大分の県南・佐伯市~蒲江の海の幸を味わい尽くす! その3 蒲江町の素晴らしき海人達との饗宴!

2006年10月18日 from 出張

さてブリ養殖を営む村松さんの車に乗り、佐伯市街から橋を渡ってひた走ること数十分。リアス式海岸をぐんぐるぐんぐると廻り、日が暮れる頃に宴席となる民宿「清水マリン」に到着した。車を降りて、とにかくこの素晴らしい風情に「うおっ 撮影撮影!」とカメラを構えたのであった。

■清水マリン
大分県佐伯市蒲江 竹野浦河内
0972-43-3887

この「清水マリン」という、なんとも腰が砕けそうな名前と、海っぺりに建つ普通の家のような風情といい、最高ではないか!しばらく暖簾をくぐって中に入る前に佇んでいたいと思ってしまったのだ。

「今日はここで、蒲江の海で働く仲間と飲みましょう!うちの町の芸能人がたくさんいるから!」

と村松さんに言われるまま座敷に上がると、いかにも濃い人たちがすでに座していた。

蒲江(かまえ)という町は、大分市から車で1時間半程度、佐伯市から30分程度かかる、宮崎県との県境近くの漁村だ。従って大分の海である豊後水道だけではなく宮崎の日向灘にも面しているという立地。リアス式海岸は延長85kmにも及び、うねる外海に反して湾内はどんなときも凪いでいるという。

「蒲江の海は、ほんっとに豊かなんじゃ!」

と村松さんが言うとおり、伊勢エビもアワビもサザエもウニも、とにかく豊富に捕れる海だ。ちょうどこの時、蒲江町の民宿では「伊勢エビフェア」をやっていて、格安で伊勢エビが並ぶという。

「ほうれ、これ、ぜーんぶ蒲江の海の幸じゃぁ!」



この時期は、定置網にカマスがかかる時期らしく、ひと塩したものが毎日テーブルに並ぶそうだ。ユーモラスな形状のうちわ海老も蒲江で揚がるものだ。

手前の串は、なんと真珠を植え付けるアコヤガイの貝柱である。

「こんなもん、わしらが子供の頃は毎食たべとったけどなぁ」

と笑いながら手渡してくれたのを食べると、シコッとした歯ごたえ、ギュッと染み出てくる旨みがほどよくて旨い。

そうこうしているうちに漁師軍団が集結。乾杯とあいなった。
この日は顔合わせ的なもので、実はこの蒲江の漁師軍団たちの素晴らしき個性は明日にならないとはっきりわからないのであった。しかしそれでも最初から強い輝きを放っていたのが、この写真手前の女性、橋本正恵さんだ。この方については明日以降のエントリで詳細に語っていきたい。

そしてこの写真手前にいるのが、今回の蒲江編の主役、ブリ養殖をメインに行う漁師二代目・村松一也さんである。レスラーかと思わん体躯と、豪快にげらげら笑いながらも知性をキラリと光らせるその大きな人間性、僕も一瞬でその魅力に引き込まれたのである。

そして次から次へと出てくる漁師料理の数々。ここ「清水マリン」は地元でも有数と言われる料理屋兼民宿らしい。おかみさんの手料理が評判高く、いやホントに旨い。刺身が旨いというのは当然だが、手を入れた料理がまた旨いのである。例えばウマヅラハギの煮付け。

こっくりと煮付けてあるが、ほろほろと崩れる淡泊なウマヅラハギにはこっくりさ加減がぴったりだ。肝の部分が非常に大きく、「まるでフォアグラじゃろ?」(←正恵さん)というのがオーバーでないくらいのトロトロの肝である。この肝をハギの身肉に塗りつけて食べるのが堪えられず旨い!

