アイラブ インデアンカレーと声高らかに謳おう 阪急三番街店 山田氏のルーかけ技に関する考察

2005年6月22日 from 出張

孫さんの店でのたらふくの夜が明けると、相方は京都の友人宅へ行き、僕は一路大阪を目指した。

大阪、大阪、大阪。

僕にとって大阪とはインデアンカレーの街である!

河原町から阪急電鉄で梅田に着くと、すぐさま阪急三番街B2Fにエスカレータで降り、左斜め方向へと小走りながらインデアンカレー阪急三番街店へと向かう。

言うまでもないが、僕の著書「やまけんの出張食い倒れガイド」の中でインデアンカレーのページは超目玉コンテンツとして位置づけている。自分の本を自慢するつもりはないけど、ことインデアンのページ内容については、インデアンファンの方々には絶対に価値のあるものだと断言できる。おそらく今の時点で、僕の本以上にインデアンの社長さまが語っていただいている本は出ていないはずなのだ。

そしてその社長様のご発言中に「阪急三番街店は、やっぱり一番出入りの多い、特別なお店ですね」という言葉があった。そう、特別なお店なのである!

昼の12時10分、この店が一番混み合う時間帯である。しかも土曜日。週末の土日は、平日にこられない家族連れなどが多く、凄まじい状態になるのだ。僕も列に並び本日の注文を考えている。

実は僕の定番はご飯とルー大盛り目玉ピクルス追加である。目玉とは玉子の黄身を二つ載せることだ。しかし本日は朝飯も抜き、昨晩の大飯もすでに胃袋の彼方に過ぎ去り、すこぶる快調である。ということで、入口食券担当の女性に初めてのオーダーを入れた!

「ご飯ダブルルーダブル目玉ピクルス追加!」

そう、ダブルとは二倍のことである!

「お客さま、ご飯とルーのダブルですと、レギュラー二杯分となりますが、よろしいでしょうか?」

「もちろんオッケーですよ!」と断言するとニッコリ笑って黄色プラカード2枚と、小さい紺色のプラカードを渡してくれた。ここで疑問が発生。

僕の本には、インデアンの全プラカードの色と大きさが、なんのメニューに対応しているかという表を掲載している。大阪につくまでの間、自分の本で確認していたのだが、おそらくルーダブルはピンク。ご飯ダブルは紺色の大。それに目玉ということで、玉子を表す茶色が二枚ついてピクルスの紺色小が来ると思っていたのだ。

しかし現実は違った!この謎は後で解かなければならないな、、、と0,001秒くらい思いながらカウンターを振り返る。ひっきりなしに出入りするお客さん向けにルーをかけながら、福永店長が僕をみてニヤっと笑う。

「あっヤマケンだ!」

と隣でご飯を盛りつけている山田氏に小さく言うと、カウンター内の店員さん全員が僕をみてニヤっと笑う。そういえばインデアン本社の広報をみている奥内さんによれば「全店の人間がヤマケンさんの本を読んでます」ということだったからなぁ。

しかし、超満員行列なので、余分に声をかけることはすまい。と思っていたらなんと、福永店長と山田氏の目の前の席が空いた!

「どうぞこちらへ!」

と福永店長が僕をスペシャルリングサイドへと迎え入れてくれた!

「本、拝読いたしましたよ。」

と小声で仰る。光栄の極みです。

この阪急三番街店でのラッシュ時定番の光景、副店長の山田氏がご飯をカッカッカッと盛り、福永店長がナチュラルなフォームでルーをかけるシーンが繰り返し展開される。

そういえば奥内さんいわく、

「福永店長は滅多に笑わないので有名なんですが、やまけんさんの本では笑ってますよね!実はインデアンの社員でもあの本で初めて笑顔をみたっていう人が多いんですよぉ!」

まじ?俺は結構福永さんの笑顔をみているゾ!ラッキーだなぁ、、、

さてルーとご飯ダブル目玉ピクルス追加はこんなんである!

わかりやすいようにレギュラーも載せてみると、こんな感じ。

当たり前の話だが、ダブルの場合はルーをレードルに二杯かけていた!なんという贅沢!うーむこれからはコレだな。

しかしなんだな、インデアンの社長様は「玉子は本当はかけるの好きじゃないのよ、ルー本来の味がわからなくなるから」と仰っているのだが、僕は玉子あったほうが好きなんだよなぁ、、、社長様、申し訳ございません。不肖のファンでございます。

さすがにダブルダブルは腹へのパンチが効く。店長以下全員に目礼をして店を出てJR大阪駅構内に居ると、インデアン本社の奥内さんから携帯に連絡がかかる。

「お着きになられましたか?お迎えにあがりますよ!」

そう、実はこの日、掲載の御礼も兼ねて奥内さんと飲みましょうということになっているのである!結果的には僕からの御礼どころか先方から御礼されてしまって恐縮千万だったのだが、、、

リーガロイヤルの滝の流れるティールームで奥内さんと色んなことを話し込む。その内容はここでは書けないので申し訳ないのだが、とにかく今秋オープンの東京店については、インデアンは気合い入りまくりである。

「もう今から綿密な計画で動いてます。期待していて下さいよ!無論、味などは全部同じです!」

そうだよな、そうでなくてはいけない!

それとさっきのルーダブルご飯ダブルのプラカードの謎が、いとも簡単に解けた!

