今年もやってきた! 山形県白鷹町 「まあどんな会」で、なんばんの粕漬けが生まれる瞬間をこの眼で観た! その2

2006年3月24日 from 出張

いや素晴らしい昼食であった。
間が空いてしまったので、何やらわからんという方は前のエントリをご覧下さい。

今年もやってきた! 山形県白鷹町 「まあどんな会」で、なんばんの粕漬けが生まれる瞬間をこの眼で観た! その1

さあ、なんばんの粕漬けを産み出す地へ向かおう。早速に加工場へ移動する。スキー場から5分とかからぬそばに、加工場があるのだ。坂のやたらと多い、そりゃそうだ中山間地だもんな、という地域にスコッと加工場が建っているのだ。

この小さな加工場にもドラマがあったという。

最初の頃は、水道使用の許可だとかそういうものが全然おりず、大変だったそうだ。

「そういう壁に突き当たって何回も泣いて、そんで強くなっていくんだよねぇ。行政もそういうことが多々あって初めて変わっていくんだよ」

と県の職員である高橋ノブさんが言う。彼が常々言う「何回泣いたかで組織が強くなっていく」論である。

さて加工場にはいると、すでになんばんの粕漬け造りが始まっていた!

なんばんの粕漬けは、ニンニクやゴマ、クルミなどの山の幸類を細かく挽いたものと各種調味料を混ぜ、まあどんな会の特製なんばん塩漬けを加えていくものだ。



これがなんばんの塩漬けだ。

塩漬けは、山形県特有の大ぶりな唐辛子を、まあどんな会の会員の畑に植え付け、晩夏から秋の収穫時に一気に漬物にするのである。
みて欲しい、この、あまりにも立派にツヤツヤと色づいたなんばんを!


ちなみに数種類のなんばんがある。ツヤツヤとしたテクスチャのものと、
もっと赤みの強いものもあるのだ。

見事と言うほか無い。


まあどんな会のなんばんの粕漬けが昨年ヒットして以降、いろんな類似品が出回っているようだ。まあそれは食品業界ではよくあることなのでどうでもいいのだが、絶対に真似できないことがある。それは、原料のほとんどがまあどんな会のお母さん達の手で作られているということだ。

「そうねぇ、塩と砂糖とゴマと酒粕以外は全部わたしらが作ったものだね。酒粕だって、この地元の蔵の粕を集めて食べ比べをして、美味しいのを選んで居るんだから地域のものだよ」

来年あたりにはゴマさえも作ってしまうはずだ。そうしたら、基本調味料以外はすべて白鷹産ということになる。ここまで徹底した郷土産品がはたしてあろうか!いや、ある。この世には知られていないそういうものが山ほどあるんだけど、余所に知られていないのがほとんどなのだ。うーむ そう言うの全部廻って食べてみたい!

それはさておき、このなんばんお塩漬けは収穫後一気につくってしまうそうだ。

唐辛子も塩漬けにして醗酵させることで味わいが深くなっていく。そして種も刻み込んでいるため、強烈・激烈な辛味成分が保持され、研ぎ澄まされていくのである。なんばんの塩漬けだけをつけた樽があるのだが、怖くて覗き込むことが出来なかった(笑)

なんばんの塩漬けを投入して全体をかき混ぜたら、いよいよ地元で一番旨いという選び抜かれた酒粕を投入。


そういえばこのなんばんの粕漬けについての色んなコメントとか、ご自分のWebで書いて下さっている方がいらっしゃるが、よく「なんばん味噌」と書いているのをみかける。が、実は味噌に類するものは全く使っていない。あくまで「粕漬け(かすづけ)」なのである。

さて各種穀物、なんばん、酒粕などの素材を合わせたら、あとはひたすら手で捏(こ)ねるだけである。

ここからひたすら小一時間ほど、お母さんの額に汗がシットリ滲むくらいまで捏ねられる。この捏ねる人が違うと、味も微妙に変わるのだそうだ。近代的な大量生産の概念では「味が変わる」というのは難しいことだが、しかしこのなんばん粕漬けにおいては逆である。味が人によって違うからこそ面白いのである。

練り込まれたなんばんの粕漬けは、唐辛子の色素などが粕の水分に溶出し、こんなオレンジ色に染まっている。

加工調理用の手袋も、一回の捏ねでこんなに染まってしまうのだ!もし素手でやっていたら唐辛子の成分が肌にあたって大変なことになるだろう。
「もう、混ぜてるだけで涙が出てくるのよぉ。しばらくやってたら慣れたけどね!」

とカカカと笑うまあどんな会の面々であった!

さてこの粒、何だかおわかりだろうか?

何を隠そうこれが「つぶあぶら(エゴマ)」である!最近は健康食として非常に人気が高いらしいが、独特のリッチな風味がたまらない、実に旨い穀物である。これを搗(つ)いたりして粉末にして、なんばんに混ぜ込んだのが「つぶあぶらの粕漬け」である。

こいつがまた実に旨い!

なんばんを購入した人で、オリジナルなんばんがいいという人、つぶあぶらなんばんがいいという人に二分されるのがよく分かる。僕はどちらも同率に好きだが、、、ちなみにオリジナルなんばんの粕漬けの材料の比率等は大きく異なっている。

さてこれらを瓶に詰めていくのも、もちろん手作業である。

昔、小学生の頃、カスタードクリームとかを絞り袋から直接飲みたい~!と妄想していたことが多々あったが、このなんばんを絞り袋から飲んだら辛くて悶死するな、間違いなく。

これが、なんばんの粕漬けである。

あ、よくみると、つぶつぶが入っている!ということはこちらはつぶあぶらの方だな。

「やまけんさん、味見してみてくれる?やまけんさんの好きな辛さでレシピを決めますから」

ま、まじですか!それは責任重大、、、
しかしながら数回にわたりダメだしをさせて頂き、辛さが決まった。「辛くて食べられない!」という方、申し訳ない、私のせいです。でもそこまで辛くはしていないつもりなんだけどな。

加工場はカラカラという笑い声に満ちていた。
まあどんな会の女性達はみな、農家の奥さんである。手間賃も無しに趣味的に郷土の味を守る会をしていたのが、だんだんと知られ、拡がり始めている。けれども彼女らの作り方は全く変わらない。

「自分の庭先で作った原材料を、自分の手で加工する。」

この世にそれ以上のご馳走があるだろうか。

なんばんの粕漬けは引き続き下記のみで行っています。
オーガニックサイバーストア なんばんの粕漬けセット
http://store.yahoo.co.jp/organic/a4e4a4dea4b1a4f3bfa9a4d9a4c4a4afa4b7.html

「やんばえ漬け」の単体販売は このエントリ をご覧下さい。