【完全版アップ!】NYドライエージングビーフ視察ツアー NYの熟成肉の道はブライアント&クーパーにつながる、のか!?ようやく出会った、参加者納得の味と熟成香。そしてレストランとして一流のサービスに感激した!

2011年7月12日 from 出張,日本の畜産を考える,食材

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さて、満を持してホテルを出発し、ブライアント&クーパーへと向かう。4日目になり、みな連日ステーキを食べている訳だけども、「もう肉を食べたくない」という人は居ない。なんだろう、等級の高い黒毛和牛のような重さがなく、サクリサクリと食べられてしまうのがこちらのステーキであり、肉質だ。その場では腹一杯になるけど、翌朝胃がもたれるというようなことがないのだ。

とはいえ、かなりな強行軍が続いていることもあり、僕もバス内でうとうとしてしまう。ちなみにブライアント&クーパーはロングアイランドに位置する、いってみれば富裕層の町にあるレストランだ。創業は1986年。プライムビーフとシーフードを提供する店であり、牛のステーキについては自前の熟成庫でドライエージングを行っている。

店のパンフから引用する。

All Bryant & Cooper steaks are hand-cut by expert butchers. Our steaks are trimmed of unnecessary fat, and all Bryant & Cooper beef is dry-aged to enhance the flavor and give it a buttery texture.

ということ!ドライエージングの目的をto enhance the flavor and give it a buttery textureとしている。旨みや風味を増し、バターのように柔らかな食感にする、と読めばいいのだろうか。

 

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「やまけんさん、GoogleMapで調べたら、ここからすぐ近くにもホールフーズがあるみたいですよ!やっぱりこの辺、食にお金をかける人たちばかりの場所なんですねぇ、きっと、、、」

ということらしいのだ、この辺は。

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まず到着後、レストランに併設されている精肉店の方に入る。そう、この店で出している熟成肉をカットして小売りしてくれる店なのである!

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実はこれまで回った小売店よりも安めな価格設定でポーターハウスやリブアイを販売していた。なんで?と思ったら、納得。自分たちで熟成しているからである。想像だけど、エージングビーフを販売している小売店の中には、マスター・パーベイヤーズのような卸売業者から熟成肉を購入し、自分たちの利益を載せて販売しているところが多いのではないかと思う。それだとそれなりの手数料が載ってくるから、そう安くは出せない。けれどもこの店は自前の熟成庫があるので、そこでリーズナブルな設定にできるのではないかな。

ところでこの店のドアを開けたとたん、中にいた肉の熟成担当のリーダー的存在の人が、さの萬の佐野社長をみて「オオー よくきたね!」という感じで大歓迎ムード。佐野さんは何度となくこの店に通い詰め、店のスタッフと強固な関係を築いたのだ。

そのおかげで、、、僕らは、小売店の隣の熟成庫に入ることができた!しかも写真とっていい?の問いには「もちろんOKだよ!」とフレンドリーに言ってくれる!

ということで、いよいよメインイベントです。ブライアント&クーパーの熟成ルームのご紹介。

庫内に入るとぶぅわぁっっと強烈な熟成香が鼻から口から流入してくる!すさまじい圧力。香りなどという優しいものではなく、すえた感じの匂い、酸化っぽい匂いなどいろんな要素が混ざり合っている。マスター・パーベイヤーズでも同じような香りを感じたけれども、少し傾向が違う。これは、日本酒の蔵が違えばまったく味が変わるとの同じことなんだろう。

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入り口近辺。マスター・パーベイヤーズと同じく、カット&整形したての肉がここに並ぶ。そして熟度が深まるにつれて、ラックの位置を奥へ奥へと変えていくのだ。

、、、ということなのだが、実は我々が驚いたのは熟成にかかるスピードが非常に早い!ということ。この入り口の棚の横の肉はすでこんな感じになっているのだ。

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日付の書かれた付箋をみると、まだ1週間半たらずなのにここまで表面が乾き、変質している。

ちなみに下の写真、6月10日に入庫された肉だ。この写真を撮影したのは28日、たったの18日後なのである。

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すでにうっすらと菌がくっついているように思える。

そして、熟成庫の最奥部、我々にとって決定的な発見というか、視認したいくつかのポイントを写真で列記する。ただし、詳細な説明はしない。熟成肉についてわかっている人なら,みただけでピンッ!と来るはずだから、、、

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うーん、、、スゴイ、、、

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最奥部にはスライサーが鎮座していて、これで出荷に適する熟度になった肉をカットし、小売店用またはレストランように準備していた。

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これら写真を見てもらえればわかるように、庫内は決して清潔なクリーンルームというわけではない。それどころかあまり洗浄してねえな?という感じ。最初に提示した入り口近辺の写真をみればわかると思うが、壁は木造である。勿論それも重要なポイントなのだと思う。

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みな名残惜しそうに熟成庫から帰還。やや興奮気味に、この店の熟成庫のことをあれこれ話している。

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いままで案内してくれていた小売店の彼が、お帰りになるという。お疲れ様でした!最後まですっげーフレンドリーないい人でした。どうもありがとう!

