畜産システム研究会の会場となったのは北大の静内キャンパス。なんと470haもの敷地内は、動物ワンダーランドだったのである! 肉牛のヘレフォード種と短角種、そして本物の道産子・馬を観た!

2009年6月29日 from 出張,日本の畜産を考える

※記事内を部分修正しました

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この週末は、北海道で開催された畜産システム研究会という組織のシンポジウムに参加していた。「畜産システム」というと、なんとなく高度に情報システム化された畜産方式の研究会と思われそうだが、むしろその逆で、林間放牧など、その土地土地の環境を活かした畜産方式を研究テーマとする会だ。

会場となったのは北大の静内キャンパスということで、僕はてっきり札幌にあるのだと思っていた。しかし、、、静内キャンパスは日高郡にあり、新千歳空港から2時間かかるのである! 今回、週末だったこともあって嫁さんに「シンポジウムの間は札幌で遊んでればいいんじゃない?」といって同行させていたので、直前にロケーションがわかった時、「なにそれー」となってしまった。

しかし、行ってみて気分一変。470haもの広大な敷地の中は、とてつもなく気持ちのいい空間だった。

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470haといってもわからないかもしれない。1haは100m×100mだ。それが470個。

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この中に、短角和牛と肉牛のヘレフォード種が放牧されている。今回の一つの目的が、ヘレフォード種の放牧風景をみたかったことがある。

この子がヘレフォード種。草を食べて育ってくれるということでは短角よりも効率がいいという品種だ。

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ごらんの通り、体は褐色で顔が白い、特徴的な模様をしている。このヘレフォード種、とても人なつこくて、寄ってくることはないにしても、あまり逃げない。短角はすぐ逃げるので、ヘレちゃんが実に可愛く思えてしまう。

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実際にみてもらうとわかるが、人間のことなんか気にしないで、とにかく地面に映えている草をムシッムシッと食べている。 だいたい、1haの範囲内で1頭くらいの牛を放牧で飼うのが適正だと言われている。それより多いと、草を食べ尽くしてしまい、糞や尿が環境が分解しきらない、窒素過剰になってしまうわけだ。DSC_0031 

適正な規模での牛の放牧は、都府県ではなかなか土地の確保が難しい。やはり北海道の広大な土地は、畜産にとって魅力的なのである。

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右側は短角のメス。左の子牛は、、、これは額が白くなっているのでタンヘレかもしれない。ヘレフォード種と短角の交雑種(F1)のことだ。

ここで基礎知識の話をすると、牛の場合はこういう交雑種をあらわす時、オスの名前を先に、そしてメスの名前を後に表記する。つまりタンヘレと言ったときには、短角のオス×ヘレフォードのメスということになる。逆ならヘレタンということになる。

煩わしいことに豚の場合はそれが逆になり、メス×オスの順に表記する。例えば世界で最も多い掛け合わせであるLWDの場合は、ランドレース(L)のメスと大ヨークシャー(W)のオスの掛け合わせをLWと表記し、LWのメスににデュロック(D)のオスをかけたのをLWDと表記する。わかりにくいかな、、、

それにしてもヘレフォード種は、愛情が細やかだ。母子の様子を見ていると、よく頬をすりあわせたり、愛情表現がよくみられる。

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ちなみに歩いて移動できる距離ではないので、移動は車。それも、僕は初めて乗ったけれども、メルセデスのハイパワー車であるウニモグ!

