宮崎の肉をどうしたら買い支えることができるのか?という問いにどう答えるのかが難しい。

2010年6月 7日 from 口蹄疫を考える

ここ数日、政権がらみのごたごたで口蹄疫についての報道がまたみられなくなってきているけれども、口蹄疫の拡大は続いている。6月6日時点で疑似患畜が児湯にて出ているのである。世間は「そろそろ封じ込めできてるんだろうなぁ」と思っているかもしれないけれども、現在進行中です。それにしても、えびの市はよく守りきったなぁ。

で、ここ一週間ほどでいろんなところからこんな話が飛び込んできている。
「これから早期出荷になる、搬出制限区域内の牛・豚の肉を買ってあげるようなキャンペーンをしたい」
「宮崎の牛・豚を優先的に買い支える仕組みを作りたい」
で、具体的にどうすればいいの?と言う話だ。これ、とっても難しい話しではある。

「早期出荷」というのは、出荷適齢期を迎えていなくても、また普通は出荷しない繁殖用の家畜であろうともと畜してしまえということだ。そうなると、食肉としての適正がないものも当然含まれる。若齢牛や若齢豚は、個体重量も少なく、味だって乗っていない。だから、と畜され格付けされる際にはほとんど二束三文の評価がなされてしまう。それでも、搬出制限区域内の家畜を一掃してしまうことで、さらなる感染を防ぐためにやらなければならないということになっている。

当該畜産農家としては非常に大きな損害を被るわけで、これを買い支えたいということは非常に健全な思考だと思う。ただ、これを実行するのはちと大変なスキームでもある。例えば飲食店一店が購入できる量はたかがしれているわけで、牛一頭350kgくらいの肉をどうやってずばっと配分するかというのはかなりの力業になる。それも、先に僕が所有している短角和牛「さち」の肉の配分を示したエントリがあったが、部位があんなに分かれている。飲食店では普通、ステーキなどの用途にロース(リブロースやサーロイン)やヒレ、煮込みようにスネ、カルパッチョ用にモモなどを必要とする。でも、それ以外の部位はどうなる?ということにもなるわけだ。

例えば東京都内の飲食店100店が「買う!」と言ってくれても、そのすべてが「ロースちょうだい」と言った瞬間に、単なる迷惑集団になってしまう可能性がある。いや、もちろんそのロースをかなーり割高に買ってくれるならいいんだけどね。

あと、「特定の業者に頼むと、その業者の系列の生産者のものしか買えなくて、広範に支援したい人には向かないのではないか」という危惧から、複数生産者との直接取引のような形を模索する人もいるようだ。しかし、それはどうだろうか。畜産とくに牛のような大型家畜の流通は、野菜の産直のように生産者と需要者がダイレクトに結びついてどうこうというのがやりにくい。それこそ尾崎さんは最初からそれを志向してビジネスを組み立ててきているからできるけれども、多くの生産農家は販売業務までやる余裕が無く、それを引き受けているのが解体後の部分肉を引き取り、卸売販売する業者さんたちだ。彼らが在庫リスクを引き受けることで、食肉流通は成り立っている。だから、どこかの流通と組む方が、まずは広範な被災農家への支援たりうるのではないかと僕は考えている。もちろん、そうした流通業者を通さずに独自の販路を築いている独立系畜産業者さんもいるので、そうした人たちを直接支える仕組みも必要である。というわけで、あまりに範囲は手広くなっちゃうのですよね。

いま、僕自身もいくつかのルートで販売協力の道を模索している。なにか決まったら、またここで告知します。

そうそう、今後、疫学的なことで疑問が出た場合、このサイトを参考にしていただくと、きちんとした情報に出会えるかもしれません。

■(有)シェパードがおくる松本大策のサイト
http://www.shepherd-clc.com/
daisaku.jpg

ここでもリンクしているけれども、「みんなで食べよう宮崎の牛」というイベントを、鳥取県米子市の焼き肉店が開催する。第一弾に入荷するのは日南市の牛ということで、早期出荷のものとは違うけれども、非常に勇気ある行動だと思う。