総走行距離363キロ!秋田県縦断 日本酒としょっつると旨い飯ばかりの豪雪体験だったのダ! その5 グレイト居酒屋「べらぼう」ナイトで秋田の味覚が勢揃いだったのダ!

2006年6月15日 from 出張

※再度更新。べらぼうナイト編は完結でございます。
※更新しました!ただいま新潟出張中!
※ヤツメウナギはミミズとは全然遠縁ということをメールで教えていただきました。ホッよかったぁ。渡辺さんありがとうございました!そのほか、かずかずの秋田のかた、メール有りが等ございます、秋田編はまだまだ続きます、、、

天洋酒店を出てから能代のビジネスホテルにチェックインし、すぐさま懇親会の会場となる「べらぼう」へ。

「この「べらぼう」という店が、本当にこの辺ののんべえや旨いもの好きに大評判の店なんですよ!」

と佐々木さんが言う。それはいいのだが、昼の晴れ間はどこにいったのやら、凄まじい吹雪状態である。横殴りに降りつけてくる雪のすさまじさにちょっと唖然とする。お約束通り、車からビジネスホテルの玄関にいきつくまでに滑って、ゴロンと雪をかぶってしまった。

さて「べらぼう」である。

店の看板には、能代名物の「べらぼう凧」の絵が掛かっている。

■酒どこ べらぼう
秋田県能代市柳町2-39
0185-54-4066 

この小さな店が、秋田の日本酒マニア、そして郷土料理マニアの垂涎の的となっているということだ。

店内にはカウンターと座敷。座敷に座っている客がほとんどで、みないい感じに酔っぱらった人たちばかりである。カウンター内の厨房では3人が忙しく立ち働いている。外は雪の降る、人通りのあまり観られない通りだったのに、店の中は活気ムンムンである!

この店の奥のもっともよい位置となる奥座敷では、なんとこの囲炉裏端が飾りではなくちゃんと機能するようになっているのだ!各種の鍋をかけ、ここでぐつぐつやるわけである。いや実に最高!

「やまけんさんお待たせしました、とうとう秋田の郷土料理を食べて頂く時間です。がっちり食べてください!」ということで、遠慮無く行かせて頂くのである!



さすがに日本海の魚を中心とした各種刺身がやばいほどに旨い!

「やまけんさん、それなんだかわかりますか?」

といわれたこの綺麗な肉の刺身、なんの魚だかおわかりだろうか?

「これ、サメなんですよ!」

なんとサメであったか!ふんわりトロリとした食感、特有のアンモニア臭さが全くないことで、思いも寄らなかった。鮮度がいいと不思議な脂分をもった魚として楽しめるのだな、ということにビックリ。

「あっやまけんさん、面白い食材がありますからちょっと表へ!」

と佐々木さんがいうので行ってみると、店のご主人が、水を張った魚のトロ箱から、なにやら長くヌルヌルしたテクスチャの生き物をつかんでいるところだった、、、

なんだろう、これ、、、
もしや!?

「ヤツメウナギだよ。ほら、穴が八つ開いてるだろ?」

うぉおおおおおお
これが生きているヤツメウナギか、、、正直、かなり気持ち悪い。

「これ、ミミズの仲間なんでしょ?」

と誰かが言う。 うわぁ 真実でもそんなこと言うな!ちょっと食欲シュリンクしてしまったのである。
いままでヤツメウナギといえば、浅草で乾燥させたのを粉末にして売ってるところのを覗いたことがあるだけだった。みているとちょっとウウッとなってしまうプレゼンテーションではある。

「この店の珍・名物料理の一つで、一時期しか出されないんですよ。」

というが、どんな味になるんだろう、、、

座に戻ると、先ほどの白滝の山本専務がいらっしゃっていた!

しかも今夜のお燗番は、天洋酒店の浅野さんだ。
また、喜久水さんもいらっしゃっている。

ここからは宴会である。秋田を代表する酒造の代表格が参集しているのだ、酒はもうすばらしいものばかりである。

「はいよ、うちのシャンパンをのんでごらん!」

と喜久水の喜三郎さんが出してくださったのが、生のにごりでシャンパンのように炭酸ガスが含まれた酒だ。これが実にシュワッと来て、ほどよい甘さのキレで、食前酒に素晴らしい。

「やまけんさんのお好きな”がっこ”ですよ!」

おお!秋田のお袋の味、がっこ(漬け物)である。

手前の白い大ぶりの漬け物が大根をなたでざくざくと切って麹で漬ける「なた漬け」、後方右がいぶりがっこ、、、おや、左側にある赤いものはなんだろう?ご飯のようだけど、、、

