NYドライエージングビーフツアー二日目 7店舗みまくりでエイジドビーフの売られ方がちょっと見えてきた編 その1 スチュー・レオナルドのパインに感動!

2011年6月27日 from 出張

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イヤー疲れた!というのがホンネの、怒濤の視察日でした。ドライエージングビーフ、こちらではエイジドビーフ(Aged Beef)と表記している事も多いけど、を取り扱っているスーパー、小売店を巡る旅だ。レストランばかり回っていたのでは実情はわからない。一般向けの小売店でどのように扱われているかが識りたい訳だ。

そして、じつにじつにアメリカではこのエイジドビーフが浸透しつつある、それもごく普通のものとして、ということがわかってきた。

まず最初はスチュー・レオナルド。

 

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1968年まで酪農を営んでいたスチューさんが、ハイウェイ建設のためにまとまった立ち退き料が手に入ったので、そこにさらに資金調達をして創業したのがこのスーパー。酪農家出身ということもあり、全米どころか世界で最大の乳製品販売を誇るスーパー、らしい(ロンドンのマーク&スペンサー百貨店の平方フィートアタリの売上高2400ドルを上回る2700ドルを記録)。

※この辺は、ツアーコーディネーターであるコジマカズトシさんの準備してくれた資料による。

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アメリカの通常のスーパーが一店舗1.5万品目を扱うのに対し、ここでは800品目程度しか販売していない。通常、一品目一ブランドである。売場の写真は撮れなかったが、たしかに乳製品の充足度は非常に高い。当然ながらPB、というよりオリジナルブランドの牛乳製品が所狭しと並び、しかも牛乳だけでも、あらゆるバリエーションの種類(SKU)がならんでいた。

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この石碑は入り口にあるもので、創業者であるスチュー・レオナルドの記した社訓。

「私たちのポリシー

ルール1 お客様は常に正しい。

ルール2 もしお客様が正しくないと思われるようなことがあったら、ルール1を読み直すこと」

うーん、これは正直言って、拙著「日本の食は安すぎる」で僕が「消費者がすべてというこの小売りの現状があるかぎり、食の現状はよくならない」と書いている側からすると歓迎したくない言葉だ(笑)

実はこれ、スチュー氏のあるエピソードが元になっている。ある日、店舗に老婦人がやってきて、乳製品が腐っているとクレームをつけたそうだ。それに相対したスチュー氏がくだんの商品を試してみたが、とくに腐ってはいなかったので「大丈夫ですよ」というと、老婦人は「こんな腐ったものを売って!」怒ってしまったそうだ。スチュー氏も感情的に対応してしまい、「もうあなたのようなお客さんは来てもらわないでいい」と言ってしまった。この後帰宅した彼は、なんだか気持ちが治まらない。そこで妻に相談したところ、こう言われたそうだ。

「あなたはいつも”お客様が喜ぶ店作りをしたい”といっているのに、それと正反対のことをしてしまったのね」

と。つまり、その老婦人がクレームをつけた時に、腐っていようがいまいがすんなり交歓に応じれば佳かったのだ。なぜならスチューは卸などの中間流通をもたない、牧場から直接原乳を買い付けるシステムができあがっているので、乳製品の仕入原価は非常に低廉だ。だから、理不尽なクレームがあったときに追い返すよりも、「申し訳ない、2本でも3本でもおつけしますよ」と倍返ししてしまった方がいい。その客はスチュー店に対して高いロイヤリティを感じてくれるはずなのだから、、、

そういう話だ。なるほど、実は単に顧客要望に応えるという美談ではなく、マーケティング的な効果と実利が入り交じっているのであった。これならわかる。

さて、この店内では撮影に対してかなりきびしいということが言われていたのでびびって一眼レフを出せなかったのだけれども、最後の肉売場でとうとう我慢が出来なくなった。

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素晴らしい、、、アメリカ人にとってステーキとはどれくらいの厚みを言うのかということがよくわかる図だ。この写真の中央、紙に包まれたフィレ肉の左側にあるのがポーターハウススというカッティングをした肉だ。

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いわゆるTボーンという、T字型の骨の両脇にフィレとサーロインがついている部分で、二つの味が楽しめるのが人気の部位。これを中心に、両脇にプライムドエイジドビーフの表記が入っていた。牛種はもちろんアンガス種であろうと思われる。

これがだいたい、単位はわからないが27ドルという価格付けで、周りのエイジドと書かれていないものより一回り高い値付けだった。しかしそれが中央に位置しているということからも、通常の肉とは違う販売のされ方をしているということが明らかだ。

で、ご存じのように肉は買っても日本には持ち帰れないし、ホテルの部屋に調理場もないので、買いたい気持ちをぐっとこらえる。そのかわり、物色したのがこんなかんじ。

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右奥がホームメイドタイプコールスローの30OZ 。アメリカはコールスローサラダが異様に旨いのだ。その横がフレッシュパイナップル。左が絞りたてのオレンジジュースで、前にあるのがオーガニックのベビーキャロット。これら全部、アメリカで僕が「日本とは段違いに旨い」と思っているものばかりだ。

パイナップルはコスタリカで契約栽培をしているそうで、もう信じられないほどに美味しい!

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じつはこれ、芯がくりぬいてあるのはパッケーjの上からでもわかったんだけど、輪切りにはなっていなかった!もらったフォークで食えるかなと心配したが、完熟した柔らかな実だったので、繊維にそって割ることが簡単にできる、そのジュースしたたる(シロップじゃないよ)パインの身肉のジューシーなこと、日本のパインと違って繊維がぴんぴんしているのに柔らかいこと、そして爽やかな甘さ!日本のと別物ですな。これぞパインだ。船上の追熟で商品に仕上げているのと、樹上であるていど完熟にもっていって輸送しているかの違いなんだろうけど、完熟果がこれだけ旨いのかということを実感してしまった。

フレッシュオレンジジュースも、言葉が無くなるくらいの絶品!実はスチュー・レオナルドはオレンジジュースが名物で、年間推定で4500万個(!)のオレンジをスクイーズした量を売るそうだ。アメリカのフレッシュオレンジジュースは文句なしに旨い。これも完熟したオレンジだからだ。

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こちらは武虎が買ってきたロブスターサンドイッチ。柔らかで甘い風味のあるコーンブレッドと、マヨネーズベースのロブスターがよく合う。

「帰ったら、宮崎の地元のエビで作ってみます!」

と言っているので、宮崎在住のかた方はフーデリーの総菜パンコーナーを注視!

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ということで、最初の店舗からかなりのテンションになってしまった。頭を冷やしつつ、マンハッタンへ戻り、日本にも進出したイータリー(Eataly Marketplace)の旗艦店へ行く。

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(続く)