週刊新潮の藤原正彦さん「管言妄語」を読んで胸がすかっとした!TPPを経済問題としてしか観ない評論家が多い中、こんな人が居てくれることに感謝。

2010年12月27日 from 日常つれづれ

週末、自宅に居られるときにはほぼ必ず自家焙煎コーヒーのカフェ・デザール・ピコへ、モカジャバブレンドを飲みに行く。入り口の書架においてある週刊文春と週刊新潮を手に取るが、嫁との間で「文春」をどっちが先に読むかを争うのが常だ。我が家では文春の方が圧倒的に評価が高いのである。

しかし! 今出ている年末・新年特大号に関していえば、週刊新潮は実に実に素晴らしい。というか、週刊新潮がいいというよりも、藤原正彦さんの連載「管言妄語」が圧倒的に素晴らしいのである。たった350円程度だから、ぜひ買い求めて読んでいただきたい。

「亡国の論」と題された今回の話の流れは、最初の書き出しからはよみとれない。

いわく、長きにわたる数学の歴史のなかで、数学者は実用性を念頭において数学を創り出してきたわけではない。彼らの研究上の羅針盤は「美意識」であって、多様な現象を美しい数式で表すことが重要だったのである。その数学が経済などの分野で実用されているのは副産物でしかない、ということだ。

日本の文化において最も重要なのも、この「美意識」もしくは「美的感受性」である。頭を抱えたくなるほどに頼りない政治にも関わらず、なんとか一等国の座についていられるのはこの美意識のおかげであろう、と綴られている。

さて重要なのはここからだ。

そんな日本でいま、TPPへの参加の是非を巡って、もはやGDP1.4%に過ぎない農業に見切りをつけ、工業国に徹しようという議論になっている。

「亡国の議論だ。」

そもそも農業は一国の礎であり、生殺を議論することさえ許されないものだ。農業を失うことは日本が立脚している美的感受性の源泉を失うことに他ならない、と書いておられる。

そして、「米国やEUとFTAを結んだ韓国に負けてしまうというのはウソだ。リーマンショック以前に比べて、ウォンが円に対して40%以上も不当に切り下げられているからである」とする。

主に製造業関連からの広告出稿が大事なジャーナリズムからは、積極的なTPP反対を論じる声は全く聞こえない。日経新聞みたいな経済至上主義の新聞はそれが仕事なんだろうからしょうがないが、それ以外のマスコミもみな「経済のためには仕方がない」というような論を敷いている。けれども違うよ。

なんども書くけど、農業 対 それ以外の産業 という図式じゃないんだ。

TPPで重要なのは「日本人のたべものをどうするか」という議論なのだ。

TPPは日本人が食べるものを、そっくり他の国に明け渡すことなのである。最終的に生鮮野菜は残るだろう。けど、最も重要な穀物と畜産はほぼ全て他国産のものになるだろう。いままで付加価値を不当に低くされている基本的食糧の生産に就いていた人たちは職を失い、数十万人が失業し労働市況が悪化するだろう。それを「仕方がない」というのは単なる思考停止であると考える。

なんて俺が書くよりも、藤原さんのコラムを読んだ方がいい。とりあえず週刊新潮、めくってみて欲しい。