コーヒーのこと。 門前仲町 カフェ・デザール・ピコ と丸山珈琲店

2008年4月10日 from 首都圏

福田パンの記事のことを書いたけれども、今月号のdancyuの第二特集はコーヒーだ。これがまた、色んな意味でツボにはまるタイミングの記事だった。

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門前仲町にあるカフェ・デザール・ピコというお店が掲載されている。 これがまた、僕の家からすぐ近くで、自転車で5分かからない場所にある。
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東西線の門前仲町の駅からはちょっと歩くのだけど、「え?こんな処にこんな店が?」と驚くこと請け合いの素晴らしいコーヒー店だ。P3229429 もちろんここは自家焙煎をしている店で、店内の一番奥に、ガラス張りの焙煎ルームがある。ここで午前中はマスターがほぼつきっきりで焙煎をしている。P4020887 P4020884 P4020890
マスターの田那辺 聡さんは、なんと生年月日が僕とたった19日違いの同い年。またも見つけたぜ同い年チーム! これがまた、実に真摯にコーヒーそして食と取り組む人なのだ。P4020892 実はこの店、僕は数年前に来ている。食い倒れ日記を書き始めて1年半くらい経ったころだったか。読者のカッパちゃんという人が近所にいて、「ここのコーヒーは最高よ!」と教えてくれた。近所にこんなに本格的な自家焙煎をしている店があるとは、と驚いて、これは通わないとと思って再度訪問。そのとき、通常の喫茶店と同じように、ゆっくりと原稿を書かせてもらおうと思いノートPCを開けたそのとき、マスターが僕の前に立ち、こういったのだ。

「申し訳ありませんが、当店ではパソコンを開いてのお仕事はお断りしております」

おおっとそうだったか!
これは失礼、とパタンとPCを閉じた。たしかに店内かメニューか忘れたけど、そう断りがしてあったので、これは見落としていた自分が悪い、と思い、そそくさとコーヒーを飲んですぐに失礼した。けど、ちょっと心に引っかかりが残ってしまい、それから2年ほどは訪れることが無かった。

しかし、昨年どうしても旨いコーヒーが飲みたくなって再度訪問。そのときゆっくり味わって、「やっぱりここのコーヒーは旨い!」と再認識。失われた3年間を悔やみながら、もっときちんといただこうと姿勢を改めたというわけなのだ。P3229488 ピコのコーヒーは、コーノ式というドリッパーを使い、ペーパードリップで抽出している。実は僕は長いことネルドリップ派だった。というのも、大学院生の頃に、ほんの少しだけれども鎌倉の喫茶店でバイトをしていたことがある。その店はオールドビーンズをネルドリップでいれる、いわゆるエイジングコーヒーの店だった。

コーヒーなんて、よくわからないけどスプーンで人数分ペーパードリッパーにいれて、お湯を注げば出ると思っていた僕は、その店でマスターが入れてくれるコーヒーを飲んでブッたまげた。

なんたるコクと深い香り、そして雑味のない味わい!

オールドビーンズというのは、豆を一定の条件下で保存・熟成したものを焙煎したコーヒーをいう。どんなものか識りたい人は、東京の虎ノ門にあるコクテル堂という喫茶店で、「ニレ」と言って豆を買うことができる。ただし、この喫茶店でコーヒーを飲んでも、あまりオールドビーンズだという感じがしない(私見ですが)。ペーパードリップであっさり目に抽出するからだろうか。豆を買って持ち帰ってネルドリップでゆっくり落とした方が、それらしい味が出るような気がする。生意気言ってゴメンナサイ。

で、その鎌倉の店で短期間だけど、マスターにコーヒーの抽出を教わった。ネルに挽きたての豆を入れ、先のとがったポットから、一定の湯量をキープしながら少しずつ湯を落としていく。中心部からゆっくり円を描きながら外側に移動し、また中心に戻る。これを繰り返すのだけども、同心円を描きながら外に拡がっていくと、ポットの角度が変わるので、注がれる湯の量が変わってしまう。そこで、指で微調整をしながら湯量を一定に保つという、ちょっと修行しただけでは全然マスターできないような技術だった。

