完全版アップ!フランスが誇るシャロレー牛の本当の美味しさを識る旅! その3:シャロレーの肉でフランス人が好むのは経産牛!肉に対する哲学や好みが日本とまるきり違い、NYスタイルとは違うドライエージングの受け止め方があるのだ。

2014年11月19日 from 出張

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フランスのスーパーに入ると、精肉売場にはパックされたステーキ肉が並んでいるが、一般的にそのポーションは大きい。ローカルなスーパーに入ると、少なくとも2.5cmくらいの厚み、判の大きさはそれこそ30cmくらいのどでかいモモ肉がパックに入って並んでいたりする。ただし、ロイン系の肉はそれほど厚みがないものが並んでいることが多い。これ、日本のぺらぺらなステーキと同じような厚みだけど、同夜君だろ?と思っていたが、それについては次のエントリで解決編を書くことになる(笑)

で、このオリヴィエの池の優雅な午後に食べるシャロレーの肉は、推定5cmの厚さである。日本のフレンチ・イタリアンの肉焼きシェフなら、工夫を凝らして精緻な火入れをしてくるだろうけれども、オリヴィエはガスのグリルをプレヒートしたところにどかんどかんと肉を乗せていく。事前に塩は振っていなかったと思う。

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最初に火が通ったのは手前にあるもので、これは日本で言うハラミである。

「ハラミ、OK!」 (→オリヴィエは英語堪能、日本語怪しい(笑))

とオリヴィエがナイフで切り分けて出してくれる。

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釣りをしている間にシャンブレ(常温に戻す)をしていたので、内部は赤くても温く火が入っている。この状態が一番美味しいから、ということである。

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塩はしていないから、これにぱらりと岩塩を自分でかけていただく。

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このハラミ、真空パックをかけない開放状態で熟成したもので、最近ではフランスでもドライエージングと呼ぶようだが、それをほどこしたもの。日数は忘れました。アメリカのようにブワッと熟成香が拡がるようなものではなく、むしろ赤身の肉に必ず含まれる、ドリップとなる水分を抜くというものだ。

これが旨い! クニュッと柔らかながら適度な弾力があるハラミ。日本人ならタレをつけて食べてしまいそうだけれども、焼き目の旨みと岩塩の塩気だけであまりにも豊かな味わいである。

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「ネクスト、ジュニス(処女牛)!」

と切り分けてくれるているのが未経産のシャロレーのストリップロインだ。日本にも入ってきている30ヶ月齢以下のメスである。

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この厚みですよ!ちなみにこちらではたこ糸で成形された状態で肉を売っていることが多い。これはおそらく、水分が多い赤身肉なので、縛らないと形状を保てず、デロッと崩れてしまうからだろう。

日本ではA5ではないにしても霜降り肉が普通だ。サシは脂なので、冷やすと固まり常温では溶け出さない。つまり、形が保たれやすいのだ。反対に赤身肉は、印象的にはそっちのほうが固いんじゃないの?と思いがちだが、水分が多いのでぐにゃっとなってしまうのだ。

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脂と筋を外してみたら、まだちょっと赤過ぎたので再度火にのっけて加熱。アバウトです(笑)

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さあそして完成!

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中はほぼレアな状態、だけれどもぬるく温度が入っている状態だ。

「シャロレーは、とくにジュニスの場合は火が通り過ぎると美味しくなくなるから」

と、オリヴィエは力説する。日本で顧客を訪ねる際も、焼いてもらったのを食べてがっくりきたことが多いそうだ。なぜかは識らないが、料理学校などで「フランスのシャロレーはがっつり焼くもの」という教え方をされているようで、みなさんシェフはシャロレーとみるや内部まで火入れをきっちりするのだそうだ。

それで食べてみて「んーー、、、」となっちゃうので、フランスの肉好きは気も狂わんばかりだろう。実際、日本でこれを売っている進藤さんも某所でシェフに「ほら、こう焼くのがシャロレー向きのやり方だよ」と出されたのが、赤い部分が失せてしまった激烈にウェルダンなシロモノだったらしい(それはそれで旨かったけど、と言っておられましたが)。

しかし、本場ではここまでレアなんだー!まあ、人にもよるとは思うけど。

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さていただきます。

ざくっと大きく切って口に入れると、表面部分の香ばしい焼き目の香りがし、噛むと赤身肉特有の豊かな水分がジュッと染み出る。そして、、、歯が通っていくときに、中心部の赤身肉がトロリと溶けた!