佐々木さんがにやりと笑う。

「やまけんさん、これを食べさせたかったんですよ。「あか寿司」というもので、餅米を赤ジソと梅酢で漬け込んだもの、れっきとした漬け物として認知されています。」

なんと!米の漬け物か、、、それは発送の転換だ。通常は、白飯に漬け物を合わせるという発想しかないところを、ご飯自体を漬け物にしてしまおうという大胆な発想なのであった。

このあか寿司がめったやたらと旨い!
もちっとした食感、梅酢と紫蘇と酸味が絶妙にマッチしている、これは本当に上品で素晴らしい漬け物だ 。酒が飲めるご飯、という感じだろうか。どんぶり一杯食べたいものである、、、

「さあ、次はうちの息子が育ててる比内地鶏よ!」

と、比内地鶏の焼き鳥がずらっと並んだ!

比内地鶏は高いというイメージがあるが、ここは単価がそれこそべらぼうに高くなってしまいがちな比内地鶏を、息子さんが養鶏をしていることで安価にだせるという。工藤ちゃんさっそくその話に食いつき、価格を聞いて絶句。

「産地ならそんなに安く出せるのか、、、」

ただ、比内地鶏はどちらかというと焼き鶏にはあまり向かないと思う。それは、焼き鳥だと美味しくないということではない。比内地鶏のポテンシャルが最大に引き出されるのは、やっぱりきりたんぽ鍋などで煮る時だなというふうに思うのである。飼養期間の長さもあるだろうが、あの濃厚な旨みたっぷりのスープは他の鶏ではみることができないくらいだ。

「はい、ハタハタの三五八漬けですよ!」


おおっ 三五八!これは日本海側で広くみられる魚を漬けるための地のことで、塩、麹(こうじ)、蒸した白米を3:5:8の割合で混ぜたものである。この中に魚を漬けて少し置いてから焼くと、えもいわれぬ旨さなのだ!

季節的にブリコといわれる卵が入っていないハタハタだが、逆に身がしっとりホクッとしている。三五八の味付けで、適度な塩加減と麹の香りが立ち上り、旨い!単なる干物より複雑な旨みが生成されているのである。

「はい、それじゃ最初の鍋いきますよ!」

と浅野さんが取り分けてくださったのが、白子と若布の鍋だ!

最高に旨そうではないか、、、

「刺身にできるダダミ(白子)を鍋にしてますから、旨いに決まってますよ!」

熱の入った白子はとろとろとしながら味が活性化して、この世のものとは思えないほどに旨い!

「はい、こちらは生のダダミです」


うおーーーーーーーー
生の白子はまさにセクシーショットである。

大根おろしとポン酢でさっぱりしているが、ダダミの味の濃厚さは失われない。生でも強い味が楽しめるのである。

「やまけんさん、これも呑んでください」

と、白瀑の山本さんが、持参してくれた酒をついでくれる。

白瀑の透明感のある味は、お燗をせずにこのままの温度でゆるゆるとやるのに向いているように思う。秋田の魚に合わせて美味しい酒だ。
さてここで松岡食品のグリーン豆腐が出てきた!

この端正な居住まい。デジカメのホワイトバランスがちょっとおかしいので写真ではグリーンにみえないが 、淡い翡翠色といってよい、上品なグリーンかげんである。味わいは非常に繊細!大豆の甘さがストレートに伝わってくる。特筆すべきは、豆腐の硬度は柔らかいのに味が濃いということだ。豆乳の濃度を高めて味を作るのではなくて、普通に固めているのに味が際だっている。美しい豆腐だ、、、この時は囲炉裏端にたくさんの皿がでているので逆上気味に「うまいうまい」とがっついてしまったので、今度改めてゆっくりグリーン豆腐を食べてみたい、と、書きながら思ってしまった。

さて
とうとう出てきた、、、ヤツメウナギの鍋である!

ネギのぶつ切りとニラが一緒に大量に煮込まれているのは臭み消しだろうか。その中にヤツメウナギのぶつ切りがどんどんどどんと煮られている。

ヤツメウナギ、食べるの初めてだ。おそるおそる肉を口に運ぶ。ムッチンという弾力に富んだ肉が、トロッとした食感もある。なんとも不思議な歯ごたえ。少しだけ泥臭さのような香りを感じるが、ニラとネギで相殺されていてなかなかに乙なものだ。

蒲焼きは鍋よりももっとダイレクトに甘辛いタレの味がついていて、こちらのほうが食べやすい。なるほどねー これは精がつきそうな味である。

さて、満を持して登場した鍋がある!

「さあて比内地鶏でダシをとったきりたんぽ鍋をたくさん食べてくださいね!」

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
なんと美しいプレゼンテーション!
囲炉裏の炭火で優しく煮え返り、フツフツという泡が爆(は)ぜていく姿が本当に美麗なのだ!

