蓮沼 「インディアンカレー」本店はやはりすごい店だった

2004年2月16日 from 首都圏

kanban-indian.jpg この日記でもレビューしているが、蒲田近辺に隆盛を誇る「インディアン」という店がある。なんだか混乱しそうだが、大阪「インデアン」や帯広「インデアン」とは違い、「インディアン」である。供するモノも違う。ラーメンとカレーなのである。この店でそのどちらか片方だけを食べる人というのは、まずいない。ラーメンとカレーを食べることに最適化された味なのだ。

 とりあえず初めて耳にする方は、まず僕の過去ログを読んで頂きたい。

 インディアンの本店は、東急池上線で蒲田の隣駅「蓮沼」を降りたすぐのところにある。その噂は耳にするものの、僕はこれまで蒲田西口店と、池上駅近くにある類似店(どうやら支店というわけではないらしい)にしか行ったことがないのだ。これは片手落ちというものだろう。あのこだわり抜いた味を創り上げた張本人が居る店に行かずして、インディアンは語れないのであった。で、いつものように髪を切りに行ったついでに、池上駅からとなりの蓮沼駅まで歩いていくことにしたのであった!

蓮沼駅の改札を降りてすぐのところにあるインディアン。外見はこれだ!
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 このように幼児を連れた親父が並んでいるところをみても、地元民に愛されていることが見て取れる。程なく入店すると、そこには眼光するどい親父がいるのであった。この方が武田さんであろう。
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 時折ちらっちらっと店内に鋭い眼を走らせるのだが、これは別に客に睨みを利かせているというわけではない。インディアンでは、ラーメンかカレーの片方だけを頼む客はほとんどいない。ほぼ全ての人が、ラーメンとカレーを頼む。その場合、まずラーメンが出てくる。それを半分以上たべたところで、カレーが出てくるのだ。このタイミングには意味があるらしく、確かにこの順番で食べると、非常にそれぞれの個性が際だつのだ。店主のチラッチラッという視線は、このカレーを盛るタイミングを計る視線なのだ。

 さてこの店の品書きがこれだ↓
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 これをみたら、だれしもラーメンとカレーの両方を食べたいと思うだろう。お腹に自信のない人は、ラーメンと半カレーのセットにすればよいのだ。とにかく、この両方を食べないとこの店を味わったことにはならない。

 さて僕は当然ながらラーメンとカレーのセットを頼む。店の大将の他に、奥さんらしい方が皿を運んでいる。厨房の奥には若い女の子が皿洗いなど下働きをしている。どうやらこの女の子は娘さんらしい。時折大将を「お父さん」と呼ぶのでわかったのだが、この娘に対する態度が実にご立派なのだ。皿を洗っている娘さんに対して、静かに平静な口調で、

「その皿、洗ってくれる?」

「もう洗ったけど?」

「もう一回洗って。」

とダメ出しをしているのだ。怒るでもなく、淡々とダメだし。娘も口答えするわけでなく、皿を洗い直す。親子の絆の中で、プロ意識を叩き込んでいるのだろうが、この平静さ、実に素晴らしいと思った。いずれ僕もこんな親子関係を築きたいものだ。

 さて自分の娘以外に向けるまなざしもことのほか優しいことに気づいた。先に入店した幼児2人が、キャッキャッと騒いでいるが、大将の顔色は変わらない。そして、何も言われなくともピンクとブルーの子供用茶碗を出した。そして、皿の温め用の寸胴にスッと入れて、若干で引き出した。そう、この店ではラーメンとカレーの皿は、温め専用の寸胴に張った湯で極限まで温められる。運ばれてきた時に触れないくらいに熱くしてくれるのが、この店の素晴らしい特徴なのだ。ていうかまず、温め用の寸胴鍋でコンロを一つ占有しているのがスゴイではないか。しかし、2人の子供のための茶碗は、若干温めただけで引き出している。子供に熱い茶碗は危険だからだろうが、なんだかこういった細かい気遣いをみると、この大将の人格がしみじみと浮き彫りになるように思うのだ。

 と思っているとラーメンが出てくる。
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 スープはもう完全に魚貝系オンリーの味である。しかし旨味は実に実に濃い。塩分が控えめなので、それがまたスープの旨味と魚ダシ香を際だたせている。みてくださいこの透明度の高いスープを!
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 麺は中太で若干のちじれが入っている。チャーシューはホロホロに煮込まれたロースで、薄めのスープと対極的に味が濃いので、このチャーシューをかじりながら麺を啜るのが絶妙のコンビネーションなのである。ほうれん草もいい味だしていて、具と麺とスープのマッチングは最高である。
 ひとまずは一心不乱にラーメンを啜る。そして半分以上食べたところで、カレーが運ばれてくるのである。
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 非常に濃い茶褐色の外観が、味の奥深さをそのまま表現している。この店を訪れ、初めて口にした人が一様に驚くのが、その「苦み」である。焦げる寸前の極限までルーを炒めこんでいるらしく、強いほろ苦さと香りが鼻を抜けるのだ。しかし、旨い!強烈な感覚に目覚めた後は、多くの人がインディアンマニアになってしまうほどに旨いのである。
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 そして、このカレーを食べながらラーメンのスープをすする。これが絶品なのである。ラーメン単体でいただいていた時のスープの旨味に、スパイスとルーの香ばしさが混ざり、全く違う味世界が口中に現出されるのである。ここからはカレーを食い、スープをすすり、の繰り返しになる。

 うーむ
 実に旨かった! やはり本店の味は、まったく隙がない。 一点気になったのは、店内に魚貝系のヒネ香がしていたことだ。サバ節などの素材がちょっと酸化したような香りだ。スープをとった後の滓が醗酵してしまっているのかと思うが、これはあまり褒められたものではない。
 ま、しかしそれは些末なことだ。大将の細やかな気配りは、どんなに人気店になってもペースを崩さない一徹さがみてとれる。その意識は娘さんにも伝わっていることだろう。

またいくぞインディアン!おいらもマニアになりました。