あの中国のトウチよりずっとインパクトの強い旨さと香りがする「一休寺納豆」の景観を守るための資金、あと7万円程度で集まるので、後押しする!

2015年4月11日 from 出張,日常つれづれ,食材

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詳しくは下記のリンク先を観て欲しいのだけれども、ここ数年親しくさせていただいている京都は宇治の一休寺の副住職である田辺さんが、文化を守るために奔走している。

■一休さんでおなじみの京都府京田辺市にある"一休寺"で、2015年9月11日〜13日に枯山水庭園(かれさんすいていえん)が存続の危機にあることを知ってもらうためのライトアップイベントを実施したい!
https://readyfor.jp/projects/ikyuji

一休寺といえば「あの」一休さんである。っていって通じるのって僕とかと同年代だけなのかなあ。当時アニメーションで放映されていた一休さんのイメージが何歳になっても浮かんでくるんだけど、実在した一休和尚が建立した寺である。

この寺には二つの素晴らしい文化がある。ひとつは「一休寺納豆」!

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納豆と言っても、糸を引く納豆ではない。大豆を発酵させる、中国の麻婆豆腐に使われるトウチと似た食べ物だ。というより、中国から一休和尚が製法を学んで帰ってきたんだからトウチなんだけど、ともかく一休寺納豆である。同じようなものが大徳寺納豆で、料理の世界ではおそらくこちらのほうが有名かもしれない。

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しかし、この一休寺納豆は素晴らしく美味しい!なんといってもインパクトのある香りで、5メートル先から香ってくる強烈さだ。そしてすさまじく凝縮された旨み。一粒でご飯一杯食べられちゃうかもしれない濃さなのである。

もうひとつのたいせつな文化とは何か。それはこの一休寺の景観である。これについては文章で書いても伝わらないだろう。実際に僕が足を運び、彼に案内してもらった時の写真ですこしでも伝わればと思う。

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このように一休寺の庭は素晴らしい空間になっている。のだが、この風景を美しくしている、背後の山林が伐採され、住宅地になってしまう危機にさらされているのだという。

それに対して彼がとろうとしている手段は、「ライトアップ」である。

「えっ?」

と最初思ったのだが、考えているうちに腑に落ちた。これは「戦い」ではなく「気づき」のための行為なのだ。反対運動を声高にするのではなくて、この素晴らしい景観は周りの環境あってのことなのだということを、訪れた人達にしってもらう。そこから、参加者の心に何かを産み出そうという行為なのだろう。

賛同する人は3,000円、1万円、3万円、5万円、10万円、15万円とそれぞれ独自の内容の参加券プラスαを買うことができる。ライトアップ当日の特典があったりするのだが、1万円コースには「もくもくじ」というお菓子が着いてくる(おそらく足を運んだ人だけだけど)。これがどんなお菓子かというと、、、

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こんなお菓子です!

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もちろん、一休寺納豆が練り込んであります! ほんのちょびっとのはずなのに、すさまじい存在感!でもお菓子としてちゃんと成立している。非常に美味しい! そう、麹の発酵食品にはバニラ香のような香り成分がものすごく沢山発生するからね。お菓子に合うのです。

ということなので、ぜひ足を運んであげて欲しい。僕はちょっと日程的に行けそうにないが、1万円コースをこれから申し込むつもりだ。

一休寺の衰退は一休寺納豆の衰退でもある。それはさせてはならないと思う。ということで、一休寺納豆のことを書いた原稿を下記に転載させていただく。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

誰もが知っている一休さんがいたお寺がある。その名も酬恩庵(しゅうおんあん)一休寺といって、京都府の京田辺市にある、地域の人たちから愛されている由緒ただしきお寺なのである。この寺に、一休さんが伝えたという、伝統の美味があるのだ。

 

■アノ料理に使うアレに似た調味料

中華料理を好きな人なら、麻婆豆腐や回鍋肉といった料理の、あの独特の甘辛い味噌のような味わいに惹かれているはず。もちろん僕も、大好きです。中国では日本よりも味噌っぽい調味料のバリエーションが多く、北京ダックのタレに使われる甘い甜麺醤は小麦の味噌、辛い豆板醤はソラマメの味噌だ。でも、マーボー豆腐や回鍋肉に、奥行きのある香りとコクを与えるスペシャルな調味料がある。それは「トウチ」といって、黒大豆を麹菌で発酵させたものだ。通常の大豆の味噌に比べて香りがとても強くて塩味も濃い、存在感のある調味料である。

さて、このトウチのように強烈な味と香りの調味料とほとんど同じものが、日本でも作られているのはご存じだろうか。静岡県にある大福寺の「浜納豆」や京都府の「大徳寺納豆」、そして「一休寺納豆」がそれだ。納豆と称してはいるけれども、いわゆる納豆菌で煮豆を発酵させた納豆とは違い、その製法は味噌によく似ている、というよりはトウチそのものに近い。それにしてもなぜナントカ寺納豆というのが多いのかというと、そもそも仏教の伝来とともに、中国から渡ってきた食文化だからだろう。ちなみに一休寺納豆は約500年前に、一休禅師が中国の製法を日本風に伝え直したものだという。

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3年前、僕の事務所にお弁当の包みのような、経木の箱に包まれたものが届いた。差出人は一休寺の副住職さんだ。なんと僕の本を読んで感動して送ってくれたらしい。そのブツだが、かなりヤバそうだ(笑)。なにせ包みを開ける前から、ムワアッと強い醤の香りが半径5メートルくらいの空間に漏れ出る。す、すごい匂いだぞ!と包みを開けると、黒くて豆のような粒がいっぱい包まれていたのである。

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一粒つまんで口に運ぶと、爆発的な香りの宇宙が僕のまぶたの裏に流れ星のごとく展開した。すごい密度の濃い香り空間である。そして強いが心地よい塩分、この一粒でご飯が一杯食べられそうな存在感なのだ。

すぐさまお礼の連絡をして、いつかお寺に遊びに行くと約束した。それが3年でようやく叶ったのである。そうして僕は京田辺の地に降り立った。

■一休寺には伝統と革新ふたつあり!