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山もこれでぐわぐわと入り込んでしまうことができるのである。

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右側がこの静内の牧場を統括する秦(はた)先生。なんと東京出身であられるそうだが、ほっかどうの魅力にとりつかれてしまったらしい。

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みよ、この広大な景色を!
とてもじゃないがこれを現代人が開墾仕切るのは難しいと思う、、、

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北海道を旅行するとよく、こういう草のロールをみかけるだろう。牧草を長期保存するためのものだ。高く生えた草を刈り取って細かく裁断し、こうしてロールにしたのち、厚手のビニールで密封する。そうすると内部で嫌気性の乳酸発酵をし、古漬け状態になり、長期保存ができるのである。しかも動物はこの古漬けの食味が大好きという、両得な餌である。

こうした、牧草などの低カロリーな餌を粗飼料(そしりょう)という。肉牛には粗飼料と濃厚資料という、薄い餌と濃い餌を与えて肉にする。しかし粗飼料は草だから一杯撮れるだろうと思いがちだが、都府県では農地が小さく、そこに安い牧草を植えるよりも米などを植えた方がいい。ということで、日本の畜産では、粗飼料は圧倒的に海外から輸入しているのである。もちろん濃厚飼料についてはほとんどが輸入。だから日本の畜産は海外依存といわれるのである。

僕は、乱暴ないいかただけど、国内で収穫できる粗飼料・濃厚飼料のみで生産できるだけの畜産物しか、つくらないという世界にした方がいいのではないかと思っている。そうしたら、おそらく一週間で畜産物は1回かそこらしか食べられない。けど、それくらいが適正じゃないかしらん。なんていいながら、僕は肉を週に複数回食べているけれどもね。

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はるかかなたに、キタキツネが見える。この視察の間、たぬきもみたし、エゾ鹿 などは群れで逃げもしないのを観た。

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そして圧巻だったのは、和種の馬である道産子(どさんこ)だ。

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ばんえい競馬で走る、足の太いどっしりした体躯の馬が道産子だと思っていたが、実はあれは輸入馬であるということを畑先生が教えてくれた。時代劇に出てくるべき馬は実は、この美しい体躯をもつ、純和製の馬なのである。

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「ひとなつこいのは近寄ってきますよ。できるだけしゃがんだりして、馬より小さくなって下さい」といわれたが、僕ははなから小さいので、すぐに好奇心旺盛な道産子が寄ってきてくれた。

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僕の長靴の匂いをかぐ馬。か、可愛い、、、

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カメラを構えていると、自然とその先端部であるレンズに鼻をこすりつけてくる。

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これを顔の鼻 と思っているのだろうか。かれらの鼻水がレンズ面につかないように、レンズフードをつけておくことは必須である(笑)

それにしても、本当に人なつっこい。一頭がくれば、他のも寄ってくる。

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フサフサした毛が印象的だ。生臭い息をブフッと吐きながら顔をすりつけてくる。

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なんとも透明感のある綺麗な眼。
肉牛を見に来たのに、僕は すっかり馬にやられてしまった!

さてその後のシンポジウムは大変勉強になった。

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会長である木村先生 。

そして着替えてきた秦先生。

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マルハニチロ畜産という企業ながら、 こうした放牧や有機畜産の支援をするeビーフ認証というのを運営している。

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そして、北海道における短角牛生産の第一人者である、襟裳の高橋さん。

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熱いお話しを聞けた。 その辺はまた今度。

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懇親会は、何ともうれしいことにヘレタンの肉を食べることができた!

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「黒毛がキロ当たり1500円以上するのに、このヘレタンを出荷しても、キロ450円(!)なんて安値になっちゃいます。サシが入らないからですね。みなさん食べてどう思いますか?」

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ヘレタンの肉、旨い! サシが入っている黒毛和牛の肉は、サシ(脂)が溶けてしまえば、あとはスポンジ状の赤身が残るだけだから、柔らかいのは当たり前。けれど、赤身部分にうま味は薄い。

それに対してヘレタンは、まずその赤身がしっとりと柔らかい。それに、純血短角ほどではないにしろ、うま味がしっかりとのっている。ヘレフォードはあっさりめの肉なんだろう。とにかく、いつまでも食べ続けられるようなうまさの肉だ。黒毛は4口くらいでいやになるけど、これはいい!

参加者が口々に「これで450円かよ、、、」とため息をつく。やっぱり日本の肉の価値基準はおかしいのである。

いろんなことを考えた週末なのであった。