「黄色プラカードはカレーのレギュラー・玉子入りですね。つまり、ルーダブルご飯ダブルと目玉というオーダーは、レギュラー×2として受けとるということです。」

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
なるほどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

言葉もない。そう言うことであったか。分量が多ければカードも多いという思いこみがあったが、真実は遥かにシンプルだったのである!

さてこの夜は奥内さんが強固に推薦する「野菜鍋」の店にいったのだが、その店は本当に衝撃の店というか笑激の店というか、、、凄まじい体験だったので別のエントリで書きたい。素晴らしく楽しい夜を過ごさせていただいた。

で、翌朝日曜日。大阪サンルートホテルから梅田まで歩いて10分。その途中の立ち食い「阪急そば」を通るとどうしても醤油味のダシが飲みたくなり、肉うどんを注文してしまう。アホだなぁ俺は、、、

さっさと食い終わって、ヨドバシの地下から阪急三番街へと急ぐ!10時10分、インデアンの開店直後である!

「いらっしゃいませ!」

おおおおおおおおおおおおおおおおお
店内には誰も客がいない!
やったぜ一番乗りか!

「ゆっくり食べられるなぁ、、、」

といいながら席に着く。まだ客が入っていないからか、ご飯盛りとルーかけは山田氏が独りで行っている。思えばこの山田氏のルーかけ美技「シャコッ」から全てが始まったんだョなぁ、、、としばし感慨にふける。この沈黙の名手・山田氏は本当に寡黙で、満足に声を聞いたこともないのだが、彼の人生はルーをかける際の「シャコッ」に凝縮されているので、それでよいのだ!

しかしながら本日のオーダーはちょっと違うのダ。久しぶりにまずはハヤシライスで攻めてみたい。

「今日はね、ハヤシ!」

「はい!」

と、厨房でハヤシが作られる。そう、ハヤシライスだけはお客さんからみえないバックヤードで盛りつけられて出てくる。このバックヤードで何が行われているかという謎が、最近の僕の最大のテーマなのである。

さて本日は瞬間的にハヤシが出てきた!

そう、みてお分かりの通り、インデアンのハヤシは独特である。ドミグラスソースでは全く無い!

ケチャップなのかトマトソースなのか、照り照りと輝くハヤシルーに大ぶりにザクザクと割られたタマネギ、ニンジンが絡む。グリーンピースとオレンジ色のコントラストが絶妙である。

口に運ぶと、ほどよく酸味が抑えられたルーの甘さと、タマネギのシャクッという歯触りがマッチしていて実に旨い!これはこれでアリのオリジナルハヤシライスなのである。

さっさと食べ終え、ご馳走さん。

「ありがとうございました!」

「いや、まだ終わりじゃないよ。」

と言ってカウンターへ。そう、終わるわけがないじゃないか!

「レギュラー!」

レジの女の子もニッコリ笑って「レギュラー一つです!」とカウンター内に声をかける。

ああしかしルーかけは目前で観たい!

「ちょっとルーかけるの待ってね!」と叫んで急いで席に戻る。さすが山田氏、数秒間でご飯を盛り終えている!

そして満を持して、マイ・フェバリット・ルーかけ職人・山田氏の美技である。連続画像でご覧いただきたい!

シャコッ!

美しい!というか、余程目をこらしていないと、手首の返しポイントが目にとまらない美技である。そしてこの連続写真の、レードルをもつ右腕の肘から先の角度に注目されたい。連続写真でそれほど角度が変わっていないのである!しかし下の写真では手首のスナップがクンッと返っている。

注目すべきは肘から先の部分以外にもある。皿を持つ左手がダイナミックに動くのである!そう、ルーをかける右手と、その受けをする左手がダイナミックに動くことが重要なのだ。なおかつ、下の画像では上体がわずかに後ろに反らされているのがわかるだろう。このように可能な限り軸をブレさせないように、力学的に無駄のないフォームがある上で手首の「シャコッ」返しがあるのである!

さあ ご馳走タイムだ! いつもうっかりピクルスをドドンと載せちゃってからカメラを構えるのを思い出すんだが、今回もそうだ、、、

しかし今回、インデアンラヴァーへの天からの贈り物があった!それはである!

今日の肉は、僕が通ってきた中で最大の肉塊である!うわーおヤッタぁ!

ホゴホゴと煮込まれたこの肉の大きさは、インデアンに通う者すべてが一喜一憂する重大要素である。

ああ、これで今日一日、幸せに生きていける、、、

カウンター内の女の子が水を注いでくれる。

「俺の本、読んでくれた?」

「読みましたぁ!」

ぽつぽつと他のお客さんも入ってきた。じっとり滲んできた汗を拭きつつ席を立つ。女の子が「ありがとうございましたぁ!」と朗らかに送るなか、山田氏はあくまでも寡黙である。いや一緒に言っているのかもしれないけどほぼ聞こえない。けどそれで佳い!山田さん、あなたはそのルーかけ道を貫いていただきたい。私はその全てを観ています。

二日連続インデアン。僕はしばらくこれで生きていけそうだ。

ところで東京進出の話題が、在京のブロガー達の間でも話題になっているみたいですね。トラックバックもいただきました。オープン時期についていろいろと情報が飛び交っていますが、僕が取材をさせていただいた4月29日時点では「11月初旬オープン」と仰っていましたよ。

今年の11月初旬は、何も予定を入れないでおこうではないか。