一休寺の駐車場に車を止めると、作務衣を着たお坊さんが僕らを観て腰を上げ、軽く頭を下げてくれる。副住職の田邊宗弘さんだ。

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彼の後を追ってお寺の敷地に入る。不勉強で申し訳なかったのだが、ここは重要文化財。写真を見ていただければおわかりの通り、居るだけでとても心地よい、美しき空間なのである。

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禅宗の寺院で接客に使われる方丈という建物の一室に座ると「じゃあ、早速、、、」とお抹茶と一休寺納豆、そして洋菓子のようなお茶菓子が並ぶ。

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一休寺納豆を一粒つまみ口に入れると、あの爆発的な香りが口中に充満し、鼻からも芳香が漏れる。お抹茶をすすると、香りが絶妙に混ざり合って素晴らしい!

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「そのお菓子もぜひ、いただいてください」

と田邊さんが言うので、クッキーのような焼き菓子をぱきんと口にいれる。と、甘い香りの中からあの一休寺納豆の香りが!

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単体で食べると味噌を過激にしたような味わいなのに、焼き菓子に入れるとバニラやブドウのような濃密な香りがするのはなぜだろう?とにかくビックリしながらいただいた。

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「今の時代に一休寺納豆を活かすにはどうしたらいいだろう、と思って、いろいろ実験をしてるんです」

いやこれは、すごい実験じゃないか!

でも甘いものに一休寺納豆ってすごいなと思っていたら、「じゃあ甘くない食べ方も、、、」と、あたたかいご飯が運ばれてきた。それに添えられているのは、豆粒大の一休寺納豆を細かく砕いて粉状にした「ふりかけ」だ。

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「形を変えただけなんですけどね」

というが、これをご飯にぱらっとかけて食べると、粉状になっている分、あじも香りもご飯にからみついて非常に美味しい!

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この一休寺納豆、じつは一年かけて造り上げるたいへんなたべものだ。

その仕込みが始まるの暑さのピークである7月末。蒸した大豆にはったい粉、そして麹を混ぜ込む。これをよくかき混ぜて麹蓋と呼ばれる木製の箱に入れて麹室に置く。_DSC0178

これによって麹菌が蒸し大豆に食い込んでいく。その大豆麹を塩水の入った桶に入れ、朝になると蓋をとってかき混ぜ、夕日が沈む頃に蓋をして寝かせる。これを1年間続ける。

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すると天日に干され、かき混ぜられることで発酵が促進され、味噌のような醤油のような黒褐色の状態になっていく。ぽろぽろの状態になったものを豆のように丸めて仕上げたのが、一休寺納豆なのである。

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「この製法は500年前からほとんど変わっていません」

というのだが、こんな強い味わいがあったとは。きっと、精進料理を食べる僧侶の滋養強壮に効く食べ物という位置づけだったのではないだろうか。

■フレンチと一休寺納豆の素敵なコラボ

一休寺納豆の冒険はまだまだ続く。

「ご案内したい店があるんです」と連れて行ってもらったのは、同志社大学の京田辺キャンパスのすぐ近くにあるフレンチレストラン「ルスティク」。

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わずか10席の小さなレストランだが、腕の確かなシェフが営む、この辺にはもったいないほどの店だという。

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「いえいえ、この辺りで穫れる食材が全て美味しいんです!」

と振る舞ってくれる料理に心から驚いた!

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京田辺の名物である海老芋はシンプルなローストに。

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ネットリと舌に絡んでくるその食感にナッツのような香り。美味しいですねぇ。

そして驚きのメイン料理は、フレンチ定番・牛ほほ肉の赤ワイン煮。

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でも口に運ぶと、、、一休寺納豆の香りが赤ワインと牛肉の複雑な香りを、もっともっと深いものにしている!そう、その表面に一休寺納豆やクランチな食感のものがまぶされている。それと細かく刻んだ木の芽!

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ブッフブルギニオンだから煮込みなんだけど、やわらかいだけではなくてその食感が活きている!そして、赤ワインの香りと一休寺納豆の複雑な香りと旨みがからみあってすごい!

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「一休寺納豆は素晴らしい味なんで、なんとかフレンチにも使えないかと思いまして」という樺井俊之シェフの創意工夫は、中国~日本~フレンチを一気に串刺しにして愉しめてしまう一皿に凝縮されたのだ。

もくもくじだけじゃなく、マカロンにも一休寺納豆が!

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これも美味しい!

伝統は守るだけじゃダメだ、前進させなければ意味が無い。そんな無言のメッセージをいただいたような気がする一日だったのである。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

こんな素敵な一休寺納豆ストーリー。関心のある方はぜひ、彼の試みに付き合ってやってください!

■一休さんでおなじみの京都府京田辺市にある"一休寺"で、2015年9月11日〜13日に枯山水庭園(かれさんすいていえん)が存続の危機にあることを知ってもらうためのライトアップイベントを実施したい!
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