「山本君、何も考えずに注いでみろ」

と言われて僕が落としたコーヒーと、マスターのコーヒーを飲んでビックリした。抽出方法以外は変わらないのに、その味は天と地ほどの差があるのだ。

「完全に湯が落ちた後のコーヒー豆の様子を見てご覧」

湯が抜けると、ドリッパーの中の豆の粉は、アリ地獄の巣のような「ろうと型」になる。僕が抽出したコーヒー豆のろうとは、いびつな凸凹があった。つまり湯量が一定しなかったわけである。マスターが入れたものは、それは綺麗なアリ地獄となっていた。

その後、一時間ほど出がらしの豆で練習して、再度チャレンジ。

「うん、だいぶいいんじゃないかな」

本当だ、、、「美味しい!」とは言えないけど、飲める味になっている!この時の感動は忘れられない。すぐさま合羽橋に向かい、ネルドリップようの器具一式と「やぐら」と呼ばれる台を買い、にわかドリッパーとなったのである。

社会人になって日吉にある社員寮に住むようになると、日吉駅から徒歩1分の距離にある「カフェ コラージュ」という店に通うようになった。ここもオールドビーンズでネルドリップ、マスターの腕は素晴らしいし、しかもゆっくり読書できる場所ということで最高だったのだ。木場に引っ越してからもちょくちょく行っている。実は僕の書いた数冊の本の原稿はこの店でかなりの部分を書いているのだ。

話が長くなってしまった。
要するに僕は「コーヒーはオールドビーンズでネルドリップ以外は認めないぜ!」という狭量な態度をとってきたわけである。

そしてその狭量さは、ピコのコーヒーをいただいたことで粉みじんに消えてしまった。P3229430 ピコのコーヒーはコーノ式というドリッパーで落とすのだが、ネルドリップに近い味で抽出ができるのだ!
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これは、カリタやメリタなどのドリッパーとは違い、大きい穴が中心に一つ開いているというドリッパーだ。通常のドリッパーとの違いは、下記に図解入りで詳しく書いてあるので、読んでみるといいだろう。

珈琲問屋さんのWeb
http://www.tonya.co.jp/Shelf/ProductMaker/Kouno/Filter/

さらに、ピコでは自家焙煎をしているため、コーヒーの鮮度が非常によいということが最大のポイント。写真をみるとわかるが、焙煎したてのコーヒーは、湯を少量注いで蒸らすとムクムクとふくらむ。P3229485
中には、条件によってふくらみが弱いものもあるそうだけど、コーヒーの鮮度を簡単に見分ける方法は膨らむかどうかというのが一番わかりやすいとのことだ。
蒸らしが終わったら、中心部の500円玉大のスポットに、断続的に湯を落として抽出する。けど、この辺の技術は、簡単に説明できない”何か”があるはずなので、僕には解説できない。あしからず。
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こうして目の前で抽出されたコーヒーの味は、、、

あまりにもフレッシュ!

今までコーヒーを飲んで感じていた渋みやえぐみといった、「これもコーヒーの味のひとつ」と思っていたものが、まったく感じられないのである。

「鮮度と品質のいい豆なら、いやな味はしないはずですよ」

とマスターは言うが、本当にそうなんだなぁ、、、と呆けてしまう。僕にとってコーヒーは、体を冷やすものだと思っていたけれども、ピコのコーヒーを飲むと、身体がとてもあたたかくなり、気分もスッキリしてくる。軽い味わいのケニアなどを先に飲んでから、おかわりに、濃厚で酸味が特徴的なモカジャバをいただくというのが最近のお気に入りパターンだ。

長くなってしまったので後編に続く。

地図画像


カフェ・デザール・ピコ
東京都 江東区 牡丹3-7-5 1F



営業時間
< 月~金 > Am9:00~pm8:00[L.O-pm7:30]
<土・日・祝祭日> Am9:00~pm6:00[L.O-pm5:30]
<定休日>火曜日




URL
http://www.cafe-pico.com