頑張って消毒しているのかがわかる。みんな感染させないように買い物にもいかずに頑張っている。
こう言うときに超法規的な措置が必要なんじゃないか?農家に罪や責任があると思いますか?埋却地の確保と同意については国が先頭に立ってやってくれなければ無理です。

 

■いま必要なものは冷凍コンテナ そしてボランティアの方への募金。

最初は味方だった宮崎県民が、敵になっていくのが怖い。
例えば養豚農家からみれば、種牛を残すことを非難している。この気持ちは抑えきれないと思う。だって、養豚農家も種豚を断腸の思いで殺処分している。殺処分は獣医師にしかできないけど、殺処分の最前線にくる獣医師さんの中には、現場に不慣れな人もいる。豚舎に入って豚に注射を打つときに、血管をうまく見つけられなかったり、種豚が大きくて怖いから遠いところからうまく殺処分できず苦しめてしまう。そういうのを泣きながら見ている養豚農家からすれば、種牛避難の問題は許し難いと思う。

個人的には、県が特例措置で6頭を避難させたとき、心の中で感謝をした。けれどももう守れない。これは仕方がないことだと思う。

まだ消えてない火(ウイルス)をどう消すかということが重要。まだ感染が拡大しているわけだから。それには、冷凍コンテナが必要です。

なんで冷凍コンテナが必要か。
実は今、殺処分が2週間くらいずれている。本当は発症して次の日に埋められれば拡がらない。けれども今はそれができていない。二週間は牛豚がいきている状態。先も述べたように埋却用の土地が入手できなかったりするからだ。

問題は、殺処分がくるまでの二週間に子豚が死ぬ。口蹄疫は口などがただれてエサや乳を飲めなくなり、栄養失調で死んでしまうという病気。その子豚が死ぬと埋めるところがない。一頭の豚が10頭以上の子豚を産むから、数が多いわけ。だから、子豚のうえに石灰を播いて放置するしかない。それが数日経つと腐って悪臭が出る。それをカラスが食べて蔓延するのが一番怖い。どこに飛んでいくかと言うことが怖い。

だから、冷凍コンテナを圏内に5基くらいは配備して、そこで埋却地確保まで、子豚を冷凍保管しなければならないということです。

いま、そういう嘆願書を持って関係するところを飛び回ってます。

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(とりあえずここまで。できるだけ早く続編をアップします)