さて、そんな感じでいよいよブライアント&クーパー店内へ入店。

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店内はごった返し、フルハウス満員状態!それも、カクテルドレスをビシッと決めたご婦人方や、短パンポロシャツ姿のご老人など、多様な客層がうわーっと席を埋め、肉を楽しんでいる!

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サービス陣もかなり年配の人が多く、余裕のある対応。語学堪能でない僕らに対しても他テーブルと寸分たがわぬ応対で非常に心地よく過ごすことができたのである!

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テーブルに置かれたホームメードソース。舐めてみたけど、ケチャップを少しドライにしたような感じ。これつけて肉食うのはちょっとなぁ、、、という感じだ。醤油という複合旨味調味料を手にする我々日本人には、このアメリカ食文化のソース類はなんとも未完成に映ってしまう、と思うのは僕だけだろうか。

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と、思っていたら!

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なにやらフレッシュなカクテルソースが運ばれてきた!ちょいと舐めてみたら、フレッシュトマトを潰して作った、ピリッと辛みとヴィネガーの酸味が効いたソースだ!旨い、、、さっきの発言を撤回しようかと思う、実に美味しいカクテルソース。あ、これは魚介だな!と思ったら、キタァ!

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ロングアイランドが誇るシーフードがギュアッと並べられている!そう、実はこの辺、魚介が旨いんだよね。

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大学院時代、グランドセントラル駅のオイスターバーでロングアイランド産のオイスターを「ビューーーーティフル!」とウェイターに勧められて、大笑いしながら舌鼓を打ったもんだが、ほんとうにギュッと引き締まった小ぶりな身肉に、後を引かないさわやかな風味で美味しい。

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ハマグリと間違えちゃったんだけど、この貝がまた異様に旨くて、タケトラあたりと盛り上がってしまった。新鮮の一言!カラフルな香りに清冽な旨み。日本でも喰いたいが、、、

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そして、カクテルソースをつけてレモンを搾ったシュリンプを。いや、実に最高!身もだえるほどに旨いよ。

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これまた再度メニューのインゲン、トマト、ロブスター?の温サラダ。はい、美味しゅうございました、、、

そして、いよいよ来たのである!

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今宵も、ブラック&ブルーとミディアムレアの二本立て。

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ブラック&ブルーは大ぶりなカットで、指3本分はゆうにある。この店の火入れはどうやっているのかわからないが、内部はほんとうに生で冷たいくらいの肉だ。これだとちょっと食べるのをためらう人もいるだろうな、というくらいの生加減。けれども、やはりこのくらいが熟成香自体を確認するのに最適な状態だと思う。

熟成香は実に穏やかだがはっきりと輪郭がある感じ。あきらかにアンクルジャックやデル・フリスコよりも明瞭に香りを感じるのだけれども、その香りの総量は実に多いのに、暴力的ではなく穏やかに感覚に触れてくるという感じだ。なんというか、王道の味という気がした。格が違うなぁ、と。

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はっきりと、美味しい!いくら食べても飽きることがない。ただ、熟成香を確認できたあとは、できればミディアムレアではなくてレアで食べてみたいと思った。ミディアムレアにしてしまうと、やはり筋繊維が膨らみ、肉汁が湿潤にしみ出してくるのだけれども、風味自体は薄れてしまうからだ。ほんの少し温度が入った状態のレアを食いたかった!

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この店、付け合わせも実に一流。このベークドオニオンもどうやって作っているんだか、実に美味しい。

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Tボーンについた端肉をすべてこそげて食べるのは武内さん。

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そして、6月に誕生日を迎えた数人のためにお誕生日セレモニー!

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こうして、ブライアント&クーパーの時間は流れていったのでありました。

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佐野社長のおかげで、普通ならみられない庫内までずかずかと入り込めたわけだが、そうして得ることができたものは大きかった!なんといってもあの香り。そして、熟成の最終段階に至るスピードの速さには驚くばかりだ。

この庫内を体験した平井君は「いろいろ、自分のなかに確信ができました」と言っていた。うん、そうだろう。

ここでは多くは語らないが、我々が持った確信。それは日本オリジナルの熟成肉というものがあるし、それを今後もっと深めていくことができるということだ。いざこういう目標をもったら日本は強いぞ。待っててくれアメリカよ。日本の牛品種を使った最高に旨いドライエージングビーフを、作ることができる。もう数年したら、日本に視察にきてもらえるくらいに。

そう思いつつ、帰途についたのである。