みていただきたい、この秋田の味覚が詰まった一皿を。誰もが郷愁を感じそうな、濃い醤油の香りがただよってきそうなきりたんぽ鍋なのである。
きりたんぽは、言うまでもなく秋田では重要な米の食べ方だ。太めの串のまわりににご飯をすりこぎなどで練ったものをぎゅっと固め、それこそ囲炉裏の灰に串を刺してこんがりと焼き目をつける。

ちなみに左側にある団子状のものは「ダマコ餅」といって、きりたんぽと同じように米を練ったものを団子状に丸めたものだ。作り方がきりたんぽより簡易なのでダマコが使われるシーンも多い。味は同じかと思いきや、食感や汁のしみこみ加減が微妙に違っていて、「ダマコ派」も非常に多いのである。実際、きりたんぽはちくわのように中空なので、中の穴からも汁が染みこみ、結構すぐに煮くずれしてしまう。この煮くずれ感がまたよくて、僕は煮くずればなのきりたんぽが大好きだったりする。対してダマコは結構その形状を長い時間とどめていることが多いのである。

さてきりたんぽもダマコも旨いが、見慣れない麺が入っているのに気づいた。以前、このエントリの速報版を書いたときに「この麺はなんですか?」というコメントをいただいたが、いまその秘密を明かそう。

これは「能代うどん」である!
魂の酒屋・天洋酒店の浅野さんがイチオシの食材である。

「能代うどんは乾麺の細手のうどんで、関東にはあまりない種類のうどんです。乾麺でもしっかりとした歯ごたえがあって、風味もよく、とても美味しい!今日は鍋にいれましたが、このうどんを茹でて水で締めたのをどんぶりに盛って、ネギやおろしショウガなど薬味をのせてキンキンに冷やした汁をかければ、最高に旨いぶっかけうどんができますよ!」

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
冷やしぶっかけも食いたいが、この能代うどんを煮込んだきりたんぽ鍋が絶品に旨い!
おもわず、鍋から直接、この能代うどんの流片をさらう僕だった。

鍋で加熱すると柔らかくはなるものの、乾麺の時点で表面のテクスチャがしっかり固まっているので生麺のようにどろりとはならない。ほろほろと柔らかく比内地鶏のスープを吸った素晴らしい麺となっているのである!

「これ、旨いですね!」

と工藤ちゃんも大喜びである。後日、天洋酒店から秋田の酒を仕入れさせて頂くことになった工藤ちゃんの店「井のなか」では、この能代うどんの冷やぶっかけを最後の食事で楽しむことが出来るのは、こうしたいきさつだったのである。

さてきりたんぽ、比内地鶏、能代うどんという重要メンバがこの鍋には詰まっているが、実はきりたんぽ鍋をきりたんぽ鍋たらしめる重要な素材がある!

それは芹(セリ)だ!

この芹をみてお気づきと思うが、秋田において(秋田だけではないが)芹は「根っこが旨いんだよ!」なのである!わざわざ根っこが長く太く美味しくなる品種を田んぼの畦(あぜ)に植えている農家さんが多いということなのだ。だから、このきりたんぽ鍋に投入された芹は、緑の鮮やかな葉の部分だけではなく根部も大胆にカットされて投入されているのである!
この芹の根を噛むとズリ、ズリという、細い根が連続的に歯で裂断される音をたてながら、葉部よりも濃い芹の香りを噴出するのだ!これは素晴らしく旨い!

あっという間に鍋の中身が減少。この後、浅野さんにお話しを聴くフリをしながら席を移動したのは、単に能代うどんと芹の残りをさらうために鍋の前に移ったというのが真実なのであった(笑)

いやー大満足!
このべらぼう、秋田県とくに能代を訪れるならば絶対にはずせない、素晴らしい店だ!

「あらどうもありがとうございましたぁ」

とおかみさん。

この店、この夜は持ち込みの素晴らしい酒を堪能したが、店の酒の品揃えも素晴らしい。

おかみさんと話をしていると、店の本棚にdanchyuの日本酒特集の号が積まれている。その中になんと、工藤ちゃんが利き酒のテイスターとして出ている号を発見!

「おかみさん、この工藤ちゃんてひとはこんなすごい飲み手さんなんですよ!」


「あらぁ ホントにこれ、貴方なの?」

「はい、ほんとです、、、」

これで店の親父さんも出てきて、大騒ぎ。

日本酒好きは日本酒好きを知るということか、、、
いや、べらぼうナイト、実に最高だ!

「明日はまた豪雪の中を、男鹿のしょっつる醸造元に伺って、そして「雪の茅舎」の蔵を回りましょう!」

超満腹の腹を抱えながらホテルで就寝。ホテルの玄関をくぐった後は一瞬の記憶もないのであった、、、
(つづく)