飛騨高山はただの観光スポットではない! 実にハートウォーミングな人々の生息する、愉しい食の満載空間であった!

2007年6月15日 from 出張


飛騨高山なんて観光地なんだから、面白くもなんともないだろう、とたかをくくっていた。それはまったくの認識違いであった!なんとも面白い夜を過ごしたのだ。飛騨高山は面白い!人があまりにフレンドリーで、ホスピタリティに溢れているのだ。それを思い知った夜だった。

飛騨高山駅に着くと、某NEC関連の面々とご対面。なんと、今回一緒に仕事をするI女史が、名古屋~高山間のワイドビューの斜め後ろの席に座っていた人だった!

「あ! 電車のなかでお弁当二つも食べてましたよね? みてましたよ、、、」

見られていた、、、

NECメンバーは、かなりこの高山に通い詰めた(ほぼ常駐)O氏に、官公庁系の案件を一手に引き受ける部署の敏腕営業であるT氏(このT氏が後に超・重要な役割を果たすことになる)。そして広報のM女史である。

これにカメラマンのK澤さんが加わったのがフルメンバー。4人でJAグループの食肉加工センターの調査取材を行い、当時市場最高値をつけた飛騨牛の写真を見て、そのリブ芯の綺麗な楕円形を堪能。

枝肉(食品)のセリ場も見せていただき、取材終了。

さて
妙にずれてて面白い一日がここから始まった。
ビジネスホテルアクティという、さもないホテルにチェックイン。いい感じに煮染めたようなビジネスホテル。ホテル名を聴くと高山通となっているT氏が「ああ、もっといいところ教えてあげればよかった、、、」と、今更なことを言う。

角部屋の306号室を開けると、なんとそこは畳敷きの座敷!布団がすでに敷いてある。どうみても複数名用の部屋に一人で収まることになったわけだ。旅館かここは!と思いきや、インターネットへの接続は有線ながらケーブルが出ており、しかも激ハヤである。このアンバランス感がちょっと堪らない。
他メンバ2人と飯の時間にでながら「今時、すげー部屋だ」と話すと、二人とも「ほんとほんと。」と頷く。

「私のところなんか、意味もなく畳敷きの空間があるんです。」

「ん?畳敷きの空間っていうか、座敷でしょ?」

「え?違いますよ、和洋室っていうかんじで、ベッドです。しかも何故かネットが繋がりません。」

するともう一人が

「ええええ うちの部屋は洋室ですよぉ!ネット、いい感じで繋がりますし」

と、みなシングルで予約しているにもかかわらず三者三様バラバラな部屋のスタイルである。
しかも、この旅館風の部屋にもかかわらず、綺麗な液晶テレビの背面のSTBから出ているイーサネットコネクタをPCに接続すると、ばかっぱやい速度でネットを使える。なんなんだこのギャップ。畳の上にノートPCを置きながら激早接続を堪能したのである。

さて高山駅に集ってT氏と合流。T氏は一目見て食い歩き趣味を持つとわかる巨漢である。高山には10数回来ており、現地の農協職員さんに連れられて地元向け店に足を踏み入れていることもあり、かなりディープな店を知っている模様。

「飛騨牛を食べるのであれば、JA直営の店と、民間の店があります。どちらも質的には差はないと思います、、、」

協議の結果、民間の店である「丸明」へ行くこととする。観光通りを歩いて駅から5分程度の近くに、「丸明」はあった!

「これが飛騨の伝説的な種牛である「安福」の等身大銅像です」


ぬおおおおおおおおおおおおおお
いまだに最高品質の遺伝資源としてその血統が重んじられる安福の銅像である。思わず拝みたくなってくる。

黒毛和牛は脂ギトギトで食べたくない、と日頃言っている僕だが、食べようよというシチュエーションで食べないバカではない。たまには脂を摂取する原始的快楽を感じてみたいとも思うのである。

「丸明」は焼き肉屋にしては綺麗な概観、大きな店舗である。精肉店も併設しており、総合的な肉の卸小売とみた。

ここで一つ事実が発覚。
実は飛騨の水先案内を務めるT氏、僕の大学の後輩であるという!

「なんだよSFCかぁ、後輩じゃん! よっし今日は沢山食うよ!」

さっきまで「Tさん」と呼んでいたのが一気に「T君」に変化し、臨戦態勢である。
しかし、この「丸明」、かなり値付けがリーズナブルである。


タン、カルビ、ハラミ、レバー、ホルモン、ミノなどをどんどこ注文。







特筆すべきは、T君お奨めのホルモンだ。


脂身そのままつけおいて甘辛のモミダレにあえたそれに焼き目を付けようとするが、脂がとめどなく流れて焼き目はつかない。


脂が溶けかかったのを口に放り込むと、臭みのない新鮮な脂がほとばしり、ホルのクニャンとした歯応えがまた官能的によい。

黒毛和牛の代表的な味といえる飛騨牛のA5肉は、当然ながらA5クラスの味であった。

サーロインステーキ4500円程度は、薄切りカットが少し残念。1.5センチ厚であればもっと旨く焼けたかも。

表面は焼き色をつけ、中の脂が溶け出す融点ギリギリに持っていき塩で食べる。たしかに脂の風味が、他の銘柄牛とはちょっと違う繊細さを持っている気もする。黒毛和牛の肉質の差異は、餌と飼養管理方法によって変わるものだと推察する。逆に言うと、○○牛という銘柄、産地によって左右されるものではないと考えるのだ。国産和牛とかいうけども、餌の80%以上が輸入穀物なのだし、牛舎に繋がれて飼われるのだから、産地の別もあまり意味がない。黒毛和牛は、たしかにそのDNAは国産だけど、中身は国産と言い切ってよいものなのか、非常に苦しいと僕は思っている。

でも
さすがにこのジュビジュビに染み出てくる脂には、思わず味覚的快楽を覚えてしまう。あーあ。

「いやー 堪能したね!」

4人で食べて、ホルモンやハラミを追加して、なんと2万円とちょっと。安いなぁ、、、
観光で飛騨高山を訪れる人は行っておくべきスポットだろう。

さて丸明を出て、T君が「さっぱりした高山ラーメンを食べましょう」と繁華街を案内してくれる。

高山の繁華街は適度にこじんまりしていて、すべて歩きで行き来できる広さだ。
この日は人通りが少なかったが、年間で4~500万人もの観光客が訪れる(なんと、沖縄よりも多いそうだ!)ということで、かなりの飲食店が軒を連ねている。

「あれっおかしいなぁ、こっちの路地だと思ったんですけど、、、」

と数度いったりきたりを繰り返していると、なんとその店は水曜日休業であった。
残念!

「まあそれじゃ、お茶漬けでも食べようよ」

「あっ やまけんさんサスガです!この辺じゃお茶漬けでしめるってのをよくやるんですよ!」

ということで、繁華街の中の小さな小さな、観光客が入らないような店に足を踏み入れたのである。

(つづく)