そしてさきほど刺身でいただいた伊勢エビの頭が味噌汁になって出てきた。
この辺の味噌汁は麦がタップリ入った甘めの味噌で、僕はこの九州独特の麦味噌が大好きなのだ。独特の麦の発酵した香りと、滋味あふれる甘味がたまらない。この味噌風味に伊勢エビの甲殻類特有の旨みスープが合わさって、これはもう最高である。

しかも伊勢エビのガラにはまだ身肉がタップリ詰まっているのだ!

「おっ 漁師の食べ方を教えてやる! そこの半分下の部分を手でバリッと割るんよ!」

と実演してくれる村松さん。

殻を外して食べた、味噌汁の具となった伊勢エビは、加熱され旨みを増して非常に美味しい。ご飯が食べたくて仕方がないのである。

そして極めつけのすごいものが出てきた!

これ、なんと海ウナギである。
ウナギの種類のなかには、川へ遡上せず海で定着するものがあるそうだ。長さにして1メートル胴回りが通常のウナギの数倍になるものも多いそうだが、これがまた特有の味わいがあるということだった。

「決して大味じゃないんです。うちではこれをさっと焼いて頭と骨を醤油とみりんで煮詰めたタレに絡めてだしてるんですが、美味しいですよぉ~」

とこれを持ってきてくれたのは、この旅館の娘であるヨーコちゃんである。

しばらく前まで福岡で美術教師をしていた彼女は「どうしても魚が恋しくて」戻ってきてしまったという、根っから食べることが好きな、そして実にこの人も知性の溢れる女性なのであった。

「おおおお じゃあ、とりあえず白飯ちょうだい!」

と叫び、持ってきてくれたご飯の上にこの海ウナギの身を載せる!

海ウナギの皮はさすがに厚く、しかしそれがパリパリに焼けているので、噛みしめるとバリッとダイナミックな音が立ち、芳ばしくて旨い! そしてほろほろの身肉は意外に淡泊な風味、脂でギトギトしているかと思いきや、そんなことは全くない! ホコホコした肉、そしてウナギのあのワン&オンリーな香り。よく見ると山椒の実が煮汁に入っていて、これが絶妙な香り付けとなっている。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお 旨い! 海ウナギもオツだね!」

こんな素晴らしい皿が出てくる民宿、1週間くらい泊まりたいものだ。

このほか、緋扇貝(ひおうぎがい)というホタテのような貝を蒸し焼きしたものも卓に並ぶ。

(すでに食べてしまった殻です、モウシワケナシ)

これを生産しているのがこの宮脇さんだ。

「あのねヤマケンちゃん、この宮脇っちゅうおとこも、実は濃いんだよ~ そうだ、明日、緋扇貝の現場を観に行こう! その場で焼いて貰おうね! こういう店で食べるのより断然旨いから!」

ということにあいなった。

村松さんの口癖は 「かかってこい!」 「ぶぁ~か!」 で、豪快にガハハハハと笑いながらそれが連発される。小気味よく焼酎を飲みながら、宴席は続いたのであった。

さてその後、離れにある宿泊部屋に通され、風呂に入り寝る前。
そーっとお夜食を取り出した。

これぞ大分名物、吉野鶏めし(よしのとりめし)である。大分市吉野地区の、伝統料理で、お母さん達が保存会をつくって伝承している味だ。実は移動中にお願いしてスーパーによってもらい、地元の食べ物を少し買い込んだ中にこれもあったのだ。

■吉野鶏めし保存会
http://www.yoshitori.jp/


いやもうこれが最高!
ウナギご飯で満杯だった腹に、しっかり握り混まれた鶏めしおにぎりが3つ入って、ちょっと死にそうになる。この味はブロイラーでは絶対に出ない。採卵鶏の廃鶏なのか、それとも特別に飼っている鶏なのだろうか、とにかく飼養期間180日以上は経っていそうな鶏の味であった。ご飯のたき加減と食感も最高。

超満腹になり、画像アップ等をして1時間半くらいしてから眠りに就いたのであった。明日は海である。