旨い! なんだ処女牛で十分に美味しいじゃん!

なんだかマグロを食べているようなアッサリした中心部である。ということは、シャロレーでカルパッチョやったらすげー美味しいでしょうね。

お断りしておきますが、このジェニス(処女牛)は、通常はフランス人が好まない(旨い!とは思わない)肉である。日本に輸入されてるのもこのタイプ。フランス在住経験の長い何人かの料理関係者に話を聴いたが「シャロレーはあんなもんじゃない」「あれ、美味しくない」という反応が返ってくることがあるんだが、ハッキリ言うけど「シャロレーを識らない人にとってはいい入門編」であることは間違いないと思う。

少なくとも、USやオージー、そして国産の牛とは全く違った哲学に基づく味がする。それは確かである。

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さていよいよ5経産した7歳の肉である!

「まずはファット(脂肪)を味わえ!」とオリヴィエが柔らかい脂の部分を切り分ける。

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みてのとおり、グラスを大量に食べた経産牛ならではの黄色である。日本のスーパーなどではこれを一切拒否して「白い脂がいい脂」という間違った知識を流布しているのだが、脂が黄色いか白いかで美味しさは決まらない。黄色い脂にも美味しい脂がある。「脂は純白のほうがいい」というのはなんとなくイメージ的にもよいから、わかりやすいプロパガンダだ。でも、そんなもんに意味は無いと思う。

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この黄色い脂、実に風味が豊かである。口に入れたら溶けちゃう~的な融点がどうのこうのという価値ではなくて、脂に味と香りがある。マイルドでミルキー、美味しい。

そして来ました赤身肉!

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さきほどのジュニスの固体よりも繊維が粗い感じがあるが、火入れは実にいい感じである。

これは切り刻まず、各自がナイフを入れて食べることに、、、

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塊を口に入れたとたんに、ジェニスの時にはあっさりとしていた風味が、コンデンスミルクのように凝縮され、ほとばしる。強い香りに複雑な旨み! ジェニスの味わいがすべてにおいて四方に広がっているという印象だ。

「もちろんそうだ。シャロレーもなんでも、経産牛の方が年数が経っているのだから、味と香りが蓄積されているんだ。」

とオリヴィエ。 僕は、表玄関からフランス人が好きというシャロレーの経産牛を味わうことができたのである。

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オリヴィエはワインの収集もスゴくて、この日はナント1950年代のワインを持ってきていた! わたくしワインの味はよくわかりませんが、美味しいです。

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吊ったばかりのトラウトもホイル蒸しで味わう。実にエレガントな食感、ほわっほわに柔らかで、肉をがっつり食べた後だとホッとしてしまう。

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書きたいことはヤマほどあるが、時間が限られているのでこの辺で。外に出ると、なんと薄曇りだった空から、青空が!

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まだみな釣りをするようです。

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さんざん遊んで帰り道、オリヴィエがスマホのメールを見て声を揚げた。

「うちの娘がゴールドメダルだ!」

なんとオリヴィエの娘さん、シンクロナイズドスイミングのフランス大会の年齢別の競技で優勝したらしい! すぐに娘さんと車載電話で話すオリヴィエ。あどけない娘さんの口ぶりから、フランス語が分からなくても、オリヴィエに対する感謝の念が感じられる。

ゆったりしたいい時間が流れていた。フランスの片田舎でこんな経験ができるのも、パックツアーでは難しいだろう。連れてきてくれたトップトレーディングの中澤さんとオリヴィエに感謝したい。

そして、これはまだほんの序章なのである。